WPLLトップページ E-メール
購読申し込みはこちらから


労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

◆第2第4日曜日発行/A3版2ページ
一部50円(税込み54円)

定期購読料(送料込み)25号分
  開封 2000円
  密封 2500円

ご希望の方には、見本紙を1ヶ月間無料送付いたします。

◆電子版(テキストファイル)
メールに添付して送付します

定期購読料1年分
 電子版のみ 300円

A3版とのセット購読
  開封 2200円
  密封 2700円

●お申し込みは、全国社研社または各支部・党員まで。
E-メールでのお申し込みもできます。

アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1466号 2024年1月14日
【一面トップ】 資本の搾取が不正検査の根源だ
        ――ダイハツ不正は資本の腐敗を暴露
【一面サブ】  見せかけの「政治改革」
         ――真剣さなし、岸田の年頭会見
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 武器輸出を全面的解禁へ
        ――新たな中国包囲網形成のために
【二面サブ】  『プロメテウス』62号発行される
        ――「中国・ロシアの真実」に迫る特集
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

資本の搾取が不正検査の根源だ

ダイハツ不正は資本の腐敗を暴露

〝良品廉価の車づくり〟のダイハツにおける検査不正問題は拡大し、12月には国内4工場すべての操業を停止した。不正を調査した「第三者委員会」(社外の弁護士などで構成)が12月20日に発表した報告書では、不正行為は174個で39年前から続いていたことを明らかにした。第三者と言ってもダイハツが金を出して依頼した〝第三者〟であり法的権限はない。結局、不正を表面的に〝暴く〟だけで、反省のポーズを示すものでしかない。

◇労働者に責任を押し付けた報告書

 「不正行為に関与した担当者は、やむにやまれぬ状況に追い込まれて不正行為に及んだごく普通の従業員」(調査報告書)。認証業務は、開発車両が法律で求められた安全基準を充たしているかをテストする部署であり、認証試験に合格して初めて国交省から型式認定を受けて販売することが出来る。この認証試験において別のデータを流用する、定められた手順で試験をしない、などの不正が繰り返されてきた。

 67年トヨタグループ入りしたダイハツで、89年以降社長に就任した8名のうち6名がトヨタ出身者である。トヨタの副社長白水が会長に就任して開発したミラ・イースは開発期間を17か月と大幅短縮して発売し、スズキから06年にシェアトップを奪った。短期開発は、限られた開発費で競争を勝ち抜くための手段として、トヨタ出身の社長や会長が占める中で、ダイハツの開発に組み込まれていった。

 短期開発で生み出される良品廉価は、徹底的なコスト削減によって生み出される。検査現場においてはやり直しがきかないスケジュールで、上司に相談しても、〝で〟や〝自分で考えろ〟と無責任な回答しか返ってこなかった。

 「報告書」は、「これだけ大規模な不祥事となった原因は、現場担当者のコンプライアンス意識の希薄化や認証試験の軽視」と現場労働者に責任を押し付けた。しかし、会社こそが認証試験の重要性を軽視し、生産する車種が増加し、電子化や安全基準の項目拡大に伴い検査業務が増大したにもかかわらず、検査部門の人員を10年に対し22年には三分の一にまで削減した。

 今回の不正が明るみに出たきっかけは「側面衝突試験」不正に対する現場労働者の「内部告発」から〝芋づる式〟に発覚したのであるが、不正の手口の多さに業界関係者をして「まるで不正のデパートだ」と言わしめるほど内部に不正がはびこっていた。それは短期開発の中で、現場任せのチェック体制も不十分(報告書)な状態の中で、現場労働者に不正検査を強いた会社にすべての責任がある。

◇不正を生み出す産業資本の腐朽化と寄生化

 検査不正や品質問題が相次いで明らかになったのは16年4月、三菱が燃費不正を公表してから。スズキ、日産、スバル、神鋼鋼線、三菱電線、タカタ、神戸製鋼、丸善石油、三菱電機、日立金属、京セラ等々。21年までに40件の不正が発覚した。

