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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1472号 2024年4月14日
【一面トップ】 裏金追及の幕引き狙う
        ――自民党政権延命のための処分
【一面サブ】  労働者の負担増で少子化対策
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 「異次元」から「普通」へ転換?
        ――中味は変わらない日銀の金融政策
【二面サブ】  〝諜報・謀略国家〟ロシアの闇
        ――モスクワ郊外コンサート会場銃撃事件
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

裏金追及の幕引き狙う

自民党政権延命のための処分

 4月4日、岸田自民党は政治資金パーティー裏金事件をめぐる問題で、裏金議員の処分を行った。しかし、裏金は誰が何のために始めたか、何に使われたのかの解明も進まぬうちに、処分を決めるというのはでたらめ極まる。ここには真相をうやむやにして、形式的な処分で裏金問題の幕引きを図り、政権を延命させようとする岸田自民党の意図が暴露されている。

◇形ばかりの処分

 2月の党内アンケート調査で裏金づくりを行っていたのは、立件された3人を除き、現職議員・支部長ら85人に上るが、処分されたのは半数にも満たない安倍派と二階派の現職議員ら39人。うち17人は「厳重注意」に当たる「戒告」であり、戒告処分などあってなきがごとくの処分である。

 また処分対象者が半数以下になったのは、2022年までの5年間で不記載額500万円以上としたためである。だが金額が少なかろうと政治資金規正法に違反する裏金づくりを行っていたことには変わりはない。500万円の基準を設け、それ未満の議員を処分からはずすことは、処分対象議員の数を減らし、党内の不満をそらせるためでしかない。

 安倍派幹部らには「離党勧告」、「党員権資格停止」、「党の役員停止」などの処分が行われた。「離党勧告」といっても、ほとぼりがさめれば党に復帰してきたのがこれまでの実態だ。2021年、新型コロナ緊急事態宣言中に松本純前衆院議員ら3議員の東京・銀座のクラブ通いが発覚し、3人は「離党勧告」を受けたが1年後に復党した。

 今回「離党勧告」を受けたのは塩谷立元文科相と世耕弘成前参院党幹事長の2人。このうち世耕は離党を表明した。衆院に鞍替えし地元から立候補し党復帰を狙っているといわれている。

 「党員権資格停止」となったのは、塩谷、世耕とともにパーティー券の還流の相談をしたとされる下村博文元文科相、西村康念前経済産業相、高木穀前国会対策委員長の3人で、下村、西村は1年間、高木は6か月の資格停止となった。

 残りの処分対象者は、一部の派閥幹部と不記載総額が2000万円以上を「党の役員停止」(1年)、1000万円以上を同6か月、1000万円未満を「戒告」とした。幹部で「党の役職停止」となったのは、松野博一前官房長官、荻生田光一前政調会長、武田良太元総務相が1年間の停止となっているが、彼らは処分前に党の役員から外れており処分の実効性はない。

◇岸田、二階は処分なし

 一方、岸田派も二階派も会計責任者は政治資金規制法で立件されたにもかかわらず、岸田首相と二階元幹事長は処分されなかった。

 岸田派の3年間のパーティ収入額は3059万円にのぼり、不記載起訴で会計責任者が有罪となったが、派閥会長の岸田は不問となった。

 また、二階の不記載額は3526万円と、自民議員の中では最も多いが、これまで裏金についてほとんど説明していない。

 岸田派幹部は、3000万円余の裏金づくりをしながら、岸田には処分がなかったことに関して、会計責任者の記入処理上の事務的ミス、裏金づくりをやっていた安倍派や二階派とは違うと弁護している。だがこれは、記入上のミスとして裏金づくりを否定し、不記載の責任を会計責任者になすりつけるごまかしである。

 党内最多の裏金をつくり、処分は必至と党内からもみなされていた二階が審査対象外として処分なしとなったことについて、岸田は二階が引退を表明し、次の総選挙には立候補しないことになったからだと言っている。

