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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1461号 2023年10月22日
【一面トップ】 ガザ封鎖・侵攻を止めよ
        ――テロの根源はパレスチナ人への差別、抑圧
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 増勢に転じた労災死傷者
        ――日本資本主義における労働災害の状況
【二面サブ】  「子ども放置禁止」条例案撤回で終わらない
        ――自民子育て政策の本音示すその反動性、反社会性
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

ガザ封鎖・侵攻を止めよ

テロの根源はパレスチナ人への差別、抑圧

 パレスチナ自治区・ガザを支配するハマスのイスラエルに対する奇襲攻撃に対して、イスラエル政府はハマスとの全面的「戦争状態」を宣言、10万人の軍隊を動員、ガザに軍事侵攻を強行しようとしている。イスラエル政府はハマスの軍事攻撃をテロと非難し、軍事侵攻を正当化しているが、それを生み出したのはパレスチナ人への差別・抑圧である。(執筆は18日現在)

◇イスラエルによるパレスチナ住民の抑圧

 イスラエルのネタニヤフ首相は、ハマスの奇襲攻撃に対して「ハマス殲滅」を唱え、「われわれは戦争状態にある」と宣言し、野党の一部とともに「戦時内閣」を発足させ、ガザ地区を連日空爆している。これによってガザ地区の上下水道は破壊され、100万人以上が深刻な影響を被っている。唯一の発電所は燃料不足によって停電、病院は治療困難となり、死体安置所と化している。

 また予備役兵36万人を動員し、地上侵攻に備えていてガザとの境界に待機させている。

 既に空爆によって、何千人ものガザ住民が命を奪われ、傷ついており、住む家を失っている。さらに地上戦争になれば、その犠牲者は計りしれないほどに膨れ上がることは必至である。

 イスラエル政府や米、仏などEU諸国は、ハマスのテロ攻撃を「非人道的」行為と非難している。ブリンケン米国務長官はネタニヤフとの会談で「われわれは常にあなたのそばにいる」と語り、ハマスに対するイスラエルの報復を全面的に支持する姿勢を改めて強調した。米国は東地中海に原子力空母を派遣、さらにこれまでの軍事支援(2018年~27年に380億ドル)に加え追加支援することを約束した。

 米国がイスラエル支持を謳うのは、イスラエルが中東における米国覇権のための要の役割を担っているからである。

 イスラエルはアラブ諸国と対立し、紛争を起こしてきた。米国は石油資源など国家的な利権確保や国際秩序維持のために、イスラエルの後ろ盾ととして、毎年軍事的・経済的援助を行ってきた。イスラエルは現在では核を保有し、近代的な兵器で武装されたブルジョア国家に成長した。

 また600万人のイスラム教徒がいるフランスでは、マクロン大統領はハマスの攻撃でフランス人が犠牲になったことを挙げ、「国民の団結」を訴え、国内のパレスチナ派のデモを禁止した。

 しかし、彼らにハマスのテロを「非人道的行為」と非難する資格はない。急進的なハマスの運動を生み出したのは、イスラエルであり、その後ろ盾となってきた米国を先頭とする帝国主義国家である。

 イスラエルの国家は、英、米など帝国主義国家が作り出したものである。ユダヤ人のパレスチナ入植は、英国が植民地パレスチナにユダヤ人を入植させたのが始まりである。英国は西欧で迫害されていたユダヤ人の入植を支援することによって、現地パレスチナ人と対立させ、植民地支配を維持しようとしたのである。

 第二次大戦後、国連総会は、当時人口比で3分の1にすぎないユダヤ人がパレスチナの土地の56・5%を、残りの43・5%をアラブ国家とするパレスチナ分割案を可決。1948年、イスラエル国家が誕生した。「嫌われ者」のユダヤ人を国外に追い出すために米国、仏国、ソ連などが賛成した。

 一方追い出されたパレスチナ住民は難民となり、以降、イスラエルとアラブとの抗争が続くようになった。

 1993~5年にはイスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)との間で、イスラエルの占領地からの撤退、パレスチナ自治政府の承認、双方の平和的共存等を内容とする暫定合意(「オスロ合意」)が成立したが、イスラエル政府は合意を履行する意思などなく、その後も泥沼の抗争が続き今日に至っている。

