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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1467号 2024年1月28日
【一面トップ】 金権の派閥解散は不問に
        ――自民党「政治刷新本部」中間報告
【一面サブ】  再開した破廉恥なトランプ劇場
         ――分断・報復に身構える世界
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 中国の「統一」圧力を退けた台湾総統選
        ――台湾労働者の課題は支配階級との闘いの構築
【二面サブ】  日本資本主義へ危機感あらわ
        ――経済同友会の「共助資本主義モデル」
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

金権の派閥解散は不問に

自民党「政治刷新本部」中間報告

 政治資金問題の露呈で揺れる自民党は、「政治への信用を回復する」として「政治刷新本部」(本部長・岸田)を設け、22日「政治改革案」の骨子をまとめ中間報告を提出。しかし、「金と人事からの完全決別」を謳いながら、その舞台となった派閥の解散については不問としている。

◇追い詰められて〝派閥解散〟

 これまで派閥解散を決めたのは、岸田派、安倍派、二階派の3つの派閥である。岸田が派閥解散を言い出したのは、追い込まれた末のことであった。当初、岸田は自民党の金権・腐敗に対する世論の憤激の高まりに対して、「政治パーティによる裏金づくりの再発防止、政治資金の透明性の拡大、派閥の在り方に関わるルール作り」などでやり過ごそうとしていた。

 岸田が当初、派閥解散に触れなかったことは、「政策集団(派閥)、党の政治資金に大変厳しい目、疑念の目が注がれている」「党を挙げて最大、最優先の課題として取り組んでいきたい」として自らを本部長として立ち上げた「政治刷新本部」の構成に示されている。

 「政治刷新本部」には、最高顧問に麻生が、本部長代行や代理に茂木、森山の派閥の領袖が入り、安倍派議員も多数参加している。このメンバーに見られるように、岸田にとって、派閥の存在は前提であり、彼らに「政治刷新」の議論を委ねることは欺瞞、茶番でしかないことは明らかである。

 岸田が派閥解散を言い出したのは、解散を打ち上げることによって世論を味方につけ、党内で優位な地位を獲得し、自らの政権維持を図ろうとしているのである。

 現在派閥解散を決めたのは3派閥のみであって、麻生は「派閥はやめない」と反発。茂木派幹部からも、「解散は岸田派だけで十分だ。勝手にやってろって話だ」(朝日、1・19)という声が聞かれる。また解散を決めた二階は「人は自然に集まる。『派閥解消だからあっち行け』とは言えない。自民では何度か派閥が解消されてきたが、時を経て復活してきた経緯がある」(同、1・20)と嘯いている。

 派閥の解散については、1970年代の首相の座をめぐって田中派と福田派との抗争(角福戦争)後に謳われたのを始め、80年代にはリクルート事件を契機に作られた「政治改革大綱」、90年代には野党転落時に「国民の信頼回復」に向けて小渕、宮沢、三塚等5派閥が事務所閉鎖で合意するなど幾度となく言われてきた。

 しかし、解散が行われても1年もたたないうちに「政策集団」として復活するなど存続してきた。総裁派閥になれば政府、党の役職などポストとカネの配分から選挙候補者の決定にさらに大きな権限を持つからだ。

 派閥は議員にとってポストとカネの配分、選挙支援のための組織の役割を果たしてきた。こうして、これまで何回もの派閥解消の提案や決議がなされても派閥は再編を繰り返し残り続けてきた。

 岸田派閥をはじめ3派閥が解散を決定したと言っても、党内になお強い反発があるように派閥がなくなるという確かな見通しはない。

◇トカゲの尻尾切りに終わった地検捜査

 一方、今回の派閥による「政治パーティ」を利用した「裏金作り」犯罪について、起訴されたのは秘書など会計責任者ばかり。収支報告書に嘘の記載をしたとして議員で起訴されたのは安倍派の電話でのやり取りの記録が残されており、データを記録する記録媒体を破壊したとする池田議員をはじめ「具体的な罪証」が認められたとする大野、谷川の3議員のみで、派閥の領袖、安倍派の7人をはじめとする派閥の幹部議員は「会計責任者との共謀は認められない」として不起訴となった。

