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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1473号 2024年4月28日
【一面トップ】 =日米首脳会談= 日米安保同盟の大転換
        ――「グローバルな連携」謳う
【一面サブ】  戦線を拡大するイスラエル
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 『林紘義遺稿集第一巻』が発刊
        ――先見性と理論的な深さに感銘を受ける
【二面サブ】  ブルジョア政党に堕した共産党
        ――ASEAN幻想の平和構築提言
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

=日米首脳会談=
日米安保同盟の大転換

グローバルな連携」謳う

 4月11日、岸田首相とバイデン大統領は、ワシントンでの会談後共同声明を発表した。声明は、日米両国の関係を世界的規模で連携する「グローバル・パートナーシップ」と位置付けた。日本を中心とする地域的な同盟から地球規模での同盟への〝拡大・深化〟は、日米安保同盟の大転換であり、帝国主義国家日本の一層の反動化を示している。

◇「控えめな同盟国」から「世界に強く関わる同盟国」へ

 岸田は米上下両院合同会議での演説で、中国やロシアの対外的な膨張、北朝鮮の核・ミサイル開発を念頭に、「自由と民主主義の国際秩序」を守るために米国は中心的役割を果たしてきたが、しかし、「米国は独りではない。日本は米国と共にある。日本は長い年月をかけて変わってきた」、「控えめな同盟国から外の世界に目を向け、強く、コミットした同盟国へと自らを変革してきた」と訴えた。

 日本の首相の米議会での演説は、2015年の安倍首相以来である。安倍は集団自衛権の行使を認める安保法制を約束した。それまで日本は他国との共同軍事行動はとらないとしていたが、「自衛」のためという限定付きでの集団軍事行動への道に突き進んだ。その背景には中国の軍事力強化や北朝鮮の核・ミサイル開発があった。

 岸田政権は、22年の「安保三文書」に示されるように軍事費を一挙に2倍の、GDP比2%に増やし、自衛隊が敵基地攻撃能力を持つことを決定した。在日米軍は「矛」、自衛隊は「盾」というこれまでの位置づけを変えて、自衛隊も自ら「矛」の役割を担うことになったのである。

 さらに共同声明は、「日米は作戦と能力のシームレス(継ぎ目のない)な統合を可能とするため、二国間でそれぞれの指揮統制の枠組みを向上させる」とし、今年度中に自衛隊は陸・海・空三軍を一元的に運用する「統合作戦司令部」を新設するのに併せ、米国も在日米軍も司令部体制を変更し、戦時、平時を問わず連携を強めることを謳っている。その他軍事的連携では、ミサイルの共同開発・共同生産や、米軍の艦艇や航空機の日本の民間施設での補修、極超音速兵器を探知・追跡、衛星網整備を行う。

 日米連携は軍事的な分野にとどまらず、GX(グリーン・トランスフォメーション)、半導体、人工知能(AI)、量子技術といった経済的な分野にも及んでいる。

 これ等は、日米が協同して世界の基準作りするとか(GX)、重要な振興技術開発協力で技術的優位を得る(半導体、AI、量子技術)などいずれも主として中国をにらんでのものである。米国は世界の覇権維持のために、中国に対して先端技術・重要原料などのデカップリング政策をとり、優位を保とうとしてきたが、日本もこれに積極的に協力するというのである。

 日米の取り決めについて、バイデンは「同盟発足以来、最も重要なグレードアップ」と歓迎している。今や日本は、日米同盟の軍事的、経済的連携を一層強化し、ブルジョア帝国主義による「自由と民主主義の国際秩序」維持に乗り出そうというのである。

 日本の軍事的連携は米国との2国間にとどまらない。岸田は「自由と民主主義は世界中で脅威にさらされている」と、国際秩序を守るために闘う決意を述べた。

 日本はアジアでは、南シナ海への膨張、進出を図る中国と、海域・領土をめぐって争っているフィリッピンに対して、今年、1月には安全保障協力の強化のほか、「日米比の協議や米比共同演習への自衛隊の参加を通じた防衛交流の促進」のための協定を結んだ。日本は監視艇を贈与したほか、日米比3国海軍による共同パトロール演習を行っている。

 また米、英、豪3国による中国をにらんだ安保枠組み=AUKUSについて、日本は「一貫して支持している。防衛省・自衛隊としては、AUKUSの重要性を認識しつつ、防衛力の強化に資する取り組みを今後も進めていく」と述べているが、近い将来AUKUSに加入する可能性もある。

 そして「自由で開かれたインド・太平洋」のための「戦略対話」の一員であるインドに対しては、投資促進など経済的な関係を強めていくとしている。

 日本の働きかけはアジア諸国だけではない。今年4月、上川外相とNATO事務総長との会談で、「日NATOは安保協力の深化をさらに進めていく」ことで合意した。日本はG7の一員としての立場を利用して、影響力を世界的に広げようと画策している。

 日本が米国の唱える「国際秩序」防衛に積極的に乗り出してきたのは、米国の後退の反映である。13年に「もはや世界の警察官ではない」と言ったのは当時の大統領オバマであるが、国家資本主義中国の帝国主義的膨張、インドなどグローバル・サウス諸国の台頭で、米国は経済的にも軍事的にも後退した。だから、日本などの軍事力増強に期待するのである。

 しかし、共産党のように日米同盟の「グレードアップ」はたんに米国の世界支配の補完とみるのは誤りである。日本の軍事力増強は世界中に工場を進出させ、資本を投下し幾百万の労働者を搾取し、利潤を獲得している帝国主義国家日本の利害が関わっているからである。日本の国家の利権、大資本の利益の維持のために軍事力を一層強化し、世界への関与を拡大しようとしているのだ。