 ユダヤ人といっても、ユダヤ人という人種がいるわけではなく、「ユダヤ教を信仰する人」のことである。ユダヤ人はキリストを売り渡し、磔の刑にさせたというキリスト教による宗教的教義から、裏切り者、忌むべき存在として差別され、迫害されてきた。

 ナチスドイツでは、その人の「祖父母のうち3人までがユダヤ人なら、ユダヤ人」と規定し、アーリア人の純血を汚す者として、「アウシュビッツ」に象徴されるような収容所に強制送還、何百万のユダヤ人を抹殺した。

 ユダヤ人の新生国家は、〝民主主義〟を謳っている。パレスチナ人もイスラエル国籍が与えられ、選挙権も与えられた。しかし、歴代の政府はパレスチナ人に対して差別、迫害する国家として振る舞ってきた。

 イスラエルには約950万の人口のうち約2割のアラブ人が住み、ガザとヨルダン川西域地区の2つのパレスチナ人自治区が存在する。

 ヨルダン川西域地区はイスラエルに対して宥和的な姿勢をとるPLOが支配している地区であるが、自治区と言っても、3地区に分かれ、そのうち行政と警察権を握っているのは1地区で面積は僅か2割弱でしかなく、他の2地域ではイスラエルが警察権をにぎるといった見せかけの自治組織でしかない。

 一方、ハマスが支配しているガザ自治区ではイスラエル側と壁で仕切られ、水道、電気、燃料はイスラエル政府によって規制されている。いくつもの検問所が設けられ許可なく、自治区から出入りできない。このためガザは「天井なき監獄」と言われている。

 イスラエル政府は、1967年の第3次中東戦争以降、ガザ、ヨルダン川西域地域を占領し支配下に置いた。政府は勝手にイスラエルの入植地に指定し、補償もなくパレスチナ住民を追い出し、ユダヤ人に土地を与えている。

 入植地は増加する一方であり、現在140の入植地に60万人ユダヤ人が居住している。ガザでは産業を破壊し、ガザの生産物をイスラエルで売ることを禁止した。工場の建設は禁止され、漁場も大幅に減らされ、操業時間も極端に短縮された。パレスチナ人は、ユダヤ人の企業の日雇い労働者として働いているが、その賃金はユダヤ人労働者の1~2割程度である。一方、緊急法令は、警察は理由を明らかにすることなしに逮捕することが出来、弁護士も認められず、裁判もないことを規定している。道路はユダヤ人専用とパレスチナ専用とに区別され自由な交通が出来ない。パレスチナ人は、植民地の住民と同じように差別され、抑圧された存在である。

◇軍事テロにパレスチナ解放の展望なし

 ハマス(名称「イスラム抵抗運動」)は、イスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」を母体に、1987年にパレスチナ人民の間に広がった反イスラエル闘争(インティファーダ)を機に結成された。ハマスは武力によるイスラエルの打倒とイスラム国家の樹立を掲げ、イスラエルと和平を掲げるPLOに反対して、イスラエルに対しテロや武装闘争を繰り返してきた。

 2006年のパレスチナの自治地域での評議会選挙でハマスが勝利した後、治安権限をめぐり、パレスチナ自治政府のアッバス議長率いる主流派ファタハ(パレスチナ民族解放運動)とハマスとの抗争が激化、07年ハマスはガザを武力制圧し、パレスチナは、ガザと自治政府が統治するヨルダン川西域地区とに分裂した。

 ハマスのイスラエルに対する武力闘争は、主として武装組織による襲撃や爆弾を身に着けた自爆テロとして行われてきた。 しかし、自爆テロという特攻的な戦術は、しばしば一般住民の犠牲をもたらすだけで、軍事的に効果はなかったし、かえってイスラエル住民の反感を広め、イスラエル政府の軍事的・経済的な報復によって、パレスチナ住民に大きな犠牲をもたらしてきた。