 しかし、「裏金作り」が会計担当者の独断で決められ、派閥の領袖や幹部議員が関与していないなどということは、誰にも認められないことは明らかである。

 法を司る検察当局は初めから自民党議員の違法な「裏金作り」の犯罪を罰する意思を持っておらず、その責任を会計責任者に押し付け罰するという、トカゲの尻尾切りで終わらせようとしている。

 もともと、政治パーティによる「裏金作り」は、「政治資金規正法」の〝抜け穴〟を悪用したものである。自民党は「政治パーティ」と称して企業・団体から多くのカネを集め、収支報告にも記載せず「裏金」としてきたのである。

 彼らは政治にはカネがかかるから汚職がはびこると言って、国民から一人当たり250円ものカネを徴収し、議員数に応じて政党に分配する「政党交付金」制度をつくり、年160億円余り(23年)もの交付金を受取りながらさらに違法な「裏金」づくりを行ってきたのである。

◇金権・腐敗の自民党政権を打倒しよう

 岸田は派閥の存在が金権・腐敗を生み出したとして、派閥解散を唱えている。だが、例え派閥がなくなったとしても、自民党の金権・腐敗はなくなりはしないだろう。資本と自民党は人的にも金銭的にも太い糸で結ばれている。企業が金銭的に自民党を支援するのは、自民党が労働者の搾取を基礎とし、私的利益追求を原理とする資本主義のための政党であるからである。また個々の企業・グループにとって、有利な予算編成、税制、法律制定などを期待しているからである。

 自民党と資本の癒着にこそ、金権・腐敗の原因がある。労働者・働く者は団結して、自民党を打倒し、資本の体制に反対する階級的闘いを発展させていかなくてはならない。(T)


【1面サブ】

再開した破廉恥なトランプ劇場

分断・報復に身構える世界

 今月22日、米大統領選の共和党候補者を選出するアイオワ州予備選において2位のデサンティスが撤退。23日第2戦目ニューハンプシャー州での予備選ではヘイリーを大差で破りトランプが勝利。7月の共和党大会を前に、大統領選の候補者選びでトランプは優位に立った。

 トランプの政治的立場やトランプ再選に身構えるブルジョア陣営を暴露し、労働者の原則的立場を確認して、闘いを進めなければならない。

 トランプは16年の大統領選で、〝米国第一主義〟や〝米国を再び偉大にする〟と呼び掛けポピュリズム的政策を掲げて大統領に就任。移民排斥、保護貿易政策、パリ協定離脱、WHOや各種経済協定からも離脱。NATOからの離脱を主張しながら、ドイツは米国に四千億ドルの軍事費の借金があると恫喝し、EUや日本に軍事費増強を要求し米国製武器購入を迫った。

 米国内を混乱させたあげく、コロナ禍が全米を覆う中で行われた20年大統領選でバイデンに敗北した。しかしトランプは「不正選挙で〝票を盗まれた〟、勝利したのは自分だ」と敗北を認めず、21年1月6日には支持者に呼び掛け議事堂襲撃を扇動した。トランプは現在、議事堂襲撃や機密文書事件など4件で起訴されているが、20年までの一期目より先鋭化した「スケジュールF」(司法省を含む連邦政府職員5万人を「政権に忠誠を誓う」者に入れ替える)の導入で〝報復〟することを誓い、裁判に圧力を掛けている。

 先の大統領選でトランプの当選を象徴した、〝ラストベルト地帯〟と称される米国の衰退した重工業地帯の労働者の支持が明らかにしたのは、米国がGAFAに代表される情報通信やサービスなどの第3次産業がGDPの約80%を占め、製造業など2次産業は約20%。就労人口の85%がサービス業で製造業14%になっている産業構造の中、人口上位1%が下位90%の資産を上回る超格差社会という絶望的現実に対する反発、怒りである。

