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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1470号 2024年3月10日
【一面トップ】 腐敗隠蔽が露わになった政倫審
        ――大衆行動で岸田腐敗政権打倒を!
【一面サブ】  戦闘機の輸出
        ――武器輸出全面的解禁への道
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 3年目に突入したウクライナ戦争
        ――ウクライナ労働者の闘うべき方向は
【二面サブ】  「インフレ」と言いつつ金融緩和継続
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

腐敗隠蔽が露わになった政倫審

大衆行動で岸田腐敗政権打倒を!

 自民党派閥の裏金事件を受けて衆院政治倫理審査会が行われた。2月29日には岸田首相、二階派の武田事務総長、3月1日には安倍派幹部の西村前経産相、松野前官房長官、塩谷元文科相、高木前国対委員長が出席したが、彼らは従来の説明を繰り返すのみで、何ら身の潔白を弁明することはできなかった。彼らは金権と嘘にどっぷり浸かる腐敗した姿を満天下に示した。

◇裏金事件の経緯

 自民党の五つの派閥が開いた政治資金パーティーは、政治資金収支報告書の不記載・虚偽記載であり、政治資金規正法違反による「裏金づくり」である。そして東京地検に告発され捜査が行われた。

 各派閥は事務的なミスだったなどと言い逃れ、「訂正済み」として終えようとし、岸田は「(派閥は)政府とも、自民党とも別の政治団体の問題」と責任を回避し、疑惑の閣僚らも「政府の立場で答えることは控える」などと言い逃れていたが、自民党の金権腐敗、その隠蔽に労働者大衆の大きな怒りが広がっている。

 岸田首相は、政治資金パーティーを当面自粛(12・6)、裏金疑惑が浮上した安倍派の松野、西村、鈴木総務相、宮下農林水産相のほか、副大臣5人、政務官1人を交代させ、自民党役員の萩生田政調会長、高木、世耕幹事長が辞任した(12・14)。

 その後も安倍派、二階派事務所の家宅捜査、裏金疑惑の議員を初め安倍派幹部と二階元幹事長、二階派元事務総長平沢らが事情聴取を受けるなど捜査が進展した。

 岸田は「政治改革を議論する党の新組織を立ち上げる」(12・25)と、大衆の怒りをそらすための方便を弄し「政治刷新本部」を設置した(1・10)。

 安倍・二階・岸田3派閥会計責任者らと、3000万円以上の裏金を取得した池田、大野、谷川らが1月19日起訴され、検察は裏金事件捜査終結を図った。3派閥は派閥解散を決めたが、派閥や所属議員らがパーティーで裏金を作り所属議員に「政策活動費」として分配した、自民党の金権腐敗の裏金事件の幕引きを図ることは許されるものではない。

 1月23日は「政治刷新本部」政治改革の中間とりまとめ案を公表したが、使途の公表義務のない「政策活動費」への言及、会計責任者だけでなく政治家本人も責任を負う「連座制」導入などの提言もないその場しのぎのものである。2月5日に収支報告書を訂正した議員リストを提示したが、訂正額が記されただけで、不記載だった理由や、裏金の使途には触れていない。岸田は13日には、政治収支報告書への不記載の有無と金額に関する「全議員アンケート」の結果を公表したが、裏金の経緯や使い道は問わない全く形ばかりのものだ。

 15日には裏金問題の聞き取り調査結果を公表したが、やはり裏金の使い道の詳細や派閥からの還流の経緯などについて明らかにされないおざなりなものだ。岸田は、これらの批判を意識して、「聞き取り調査や政治資金収支報告書の修正で、説明責任が果たされるものではない」と言い逃れするしかなかった。

◇政倫審で示された自民の金権腐敗の隠蔽

 岸田は、疑惑議員を政倫審に出席させることにも指導力を欠き、「説明責任を果たしたい」(2・28)と、呼ばれてもいないのに自ら出席して、点数稼ぎしようと画策した。

 岸田は裏金づくりの経緯などについて、公表した「聞き取り調査報告書」を盾に、「はっきりした経緯や日時などについては確認できていない」とするだけである。先に聞き取り調査の不充分さを「説明責任が果たされるものではない」と言い訳し、今回も「政治の信頼回復に向けて私自身が先頭に立つ」と述べたが、自ら調べて明らかにすることはできなかった。岸田の「説明責任を果たす」は何時も偽りだ。