 ハマスの拠点であるガザは、僅か日本の種子島程度の狭い地域に220万人ものパレスチナ人がひしめく人口密度の高い所である。産業もなく、住民の約7割が外国からの援助で生活している極貧地域である。

 かつて、生活物資や医療の支援で住民の高い支持を得たハマスも、支持を失いつつある。今年7月末、ハマスに対する数千人のデモが行われたのもその表れである。その背景には、高い失業、電気がイスラエルの締め付けで1日4~6時間しか利用できないこと、そしてカブールからの支援金の一部をハマスが手数料として天引きしていることへの反発がある。

 今度のイスラエルへの大量のロケット発射と武装部隊によるイスラエル人への襲撃テロは、イスラエルの報復攻撃の引き金となった。ハマスのイスラエルに対する襲撃テロは事態を悪化させただけで、パレスチナの独立国家樹立を求める運動を後退させるものである。

◇イスラエルは即刻封鎖や軍事侵攻を止めよ

 イスラエルはハマス「殲滅」、人質解放のために軍事侵攻するとして、ガザを完全包囲し、電気、水道、食料を絶ったうえで、ガザ北部住民に対して南部に避難するように通告、事態は切迫している。これに対して、国連人権理事会の特別報告者アルバネーゼは「ナクバ(大破局)がくり返される危険性がある。イスラエルは自衛の名の下に、民族浄化に相当する行為を正当化しようとしている。歴史の悲劇を繰り返す前に国際社会が止めなければならない」と警告している。

 イスラエル政府のパレスチナ住民に対する差別と抑圧は、ハマスを生み出した。ハマスのテロはイスラエル政府のパレスチナ住民に対する暴力的支配への怒りと反発の表れである。イスラエル政府がこれまでの政策を続ける限り、ハマスのようなテロをなくすことは出来ないだろう。イスラエルは即刻、封鎖や軍事侵攻を止めるべきであり、植民政策をはじめ、パレスチナ住民に対する一切の差別と抑圧を撤廃すべきである。

 一方、イスラエルの存在を否定し、テロで闘うハマスのイスラム急進主義運動の無力さは明らかである。イスラエル政府の暴力的な支配からの解放は、ハマスのようなイスラム国家を目指した少数によるテロではなく、独立した国家を目指すパレスチナ人民の大衆的組織的な闘いを発展させることである。 (T)


   

【飛耳長目】

★三内丸山(青森県)の縄文人たちは、春秋は森からの食料、夏秋は海からの水産物、冬は保存食と狩猟動物を食料として、最大人口5百人、約1700年間の定住生活を続けた。全ての成員は共同労働に従事し、子供らは「ムラの子」として隔たりなく共同で養育された★しかし、時代が進むと田と米を多く持つ者と持たざる者との階層が生まれた。やがて、子はその財を継ぐ者として各家庭内で養育され、その養育は主に妻の役割とされた。私有財産制が共同体を崩壊させ、家財や家業を継承する新たな家族制度を生みだした★ところで埼玉自民党県議団の「子供の留守番は『虐待』」とする条例案は、自民党(特に安倍派)の「伝統的家族観」―家父長制の下で家庭の「普遍的価値」は「子を産み育てること」、その役割は女性にある―に基づくものである。子供が家にいるなら、当然そこには妻もいるべきだと彼らは考えるのだ★しかし労働者家庭は日々の生活の糧を得るために共働きでないとやっていけないし場合によっては子供の留守番もあり得ることを彼らは理解できない。否むしろブルジョア家庭の子弟を塾や稽古事、進学競争に駆り立てることこそ「虐待」ではないか。私有財産制に基づくブルジョア家族観は、こうしたとんでもない観念を生み出すのだ。 (義)


【2面トップ】

増勢に転じた労災死傷者

日本資本主義における労働災害の状況

 9月19日、東京駅近くのビル建設現場で建設中の鉄骨が落下して作業員2人が死亡し3人がけがをする事故が発生した。再開発が進む東京駅近くのビル建築現場で、現場近くの監視カメラ映像や通行人が撮影した映像がテレビやネット上にアップされた。改めて建設労働者が死と隣り合わせの現場で働いていることが明らかになった。

◇去年の〝人柱〟は七百七十四人!

