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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1468号 2024年2月11日
【一面トップ】 〝談合春闘〟を打ち破ろう!
        ――賃上げから物価上昇=景気回復は幻想
【一面サブ】  中国恒大の経営破綻
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 『人口ビジョン2100』
        ――人口減に危機感を持つ資本
【二面サブ】  口先だけ、岸田の「政治改革」
        ――「裏金づくり」の〝実態解明〟も程遠い
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

〝談合春闘〟を打ち破ろう!

賃上げから物価上昇=景気回復は幻想

 去る1日、経団連と連合の春闘トップ会談が行われた。経団連は「30年ぶりの賃上げだった昨年を起点にデフレ脱却」を図りたいと言い、連合の芳野も「持続的賃上げ」で物価上昇と景気の好循環を作ると呼応し、さらに「企業が発展し利益を出す」ことによって賃上げは可能になると、まるで経団連の役員と見間違える発言をした。

◇経団連が賃上げ許容?

 経団連の大橋・経労委員長は、「人口減が進むなかで日本が競争力を持って生き残るには労働者が一定の収入を得て経済が回り、イノベーションを起して世界で存在感を示していくことが大事だ」と述べた。要するに経団連も一定の賃上げを許容すると言うのである。

 各種GDPの指標のみならず技術力・開発力においても、日本の世界ランクは低下し続け、加えて、少子化が進んでいる。こうした危機的状況を打開し、イノベーションを起して国際的な競争力を身に付けて行くためには、賃上げが必要だと。

 そして、国内の賃上げが進むならば、東南アジアをはじめとする外国人労働者(特に高度技術系)――賃金の安い日本を敬遠し韓国や台湾を選んでいる――が日本に来て働く可能性も高まり、日本の競争力に貢献すると期待するのである。

◇「労使関係は運命共同体」と芳野

 他方の芳野は「賃上げ5%以上」の統一要求を提出した。

 芳野は物価高で労働者の暮らしは厳しさを増している、企業が稼いだ利潤の公正な分配が必要だと言った上で、「企業が発展し、利益を出してはじめて私たちの処遇を上げることが出来るという点で労使関係はある意味、運命共同体」だと発言。

 資本は労働強化や低賃金の押付けや人員削減攻撃を行いつつ、労働者の怒りを逸らし懐柔するために、「企業は家族と同じである、企業は労働者をしつけ教育する責任がある」と労務管理の手引書を読んで労働者に聞かせる。芳野は資本によって常日頃に行われている労働者懐柔策を代行・代弁するのだから呆れる。

 しかし、資本が雇用する限りで、労働者は労働力を売って生きることができる。また、その限りで労働力は労働過程で消費され、生きた労働として支出される。毎日の生きた労働は、必要労働(労働者の生活必需品の生産に必要な労働)と剰余労働(剰余価値として資本が取得する労働)になるが、剰余労働からなる剰余価値は企業経営者の高額な報酬や利子や資本蓄積に転化する。資本は労働者を懐柔して生産に駆り立てるために、何よりも、資本による剰余価値の取得の法則を隠蔽しようとする。芳野がやっていることは、まさにこのことなのだ。

◇賃上げで物価上昇=景気好循環の幻想

 芳野は、「持続的な賃上げには、雇用の7割を占める中小企業の賃上げがカギだ」、「原材料費に比べ労務費の価格転嫁は厳しい」、政府の協力も得て「労務費の適切な転嫁のための価格」を実現するよう各職場に周知すると力説した。

 岸田も芳野の期待に応えて、次のように述べている。

 政府は賃上げを条件にした法人税低減策を強化し、また中小企業が賃上げ分を価格転嫁できるように公正取引委員会の役割も強めたと(岸田の施政方針演説、1・30)。

 いわば、賃上げを含めた価格上昇要因を価格に転嫁するならば、流通の中で次々と物価が上昇していき、その結果、「景気の好循環」が生まれると大合唱する。

 だが、既に安倍政権によって「2%インフレ」が叫ばれ、「異次元の金融緩和策」と併せて「賃上げ」による物価上昇=景気回復策が実行されたのではなかったか。

 安倍やリフレ派は生産の拡大が無くても、賃上げで個人消費や需要を増やせば、デフレから脱却し、景気回復に繋がると考え、共産党もまた〝得意〟の「過小消費説」から安倍と同様な発言をしてきた(『赤旗』13年1月15日号など)。