 しかし、二階が引退表明を行ったのは、息子を議員とするために処分を受けて評判を落とすことを避けるためと言われている。

 次期総選挙まで二階は議員として残るのであり、引退表明は処分なしとする理由にはならない。岸田が処分を避けたのは恩を着せて二階派を味方につけておこうとする思惑が見え見えである。

 また安倍派5人衆の一人である荻生田は自民党現職議員で3番目に多い2725万円もの裏金がありながら、実効性のない「党の役職停止」となった。甘い処分で取り込もうとする意図が透けて見える。

 9月の総裁選を見据えた岸田の恣意的な処分に、党内では不満が巻き起こっている。「離党勧告」処分になった塩谷は、「スケープゴートのように清和会(安倍派)の一部のみが、確たる基準や責任追及の対象となる行為も明確に示されず、不当に重すぎる処分に納得がいかない」、「執行部の独裁的な党運営に断固として抗議する」と岸田ら党幹部を批判する「弁明書」を提出した。世論の厳しい批判をよそに、党内の権力争いは高まっている。

◇金権・腐敗の自民党政権を打倒しよう!

 岸田は処分実施を前に記者団に「私が信頼回復のために先頭に立って努力しなければならない。それを国民、党員に評価していただく」と語った。しかし、処分は形だけででたらめ、大衆の批判、追及をかわすためでしかなかった。「火の玉となって裏金づくりの真相を明らかにする」といって行われた聴き取り調査、政倫審だが、安倍派幹部すべてが知らぬ存ぜぬで押し通した。また岸田は裏金づくり継続決定にかかわりが深いと言われた森喜朗元首相に電話で調査も行ったというが、その内容も明らかにされず、実際に行われたかどうか曖昧のままで終わった。

 そして岸田は、形だけの処分で問題は決着したとばかりに、実際は闇のまま幕引きを行おうとしているのだ。

 自民党の党内処分は大衆を欺く茶番だ。裏金づくりは所得隠匿、税金逃れの犯罪であり、自民の内部処分ですむことではない。

 もともと、裏金づくりを行ってきた張本人である自民党が、自分たちで処分したから問題は解決したといって幕引きを図ろうとすることは、労働者、大衆を愚弄することだ。

 労働者、働く者は団結し、金権・腐敗の自民党政権を打倒しよう。(T)


【1面サブ】

労働者の負担増で少子化対策

 岸田政権の少子化対策「子ども・子育て支援法等改正案」が2日、衆院本会議で審議入りした。はたしてこの法案は少子化対策になるであろうか。

 岸田は昨年1月に「異次元の少子化対策」を打ち上げ、4月に「こども家庭庁」を発足させ、6月に「こども未来戦略方針」を決定、「若い世代が結婚やこどもを生み、育てることへの希望を持ちながらも、 所得や雇用への不安等から、将来展望を描けない状況に陥っている。雇用の安定と質の向上を通じた雇用不安の払拭等に向け、若い世代の所得の持続的な向上につながる幅広い施策を展開する」とした。

 そして「経済財政運営と改革の基本方針」(「骨太方針」)に「少子化対策・こども政策の抜本強化」としてその内容を含めた。ブルジョアジーたちは、少子化は社会の衰退、ひいては国力の低下と捉え、「若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでが、こうした状況を反転させることができるかどうかの重要な分岐点であり、ラストチャンスである」と表明している。

 法案に示された「抜本強化」のための「加速化プラン」を中心に、これらの施策とその財源を見てみよう。

 「加速化プラン」は、①「経済的支援の強化」(児童手当の所得制限を撤廃、支給期間を中学生から高校生年代まで延長。第3子以降は月3万円に増額。妊産婦らに10万円相当を支給)、②「子育て世帯の支援の拡充」(就労要件を問わずに保育所などを利用できる「こども誰でも通園制度」など)、③「共働きの推進」(育休時の手取り8割相当から10割相当に引き上げる「出生後休業支援給付」など)からなる。そして、年金特別会計の「子育て支援勘定」と労働保険会計の「育児休業給付勘定」を統合し、「子ども・子育て支援特別会計(こども金庫)」、また、医療保険料とあわせて支援金を徴収する「子ども・子育て支援金制度」を創設する。