 統計のある1965年以降で、死亡者のピークは66年の6303人。死傷者数(休業4日以上)は74年からの公表で78年の34万8826人をピークに、労働死傷災害事故は、若干の変動があるとはいえ一貫して減少してきた。しかし2019年から21年までは横ばいでコロナ禍が落ち着いてからは22年には02年以降、過去最多を記録した(13万2355人)。23年9月現在、7万6131人で、22年を上回るペースで増加している。

 コロナ禍が落ち着き経済活動が活発化すれば、これまで中断していた工事が再開し物流は活発化する。4K職場として従来から人手不足が深刻であった、建設業界・運輸業界は経済活動の活発化によって人手不足は一層深刻になり、建設資材の値上げや燃料代、光熱費の上昇は資本家の利潤を削ぎ落す。中小資本はさらに厳しい。

 彼らがとる最も手っ取り早く利潤を増やす方法は、賃下げだがそう簡単にはいかない。次は安全対策を可能な限り削減するか、自己責任として労働者に責任を押し付けることである。東京駅近くで死亡労災事故を起こした建設業界は労災の発生率が高く、毎年多くの労働者の〝人柱〟が建てられている。

 建設業では22年には281人(死傷者数は1万4539人)もが命を失い、建設業が他業種に比べて労災の割合が高い。産業別就業者数(21年)によれば、就業者に占める製造業労働者の割合は17・2%(労災20・2%)建設業は8・0%(労災11・4%)であるが、死亡事故に絞れば35・7%(全死亡者778人中、建設業は278名を占める)と恐るべき数字になっている。

 労働災害は通常、雇用主である会社が労災の申請を行うが、会社が協力的でない場合は被災した労働者が手続きの一切を行わなければならない。申請書類を入手して記入、提出のハードルは高く、労組や弁護士を通じて申請を行うことになり、労働者個人からの労災申請を受けて会社側に対する労基署の聞き取り調査が行われる。

 おそらく大半は労働安全衛生法で送検される。資本が労災隠しを行なうのは安全対策費用が資本にとって利潤を減少させる費目でしかないからである。労災保険の掛け金(労災保険は全額資本家負担)すら資本は削減しようとする。

 例えば、従業員数30人で、平均年収532万円の建築事業会社の労災保険料は年間151万6200円ほどになる。労災保険は資本家の全額負担でその金額は決して少なくはない。資本が建設業において労働者として雇用せずに〝一人親方〟(フリーランス)として下請け扱いするのは、雇用主として負担しなければならない費用を削減するためであり、労災が起きた場合の責任を免れようとする姑息なブルジョア的立場を象徴している。

 最近、アマゾン配達員の事故を労基署は労災認定した。多様な働き方としてフリーランスを推進してきた政府内部からさえ、資本による労働者使い捨てに対して〝異議申立て〟が出された。

◇増加する高齢者や女性労働者の労働災害

 政府統計では60歳以上を〝高齢者〟と定義している。高齢化が進む日本においては60歳以上の労働者の比重は22年で18・4%を占めている。労働災害による死傷者に占める高齢労働者の割合は07年からほぼ一直線で上昇している。22年には高齢労働者の割合は28・7%を占めるまでになっている。統計からわかることは男女別の労災発生率(千人率)は、30代と比較して男は2倍、女は4倍となっている。

 肉体的に衰えている高齢労働者の就業が増大すれば、労災事故が増えるのは想定することが出来るが、資本がそれに対して安全対策や必要な安全教育を行っているかは全く疑問である。例えば男の場合は墜落・転落が20代の3倍。女は転倒が20代の15倍と発表されている。現場労働者の要望を聞きそれに対応した対策を取れば、大半を防ぐことが出来る。