 裏金の使途についても「結論として政治活動以外に使われたものは確認されていないと報告書に明記されている」と答弁したが、それは領収書などで確認されたものではない。

 そもそも領収書なども取っていないのであるから、嘘でも通用することである。岸田は、自ら根拠のないことをしゃべっているだけと言われても反論できないであろう。二階派の武田は「説明責任を果たせるのは私」と言いながら裏金に関しては厚かましく「知らない」を通すだけである。

 安倍派元事務総長西村は、裏金作りへの関与を改めて否定し、「還付に係る処理は清和会の歴代会長と事務局長との間で長年慣例的に扱ってきた」として「不記載」を知らなかったと説明した。

 しかし、西村は思わず知らず自分が裏金事件前に「還付」を知っていたことを語っている。「還付」は「裏金」であり、政治資金報告書に記載されるはずがないのだ。「還付」を知っていた西村は、それが「裏金」であることを知っていたとしか言い様がない。

 それが「歴代会長と事務局長との間で長年慣例的に扱ってきた」というならば、「歴代会長」の一人である森元首相に確認しなければならない。

 政倫審に出た他の松野、塩谷、高木らの事務総長経験者も、「還付」を知っていたのだから西村と同様だ。彼らの虚偽は隠すことができない。

 岸田は「当時の会計責任者の会計知識の誤解や、帳簿作成上の転記ミス等、事務処理上の疎漏によるもの」と、「不記載」を「誤解・ミス」で片付けようとしているが、派閥議員らは「還付」、すなわち「不記載の裏金」であることを知っていて、ごまかしているのだ。

◇岸田政権を追い詰め大衆行動を!

 彼らは自らが金権腐敗に浸り隠蔽するするしかないことを、政倫審でも曝け出した。

 自民党の金権腐敗政治の根底には、個々の企業や個人が自らの利益を追求する資本の支配がある。資本は自らの支配を維持するために、資本の利権を守る政治を行う自民党と結びつき、金銭を提供し癒着する。資本・自民はともども腐敗している。

 岸田政権は金権腐敗にどっぷり浸かり、政倫審出席を疑惑の自民党幹部(森や二階だ)に指示できない統治力の無さを露わした。労働者は国会での追及とともに大衆的な行動で、労働者大衆に一切の犠牲を転嫁する岸田腐敗政権を追い詰めていかなければならない。資本の支配を変革する労働者の階級的闘いを発展させていこう。 (佐)


【1面サブ】

戦闘機の輸出

武器輸出全面的解禁への道

 日本、英国、イタリア3国による共同開発の次期戦闘機の第三国への輸出問題での自民、公明の協議が最終段階を迎えている。

 岸田政権は昨年12月、自公の提言を受ける形で、防衛装備品のルールを定めた「防衛装備移転三原則」の運用指針を改定した。

 外国企業の技術を導入して国内製造するライセンス生産の輸出については、これまで米国に対して部品に限ってのみ認めていたが、完成品も含めてライセンス元の国への輸出も可能になった。これによって政府は地対空ミサイルシステム「パトリオット」と呼ばれる、航空機や巡行ミサイルを邀撃するPA2、弾道ミサイルを迎撃するPA3をライセンス元の米国に輸出することを決定している。

 また、安全保障面で協力関係のある国に対して戦闘機のエンジンや翼などの部品と技術の輸出を可能とするほか、シーレーン、海上進路防衛を念頭に「5類型」とよばれる救難・輸送・警戒・監視・掃海に関して、殺傷能力のある武器を搭載した装備品についても同志国への輸出を可能とした。

 さらにこれに加えて、現在共同開発を計画中の戦闘機も輸出を可能にしようというのである。この計画は一昨年末に発表され、昨年末に事業を管理する国際機関を設立する条約に3か国が調印し、具体的に動き出す。日本にとっては航空自衛隊のF2に替わる戦闘機で、2035年の配備を目指している。