 これらの事業は、児童手当の充実は24年10月からであり、26年度までに順次実施に移っていく。事業には、年3・6兆円が必要であり、既定予算の活用(1・5兆円)、社会保障の歳出改革(1・1兆円)、支援金(1兆円)を見込む。

 支援金の徴収は、2年後の26年度からで、1兆円になる28年度まではつなぎとして「特例公債」を発行できるとしている。その実施に当たっては、「歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険料軽減の効果を生じさせ、その範囲内で、26年度から28年度にかけて段階的に導入し、各年度の納付金総額を定める」とし、岸田は国会などで「実質的な負担が生じない」との説明を繰り返している。

 しかし、賃上げはあったとしても物価上昇を超える賃上げを獲得したのはごく一部の大企業のみで、ほとんどが物価上昇にも満たない賃上げに過ぎない。岸田は支援金が実質負担増になることをごまかし、国債などの借金が、結局は将来の世代(今のこどもたちだ)への負担になることは語ろうとしない。社会保障の歳出改革も、医療・介護などの公費負担の削減であるが、75歳以上の高齢者の医療費3割負担、介護保険2割負担の対象者拡大などであり、利用者の自己負担増だ。

 これが少子化対策になるであろうか。労働者が「将来展望を描けない」少子化をもたらした状況は、非正規化などの低賃金・不安定雇用や女性労働者の差別によって苛まれる若年労働者の貧困化の進行という資本主義的搾取の現実である。そして女性労働者の増大にもかかわらず、保育・教育が私的な営為とされ社会化されない資本主義社会の問題である。若年労働者はこんな資本の下で、結婚さえできない惨めな状況に置かれているのだ。

 岸田の少子化対策は、この非正規労働などの労働者の困難をそのまま放置して、子どもへの経済的支援を行うが、それは所得制限を設けず、支援が必要のない世帯にまで児童手当を支給するというバラ撒き政治で、労働者の負担を増大させるのだ。岸田政権を打倒する闘いを進めよう。(佐)


   

【飛耳長目】

★在日コリアンを標的にした右翼の民族差別攻撃が集中した川崎市では、20年に全国初の刑事罰規定を設けた「ヘイトスピーチ禁止条例」が施行されて以降、ヘイト活動は収束した★国レベルでは、16年に部落差別、障害者差別、在日外国人差別を「許されない」とする「差別解消3法」が施行されたが、なぜか外国人差別には禁止規定も罰則規定もない★こうした間隙を突いて、クルド難民の多くが居住する埼玉県川口市、蕨市でクルド人を狙ったヘイト攻撃が激しくなっている。排外右翼の街宣活動に加え、SNSでは「拉致されそうになった」という真偽不明の情報まで拡散されている★生活トラブルによる地元住民との軋轢はあったが、昨年6月の強制送還を可能にする入管難民法改悪への抗議行動でクルド難民に注目が集まり、川口市議会は「一部外国人による犯罪の取り締まり強化を求める意見書」を採択した★12月には、トルコ政府が川口市の「日本クルド文化協会」をテロ組織と認定、資産凍結したことで「日本から出ていけテロリスト」「偽装難民皆殺し」といった口汚いヘイトに拡大した★元々クルド人など在日外国人が多い地域で、蕨市には人口の11%の在日外国人が居住している。多様な文化が共生する地域社会を形成していることを誇りにすべきだろう。(Y)


【2面トップ】

「異次元」から「普通」へ転換?