 22年に6名(4名はアルバイト60、70代の女子、2名は20代男子労働者)の従業員を火災で死亡させた三幸製菓は、迷路のような工場内での避難訓練を行うことなく、度重なる火災にも関わらず満足な対策を取らなかった。6名もの労働者を殺しておきながら、生産再開を急ごうとした姿は〝金儲けは安全に優先する〟ことを行動で示したのだ。

◇外国人労働者の労災・使い捨てられる技能実習生

 外国人労働者の労災も急激に増加している。22年に182万2千人の労働者が就労し、4808人が労災(発生割合、千人率は2・64)にあっている。これは全労働者の2・32よりわずかに高いだけに見えるが、技能実習生や特定活動、在留資格を有する労働者の発生割合は、順番に3・79、3・41、3・58と全労働者の率を大幅に上回っている。特に技能実習生は都合の良い使い捨て労働者として扱われている。

 危険な工場で日本語も満足に理解できない実習生が、機械の操作指導も安全対策も施されていない工作機械に巻き込まれて大怪我をする、鉄板に挟まれて指を切断する等、人手不足の中小工場で危険な現場作業に駆り出される状況が広がっている。

 不法に雇い入れていなければ労災が適用され、怪我をした労働者には賃金の60%が労災保険として支払われるが、最低賃金程度しか支払われていなければ、保険で支払われる金などわずかである。資本にとっては補償金の支払をしなければ、全く負担は無い。

 資本家は労災を隠すために、実習生に労災補償があることを明らかにしない。労組等の支援がなければ、賠償を請求することも出来ない。資本家は僅かな手切れ金を支払い、在留資格更新も行わず、実習生は帰国せざる得ない。資本家は痛みを感じることもなく労働者を搾取する。

◇リニア工事で相次ぐ労働災害

 9月14日、長野労働局は労災隠しでリニアトンネル工事の下請け業者を書類送検した。JR東海に対してもリニア工事で初めて「再発防止」を要請したと報道された。JR東海はリニア工事で発生した事故は〝公表しない〟方針だが、これは事故が明るみに出れば開業がさらに遅れることに危機感を持っているからに他ならない。信濃毎日新聞によれば、21年10月27日に発生した岐阜県中津川の工事現場での死亡労災事故を含めて8件の労災事故が発生(3件は未公表)したと報じた。

 かつてトヨタで、うつ病を発症し自殺した社員の労災申請を却下した豊田労基署が、高裁で逆転敗訴し労災認定され豊田章男が遺族に謝罪した(21年9月)。労災隠しは決して悪質な中小資本家の振舞ではない。

◇闘わずには労働者の安全も利益も守れない

 1916年工場法施行令によって施行され、23年の改正を経て労働法として存続してきた工場法は、戦後47年に労働基準法が制定された。その後、最低賃金法、労働安全衛生法が整備されてきた。

 戦後法制化された一連の労働法は、戦後労働運動の高揚の中で成立したが、それ以降幾度となく改訂され、ザル法と言われる様な骨抜き法となり、派遣法に見られるような資本の要望に沿う資本のための法改正が行われてきた。労働法が資本の搾取に合法性を与えていることは明らかである。

 労働者は、労働の解放のために闘う中で、労働者の立場に立った労働法を資本に強要する。闘う事によって労働災害も根本的に改善される。(古)


【二面サブ】

自民子育て政策の本音示す
その反動性、反社会性

「子ども放置禁止」条例案撤回で終わらない

 自民党埼玉県議団提出のいわゆる〝子どもだけの留守番・外出禁止〟条例案が猛反発続出で一転取り下げになった。

 田村という団長は「内容に瑕疵はなかった」と開き直る始末。だが、この条例案騒動が露わにしたことは、埼玉だけの問題ではない。埼玉自民は、岸田政権の子育て政策の欺瞞性や自民党政治全体の反動的本質を露わに示してしまったのだ。

 子どもだけで登下校する、友達と公園で遊ぶ、留守番させる、お使いに行かせる等々、これらが親の「放置」すなわち「虐待」にあたり、住民には通報義務を課すというのだから、こんな条例案に子育て世帯中心に猛反発が出てくるのは当然だった。