 産業構造〝高度化〟に取り残されて、かつて米国資本主義を支えたと〝自負〟する工場労働者の疎外感は高まっている。白人中間層のヒスパニックやアジア系の非白人系住民の増加に対する恐れ、奨学金返済に追われる若者の、民主党・バイデンに対する反発や反感が高まっている。

 全米各地で湧き上がる、虐げられ取り残された人々の感情に、依拠し追随するポピュリズムがトランプの政治的立場である。

 トランプが主張する、「民主党と『ディープステート(米連邦政府・金融機関・産業界の関係者が地下ネットワークを構築している)』の手による被害者の主張」の下に多くの共和党員が結束する理由は、トランプのポピュリズム政治への支持が米国民の中で高まっているからに他ならない。

 激戦州といわれるアリゾナ、ジョージア、ミシガンなど7州で実施され、12月14日に発表された世論調査では、バイデンかトランプのどちらに投票するかという問いに対して、トランプが全7州でバイデンを上回った(ジェトロビジネス短信12・15)。

 トランプは昨年3月に「ウクライナで毎日代理戦争が続き、我々は世界戦争の危険を冒している。我々の目的は『直ちに』互いが敵意を完全に捨て去るようにすることだ。我々に必要なのは即時の『平和』だ」(6・15ロイター)と発言。

 一方、バイデンは「アメリカは、ウクライナが現在も将来も自国を防衛できるよう、50以上の国からなる連合を構築した。われわれが揺らぐことはない」(7・13NATO会議)。トランプの米国一国〝平和〟を求める〝モンロー主義〟に対抗して、バイデンは中ロに対抗する米帝国主義を軸とした西側陣営の結束を求める。

 トランプが大統領に再選される可能性に、ブルジョア陣営(NATO諸国や日韓など)が身構えるのは、〝米国第一主義〟によって米国との経済的、軍事的同盟関係が揺らぎ、中ロの軍事的圧力に正面から対峙することや、保護主義や経済協定の破棄で経済的混乱が起きることを恐れているからに他ならない。 (古)


   

【飛耳長目】

★今年は能登半島地震と羽田の日航機衝突事件で始まった。とりわけ能登半島地震は多くの帰省者をも巻き込んで大災害となった。それにしても犠牲者と避難者の内の高齢者の何と多いことか。被害の最も大きい珠洲市と穴水町、輪島市のそれぞれの高齢化率は50・3と45・5、33・2%で、全国平均28・4%を大きく上回る★あっけなく家屋は崩れ、道路には無数の亀裂、水道や電気は切断され、電波は遮断、山の法(のり)面は崩れ落ち、ライフラインは完全に切断された。これらは過疎化と無縁ではあるまい。全国の過疎市町村は全市町村の47%にも及ぶが、深刻な財政不足により道路や橋、水道などインフラ整備や補修はままならず、高齢者住まいの家屋の耐震化はゼロに近い★過疎地ではまず電車やバスが廃止され、病院や学校、スーパー、金融機関がなくなる。例えばここ15年間で毎年500校が閉校となり、人口減による税収不足で財政難は深刻だ。20年後には過疎市町村の半数が消滅する★災害時こそ国会議員は出番なのに、誰ひとり真剣な行動を起こさない。票にはならず、裏金対象にもならない過疎地は棄民の対象なのだ。選挙時だけ良い顔をして、後はせっせと裏金作りとポスト争いに汲々としてきた。こんなろくでもない議員たち全てを即刻国会から追放せよ。(義)


【2面トップ】

中国の「統一」圧力を退けた
台湾総統選

台湾労働者の課題は支配階級との闘いの構築

 13日の台湾総統選では与党民進党の頼清徳副総裁が当選し、立法院選では国民党52(前回38)、民進党51(同61)、民衆党8(同5)と野党が第一党となった。台湾をめぐり帝国主義的対立を深める米中日の利害も絡んでいる選挙結果について労働者の立場から検討する。