 トヨタグループ・デンソーの燃料ポンプを搭載した自動車のリコールが19年から開始され、12月26日に世界で1600万台を超えた。台数は増えることが確実視され、7月には死亡事故も発生している。燃料ポンプのプラスチックの品質不良が原因と言われる。世界中から安価な部品を調達するデンソーは、EV化の中で燃料ポンプの品質管理や検査はどうでもいいと考えていたのだろう(22年1月には燃料ポンプ事業は愛三工業に譲渡)。日野自動車の排ガス不正、豊田自動織機のエンジン排ガス不正、愛知製鋼の品質問題など不正行為が繰り返されている。

 日本は80年代後半からのバブル景気で、産業資本も設備投資を拡大した(90~92年は年間6・5兆円程度拡大)。半導体や電子機器など世界をリードする分野をはじめ日本の工業製品は高品質と高性能、低価格で輸出を拡大したが、90年代前半のバブル崩壊と08年のリーマンショックは、産業資本の過剰資本をも明らかにし(92~15年まで需供ギャップは96、08、13年以外マイナス)、企業はリストラ合理化を進めた。

 産業資本は、設備投資を削減しバブル景気の中で膨れ上がった負債の清算に追われた。日本企業は、IT革命とそれを生み出した半導体の飛躍的発展、スマホやソフトウエアの〝世代交代〟にほとんど関わることができなかった。

 〝失われた30年〟は、資本主義の発展の原動力でもある生産設備の更新を遅らせ(政府の資料でも、「90年代の終盤から14年度頃まで、企業は除却・償却以上の投資を行ってこなかった」と分析している)、技術開発は停滞した。資本は利潤の為に低賃金の非正規労働者を大量に生み出しリストラ、合理化を進めた。検査や品質管理部門は利潤目的の生産では、人員削減の対象である。資本は良品廉価を掲げるが、人員が削減され、責任を現場に押しつける資本の生産では〝順法〟の検査も品質管理も不可能である。

 日本企業はバブルとリーマンの危機を契機に、海外に利潤を求めて資本投下を行ない、海外労働者(21年で製造業420万人)を搾取し利潤を獲得する一方(08年以降の海外収益は国内収益の70%程度)、国内の生産的労働を縮小し(製造業従事者は92年1569万人から22年は1053万)、経済の空洞化が進み、寄生的で頽廃した帝国主義国家に転化した。

◇検査・品質不正の原因は資本の搾取労働にある

 相次いで発覚した不正検査や品質問題は、利潤を目的とする生産現場で老朽化する生産設備を更新せず、最低限の人員の中で現場労働者に〝YES〟という選択しか出来ないように追い詰めた中で発生した。

 資本による賃労働の支配こそが検査・品質不正を生み出している。労働者は不正の押し付けに断固反対し、理不尽な人員削減を認めず労働の解放のために闘おう! (古)


【1面サブ】

見せかけの「政治改革」

真剣さなし、岸田の年頭会見

 1月4日、岸田首相の年頭記者会見が行われた。岸田は、昨年露呈した自民党の金権・腐敗=「政治資金問題」について、国民の「信頼を回復」するために「自民党の体質刷新する取り組みを進めていく」として、自民党総裁直属の機関として「政治刷新本部」(仮称)を設置すると表明。

 その検討内容としては、「再発防止」のために「政治資金の透明性の拡大」や「政策集団の在り方に関するルールづくり」などを進めていくとしている。だが、そのいずれも自民党派閥に対する企業・団体の献金を前提とするものである。

 企業・団体にとって自民党派閥への献金は、自分らの利益拡大・確保のために有利な法律を作ってもらったり、様々な便宜を図ってもらうための手段であり、企業献金と派閥を前提に、「政治資金の透明性」や「政策集団(派閥)」の在り方」の問題にする岸田の主張はごまかしでしかない。