中味は変わらない日銀の金融政策

 日銀は先月(3月)19日の金融政策決定会合で、安倍と黒田が開始した「異次元」の金融緩和策に終止符を打ち、「普通」の金融政策に移行すると表明。しかし植田・日銀総裁は「異次元」の総括を真面目に行わず(行えず)、中味はそのまま温存しながら「普通」の金融政策に移ると宣言した。

◇麻薬財政を生んだ「異次元」緩和

 安倍や黒田らケインズ経済学リフレ派が主導した「異次元」の金融緩和策は、2013年から始まり実に11年に及んだが、「物価上昇2%目標」も「景気回復」も成し得ず大失敗に終わった。それどころか、「異次元」の金融緩和は政府による大量な国債発行と財政バラ撒きから抜け出せない麻薬財政を生み出した。

 財政バラ撒き策は岸田政権の下でも行われ、国債残高は千百兆円にのぼる。国債の元金と利子を返済するために、毎年「歳出予算」に計上する「国債費」は、「60年償還ルール」にもかかわらず次第に巨額になっている。23年度で25兆円、24年度新予算で27兆円を計上した。長期国債の市場金利はじりじりと上がっている、このまま進むなら、数年以内に国債費は優に30兆円を超え、予算総額の3割を占める。政府財政は、いよいよサラ金地獄と化しつつある

 岸田は「経済あっての財政」だと言って、借金漬け財政を改めるつもりはなく、経済が成長すれば税収は伸びると、能天気な楽観論を吹いている。だが、そうならなければ、いよいよ〝財源補填用の増税〟は待ったなしだ。

 既に、軍事予算のための、また少子化対策のための増税が決定しており、社会保障費の窓口負担増も始まっている。日本の帝国主義化と帝国主義戦争の準備も進む現在、労働者の階級的な闘いが起こらなければ、近未来の労働者の生活は惨憺たるものになるだろう。

 他方、日銀は政府が発行した10年国債、20年国債を中心に6百兆円も保有し、そのためによる負担が顕著になっている。日銀が保有する国債の「含み損」(23年9月時点で10・5兆円)の発生にとどまらず、日銀当座預金の「付利」が上昇するなら、日銀収支は悪化する。植田はそれらを認めているが、「一時的に赤字や債務超過になっても、政策運営能力は損なわれない」と平静を装っている。元日銀OBの早川英男でさえ、「日銀の信認が失われる可能性」を指摘しているのに。

◇「普通」の金融政策とは?

 日銀・植田は、「異次元」の金融政策を止めて「普通」の金融政策に戻ると言う。その中味は、2016年以降行ってきたYCC(長短金利操作)や日銀当座預金「付利」のマイナス金利を撤廃すること、またETFの「新規買入れ」を止める等である。

 安倍と黒田が始めた超低金利政策は、欧米の中央銀行がやってきたような「政策金利」=短期金利を引き下げるのではなく――日本の短期市場金利は2009年以降現在まで1・5%弱とずっと変わらない――、市場の国債を大量に買い上げて市場の長期金利を引き下げることで、設備投資を促し、円安誘導を行い、また物価上昇を策したものであった。

 YCCを導入したのは、日銀当座預金「付利」の一部にマイナス金利を導入したことによって(16年)、10年物国債の利回りがマイナス0・3%に急落し、8年物や9年物よりも利回りが下がってしまい、これに急きょ対処するためであった。その後、日銀はYCCによって長短の利回りを制御すると称して取り繕い、あらゆる国債を買い続けた。だが、誰もが知るようになった様々な矛盾が噴き出てきた――とりわけ、欧米の金融市場の金利が上昇する中で、「ゼロ金利」の国債を買う投資家は減り、日銀が市場から高く買う限りで政府発行の新発国債は売れたに過ぎず、しばしば新発国債の販売不成立が報道された。しかも、市場では企業が発行する「社債」が売れず発行の延期が続き、金融機関の利ざやは激減し、円安進行によって輸入物価が上昇し国内の物価上昇率は長短の利回りを遙かに上回り始めた。要するに日銀の超低金利政策は完全に行き詰まっていたのである。

 植田はYCCによる「長期金利の操作を止め」、「短期金利の操作を主たる政策手段にする」と言い、過去の政策を大幅に転換するかに言っているが、果たしてそうか。

◇矛盾する「普通」の金融政策

 植田は舌の根の乾かぬうちに、「長短金利の急騰を抑えるために国債の買い入れはこれまでと同じ程度続ける」、「さらに長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に買入れの増額を実施する」(「朝日」24・3・20)と発言している。YCCを止め「政策金利」に重点を移すと言いながら、長期金利の動向を市場に任せるのではなく、これまで通りに長期金利の操作を続けると、矛盾したことを平気で宣う。