◇台湾総統選・立法院選の結果

総統選では民進党・頼と国民党・候、民衆党・柯の三つ巴の争いになった。争点の一つが米中の帝国主義的対立の狭間にあって台湾が、米中とどう向き合うかである。現蔡政権の継承を表明する与党民進党・頼は「米国と協調し、中国には屈しない」、国民党・候は「米中間で台湾の利益確保」、そして民衆党・柯は「イデオロギー対立からも脱去」とした。選挙結果は、頼が約4割、候が3割強、柯が3割弱の得票で頼が勝利、中国による「統一」を退けた。しかし立法院選では民進は前回から14減、国民党が10増で第一党、民衆党も3増やしたが、国民党も立法院定数113の過半数には届かない。大衆はこのねじれた選挙結果で政権への批判を現した。

 台湾との統一を掲げる中国は、選挙前に「戦争か平和かの岐路にある」と台湾を威圧した。一方で中国は輸入禁止にした一部台湾産農産物を一部業者に解禁し、また、福建省を統合の「モデル地区」に設定し、台湾青年が起こした企業のサポート体制を整えたり台湾からの入境手続きを簡素化したりし、平和統一に向け経済的結びつきを強める政策で台湾の若者を懐柔する策を弄している。しかし習が呼びかける台湾の「一国二制度」による統合は、香港で無残にも踏みにじられた今では、誰にも信用されない。

 選挙後バイデンは、「独立は支持しない」と述べ、ブリンケンは「台湾海峡の平和と安定を維持し、平和的に解決できるよう取り組む」と強調し、現状維持を求めた。

 中国は、選挙後台湾に代表団を派遣したアメリカを批判し、「中国は完全統一を実現する」と民進党政権を強く牽制した。

◇台湾の経済発展と米中日の対立

 台湾のGDPは一人当たりでは3万3千ドルで世界ランキング34位、日本32位、韓国35位と並んでいる(IMF2022)。

 その台湾の経済成長を牽引しているのが半導体産業だ。半導体チップを製造するいわゆるファウンドリは、2021年時点で1000億ドル(約13兆円)規模の巨大産業となっている。その中でTSМCなどの台湾企業は世界のファウンドリ市場シェアが65%を占めている。のみならず今では、半導体の設計に特化し自社工場をもたないファブレスや半導体材料のシリコンウェハーの生産でも世界のトップクラスだ。

 台湾企業は世界のIT機器の受託生産市場で82%のシェアを占めており、その大半が中国の工場で生産されている。台湾の対外投資は圧倒的に中国本土向けだったが、蔡政権の2016年以降は対中投資が年を追うごとに減り、ASEANや米国など中国以外の世界への投資合計が対中を上回るようになった。

 バイデン政権は、安全保障から「サプライチェーンの強靱化」のために、TSMCなどの台湾メーカーに先端半導体の中国での生産や対中輸出の停止を求め、中国との対立を激化させている。

 中国もハイテク分野での「自立自強」をめざしており、台湾企業にとっても依然中国は、整った生産ネットワークをもつ重要な市場である。東アジアは世界有数のサプライチェーン(部品供給から製品販売まで)が構築され、日米台はもちろん中国もその経済的恩恵を享受する。中国が台湾を支配すれば、世界で最も重要な産業の一つを中国政府が手中に収めることになるであろう。

 米政権は歴代、中国による台湾侵攻も、台湾による独立も望まず、「現状維持」を求める立場を取ってきた。その結果が、台湾防衛の意思を明らかにしない「あいまい戦略」であり、これは中台双方との微妙なバランスの上に成り立ってきた。

 しかし軍事力が増し、台湾への圧力を強める中国との対立から、アメリカは台湾の軍事力強化への支援も着々と進め、台湾への武器売却を加速させてきた。去年8月には、これまで主権国家を対象としてきた対外軍事融資(FMF)を初めて台湾に適用し、8千万ドル(約114億円)の軍事援助を決めた。