 岸田は、自民党の派閥を「政策集団」とよび、「少なくとも政策を研さんし、そして若手を育成することを目的としているはずだ」、「しかし、政策集団が本来の目的から外れてカネだとかポストを求める手段になっていたのではないか。こういった国民の疑念があることは深刻に受け止めなければならない」と他人ごとのように言う。

 60年代から80年代初めにかけて自民党は首相の座をめぐって派閥抗争を繰り返したが、批判を浴び、次々と解散。それは「政策集団」「勉強会」として名称を変えただけであり実際には派閥は温存されてきた。

 派閥はカネやポストのために集まった集団である。かつて田中角栄が「数は力なり」と喝破したように、自民党議員にとって派閥は議員にとって立身出世、利権獲得のための手段であった。派閥を批判する岸田自身、政府閣僚をはじめ、党役員を政策遂行の能力に応じて決めるのではなく、派閥が推薦する議員を任命するなど、派閥に依存してきた。

 一方、企業・団体からの献金=政治資金を制限する「政治資金規正法」は、88~89年のリクルート事件を契機としている。リクルートの江副社長が有利な地位をえるために上場後値上がり確実な子会社の未公開株を当時の大物政治家などにばら撒いた事件であり、これには中曽根、竹下、宮澤はじめ約100人もの自民党議員がかかわっていた。

 こうした自民党の金権・腐敗は大衆の大きな怒りを呼び起こし、94年には小選挙区制や「政党交付金(助成金)」制度の導入が行われ、企業・団体の献金の制限、「政治資金の収支報告」の提出の義務化、公開、違反者への罰則等を定めた法律の改定が行われた。

 しかし、「政治パーティ」による裏金づくりは、法の網をかいくぐるカネ集めの手段として利用されてきた。同時に「政治にはカネがかかる」という理由で小選挙区制が導入され、赤ん坊までも含めた全国民一人当たり250円を強制的に徴収し、議員数に応じて配分する政党交付金制度まで作られた。22年度で自民党は159・8億円もの巨額の交付金を手にしてきた。

 資本の支配の下では、ブルジョア権力政党=自民党と資本との癒着は避けられず、資本と自民党とは無数のルートを通じて人的、金銭的に結びついている。自民党の金権・腐敗はその表れである。

 野党は「企業・献金」ばかりを問題にしているが、自民党の金権・腐敗に反対する闘いは、「裏金づくり」に反対する闘いにとどまっては全く不十分である。自民党のような大政党に有利で、労働者の革命的な政党をはじめ、自民党に批判的な小政党を政治から排除する反動的な小選挙区制や政党交付金制度、そして、国政選挙に立候補するためには数百万円もの大金を課する供託金制度にも反対して、さらには資本=自民党の支配を打倒する闘いとして発展させていかなくてはならない。共に闘おう。 (T)


   

【飛耳長目】

★2024年、世界の人口80億人の内42億人が住む国で大統領選や国会議員選が予定され、国際情勢の大きな変化が予想される。日本も例外ではない。「増税メガネ」のあだ名が定着した岸田自民党は、裏金疑惑でヨレヨレ。政権自壊も近い★10月から始まるインボイス制度は、免税事業者だった4百万人の個人事業者の収入を1円単位で丸裸にする(源泉徴収の労働者は元々丸裸)。片や政治家は、領収書不要の月額百万円の調査研究広報滞在費と同65万円の立法事務費を懐にし、パー券販売で裏金作りに励む。1月招集の国会では、国民の怒りを背にした追及が政権を揺るがすに違いない★検察の追及は、岸田を支える安倍派と二階派の時効にかからない5年間6億円超の、収支報告書記載に関する資料の隠ぺいの立件に過ぎない★河合元法相夫妻や柿沢未途の買収事件は氷山の一角だ。当選祝いに陣中見舞い、香典といった地盤培養資金や、大臣や派閥でのポスト、自民党総裁のイスを巡って動くカネは、全て〝闇のカネ〟だ★検察に期待することはできない。警視庁・検察による逮捕・捏造の大川原化工機事件のように、彼らは「カネと力」が支配する、腐りきった資本とその国家を守ることを使命とした権力機関であることを忘れてはならない。(Y)