 ところが、安倍の「官製春闘」によって物価上昇も景気の好循環も起こらなかった。

 芳野らは、昨年相当な賃上げができた、今春闘でも中小企業を含めた賃上げを実現し、この賃上げ分の価格転嫁策を強化した、だから、安倍時代と根本的に違うと言う。

 果たして、賃上げによる物価上昇=景気好循環は本当にうまくいくのか?

 まず、資本が賃上げ分を上乗せして販売するような法的強制は無いのであるから、資本間の競争は排除されていない。まして、下請け・孫請け企業は親企業に歯向かって価格転嫁を強行することができるのか。出来ないのであれば、また不徹底であるなら、早くも芳野らの思惑は外れる。

 また、芳野らの作戦どおりに、各企業の販売価格が上昇するなら、下流工程の企業が購入する原材料等の商品価格は上昇する。だが、これが継続して行われるかどうかは、企業の規模や生産力の高さや市場支配力を含めた企業の力量によるのであり、全ての企業で価格転嫁が進むと考える芳野らは最初から破綻している。

 加えて、生活必需品の価格が上昇するなら、労働者の賃上げは帳消しになる。

 とりわけ非正規労働者の賃金は労働者の平均賃金よりかなり低く、全国平均の賃上げ率が仮に5%でも、賃金上昇分は平均よりずっと小さく(さらに差別が拡がる)、また物価上昇率よりも低くなる可能性が大である。

 このように、全国的な賃上げによる波及的な物価上昇が起こるのは、一時的、部分的であり、またそれが労働者に利益をもたらすことは無い。

 要するに、賃上げによって物価上昇が生まれ、カネが回り、生産の拡大や利潤増大が生まれるなどは、資本主義を知らない世迷いごとである。

 加えて言えば、賃上げが全般的な物価上昇を引き起こすという理屈は昔からあるが間違いである。

 そして、物価上昇によって資本が利益を得るとするなら、それは賃上げが物価上昇の後追いになるからだ。労働力商品は一般商品の価格上昇に常に追随するゆえんである。

 芳野が賃上げを言うのは、景気の好循環に結び付けて企業の利潤を増大し、その分け前を「適正に分配」するというブルジョアの理屈そのものである。芳野らの欺瞞や幻想を粉砕し、大幅賃上げを勝ち取り労働者の闘いを発展させよう! (W)


【1面サブ】

中国恒大の経営破綻

 香港の高等法院は1月29日、経営危機に陥っている中国不動産開発大手の中国恒大集団に精算命令を出した。

 これは海外の投資会社が保有する外貨立て債務を巡って出されたもので、事業を続けながら債務を返済し、会社の存続も視野に入っている。

 恒大は、既に21年に米ドル建ての社債の利払いができなくなり、債務不履行(デフォルト)を起こしているが、利息の支払い猶予期限を延ばしてしのぎ、事業は継続されている。しかし、負債総額は昨年6月末時点で2兆3882億元(約49兆円)にのぼり、債務超過のままである。パニック回避のため政府が裏で支えていると言われる。

 恒大の経営破綻は、単に恒大一社の問題ではなく、中国不動産業界全体に共通する問題であるとともに、インフラや不動産を重視する成長モデルの破綻の問題でもある。

 中国はコロナ禍前、毎年6~7%程度の高い経済成長率で世界経済を引っ張ってきたが、2023年は5・2%であり、22年の3・0%よりは増加したが成長は鈍化した。

 23年の住宅販売面積は前年比8・2%減で、2年連続で前年割れとなった。不動産関連産業は中国の国内総生産(GDP)の約3割を占め、その不況の深刻化が経済全体に大きく影響している。

 21年に恒大の経営危機が浮上したのをきっかけに、中国では不動産市場の先行き懸念が広がり住宅需要が急減した。これが事業者の経営を直撃し、不動産開発企業は、最大手の碧桂園を始めデフォルトが相次いだ。資金繰りに窮して大規模な建設工事が中断したまま廃墟となる現場が増えている。

