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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1462号 2023年11月12日
【一面トップ】 ハマスの軍事テロへの非難と美化
        ――ガザ侵攻への労働者の取るべき立場は
【一面サブ】  政権維持のためのバラマキ策
         ――岸田の所得税減税、給付策
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 機能不全に陥る日銀
        ――「アベノミクス」の果てに
【二面サブ】  岸田政権への批判を示した補選
        ――立憲や野党共闘も支持されず
【二面サブ2】 読者からの便り
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

ハマスの軍事テロへの非難と美化

ガザ侵攻への労働者の取るべき立場は

 ハマスによる10・7「軍事テロ」から一ヵ月が経過した。ハマスとの〝戦争〟をネタニヤフが宣言して以降、イスラエル軍のガザに対する無差別攻撃は無慈悲で、一切の制約を解き放ち、強力な軍事力をガザに投入している。イスラエルが退避を促しているガザ南部に国連が設置してある避難所を爆撃、多くの子供を含む避難民を殺害し、4日には負傷者を運ぶ救急車の車列を攻撃、65名が死傷したと報じられた。5日にはガザ市の包囲が完了したと発表し、「死か降伏か」をハマスに迫っている。

◇ハマスの展望なき絶望的10・7軍事テロは大きな衝撃を与えた

 10月7日の奇襲攻撃を受けネタニヤフは戦時内閣を作りハマス壊滅を宣言し挙国一致を演出したが、汚職疑惑と司法改革に反対するイスラエル国民の反ネタニヤフ世論は、変わることが無かった。

 「ユダヤ人の市民で政府を信頼すると答えたのは20%強にとどまった。6月の調査の28%から急低下し、過去20年間で最低になった」(日経11/2)。別の調査(27日)では、「大規模な地上攻撃に乗り出すべきだ」は29%で、49%は待った方が良いと答えた。

 19日の調査では65%が大規模地上攻撃を支持していた。イスラエル国内でもネタニヤフのガザ虐殺反対の動きは高まりを見せている。

 イスラエル軍のガザ虐殺に対するアラブ諸国やイスラム諸国の反イスラエルの動きは急速に高まっている。

 トルコはイスラエルを「戦争犯罪人国家」と非難し、サウジは国交正常化交渉を中止した。イスラエルを「特別な関係の国」と位置づけ、イスラエルの後ろ盾となってきた米国も、3日にネタニヤフに対して人道支援のため攻撃の一時停止を働きかけ「パレスチナ人を守るためにさらなる措置が必要だ」(ブリンケン米国務長官)と苦言を呈した。

 これはアラブ諸国やイスラム諸国において反イスラエル、反米の動きが高まりつつあることに対する警戒であり、米国内における反イスラエルの抗議運動が、一年後に大統領選を控えたバイデン政権に反対する運動に高まることを恐怖するからである。

 ガザ侵攻は、米国のダブルスタンダード――ウクライナではロシアは侵略者だと非難し経済制裁、ウクライナへ武器供与を行っているが、イスラエルのガザ侵攻、虐殺に対しては支持し、武器援助を行っている。結局、米国にとって利益かそうでないかが判断基準であることが、ガザとウクライナで露骨に現れた――を暴露し、米国の影響力は一層後退するだろう。

◇パレスチナにおける闘いの評価について

 ハマスの「軍事テロ」や武装闘争に象徴されるように、イスラエルに対するパレスチナ人の闘いは基本的にテロによるものであり、テロはその何百倍もの破壊力によって反撃されてきた。

 パレスチナ人のイスラエルに対する闘いは、ハマスと言う名称が意味する「イスラム抵抗運動」として表れた。しかし、パレスチナ人の課題はイスラエルに対する武装闘争やテロを自己目的化するような運動ではなく、イスラエルからの解放であり、「国民国家」の形成である。我々は、パレスチナ人の置かれてきた悲惨な境遇を理解する。彼らの絶望的なテロは、イスラエルによる迫害と差別、抑圧に対する強い怒りや闘いの、自然発生的な爆発である。