 共同開発を決めた時点では、日本は第三国への輸出はしないという前提だったとされている。自民、公明の交渉の中で、公明党は昨年末の運用改定では第三国への輸出は部品と技術であり、完成品は輸出しないというのが基本だとして、次期戦闘機の第三国への輸出に反対している。

 これに対して自民党は、英国やイタリアはNATO加盟諸国を始め他国への売り込みを狙っている、出来なければこれから始まる戦闘機の生産分野を決める交渉でも日本は不利な立場に置かれる、販売先が自衛隊に限定されれば生産コストが高くなるなどの理由を挙げて、第三国への輸出を認めるよう公明党に圧力を強めてきた。

 自民、公明の対立は、共同生産国である英国、イタリアとの生産へ向けての具体的な協議の開始を目前にして、今回の戦闘機に限って第三国への輸出を認めるという妥協でまとまりそうだという新聞報道もある。

 公明党は「平和の党」を看板にしながら、実際には連立与党として、安全保障に関する分野でも憲法違反の集団自衛権の行使の容認や武器禁輸措置をとっていた「武器輸出三原則」の見直しを始めとして自民党に追随してきた。

 第三国への輸出容認は今回の戦闘機生産に限るといってもそれにとどまらず、武器輸出の全面的解禁に向けての道となるだろう。これは敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有に続く、安保関連政策の一大転換を意味する。

 岸田政権は、ロシアのウクライナ侵攻、中国の軍事的膨張、北朝鮮の核兵器開発の進展などを挙げて、国際秩序の一方的な現状変更の危機を唱え、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化」(岸田)のためとして軍事費の2倍化に向けた予算を組むとともに、昨年5月には軍需産業の国有化を含む支援・育成のための「防衛生産基盤強化法」を成立させた。

 これらの一連の軍事力強化策は、日本の海外における大資本及び国家の利益、権益を維持・防衛するための帝国主義政策である。日本の軍事力強化はエスカレートする一方である。 (T)


   

【飛耳長目】

★日経平均株価が史上最高値を更新し4万円台突入間近の3月1日、『毎日新聞』の「株価は間違いなくバブル。いつはじけてもおかしくない」との小幡績慶大教授の発言が小気味良い★年初からの上昇率17%は「明らかにスピード違反」「投資家が『次はどこに運用資金を突っ込もうか』と物色……都合良くAI半導体という新たな株価上昇ストーリーが見つかっただけ」★元財務官僚の小幡氏は「経済学の専門は行動ファイナンスや企業金融」と、その意味ではブルジョア経済学者だ。だが、アベノミクスと異次元金融緩和は「実体経済への効果はほとんどない」と強調する「反リフレ派の論客」である★光文社新書『すべての経済はバブルに通じる』でも、バブルとは「多くの投資家がリスクに殺到するがゆえに生じる」と、株式相場の投機性こそバブルの正体と断じるが、健全な学者らしいのはここまで★「日本経済は別に何も変わっていない。昔からそこまで悪くもないし、今もそこまで良いわけでもない」と惚ける。30年前の日本の非正規労働者数870万人は2千万人を超え、強搾取の格差社会に。同時期に海外進出した日本企業は8千社から2万社に急増、この権益保護こそ帝国主義台頭の背景である。能天気な「新しい戦前」の日本資本主義擁護は危険だ。 (Y)


【2面トップ】

3年目に突入したウクライナ戦争

ウクライナ労働者の闘うべき方向は

◇軍事経済と暴力支配のプーチン

 プーチン・ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が3年目に突入した。プーチンは、侵攻当初の国内で広がった反戦運動や反プーチン運動を問答無用の暴力によって抑え込み、軍事経済に移行したロシア経済は、西側諸国の経済制裁にもかかわらず23年度のGDPはプラス3・6%を記録。しかし軍事生産の拡大による経済拡大であり、社会的富は浪費されていく。