 これは今後5年間で100億ドルにもなりうるもので「FMFだと、アメリカは自国の在庫から、自国の金を使って直接兵器を送ってくる。そのために一連の承認手続きを経る必要がない」(BBCニュース2023・11・8)と言われるように、アメリカは台湾の軍備拡張に進んでいる。

 日本の南西諸島での台湾有事に備える軍備拡張は、中台の対立と深く関わるもので、台湾を始めとするこれらの地域における日本の権益、覇権を守る日本の帝国主義的策動に他ならない。

◇台湾労働者の課題

 台湾人のアイデンティティーに関する調査(1992~2020年)では、すでに多くの大衆が台湾人と意識し、国家選択に関する調査(2000~2018年)では、台湾の人々が望む両岸関係の今後は「独立」がほぼ20%、「統一」は10%台、そして「現状維持」が60%に上っている。

 中国は台湾を実質的に統治しておらず、台湾は独自に選挙を行うなど政治的に自立している。台湾は経済的に中国との関係を深めているが、経済的にも自立している。「台湾独立」、台湾の「民族的独立」を勝ち取ることは、もはや台湾労働者の課題とはいえない。「台湾独立」を認めず「統一」をいう習は、その帝国主義的野望を台湾に広げようとしている。

 今回の選挙でも「物価の上昇」や「低い賃金」などに労働者の政権批判が向けられた。台湾労働者にとって、自らの生活条件の向上や地位の改善を阻み、労働者を抑圧する資本の支配の変革が闘いの課題となっている。台湾労働者は、中国の労働者とともに手を携え、世界の労働者とともにブルジョア体制の社会主義的変革の闘いの構築に向かうであろう。 (佐)


【2面サブ】

日本資本主義へ危機感あらわ

経済同友会の「共助資本主義モデル」

 名目GDP(ドル換算)で米中に次いで世界3位であった日本は、昨年ドイツに抜かれ4位に転落し、さらに26年にインドに抜かれ5位になるという。こうした事態にブルジョアたちは日本の成長力が低下した証だと発言し(例えば西村経済産業相)、国際的な発言力が弱まると動揺している。それゆえ日本資本主義が30年間にわたって停滞している原因を探り改革していこうと、かしましい。

◇GDPの順位転落を嘆く

 1国の経済力の大きさを示す数値の中でも、ブルジョアが注目するのはGDPや人口1人当たりのGDPである。

 後者の場合、IMF統計によれば、日本は名目で97年に世界4位であったが、ずるずると後退し22年には32位となり、もはや先進国とは言えないと嘆くブルジョアが多い。この統計による世界1位はルクセンブルグであり、次いでノルウエー、アイルランド、スイスなど人口が少ない金融センター国や観光国が上位を占めている。いずれも生産的労働者が少ない寄生的な国家である。

 GDPは「国内総生産」の略語であるが、実際には「付加価値の総計」と定義されているように、年々の国内総所得(国内で働く労働者の賃金と企業利潤の総計)のことである。それゆえ、生産的労働(人々が生活するのに必要な消費手段を作る労働と消費手段を生産するのに必要な生産手段を作る労働)による所得と同様に、非生産的労働(金融商品や軍事品などに含まれる労働)による所得も同じに扱われる。

 GDPは賃金、利潤、労働人口に比例するために、ブルジョアは少子化を懸念する(財政負担増も懸念しているが)。

 また円安が進めば、日本のGDPは国際比較(ドル換算)で小さくなるため、今までさんざん賛美してきた「アベノミクス」に対しても失敗であったとケチを付け、さらにドイツや米国などでは、物価が上がり名目GDPを押し上げたが、日本は「インフレ経済にできなかった」という不満も吐き出すのである(新浪サントリー社長ら)。

 このように、ブルジョアはGDPを国家の経済力や国力の指標とみなすのであり、それゆえ、これ以上の順位後退は許されないと、新たな資本主義モデルの提言や経済改革案が経済界や学者から出されている。

 経済同友会が23年4月に発表した「共助資本主義モデル」(総頁32もの提言)もその一つである。

◇共助資本主義とは?