 イスラムの宗教的紐帯から自らを解放し、マルクス主義と結びついた革命的な政党の闘いとして開始されることによって、展望なき絶望的闘いは終わるのである。

 10・7「軍事テロ」は、イスラエルのガザ虐殺をひき起こし、ガザ住民は何の抵抗手段もないまま爆撃によって殺されている。瓦礫に埋め尽くされたガザが歴史の〝証人〟としてしか残らないようなハマスの闘いは、全く正当化されない。

 我々は、ガザ虐殺を進めるイスラエルを糾弾し、パレスチナ人民を支持し連帯する。ハマスらとは違うマルクス主義に立脚する政治組織がパレスチナの地から誕生することを心から願っている。

◇ガザ侵攻対応が暴露した左右の日和見主義

 10・7「軍事テロ」を共産党は「ハマスの無差別攻撃と民間人の連行は、国際人道法の明白な違反であり、いかなる理由があっても決して許されず、強く非難する」と表明、日本維新の会も「ハマス等の武装勢力によるイスラエルへの武力攻撃は、無辜の市民を巻き込み、許し難い人道上の危機を引き起こしている。わが党はこの武力攻撃を強く非難する」、共産党も維新も「強く非難する」と同じ表現でハマスを批判している。

 立憲の泉は「今般のイスラエル・パレスチナにおける双方の武力の応酬により、多数の市民が死傷し、市街地に大きな被害が生じている深刻な事態を憂慮」と、〝ビジネスライク〟な声明を繰り返すだけである。

 共産党はかろうじて「ガザ地区にこうした人道的危機をもたらしている責任は、……イスラエルにある」と指摘しているが、彼らが呼びかける闘いは「世界の市民が即時停戦の国際世論を高めるために行動すること」(10/28志位)、これでは市民団体の呼びかけと何ら変わることはない。

 10・7「軍事テロ」に対して、中核派は「パレスチナ人青年らが決死の反撃に立ち上がったのが『10・7蜂起』だ。ついにウクライナ戦争―世界戦争情勢の中で民族解放・革命戦争が爆発したのだ」(前進3316号)と、ハマスの10・7「軍事テロ」を、パレスチナ人青年の「10・7蜂起」と評価し、ハマスを無批判的に美化する。中核派のスローガンは「帝国主義倒す反戦闘争」だが、帝国主義を倒す闘いは、独占資本の支配を打倒する闘いであり、反戦闘争に矮小化されてはならない。

 ガザ侵攻への対応は、日本の〝左翼〟もハマス同様に、展望なき絶望的状況にあることを暴露した。共産党は自分が労働者の革命的政党として見られることを恐れ、世界の労働者との連帯ではなく「世界の市民」を持ち出し〝右〟の日和見主義を、中核派は〝左〟の日和見主義を暴露した。

 60年前に我々が〝左右〟の日和見主義に反対し、新たな労働者の政治組織を結成し、闘いを開始した意義はさらに輝きを増している。労働者党に結集し共に闘おう! (古)


【1面サブ】

政権維持のためのバラマキ策

岸田の所得税減税、給付策

 2日、岸田政権は「総合経済対策」を閣議決定した。目玉の一つは「家計支援策」である。その内容は、所得税・住民税の定額減税、住民税非課税世帯に対する給付金の支給である。

 所得税減税について岸田は、「2年分の所得増加などの増収分をわかりやすい形で(国民に)還元する」と説明した。

 所得税収入は2020年度が19・1兆円、2021年度が21・3兆円、2022年度が22・5兆円である。2020年度から2022年度までの2年間の税収増加分は、3・4兆円である。これを原資として所得税減税、非課税世帯に対する給付を行うという。