 労働者の立場から強調すべきは、この条例案は第1に、子育てと仕事を何とかやりくりしている労働者家庭に、ブルジョア社会の中では結局多くの女性に犠牲を負わせるようなものであり、表向きは「女性の活躍を促す」などと謳いながら、女性が社会に出てフルに働くことを困難にさせるもの、すなわち、女性の社会進出を阻むもの、女性が社会的労働に参加する意義を否定する反動的なものだという点である。

 女性の社会的労働への参加は、歴史的必然でもあり、女性解放のための条件でもあるからだ。実際自民議員らの根底にあるのは「母親は家にいるべきだ」という時代錯誤の女性観・家族観と結びついている。

 かつて「親学」を提唱した高橋史朗といった反動が埼玉県教育委員長になっていたが、自民議員らに根付いているのは日本会議や統一教会色の家族観だ。

 第2に、乳幼児が車中に長時間放置されるとか、家庭内で身体的暴力・性的暴力を受けたりネグレクトされるような虐待問題と、子どもが友達と公園で遊んだり、お使いに行ったりといった自立性や社会性を健全な方向に育む問題とが、はき違えられている。一方で、虐待問題の深刻な背景・原因をかえって見えなくさせるものであり、他方で、監視社会を推し進め、子どもらをカゴの中に閉じ込める反社会的なものだという点である。

 田村は撤回会見で「実は社会全体で子育てする環境整備を最終目標として考えていた」と岸田政権の子ども支援策に合わせた弁明をしたのたが、安倍から岸田政権までの子ども支援策そのものが問題であることもしっかり確認しておこう。

 田村は学童保育やシッターなどの整備を「最終目標」などと頓珍漢なことを言ったが、埼玉が学童待機児童ワースト2位であるのを忘れてはいまいか。今や都市圏ではかつての「保育園落ちた」は「学童落ちた」へとシフトし、金銭的負担の少ない放課後施設を望む声が労働者世帯の切実な要求になってきた。

 こうした要求が捻じ曲げられたのが、2013年以降のアベノミクスの保育版(「夢をつむぐ子育て支援」などの一連の〝アベノホイク〟)による子育て政策が示している。

 〝アベノホイク〟は保育や学童に株式会社や様々な企業の参加拡大へと道を開き、その結果金儲けの対象として民間企業がどんどん参入してきた。様々な保育サービス事業による供給拡大、これが「社会全体で子育てする」という中身だ。保育園内で虐待などが表面化すると共に、保育士の低賃金、劣悪な労働条件(学童でも同様)などが問題となり、「保育の質」が問題視されたのも〝アベノホイク〟と切り離せない。

 働く世帯にとって、学童に預けることは仕事と子育てを両立する上で負担を軽減する一条件にはなろうが、家庭の経済状況によってそれほど単純ではない。

 家庭の経済状況による〝放課後格差〟が生じている。公設民営の学童でも1人当たり月額3千~7千円もかかるが、民設民営となれば3万~5万円以上かかる(英語授業などとセットやスクールバス付きもある)。

 ベビーシッターは1時間千六百~2千円。低賃金で生活苦に喘ぐ家庭では、簡単に預けられる場所にはなっていない。特に高額の民営学童など手の届くものではない。中高生で弟妹の世話をせざるをえない現実、貧困と切り離せない深刻なヤングケアラーの存在などを条例案は素通りした。

 〝放課後格差〟などという現実をひとつ見るだけでも、結局は金持ちのためのバラマキやカネ次第の施設や企業参入へと道を開いた〝アベノホイク〟、それを引き継ぐ岸田の子育て支援策はブルジョア社会での保育・子育ての「社会化」の限界・欺瞞性を暴露している。

 資本主義社会が生み出す貧困と直結している〝放課後格差〟やヤングケアラーなどの現実を踏まえれば、真に社会全体ですべての子を「社会の子」として育む子どもの〝居場所〟づくりが、資本の支配する社会の変革と結び付いていることは確かだ。 (埼玉T)


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11月の『海つばめ』発行は12日・26日です。

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