 経済同友会の代表幹事に就任した新浪剛史・サントリー社長は「共助資本主義」について次のように語る。

 「日本にとって、目指すべきヴィジョンを掲げ、昭和、平成と続いてきた経済社会モデルから決別し、政府支出に過度に頼らない民主導の新たな経済社会を構築する」と(今年の年頭会見)。

 新浪の言う決別すべき「経済社会モデル」とは、国家の「大胆な金融緩和や大規模予算」に依存して経済成長を描いてきた大きな政府のことを指す。

 だから新浪は、「アベノミクス」によって「デフレ下で民間がリスクを取らない状況」が生み出され、補助金バラ撒きで退場すべきゾンビ企業を生き残らせ、日本経済の活力を削いてきた、また「時代にそぐわない規制が既得権益の岩盤を打破できないまま温存された」と批判する。

 新浪のいう「既得権益の岩盤」については、具体的に述べられておらず分かりにくいが、いつまでも前例踏襲を行う政府や経営者の「アニマルスピリッツ」(ケインズの言葉)の欠如、外国人の人的資本も含めた投資に関わる制限、「労働移動」の制限などを含めた資本の発展を妨げるあらゆる規制のことのようだ。

 そして、これらを打破して、「日本の競争力を復活」させるためには、政府主導ではなく、民間主導によって技術革新と設備投資を行い、同時に「既得権益の岩盤」を壊し、「産業・企業の新陳代謝を図っていく」べきだと主張する。

 ここだけ見ると、新浪の主張は、いわば〝新自由主義〟的なものに見えるが、そうした見方を逸らす方策も揃えている。

◇「共助」も謳い文句に並べる

 「共助資本主義モデル創造」のためにと、新浪は思い付きを色々に並べている。

 その一つが、不況脱出のための「構造的な賃上げ」である。

 新浪は経済成長のためには実質賃金の増加が必要だと、岸田さえも言うお題目を唱えるが、本当に物価上昇率を上回る大幅賃上げを毎年行うことができるのか?

 政府関与の官製春闘ではなく、企業自らが率先して賃上げを行うと言うのであるが、「産業・企業の新陳代謝」を図りながら、つまり資本間の技術革新競争と労働者の流動化を促し、かつ投資拡大の強蓄積を進めながら、いかに大幅賃上げを行うのか。矛盾も甚だしい。

 また、新浪は人材確保のために「職務給の導入」を謳う。「職務給の導入」は職種・職務の違いによって待遇を差別することであり、既に大半の企業で導入されている労働者管理の一つである。

 しかも、「ジョブ型雇用」が拡がっているさなかに、敢えて「職務給の導入」を強調するのは、企業に「人的資本投資」と「労働移動」を促し、搾取強化を行うためであろう。新浪の〝秘め事〟が実行されるなら、労働者間の賃金差別や非正規雇用は強化され、さらに解雇も強まり労働者全体の生活を不安定にする。

 加えて、新浪は福祉関連セクターと連携した「共助」への参画をうたう、そして、この「共助」によって企業の「長期的企業価値」を高めるという。しかし、福祉関連セクターと連携ができたとしても、福祉の〝社会化〟とはならず、労働者夫婦が安心して子育てすることも、女性の全面的な社会進出を助けることもできない。要するに、新浪の「共助資本主義」なるものは、民間主導の経済活動の中に、福祉との「共助」を加え、それであたかも企業価値が高まるかにいう偽善的な代物でしかない。 (W)


〔1466号の校正〕

①2面トップの3段目2パラ5~7行目

「軍事的な連携を図ることになる。」を削除→「岸田らの狙いは、軍事装備(武器及び軍事技術)の輸出解禁を梃子にし、・・・」と繋がります。

②2面サブのプロメ紹介の下から2段目

小見出しの「日本の帝国主義化と外国人労働者問題」が3行分ずれています。「渡辺論文・・・」の前が正しい位置となります。

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