 所得税減税は、1人あたり所得税3万円、住民税1万円を減税する。配偶者や扶養家族がいれば人数分の減税を行い、夫婦と子供2人の4人家族の場合は16万円の減税になる。

 所得が低く、住民税も所得税も課税されない非課税世帯(年収255万円程度)に対しては、7万円を給付、既に決定済の3万円と合わせて10万円の給付となる。この非課税世帯への給付は、23年度補正予算に盛り込まれ、今年度中に行われる。

 岸田は過去2年間、所得税が増えたからその増加分を減税、給付金として国民に「還元する」のだという。

 だが経済が拡大して税収が増加したからと言って、国が豊かになったことではない。コロナ禍で縮小していた経済がコロナが沈静化することによってコロナ前の状態に戻ったことであって、コロナ禍の時と比べて税収が増えて当然のことなのである。

 コロナ禍の下では、政府は活動を縮小した企業や事業主をはじめ、職を失った人々などに対して、支援金や給付金など巨額の支出を行ってきた。それらはほとんど国債によって賄われてきた。

 国債の発行は、将来の国民の所得を先取りするものであり、コロナ禍が去り経済が通常に戻った後には、所得税が増えた分は借金の返済に充てられるのは当たり前のことである。また貧困世帯にとっては1回限りの給付といったおざなりの政策ではなく抜本的な政策がとられるべきだ。

 財政状況を見るなら、国家の借金は約1270兆円(3月現在)と国内総生産(GDP)の2倍余もの巨大な額に膨らんでいる。

 今年度の補正予算(案)でも歳出額は、3兆円余の定額減税を除いても、13・1兆円(ほとんどを借金で賄う)。前年度の28・9兆円から縮小はしたが、新型コロナ前の15~19年度の1・7兆円~1・9兆円に比べると巨額となっている。今年度(当初)の新規国債発行額は約35・6兆円と歳入額の約30%にのぼる。

 政府は、〝財政再建〟のためと言って、2025年度には、借金に頼らないで税収などで政策の経費を賄う「基礎的財政収支」を黒字化する目標を掲げてきたが、〝財政再建〟など全く絵空事にすぎない。

 岸田は、「減税は国民にとってありがたいことなんだ」と言ったが、借金まみれの国家財政を無視しての所得税減税・給付政策は、国家財政を私物化しての政権維持のための人気取り政策、バラマキである。

 世論調査は、「所得減税」を評価しない56%と過半数を超え、岸田政権の支持率は26・9%(10・28―29、ANN調査)と最低を記録した。岸田のバラマキの本当の意図は見透かされている。 (T)


   

【飛耳長目】

★物価高に賃上げが追いつかない労働者家庭にとって、10万円給付と4万円減税の総額17兆円バラ撒きは「干天の慈雨」のはずが、評判はスコブル悪い★政界用語で言う「建て付け」の悪さで、目的や仕組みの簡潔な説明を困難にしただけではない。向こう5年間で約17兆円(同額の〝妙〟)の防衛費増額が控え、選挙目当ての「札束ビンタ」にも大きな反発を呼んでいるのだ★岸田は「デフレ完全脱却のための総合経済対策」として「構造的な賃上げ」を位置付け、「コストカット型の経済から30年ぶりに転換」すると豪語する。これが「新しい資本主義」だと言うが〝ウソ臭い〟★22年度の企業所得は過去最高の85兆円になった。その〝お蔭〟で23年春闘の平均賃上げ率は30年ぶりの高水準となったが、その数字は3・58%。この数字には定期昇給分の約2%が含まれ、実質2%弱だ★最新の物価上昇率は3・1%だが、生鮮食料品は除かれている。日々食べなければ労働力を維持できない労働者の〝腹感覚〟は敏感に反応する。内閣支持率は「危険水域」の30%を切ってきた★「これはマズイ」と思ったのか、今年限りの定額減税を複数年にする「のろし」が上がった。これには茂木幹事長が火消しに回ったが、「経済3連発」の岸田政権の足元の崩壊は止まらない! (Y)