 結局、植田の言う「普通」に戻すとは、「2%の物価上昇」が実現するまで「国債を買い続ける」という硬直した政策を止めるという〝形式的〟なことに過ぎない。だから、植田は「2%の目標は当面変えるつもりはない」、「月6兆円規模」で国債を購入し長期金利上昇の動きを抑える、日銀当座預金の「付利」も0~0・1%内に維持する、と述べるのである。

 また、外国との金利差が縮まらず、外国に預金を移し、国債を売って海外債に投資する動きが円安に拍車をかけている、日銀はこれを何としても阻止したいのだ。それゆえに、政策転換したから、金利引上げのフリーハンドを持っていると、金融市場や投資家に警戒させるのである。

 日銀・植田の新しい金融政策は、当面、今までと変わらないとしても市場からの金利上げ圧力は高まり続け、政府と日銀の抱える矛盾もまた高まり続ける。日銀にとっては、経済の好転を神頼みし、将来ETFや国債を売却し日銀財務の改善を図りたいのが本音であろうが、それは極めて困難だ。加えて、この間、輸入物価高騰により消費者物価が上昇してきたが、次第に国内に起因する物価上昇――当面、仕入費や借入利子や高騰する地代の価格転嫁であるがインフレに発展する可能性もある――に繋がっていくことになれば、日銀は「国内を起因とする基調的な物価上昇を歓迎」(植田)していられない。(W)


【2面サブ】

〝諜報・謀略国家〟ロシアの闇

モスクワ郊外コンサート会場銃撃事件

 ロシアの大統領選が終わって間もない3月22日、モスクワ郊外のコンサート会場で銃乱射事件が発生、少なくとも144人が死亡、551人が負傷した(4月2日時点)。

 1999年9月のモスクワなどで起きたアパート連続爆破事件(300人以上の住民が死亡)、2004年9月に南ロシアで起きたペスラン学校人質事件(子供たち330人が犠牲)以来の悲惨な出来事である。

◇多くの謎

 今回の銃乱射事件には多くの謎がある。

 一つには、米国がテロ計画があることを事前にロシアに通知していたと発表していることだ。3月7日、在モスクワ米国大使館の公式ウェブサイトに「過激派がモスクワ市内でコンサートなどに対する攻撃を計画しているとの情報がある」、48時間以内は大規模イベントに参加しないようにとの警告が掲示された。米当局者は事件後、米政府は長年の「警告義務」に従いロシア当局と情報を共有していたと語った。

これが事実なら、ロシア当局は当然徹底的に捜査し、事件を未然に防ぐことができたはずだ。しかし、ロシア政府はそうしなかった。

 会場の警備は手薄だったし、ベラルーシのメディアによれば、緊急対応特殊課と特別任務機動隊が現場に到着したのは、攻撃開始から1時間以上たってからだった。当局は完全に不意を突かれたのだ。

 何故か。英BBC放送によると、米国の〝情報共有措置〟に対し、「17日に大統領選の投票を控えたロシア側は、この情報を『我々の社会を脅迫し、不安定化させる意図からの挑発』と見なし、無視したという」(3月31日付朝日新聞)。

◇イランも事前警告

 敵対する米国からの情報だから信用できないというのは、一見、もっともらしい。しかし、同様の注意喚起は、ロシアの〝友好国〟イランからも寄せられていたという。

 「銃乱射事件に先立ち、イランがロシア国内で大規模な『テロ活動』が行われる可能性があるとの情報を把握し、ロシア側に伝えていたことが複数の関係筋の話で分かった。 ……ある関係筋は『ロシアで攻撃が起こる数日前、イランはロシア国内で大規模なテロ攻撃がある可能性があるとの情報をロシア側に伝えた』と指摘。情報はイラン南東部ケルマンで1月に起きた爆破事件の容疑者への取り調べで把握したという。ケルマンの爆破事件では約100人が死亡。ISが犯行声明を出した」(「ロイター」4月1日配信)。

 「挑発」云々は、イランに対しては当てはまらない。かくして、何らかの危険な事件が迫っているとの情報を得ながら、ロシア当局は対応せず無警戒だった、治安当局は無能だったという事実が浮かび上がる。

◇自作自演?