 不動産業の減少は、建設工事や建材、家具など幅広い関連産業に影響を及ぼし、中国経済を不況に陥らせている。23年6月の16~24歳の失業率(都市部)は22%になり、国家統計局はそれ以降データの公表を停止した。不動産業が経営危機に陥った大きな要因は、地方都市での過剰開発だ。住宅需要がそれほど多くない各地の都市でも、地方政府が開発計画をつくった。

 中国では土地は基本的に国が所有し、地方政府はその使用権を業者に売って収入としてきたが、地方政府の歳入の3割はこの土地使用権代が占める。地方政府が土地使用権を不動産大手に販売し、次々と住宅が建ったのだ。

 地方政府は、「融資平台」という特殊な投資会社を作り、銀行からの融資、債券の発行などで資金を集め、公共インフラの開発を無秩序に進めた。融資平台は全国で1万以上もある。

 住宅販売額は、98年から21年までに80倍にもなり、特に大都市では富裕層でないと家が買えないようになった。「共同富裕」を建前とする習政権は行き過ぎた開発を抑えようと、20年に不動産会社の資金調達に規制をかけた。これを契機に各社の資金繰りが厳しくなり経営が悪化していった。

 全国各地の融資平台がかかえる債務の残高は、日本円にすると1100兆円余り。この債務は、銀行などが融資平台に融資をする際、地方政府が実質的に返済を保証していると見なされる「隠れ債務」だ。地方政府の公式債務およそ700兆円を加えると地方政府の債務は1800兆円になる。

 債務問題は地方政府の公務員に対する解雇や給料未払い等で現れている。政府は融資規制を撤回するなど対策を講じているが、将来にリスクを先送りするものでしかない。

 習が国家主席に就任して以降、反スパイ法、国家安全法などが施行され言論統制が強化されている。そんな中でも22年には「習近平は退陣せよ」などと公然と体制批判まで行われた「白紙運動」が展開された。習はゼロコロナ政策を大幅に緩和したが、声を上げた若者を次々と拘束した。

 今回の不動産不況においても建設労働者や公務員などが、賃金未払い、不当解雇、賃金引き下げに反対し、住宅の引き渡しを受けない購入者なども抗議の声を上げている。

 中国国家資本主義は、不動産産業や製造業などで過剰生産を露呈し矛盾を深め、労働者人民に犠牲を転嫁し抑圧を強めている。 (佐)


   

【飛耳長目】

★京アニ放火殺人事件で京都地裁は、青葉被告の京アニへの強い恨みに妄想の影響を認めつつも「その程度は大きくない」と、死刑判決を下した。裁判員も36人の有為な青年らの命を奪った重大性に、極刑止む無しとした★アニメ作家の妻を亡くした夫が被告に「青葉さん」と呼びかけ、幼子とともに残された悲しみを伝えた証言に、被告から「申し訳ない」との謝罪を引き出したことは、遺族にとってわずかな救いとなった★朝日の社説は、「社会的な孤立を深め、虚構の世界に居場所を求めた被告」は、「同じ『就職氷河期』世代である秋葉原殺傷事件の加害者に共感を寄せ」たと説き、孤立からの「立ち直りを支えきれなかった更生施設や福祉・医療の現場」の「支援のあり方」を分析・検証した対策を政府に求めた★政府は「孤独・孤立は社会全体の課題」とする「孤独・孤立対策推進法案」を先の国会に提出し可決。24年4月1日に施行され、首相を本部長とする推進本部が計画を立案し、地方自治体に官民協議会設置の努力義務を課すという★朝日も政府も、不安定雇用や格差社会の現実から孤立対策の必要性を口にするが、不安定雇用が資本に利益をもたらす搾取強化の手段であり、格差社会とは資本の支配する階級社会のことだとは、口が裂けても言わない。(Y)