【2面トップ】

機能不全に陥る日銀

「アベノミクス」の果てに

 日銀は31日(10月)の金融政策決定会合にて、長期金利(0%)の変動幅上限である1%超えを容認した。昨年12月に上限幅を0・5%に広げ、今年の7月には1%を許容したばかりであった。

◇ゼロ金利終焉を演じる

 植田・日銀総裁は31日の決定会合後の記者会見で次のように述べている。

 長期金利の上限について「今後は1・0%をめどとする」、「市場利回りが上限に張り付いてから連続指値オペを打って、(市場に)副作用が発生するよりは、少し前の段階で動きたいという判断の下に、さらなる柔軟化を実行した」と。

 植田・日銀は金利の上限超えを許容すると言い、まるで市場金利の動きに寛容になり、ゼロ金利の終焉が間近いかに演出したが、果たしてそうか。

◇「アベノミクス」の破綻

 植田・日銀の相次ぐ市場利回り上限緩和は、「アベノミクス」が行き詰まったことの現れである。この矛盾の深まりについて、簡単に振り返っておこう。

 22年初からの円安と物価高騰が金融市場にも多大な影響を与えたのは既に明らかである。円安は為替相場において「円売りドル買い(外貨買い)」が継続することにて発生するが、単に内外金利差による貨幣資本の移動だけではなく、貿易収支や経常収支を合わせた国際収支の結果による。

 しかし昨年来、欧米が「政策金利」を相次いで引上げるや、海外の債券利回りも急上昇していった。日本政府が発行する長期国債利回りは、これまで0・1~0・5%程度であり、消費者物価指数が年数%も上昇しているのであるから、国債は最早魅力を失っていた。物価上昇率よりもはるかに低い利回りの国債を買う人はいないのである。ただ、民間銀行などは日銀が買い取ってくれるから、〝付き合いで〟国債を購入していたに過ぎなかった。

 だから、金利生活者や投資家が円を売ってドルを買う動きを加速させ、米国債や外貨預金に円を大量に移動させたのは当然であった。昨年から今年にかけて外貨預金が急増しているのはその現れである。

 さらに、年間200兆円にも上る国債の大量発行(新発国債と借換国債)は、国債価格を下落させ金利を上昇させるが、民間銀行らは日銀による剛腕によって指定金利で買わされた。「ゼロ金利」の国債は敬遠されるのであり、国債の「売買不成立」が相次いで発生していた。同様に、長期国債に連動する社債もまた「募残」という売れ残りが頻繁に起こっていたのである。

 このように、円売りが進み、また国債(他の長期債券も)の不人気に拍車がかかり、このままでは、政府の国債発行にも多大な影響が出てくるのは必至であった。

 国債は国家の「債務証書」であり、(国家が)利潤を生み出すために投下した資本でなく、商品売買時の「約束手形」でもなく、しかも、この証書で集めたカネは既に政府によって支出されている。

 つまり、国債は経済的裏付けの無い「架空資本」である。ただ、国家信用がある限りで、国債は過剰な貨幣資本の吸収手段になるに過ぎない。従って、国債が市場を形成できるとしても、おのずと限界があるのである。

 だが、政府や日銀には、また国債の無制限の発行が可能かに言うMMT派にとっては、科学は「豚に真珠」である。彼らは政府の膨大な「債務証書」の発行が「国債費」(政府歳出)を急増させ、同時にこれを資産として購入した日銀もまた困難に陥っている現実を直視できない。