【2面トップ】

武器輸出を全面的解禁へ

新たな中国包囲網形成のために

 岸田政権が22年12月に閣議決定した「安保3文書」には「抜本的な軍事力強化」がうたわれ、その中に「防衛装備移転三原則」の見直しを行うと書かれていた。この見直しのための法的整備を含めた実務作業が昨年(23年)4月から始まり、そして12月22日の閣議で武器輸出を大幅に認める方向に舵を切った。

◇「三原則」改訂の真の狙い

 安倍政権が「武器輸出三原則」を「防衛装備移転三原則」と呼称を変え、武器輸出制限を緩める決定をしたが、「安保3文書」に沿った軍事力強化を図るには不十分だという声が自民党や防衛省から出されていた。

 「三原則」を改訂する真の狙いは何かをまず確認しなければならない。

 武器輸出の大幅解禁に転換したことについて、軍需産業の経済基盤を確立させることが主眼であるのか、米軍の武器を補完するという米国の要請に従うためなのか、それとも別の狙いがあるのか。

 マスコミが余り報道しない改訂「三原則」の前文に次の文章がある。

 「インド太平洋地域は安全保障上の課題が多い地域であり、この地域において、我が国が、自由で開かれたインド太平洋というビジョンの下、同盟国・同志国等と連携し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を実現し、地域の平和と安定を確保していくことは、我が国の安全保障にとって死活的に重要である」、「国際社会の主要なプレーヤーとして、同盟国・同志国等と連携し、…… 一方的現状変更を容易に行い得る状況を防ぐ」と。

 要するに、名指していないが中国の南シナ海・東シナ海への進出や台湾統一などの行動を阻止するために、米国のみならずアジア諸国と連携していくと明確に述べている。

 「同志国」とは中国と南シナ海で海洋領有権を争うフィリピンやベトナムであり、国境紛争を続けるインドであり、日本と中国の直接投資合戦が繰り広げられているタイやマレーシアを含む東南アジア諸国のことである。

 ここに台湾も加わる。

 戦前の天皇制軍部が支配した台湾は、朝鮮半島や中国を侵略するための重要な拠点であったが、現在においても国家主義者や日本軍にとって、台湾は地政学上の重要な戦略的拠点である。そして、台湾が中国に統一されるなら、台湾海峡も中国の支配下に入り、これらの広域の海洋を安心して利用できない。

 さらに、台湾の持つ世界トップの半導体生産力が中国に囲いこまれ、中国への「供給網の切り離し」が挫折し、日本にとって大きな痛手となる。

 従って、正式な国交はないが台湾もまた政府にとっては重要な「同志国」であり、「安保3文書」にうたう「密接な関係にある他国」なのだ。だから、今すぐに台湾に武器を輸出しないとしても、いざとなれば武器を供与する(軍隊も)と中国を牽制しているのだ。

 岸田は「三原則」の改訂について、「平和国家の理念を変えるものではない」と曖昧にしているが、岸田らの狙いは、軍事装備(武器及び軍事技術)の輸出解禁を梃子にし、また「国際協調や安全保障」を名目にして、「同盟国・同志国」と軍事的な連携強化を図ることにある。

◇改訂「三原則」の概要

 では改訂内容を簡単に見てみよう。まず、技術輸入して製造したライセンス品を輸入元の国へ完成品を輸出できるようにした。これまで米国のライセンス品に限り、しかも部品のみ輸出可能であったが、これを米国以外にも、また完成品も輸出可能とし第3国への輸出も戦闘が行われている国を除いて認めたのである。