【2面トップ】

『人口ビジョン2100』

人口減に危機感を持つ資本

 1月に「人口戦略会議」(三村日鉄名誉会長を議長に日本郵便社長など財界、学者などをメンバーとする民間団体)が『人口ビジョン2100』中間報告書を発表した。14年に896の自治体消滅の可能性を発表し、話題となった「ストップ少子化・地方元気戦略」を提言した日本創生会議議長増田が、人口戦略会議の実質的代表でもある。『人口ビジョン2100』は、岸田の「異次元の少子化対策」を大いに評価するが、「あれから10年遅れたが、まだ挽回可能だ、諦めるな」と、危機感を煽っている。

◇定常化戦略に強靭化戦略

 「定常化戦略」では、人口減少のスピードを緩和させ、最終的に人口を安定させること(人口定常化)を目標とし、60年までに合計特殊出生率2・07に到達が条件となりそのため、40年頃に1・6、50年頃1・8程度に到達が望まれている。容易ではないが、総力で少子化に取り組めば、不可能でないという戦略。「強靭化戦略」は質的な強靭化を図り、現在より小さい人口規模でも、多様性に富んだ成長力のある社会を構築する戦略で、強靭化の本質は生産性の引き上げ。戦略の背骨は「人への投資」である。

 この二つの戦略によって、「未来選択社会」の実現を目指すのが「人口ビジョン2100」の主な内容である。

 具体的な内容の一つは子育ての「共同養育社会」を目指すというものである。ビジョンでは子育てには「父親はもちろん家族も地域が共同で参加する(共同養育)ことが本来の姿」と主張し、出産や育児に国の支援が重要という考えを共有し「それに相応しい社会経済システムの構築が不可欠」と提言する。

 しかし「共同養育社会」は、人口急減を招いた資本の責任を全く問題にしていないのである。

 もう一点は、外国人労働者の問題。外国人労働者は昨年10月に約204万人と200万を初めて超えた。政府は「生産年齢人口(15~64歳)が減少する中で、外国人を含む労働力の確保が重要な課題であることは一目瞭然だ」と強調する。

 すでに日本は世界5番目の〝労働移民〟受け入れ国で今後、特定技能に運送など4業種の追加、技能実習制度の改定を行い、不足する労働力を労働移民で補おうとしている。

 提言は「永定住外国人政策」(労働移民を避ける)と記述し、「強靭化戦略」の一環で、産業構造の質的転換を担える「高技能外国人」は積極的に受け入れるが、「非高技能外国人」は滞在期間を含め管理を徹底するとしている。まったくの身勝手であり、EUのように移民流入によって治安悪化するのをおそれているだけだ。外国人労働者への差別丸出しである。

◇人口減の出発点 農民の都市集中

 提言では、危機意識を煽るだけで、なぜ現状になったかの洞察がない。そこで、人口減について考察してみよう。

 60年から70年までの間に地方(東北・北陸地域と四国・九州地域)から人口が流出し三大都市圏は人口が急増した。高度成長を主導した重化学工業、家電など資本の旺盛な労働力需要は地方の供給で支えられた。

 この過程は、農村部における自営農民が農民層以外の階級に分解する過程でもあった。1960年に農業従事者は1175万人をかぞえたが、2020年には136万人と60年間で農業従事者は1039万人減少、率にして88・4%の減少である。流失先は労働者階級が最大で6割を占めた。

 無政府的に大都市圏に人口が集中する中で様々な社会問題が発生した。鉄道、道路等交通網が人口急増に十分対応できず、通勤時間帯の殺人的なラッシュアワーや道路の慢性的な渋滞、上下水道の整備の遅れなど多くの都市問題を引き起こした。

 高度成長期に急増した人口の集中による住宅需要に対して、60年代半ば以降、公団・自治体による大規模なニュータウン建設が相次いで行われた。74年に合計出生率2・05を記録しそれ以降は2を上回ることが無かったが、人口は一貫して増加し続け、生産年齢人口の割合はピークの90年まで減ることはなかった。

 資本は少子化、人口減を意識することなく、自国の労働者を搾取し利潤を取得することに大きな困難はなかった。89年に合計特殊出生数が1・57というショックで資本は人口減を突きつけられたが、出発点は60年以降の資本主義的発展の中にあったと言えるだろう。