 ロシアからのEUへの原油や天然ガスの輸出は大幅に減少したが、中国やインド、トルコがその分を上回って輸入を増やした。高性能な電子機器、半導体の輸入は制限されているが、第三国を経由して入手し、不足しているミサイルや弾薬は、国内生産の拡大や北朝鮮やイランからの供給で優位に戦争を進めつつある。

 26日の年次教書演説では、NATOに対して核戦力は完全な準備態勢にあると恫喝し、3月の大統領選向けに補助金バラマキ演説を行い、先の見えない戦争に対する国民の不安に配慮を示すポーズをとった。

 最大の政敵であったナワリヌイをシベリア送りで殺害し、大統領選でプーチンが再選されるのは確実である。直近の世論調査で支持率は侵略開始後で最高となる85%を記録。対ウクライナ軍事作戦の支持率も一貫して70%を超えている。

◇支持を失うゼレンスキー

 ウクライナのキーウ国際社会学研究所によると、ゼレンスキーの支持率は62%(23年12月)まで下落した。政府への信頼度は26%へと大きく落ち込んでいる。「領土を諦めても構わない」は19%と22年の8%から倍増し、「勝利を確信」は60%(24年2月)で22年5月から20ポイント減少した。

 ロシア軍による侵攻直後に首都キーウまで迫ったロシア軍の車列は、ウクライナ軍によって次々に破壊された。占領地のブチャ虐殺などキーウ周辺地域を占領したロシア軍に対してウクライナ軍、ウクライナ領土防衛隊(予備役・市民の組織)の反撃でロシア軍はウクライナ東部地域以外から撤退を余儀なくされた。

 戦争が長期化し、ロシアの侵攻に立ち向かう国民の団結の中で埋もれていた矛盾が一気に表面化し、ゼレンスキーに対する反発が高まっている。

 昨年6月に開始した反転攻勢は、ロシア軍の兵士の犠牲を顧みない反撃によってウクライナ軍は、兵士、武器、弾薬の不足もあり大きな犠牲を出し事態の好転が出来なかった。米国における武器援助法案が、一国主義の共和党の反対で成立せずに、戦争を継続する兵器が不足しているからである。逆に東部の要衝アウディーイウカをロシア軍が掌握するなど、戦線は膠着した状況になっている。

 ゼレンスキーは、責任をザルジニー軍総司令官に押し付け解任した。国民的人気の高かったザルジニーの解任は、政権内部の対立を表面化した。50万人追加動員計画(徴兵年齢を25歳に引き下げ)が発表されてからは、徴兵を逃れるための書類を偽造する賄賂や徴兵を嫌って国境を超える人々が増え、それを警察は暴力的に取り締まっているが、予定通り集まっていない。

 キーウ市長のクリチコは、ゼレンスキーを批判して「ある時点で1人の人間の気まぐれに全てが左右されるロシアとの違いがなくなる」と、ウクライナの民主主義が深刻な脅威に晒されているとスイスのマスコミにインタビューで応えている。

 奪われた領土を奪還し、ロシアとの戦争に勝利することを目的に米国やNATO、日本に武器援助や経済援助をゼレンスキーは要求している。ウクライナの戦いは〝自由と民主主義〟を守る戦いだ、武器援助を惜しんでウクライナが負けることがあれば、武力によって現状を変更しようとする専制国家の侵略に、世界を晒すことになるとゼレンスキーは主張する。

 しかし米国は〝自由と民主主義〟を旗印に、ネタニヤフのガザにおけるジェノサイド(死者は3万人を超えた)を支持し続けている。

 ゼレンスキーはイスラエルのジェノサイドを、テロと闘う正当な自衛権とネタニヤフに連帯のメッセージを送っている。イスラエルの侵略で郷土を追われたパレスチナ人に対してゼレンスキーは同情をしこそすれ、ネタニヤフを支持することなど出来ないはずである。

 ゼレンスキーは武器欲しさに悪辣なイスラエルを支持し米国の歓心を買おうとしている。彼は国際主義の立場とは無縁で、自国の労働者人民とも揺ぎ無い信頼に基づく関係を構築してこなかった。