◇ジレンマ抱える日銀

 植田は、記者会見であたかもゼロ金利を解除したかに匂わせた。だが、実際に金利を上げることは容易でない。

 何度かこの『海つばめ』紙上で紹介したように、今後、金利上昇局面を迎えるなら、既に国債の「含み損」を抱える日銀は、さらに資本収支の「赤字」から、「債務超過」に転落する可能性を孕んでいる。他方、市場の金利上昇圧力を無視することは、国債の信用を毀損させていく――昨年末の国会で、日銀は日銀保有の国債について、「時価」ではなく「償却原価法」で処理しており、金利上昇による「含み損」が発生しても、会計に計上されないと述べた。だが、国債を市場で売却する場合には、価格が下落していれば損失を被る。また、満期まで国債を保有しても、「含み損」が消えるわけでなく、「債務超過」が表面化するなら、日銀信用は、徐々にまた経済危機を引き金に急速に毀損し、国債の暴落や通貨安を招く。

 加えて、金利上昇が進むなら株価を下落させ、ひいては日本経済に水を差すかも知れないと、日銀は恐れている。

 なぜなら、最近の金利上昇で、あらゆる債券が損失を被っているが、日本経済の復調を演出する上で、株価の下落を印象付けることを避けたいと願っているからだ。

 こうした二重三重の矛盾を抱えた日銀は、一方で市場動向にも配慮する姿勢を見せる必要があったが、ゼロ金利を解除し2~3%に引き上げることはできず、変動幅の上限を「1%のめど」という曖昧な表現で取り繕った。

 日銀=政府は相次ぐ「上限修正」で誤魔化し、国債の信認と日銀信用を保持し、市場にも配慮したかに見せているが、決して成功せず、自らが招いた矛盾の泥沼にはまり込んでいる。 (W)


【2面サブ】

岸田政権への批判を示した補選

立憲や野党共闘も支持されず

 与野党一騎打ちとなった10月22日投開票の衆参2つの補欠選挙は、与野党の1勝1敗であった。自民は元2議席の1つを失い、政権に対する厳しい批判が示されたと言えるが、立憲や野党が支持を得たと言えるものではなかった。

◇岸田政権の物価高対策が問われた

 ますますひどくなる物価高で、労働者大衆が生活苦に陥る中で行われた補選は、9月に発足した第2次岸田再改造内閣の評価が下されるものであり、また、政権維持のために腐心する、岸田が解散時期を計る指標になるものであった。

 岸田は、9月25日に「成長の成果である税収増などを国民に適切に還元するべく経済対策を実施したい」と言い、27日には、10月中にまとめるように各閣僚に指示した総合経済対策に関する重点事項を公表した。

 そこには持続的な賃上げや国内投資促進に向けた税制優遇策などが並べられたが、この時点では所得税減税などはなく、そこでの「減税策」は、企業が給料を増やせば、法人税から一定の額を差し引ける「賃上げ税制の減税措置の強化を図る」ものであった。

 解散カードで力を誇示したい岸田は、29日にようやく臨時国会を10月20日に招集するとし、経済対策を裏付ける補正予算案を提出すると明言した。

 しかし岸田は、防衛費増額のための増税方針を出しており、政府税調の答申にある通勤手当などの非課税所得や退職金の税控除の見直しなども併せて、政権には増税のイメージがつきまとう。

 いくら岸田が「国民に適切に還元する」と言っても、財政は悪化の一途であるのだから、還元する余裕があるはずはない。

 世論調査(10月17日朝日)では、岸田内閣の支持率は29%(前回9月37%)と、2021年10月の内閣発足以降では最低となり、不支持率は60%(前回53%)と最高になった。これは、政権の経済政策に「期待できない」が69%も占めていることの反映であろう。

 岸田が一方で増税を謳い、他方で大衆の甘心を得るために「還元する」を謳うのは欺瞞である。大衆がそれを見抜いていることを、世論調査の結果は示した。岸田は増税のイメージを払拭し大衆の支持を得ようと、経済対策に所得税減税を入れることに踏み込んだ。

 岸田は、臨時国会初日の20日の所信表明演説で「税収増の還元策」として、自らが主導しているとする、所得税減税の経済対策を表明しようとしたが、23日に延期された。それがかなわなかった岸田は、20日に所得減税の検討指示を出した。