◇矛盾する政策 東京一極集中

 日本の人口が、14年連続減少の中で、東京圏は唯一、23年に13万人余りの転入超過となった。政府が掲げる「多様な働き方」とか、田園都市構想、首都移転構想などをあざ笑うかのように東京一極集中が加速している。

 矛盾する資本家政府は、地方創生を謳う一方で02年に「都市再生特別措置法」制定しつつ、東京都内の大規模再開発を促進し、都内の姿は変貌した。

 資本にとって巨大な消費市場を持ち、情報も産業インフラも政治、行政が集中する東京から地方に移転する理由は乏しい。産業構造が大規模な工場設備を必要とする産業から情報産業の比重を高める中ではなおさらである。

 東京一極集中は、住宅価格の高騰を招き都内のマンション価格は労働者が購入できる価格ではない。億ションの建設が進む一方で、子供を持たない理由に「家が狭い」が21年調査で21・4%と15年比3・4%も上昇した。

◇人口減の根源は利潤目的の資本主義にある

 資本家政府が人口問題を取り上げて議論を開始したのは、1953年設置の「人口問題審議会」である。審議会は01年から「社会保障審議会」に受け継がれたが、名称から明らかなように資本家政府の関心は、高齢者の年金や増大する社会保障費の財源確保のため人口減対策の少子化政策でしかなかった。

 ブルジョアの〝人口減対策〟が根本的に偽善なのは、資本陣営が人類史の一段階でしかない資本主義的生産様式を永遠に続くものと、資本の支配の永続を絶対的に考えていることにあり、彼らの歴史観が、労働から解放されない〝人類前史〟で終わるからである。

 こども未来戦略、働き方改革など、資本家国家の人口減対策が前提にする資本主義的生産様式は、搾取労働によって剰余価値を資本が取得する敵対的な関係を基礎に置く社会である。絶えず競争にさらされている資本は、利潤獲得が困難になれば、労働者の生活や雇用を維持する〝社会的役割〟よりも己の利己的利益を追求する。

 人口の再生産が可能な水準である合計特殊出生率が2・0を上回っていたのは74年まで。それ以降、今日に至るまで2・0を超えたことはない。長期停滞に突入した91年以降は、1・5を下回り出生率(人口千人対)も10%を切ってから00年代には8%から20年以降は6%台に低下した。

 90年代から30年間に渡って労働者の賃金は底に張り付いたままで、労働力の再生産すら困難な低賃金労働者を大量に生み出し、多くの困難を労働者に強いた。資本は、海外に利潤を求めて進出し巨額な内部留保を貯めこんできた。

 利潤を目的とする資本の行動が、若者の未来に対する希望を奪い(22年調査17~19歳「国の将来が良くなる」13・9%)、未婚の男女(18~29歳)の22年調査(ロート製薬「妊活白書」)では約半数が「将来、子供を欲しくない」と答えている。

 大都市圏に人口の5割が集中する歪な人口分布が地方消滅(高齢化率4割超の能登を襲った震災による高齢者の悲惨な状態を見よ!)の危機を招いたのである。

 労働者は、危機感を煽る資本の人口減、少子化キャンペーンに惑わされてはならない。人も国土も利潤のために荒廃させる資本の支配を打倒し、生産手段の私的所有を廃絶し階級が廃止され経済が根本的に変革される中で、地方と都市の関係も人口問題も合理的に解決されるだろう。 (古)


【2面サブ】

口先だけ、岸田の「政治改革」

「裏金づくり」の〝実態解明〟も程遠い

 自民党の政治パーティ「裏金づくり」など金権・腐敗への大衆の怒りが広がる中で、岸田首相は自らを本部長とする「政治刷新本部」を設置、「政治への信頼回復」に向けて「その先頭に立つ」と宣言した。だがそれは怒りをかわすための口先だけでしかない。

 まず裏金づくりの実態について。

 最大派閥の安倍派は、過去5年間のパーティ収入のうち、所属議員が関係する95の政治団体に支出した約6・8億円を収支報告書に記載していなかったこと、そして収支報告書の保存期間に準じた20~22年の3年間分の計4億円余について追加訂正したと発表した。