◇〝労働奴隷制〟 労働法制改悪

 19年大統領選に当選し大統領になったゼレンスキーの下で、労働法改正法案が20年1月に議会提出され審議に入ったが、法案は文字通りの改悪であり、700万人の労働組合に結集する労働者は撤回を要求して闘いに立ちあがった。

 法案は労組への事前の説明もなく、一方的に議会提案された。20年1月5日キーウで行われた労組抗議集会のスローガン、「ストップ労働奴隷制」が表しているとおり、労働者の権利を奪い、資本家の野蛮な搾取労働に合法性を与える反動的なものでしかない。法案は、ウクライナの労働者の闘い、EU労働者の抗議で一旦撤回されたが、ゼレンスキーは21年に改めて法案を幾つかに分割して提案した。

 特に250人以下の労働者を雇用する企業(労働者の73%)の労働条件を資本に有利な労資交渉で決定する規定など、反労働者的法案が7本(12本とも)提案された。反対運動の最中、22年2月24日ロシアが軍事侵攻し、労働者は一旦ゼレンスキーとの闘いを棚に上げて、自決権のため「仕方なく」ゼレンスキーの下で戦う事を受け入れた。

◇プーチンと戦う労働者の自立した組織と闘いを

 卑劣なゼレンスキーは22年3月15日に「戒厳令下における労使関係の組織について」を可決署名した。それは労働者の権利をはく奪し――解雇の自由、週60時間労働、賃金支払停止、労使協定効力停止、同意なし移動等々――犠牲をいとわずプーチンと戦っている労働者に対して資本の立場から襲いかかり、労働者を戦時体制に動員した

 プーチンによる理不尽な侵略から始まった戦争は、民族自決権を否定する侵略戦争である。労働者党は、プーチンと戦うウクライナの労働者の戦いを断固支持し連帯する。

 3年目に突入した戦争に苦悩するウクライナの労働者に呼び掛ける。

 皆さんは、プーチンとの戦いを後方でも最前線でも満足な支援もない中で戦っている。一方、政府、軍内部での汚職や賄賂、軍事物資などの横流しが横行している。労働者人民が生み出した〝国富〟を、役人、官僚、悪徳政治家や資本家連中が勝手に簒奪することを断じて許してはならない。

 武器弾薬が不足し兵士の犠牲が増大している状況の中で、労働者階級の命運とウクライナの自決権を守る戦いは、ゼレンスキーや資本家ではなく労働者階級の自立した組織と闘いの中にこそある。

 ゼレンスキーや支配階級が、労働者階級やウクライナの命運を勝手に決める戦争政策に反対し、労働者階級も対等な立場で参加する、プーチンと戦う体制を構築しよう。団結して労働者の権利や民主主義的権利の制限撤廃を勝ち取ろう。

 ウクライナの労働者階級は、自らを労働組合に組織するにとどまらず、労働の解放を掲げる国際主義の労働者党の建設に直ちに取り掛かろう。

 労働者党は、労働者の階級的な自立した闘いを支持し連帯する。 (古)


【2面サブ】

「インフレ」と言いつつ
金融緩和継続

 昨年後半から、金融緩和策をいつ脱するかでもちきりである。というのも、市場から金利引上げ圧力が高まる中で、日銀・植田総裁は、昨年10月の記者会見で、長期金利の「1%超え」を許容する発言をしたからだ。だが、日銀は金融緩和からなかなか抜け出そうとしない。

◇日銀の内部対立

 円安が続き、物価も高騰しているのに、何ら対策を打たない政府と日銀に批判の声が高まっている。この世論に対して日銀は、賃上げと物価上昇が続く好循環を見通せる状況になれば政策転換が可能になる、現在、その状況に至っていないと曖昧な説明を続けてきた。

 だが、先月29日、日銀・高田創審議委員は、「物価上昇率2%の目標実現が見通せる状況になってきた」とした上で、「極めて強い金融緩和からのギアシフトに向けた検討が必要だ」と強調した(大津市での講演)。

 その理由について、高田は「国際的な資源価格の高騰を商品価格に、次に賃上げをサービス価格に、それぞれ転嫁する動きが広がり、さらに今春闘で賃上げ機運が高まっている」ことを挙げた。具体的な「ギアシフト」には、「YCC(長短金利操作)の枠組みの撤廃」や日銀当座預金に設定している「マイナス金利」の解除があるとした。