 ミサイルや戦闘機などのライセンス品については、現在米国が32品目、英仏独など7カ国で47品目である。

 また、他国との共同開発品については、共同開発国のみに部品の輸出を許可していたが、第3国への部品や技術の直接輸出もできるようにした。さらに、日本は英伊と共同で次期戦闘機を開発し国内で量産しようとしているが、こうした共同開発完成品をアジア諸国に輸出できるように政府は検討している、等々。

◇「対中抑止」にOSAも創設

 そして、武器輸出と連動させながら、「同志国」の軍隊に対して直接に軍事装備品を供与しようとするのが「政府安全保障能力強化支援(OSA)」だ。これは既に昨年4月に創設されている。

 OSAの方針には、「三原則」と併用して実施すると謳われ、「同志国の安全保障上の能力や抑止力の強化に貢献」し、「日本との安全保障協力関係の強化」を行うと書かれている。「同志国」の軍隊に直接に武器や軍事技術の供与を行い、また軍関連のインフラ整備も支援するという内容だ。防衛省の幹部は「三原則」とOSAは「対中抑止の両輪」になると公言する。

◇帝国主義化から目を逸らす共産党ら

 「三原則」改訂の狙いは明らかであろう。

 武器や軍事技術の輸出増進を図り、「防衛産業支援法」(国有化を含めた軍需企業の支援法、昨年5月制定)をバックに、軍需企業の経営基盤を安定させることや米国への配慮も目的のひとつであろう。

 だが何よりも、武器や軍事技術を輸出し、これを梃子に、またOSAと連動して中国に対抗する「軍事的協力関係」を高め、新たな中国包囲網を作るためである。

 武器輸出拡大について、日本が「死の商人国家」になるという共産党らの批判がある。だが、この批判は平和国家から逸脱するという平和主義からの悲鳴に過ぎない。また、米国の要請を受け入れ対米従属的だという主張も、一面のみを強調した間違ったものである。

 日本は自立した国家独占資本主義に発展したが、資本の過剰で行き詰まり、大企業は海外に資本を投下して生き延びてきた。そして、アジアを初めとする海外に大きな資本権益を築き、海外の労働者の剰余労働を搾取する帝国主義に転化している。

 他方の中国は国家資本主義として覇権的に振る舞うが、日本と同様な帝国主義であることには変わりがなく、それゆえにアジアの覇権をめぐって日中両国は対峙し争っている。帝国主義戦争が勃発すれば犠牲になるのは労働者だ。軍事強国化を突き進む自公政権と闘い、同時に労働の解放を目指して闘うことが労働者の任務である。(W)


【2面サブ】

『プロメテウス』62号発行される

「中国・ロシアの真実」に迫る特集

日本資本主義の帝国主義化、外国人労働者問題の解明も

 『プロメテウス』62号が発行された。「中国・ロシアの真実」の解明を特集とし、帝国主義に脱皮する日本資本主義の分析、外国人労働者問題の実態を暴露したルポで構成されている。いずれの論考も30数頁に及ぶ力作である。他に「時局論集」として、イスラエルのガザ地区侵攻、ミャンマーの現状、大阪万博と「維新」、岸田政権のばらまき政策が論じられている。

◇特集の意義

 特集の2つの論文は、中国とロシアの体制解明に取り組んでいる。労働者党は、その出発点となった全国社会科学研究会(略称「全国社研」、1963年12月発足)以来、一貫してロシア(当時はソ連)・中国の体制を「国家資本主義」と規定し、その観点から動向を分析してきた。

 中国と米国の覇権争いが激化し、またロシアによるウクライナ侵攻が継続している今日、改めて両国の帝国主義化の根源を解明することは実践的意義を持っているといえるだろう。

 佐々木論文「中国を社会主義と妄信する懲りない面々」は、その副題「習体制礼賛の『中国は社会主義か』批判」から分かるように、かもがわ出版から2020年6月に刊行された同名の著作に焦点を当てている。ここでは、共産党系の学者先生たちが、やれ、中国は社会主義だ、いや「社会主義をめざす私的資本主義」だ、いや「国家資本主義」だと論じ合っていて、少しも方向が定まらない。