 これまでに報告のあった6・3億円を加えると過去5年間に約13億円の収入を得たことになる。安倍派はその内の半分以上の6・8億円を隠しておきながら、そのうち報告義務のある直近の3年間の追加訂正だけで幕引きを図ろうとしている。

 自民党が5日、野党に示した「訂正議員リスト」も安倍派と二階派のみが対象で、裏金の使い道も示されていなかった。しかも、「経緯や使途について出来る限り把握したい」として、この日始められた全議員アンケートの設問も3年間の記載漏れの有無とその金額の2つだけを問う内容でしかない。大衆を愚弄するも甚だしい。

 総額ばかりではなく、パーティ収入をいつ誰が企画したか、収入の使途など全面的に明らかにすべきである。安倍派に限らず、パーティ収入を収支報告書に記載せず裏金づくりとしていた罪で起訴されたのは各派閥の秘書、会計責任者だけだ。

 安倍派幹部の「5人衆」をはじめ、裏金づくりについて派閥の領袖らは会計事務を秘書や会計責任者に「任せていた」とか「知らなかった」としらを切っている。だが、こんな見え透いた言い逃れは誰も納得できない。

 また、検察は立件の基準を安倍の「桜を見る会」の時の3000万円としたため、2700万円余の不記載であった荻生田を始め、1000万円以上もの多額の収入隠し議員も不起訴処分となった。

 政治家の責任逃れが出来ないように、会計責任者が有罪になった時には政治家にも責任が及ぶ「連座制」を導入すべきである。しかし、岸田はこの問題に触れようともしていない。

 さらに政党が党幹部個人に支出する「政策活動費」も問題である。政治資金規正法は政治家個人への金銭の寄付を禁止しているが、政党支部、資金管理団体への寄付を通して、政党や企業、団体から政治家個人への寄付は認めている。

 しかも政治家個人の政治資金は収支報告書に「政策活動費」と記載するだけで済み、何に使われたかの使途を具体的に明らかにする義務はないし、原則として課税されないことになっている。

 例えば参院選があった22年には、自民党は党幹部15人に対して、政治資金を計14億円支払った。政治家にとって党や派閥から受け取ったカネや政治パーティで得たカネは、「政策活動費」と書けば、派閥の勢力拡大のために政治家を買収したり、選挙で有権者買収のために使用したり、個人の私的利益を図ったりするために使っても許される「使い勝手の良い」カネとなっている。

 使途の公開義務のない「政策活動費」は、金権腐敗を助ける制度となっており、1993年に政治規正法改正が問題となった時も政党から政治家個人への寄付は「公開」すべきとの議論もあった。しかし、公開するかどうかは「党則で決めるように検討する」ということであいまいにされ、結局はそのままにされて現在に至っている。

 「政策活動費」を公開にせよという意見は野党からでているが、岸田は「政治活動の自由と国民の知る権利とのバランスの中で議論したい」と消極的である。

 裏金づくりの発覚は自民党の金権腐敗を暴露した。自民党の歴史を見れば、大きな汚職だけでもロッキード汚職(1976年)、リクルート汚職(1988年)、佐川急便汚職(1992年)など汚職の歴史である。それぞれカネばかりではなく派閥も絡んでいた。そのたびごとに「政治への信頼回復」が叫ばれた。

 リクルート汚職後には「政治改革大綱」がつくられ、派閥解散、企業・団体からの献金の禁止が謳われた。しかし、一時的に派閥は解散されてもすぐに復活し、企業からの献金も形を変えて継続されてきた。

 岸田は派閥ではなく「人やカネと切り離した」「政策集団」になるべきと述べているが、この「政策集団」が派閥とならない、自民党が金権腐敗と決別するという保証はない。自民党が金権腐敗と手を切れないのは、私的利益追求を土台とした資本の政党、カネと権力を追い求めるブルジョア個人主義の政党だからである。

 労働者、働く者は岸田自民党の「政治改革」にどんな期待、幻想をもつことはできない。金権腐敗政治を一掃することが出来るのは、自民党=資本の支配に反対する労働者の階級的闘いとその発展である。 (T)

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