 しかし、「減税策」は自民党内からも批判が出るものであった。そんな党利党略と自らの保身が目立つ岸田政権は、労働者大衆から見放されていることを補選の結果が示した。

◇岸田政権に対する不支持を反映した選挙結果

 衆院長崎4区では、自民(公明推薦)金子が約5・4万票(得票率53%)、立憲(社民)末次が約4・7万票(得票率47%)で自民が勝利し、参院徳島高知では、前立憲衆院議員の無所属広田が約23・3万票(総得票率62%、徳島59%、高知64%)、自民(公明推薦)西内が約14・2万票(総得票率38%、徳島41%、高知36%)で野党系の無所属が勝利した。

 長崎では立憲の公認候補が敗れ、徳島高知では前立憲で無所属となった野党系候補が勝った。しかし広田は今回完全無所属を謳っており、立憲の党からの応援でさえ、党名を前面に出していない。

 これでは決して立憲の勝利とは言えないし、自主的支援の共産、社民なども党としては同じく表には出ていないのだから、共闘が勝利したと言えないであろう。しかし、徳島高知では自民が敗れ大きく差を付けられ、長崎では自民が立憲に7千票に迫られたのは、自民に対して、労働者大衆の厳しい批判が下されたことは間違いない。

 広田も西内も高知出身であり、徳島において立憲と自民は知名度が低い「空白県」での得票に力を入れた。立憲は党名を前面に出さないにしろ、著名人を立てて広田を応援したが、広田は高知におけるほどは西内との差が広がらなかった。

 投票率が32%(徳島24%、高知41%)と、特に徳島での投票率の低さが示すように、立憲は党として徳島で浸透を図ることができなかった。

◇これからの労働者・働く者の課題

 選挙結果を受けて、立憲の大串選対委員長は、「両方とも自民党のもともと持っていた議席。それを1つもぎ取った。非常に大きな結果」だと誇った。立憲泉委員長は、さっそく国会内で野党各党の党首にあいさつ回りをし、次期衆院選連携を呼びかけた。それに最も快く反応したのは共産で、「野党共闘の再構築に向けた大きな一歩」と持ち上げた。しかし、国民民主玉木代表は、共産が「立憲と次期衆院選での連携で合意した」と発表したことに、「立憲は〝立憲共産党〟の色合いをより強めている」と反発した。国民民主との関係を大事にしたい泉は、共産側と「具体的な話をしたわけではない」と、火消しに追われた。

 共産は野党共闘に闘いの重点を置くが、共産と組む立憲は国民民主との関係を重視し、国民民主は労働者の階級闘争に敵対し共産を排除するのであるから、共闘は空中楼閣のようなものである。

 野党共闘などは、労働者の未来を切り開く階級闘争の発展に全く無力である。労働者・働く者は、自らの政党である労働者党に結集し、闘いを切り開いていかなければならない。 (佐)


【2面サブ2】

読者からの便り

 『海つばめ』(1461号)の記事と「緊急声明」(労働者党の
HP「巻頭言10・29」)、ともに蒙を啓かれ、感動しました。

 ところで、ナチスによるユダヤ人の大量虐殺は周知のことですが、先日読み返した本の中に、イスラエル国家建設をめざしたシオニズム運動の過程で、あまり知られていないだろうと思われる次のような記述がありましたので紹介します。

 「ユダヤ人代表機関は密使を通じてナチ政権と協定を結び、協力関係のもとで労働力・戦闘力たりうる青年に重点をおいた移民の質的選別を行った。この意味で、戦争下、ナチ収容所で犠牲になった人々は、シオニズム運動に見捨てられただけでなく、やがてイスラエル国家のための人身御供となるべく捧げられたという結果になった。ハイム・アルロソロフがナチ当局との協定で設置したハアヴァラ機関は、ドイツからの移民の財産移送のチャンネルとして機能することにより、ドイツ製品の独占的輸入機関となった」(平凡社 板垣雄三編 ドキュメント現代史『アラブの解放』24頁)

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