 他方、日銀・植田総裁は、サンパウロで行われたG20後の記者会見で(2月29日)、「2%の物価上昇を伴う景気好循環を見通せる状況にまだ至っていない」と述べ、高田とは違う認識を示した。植田は、賃上げに期待をかけるとしながらも、23年10~12月期の実質GDPが前期比で0・1%減となり、2四半期連続でマイナスになっていると緩和政策変更に慎重な姿勢を示している。

 このように、2人の間で違いが出ているのは、高田が日本興業銀行やみずほ証券出身であり、利ざや稼ぎが減り財務内容が悪化している民間金融機関を代表しているのに対し、植田は日銀のジレンマを代表しているからだ。

◇日銀のジレンマ深まる

 国際的な物価上昇と欧米の金利引上げが始まって丸2年経つが、日本は相変わらず超低金利のままである。内外金利差が拡大し、加えて巨額な貿易赤字が続いていることも円安に拍車をかけた。その結果、米国などの銀行に預金を移す動きが進み、今後米国の長期金利上昇のピークが見えたなら、日本国債を売って米国国債を買う動きも出て来るだろう。

 国内の物価高騰や円安と円流出を阻止するためには、金利を引上げて対抗するのが中央銀行の〝常識〟であるが、日銀は現在の物価上昇について「2%を超えたインフレ状態」(植田)だと認めながら、次には、物価だけでなく賃上げの上昇も必要だと言い出して金利引上げを先延ばしにしてきた。

 日銀が金利引き上げを渋っているのは、長期金利や日銀当座預金「付利」が上昇するなら窮地に陥るからだ。

 まず、市場で長期金利が上昇するなら、日銀が資産として保有する6百兆円の国債(簿価)は、市場価格(時価)が下落し、「含み損」を生む。

 既に、23年度上期決算で、日銀は10・5兆円の「含み損」を発生させている。今後、金融緩和策を変更し、さらに長期金利が上昇するなら、「含み損」は直ぐに30兆円にも50兆円にもなる。

 日銀は、YCCを解除し長期金利の上昇を認めるとしても、相当な覚悟がいる。

 しかも、実際に金利を上げようとするなら、民間金融機関は、保有国債の価格が下落し損失を被る前に、国債売りを仕掛けるかもしれない。

 現在、日銀の金融政策変更は直ぐに行われないと見透かされて、海外投資家がこぞって株式市場に参入し、株価はバブルの様相だ。株式市場の「春の宴」によって、日銀が日本株式会社の大株主として保有する株式(資産)の時価が上昇し、国債の「含み損」を帳消しにしているかに見える。だが、日銀が金利を上げる局面になれば、国債同様に株式もまた下落の圧力を受ける。その結果、株式を売れない日銀は「含み益」を失う。

 また、「付利」の一部につけている「マイナス0・1%」を解除し、「付利」を全て1%にするなら約5・4兆円、2%にすれば約11兆円の年間利払いが発生する――当座預金残高は現在540兆円。

 国債やその他を含めた日銀の資産全体の運用収支は、年にわずかプラス1兆円程であり、「付利」の上昇次第で、簡単にマイナス収支に転落する。それが「自己資本」(現在12兆円)を超えるなら「債務超過」に陥る。

 MMT派は「日銀が国債を買えばそれだけ政府の借金は減る」と言ったが、政府の借金は1円も減らないばかりか、毎年政府が支払う「国債費」(元金償還費と利払い費)は増加の一途をたどり、23年度末には25兆円以上に達する。さらに日銀本体の財務は悪化し青色吐息になっている!

 我々が前々から言ってきたように、れいわ新選組や自民党が拝跪するMMTは完璧に破綻している。(W)


《1469号の訂正》

*1面トップ記事
8段9行目「労働から解放されない」は「搾取労働から解放されない」
*1面コラム「巻頭言」
11行目「100億を超える」は「数十億に上る」
16行目「政務活動費」は「政策活動費」

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