 佐々木論文は、まず中国が国家資本主義であり、近年は帝国主義に転化していることを明らかにした後、日本共産党の綱領改定について論じている。共産党は2020年1月に綱領を一部改訂し、中国が「社会主義をめざす新しい探求が開始」された云々の部分を削除したが、中国をどう規定するかについては、「私たちは中国やベトナムの国の中に住んでいるわけではありませんから」(志位)と判断を回避している。まさに思考停止状態、不可知論に陥っているのだ。何とも情けない〝前衛党〟だ。その国に住まないと判断できないというなら、他の国々の体制や政策、階級闘争についても論じられないということになる。それでどうして労働者の国際主義的連帯が勝ち取られるようか。

 共産党がこの体たらくだから、学者先生たちもあれこれ一面だけを取り上げて勝手な言い分を吹聴し、習近平体制に追随するしか能がないのだ。

 鈴木論文「〝プーチンの戦争〟に帰着したロシアの社会経済体制」(中)は、前号に続き、ロシアの体制をさらに詳細に包括的に分析している。

 ロシア経済の生命線である石油や天然ガスなどの資源産業や軍需産業を巨大国家企業が支配し、それら企業の中枢には、シロビキ(治安機関出身者)やプーチンの〝お友だち〟が居座り、権力と富を独占し、特権をほしいままにしていることが詳細に明らかにされている。

 特に、プーチン時代を象徴する国家コーポレーション(国策会社)の発足とその実態が解明されていることは、ロシアの帝国主義化とも関連して注目される。

 鈴木論文は、さらに、ロシア=「縁故資本主義」説や「家産制資本主義」説を批判し、国家資本主義、具体的には「シロビキ支配・資源依存型国家資本主義」と規定すべき理由を明らかにしている。

 ソ連を国家資本主義と規定してきた労働者党は、ロシアを国家資本主義と規定するとき、その違いと同一性を明らかにすべき課題を追うことになるが、筆者はその課題にも取り組んでいる。

 次号ではロシアの帝国主義化とその根源、階級闘争の課題にも取り組むと予告されており、(下)での解明が待たれる。

◇日本の帝国主義化と外国人労働者問題

 渡辺論文「露骨な帝国主義へ脱皮する日本資本主義」は、安倍政権以来、政府が「アジア・ゲートウェイ構想」や「安保3文書」などを打ち出し、日本が米国と連携して中国包囲網の一角を担うなど、急速に帝国主義へと〝脱皮〟しつつある現状を克明に分析している。

そしてこうした帝国主義への転化は、資本主義の発展の必然的帰結であり、米国の押しつけだ、平和憲法を守れなどと叫んでいる市民主義者や共産党の立場では、帝国主義化した支配勢力と徹底的に闘い抜くことはできないこと、労働者の政党を強化し、団結した階級的闘いを発展させることが緊急の課題であると論じている。

 「夢砕かれた若者たち――外国人労働者問題を追う」は、是永氏がベトナムからの労働者たちと接してきた自らの経験を織り込みながら、日本における外国人労働者の劣悪・無権利な状態、中小企業を含めた資本家たちによる酷使と差別等々をルポ風に具体的に暴露しており、胸を打つものがある。

 外国人労働者〝導入〟の歴史的変遷も論じられており、あくまでも「移民」ではないと言い張る支配勢力の主張の背景に資本の勢力が天皇制・血統主義・単一民族神話・家父長制など反動的な民族主義があることも暴露されている。外国人労働者と真に連帯し、労働者としての階級的闘いを発展させる課題を説く主張は説得力がある。

 本誌が多くの労働者の皆さんによって読まれ、研究会のテキストとして活用されることを願ってやまない。(S)

定価千百円(本体+税)
購読は党員や全国社研社にお申し込みください。


ページTOP