 このような一連の経過からロシアの自作自演説も浮上した。

 「プーチン大統領の自作自演だという説もある。ウクライナ戦勝利に向けて兵力大動員を正当化するための仕掛けだったという議論まで起きている。イスラム過激派組織(IS)は自分たちがやったと云っているのに、プーチン大統領はウクライナを非難している点も議論になっている」(西村六善、Wedge ONLINE、3月26日号)。

 自作自演説が浮上するのは、もちろん、プーチンが権力を握り固めるために、チェチェン人のテロをでっち上げたり、突撃して多数のロシアの民衆や子供たちを犠牲にしてきた〝実績〟があるからだ。

 当時、アパート爆破事件を独自に調査していた改革派議員やジャーナリストは次々と〝怪死〟した。「アパート爆破は、FSB(連邦保安局)がチェチェン侵攻の口実として仕組んだ偽装テロだ」と告発した元FSB要員のアレクサンドル・リトビネンコは、2006年ロンドンで毒殺された。

 ジャーナリストの吉田成行氏も「当初、筆者はクレムリンによる自作自演ではないかとの疑いを持って情報分析を行った」(「東洋経済オンライン」4月4日)が、「情報を収集した結果、今回のテロは自作自演ではない、との判断に至った。すでに犯行声明を出した過激派組織『イスラム国』(IS)の仕業と見るのが妥当だ」との結論に至ったという。

◇謀略・陰謀国家ロシア

 筆者も、今のところ、つまり新しい決定的な証拠が出ない限りは、IS犯行説に同意する。もちろんウクライナ主犯説などは政権批判の矛先をそらすフェイクニュースそのものだ。

 問題は何故、ロシア当局が事前の警告を無視したかである。

 一つには、大統領選でのプーチン〝圧勝〟を演出するために万全の警備体制を敷き、無事目的を達成した(?)が故に警備陣が弛緩状態にあったのではないか。

 また一つには、諜報・謀略国家としてのプーチン政権の〝体質〟が絡んでいる。プーチン政権は、チェチェン紛争介入目的でのでっち上げ〝テロ〟から誕生したのみならず、国の内外でありとあらゆる偽情報の散布と情報操作、ハッカー集団による情報取得と悪用、サイバー攻撃・データ破壊、諜報活動や選挙攪乱(例えば、米大統領選への介入)等々、陰謀・謀略政治に明け暮れてきた。KGB(ソ連の国家保安委員会)、その後継機関のFSB(ロシア連邦保安庁)のやり口そのままである。陰謀・謀略政治〝体質〟が骨の髄まで染みこんでいるが故に、他国の〝忠告〟すらも「謀略」としか思えず、真実を見失うのだ。

◇IS撲滅に奔走してきたロシア

 もう一つ指摘しておくべきは、ロシアはIS弾圧に狂奔してきたにもかかわらず、その〝力〟を見誤り、軽視してきたその姿勢である。ロシアは反政府勢力弾圧に化学兵器を使用したとして欧米の〝有志国〟がシリアのアサド政権を攻撃するのに対抗してシリアの反政府勢力やISの支配地域を猛烈な空爆によって破壊してきた。アフリカでも「ワグネル」などを表に出してIS叩きに奔走した。

 さらにイスラム教徒が多数を占める最貧国・タジキスタンから流入する民衆を搾取・酷使し、反抗的なタジク人をウクライナ戦線に送り込み、恨みを買い、ISの影響力拡大に手を貸してきた。

 ロシアはそうした真実を直視できないおごり高ぶった帝国主義国家であり、それこそがISの温床となっていることに気づかないのである。

 諜報・謀略に明け暮れれる帝国主義国家ロシア――その犠牲になるのはいつも一般民衆である。 (S)

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