◇帝国主義に反対して闘おう

 日米首脳会談に対して中国は、「他国を標的にしたり、他国の利益を損なったりすべきでない」、「冷戦思考を抱き、グループ政治を行うことに断固反対する」(毛外務省報道官)と反発した。

 中国を「国際社会全体の平和と安全にとっても、これまでにない最大の戦略的な挑戦」(岸田演説)と批判し、〝自由主義〟諸国の結束を訴える岸田の政策は、世界の対立、緊張を激化させるものである。

 日本は帝国主義的軍事強国として、国際社会に影響力を拡大しようとしている。

 労働者・働く者は団結して、軍事大国化の道を進む岸田政権打倒に向けて階級的闘いを発展させていかなくてはならない。 (T)


【1面サブ】

戦線を拡大するイスラエル

 イスラエルと対立するイランは、ハマス、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシなどの反イスラエル勢力と「抵抗の枢軸」を形成し、これら組織の後ろ盾となり、武器、資金援助を行い反イスラエルの武装闘争を支援してきた。 

 イランは、イスラエルとの直接的衝突を〝避けてきた〟が、1日イスラエルが在シリアイラン大使館をミサイル攻撃し革命防衛隊の最高幹部など7人殺害した報復として、15日にイスラエルを数百基の無人機ミサイルで攻撃した。この報復が19日イランに対して行われた。

 ネタニヤフは17日「自分たちで決断を下す。イスラエルは自国の防衛のために必要なことは何でもする」(4・14朝日)と報道されていた通りだが、米国の反対や西欧などの自制要求を無視しての攻撃である―米国にはアリバイ的に攻撃直前に事前通告している―。

 報道からは、両国とも全面的対決は望んではいないようである。しかしこれまでの直接攻撃を行わない「影の戦争」を反故にし、直接戦火を交えたことに国際社会は驚き警戒している。報復が繰り返されイスラエルとイランの対立が中東全域に〝飛び火〟する可能性もある。

 米国、西欧を〝同じ穴の狢〟と見透かすネタニヤフは、要求を受け入れる気は今のところ無さそうである。強気の姿勢をいつまで続けられるかは、米国内で高まる反イスラエルの動向と、ネタニヤフ政権がいつまで存続出来るかにかかっている。

 米国や西欧、日本が恐れ、イスラエルに自制を要求するのは、深刻化するガザ虐殺への憤りや抗議が、米国などの偽善的なダブル・スタンダードに対する怒りとして、米国などが支配する国際秩序に反対する闘いに繋がる事を恐れてである。

 イランと連携する「抵抗の枢軸」を構成するイスラム勢力の軍事行動がエスカレートし、ペルシャ湾の輸送や石油施設の攻撃でエネルギー価格が高騰し、世界経済を混乱させる可能性もある。全面対決によって、イランの経済的、軍事的インフラが破壊されると、イスラム共和制の政治的な動揺も避けられない。

 イスラム体制に反対するイラン人民の政治的闘いがイスラム体制を崩壊させる可能性もある。混乱の中でISやタリバンのようなイスラム原理主義者が政権を奪うことも考えられる。これらはイランの現体制が恐れる事であり、イスラエル、米国にとっても悪夢である。両国の抑制した〝行動〟は「影の戦争」という暗黙の均衡を維持することが、両国にとっても背後に控える帝国主義国家(米英ロ中)にとっても利益だからである。

 労働者は、軍事帝国主義イスラエルの戦線拡大やイランとの攻撃応酬に反対する!

 米国はイスラエルに対して、20日に264億ドルの緊急予算案を議会で採択し武器援助を加速している。ガザ虐殺を進め、戦線を拡大するイスラエルに武器弾薬を供給する。これが米国の主導する国際秩序だ、岸田が訪米で約束した「グローバル・パートナー」とは日本も戦争に参加する道を拓く事である。労働者は戦争への加担を断固拒否する!

◇ガザをめぐる状況

 1日イスラエル軍は、食糧輸送中の米国支援団体車両を攻撃し7名を殺害した。ガザを飢餓に追い込み餓死させようとしている。ネタニヤフは7日にガザ南部から1旅団を残して撤退させたが、百万人をこえる市民が避難するラファでの地上作戦はなし崩し的に開始されている。

 ガザ侵攻から半年間の死者は3万4千人を超え、子供の犠牲者は1万3千人を超えている。19年から22年まで4年間に世界の紛争地で死亡した子供の数1万2193人を上回っている。「2国家解決は実現可能だという強い信念」(朝日1・20)の大統領を持つ米国は、国連安保理で18日パレスチナの国連正式加盟を勧告する決議案に拒否権を行使し否決した。労働者は、国家建設を否決した米国を糾弾し、パレスチナ国民国家建設を支持し、要求する! (古)


   

【飛耳長目】

★次に失言したら辞めると言っていた川勝静岡県知事が三度目の差別発言で辞任した。裏金問題で国会に居座り続ける輩たちや、知性に欠け暴言を繰り返す麻生などと比べると、潔いと言えば潔い★「野菜を売ったり、牛の世話をしたり物を作ったりとかと違い、皆さん(新人職員)は頭脳、知性の高い人たちです」と彼は言ってしまったのだが、そこには彼のある観念がある。元教授で元学長の彼は、知識人こそは労働者や農民とは違い、一段と高い地位にあるという優越観念をもつ典型的なブルジョア知識人であった★だが、彼はこの社会を支えるのが生産や流通などに従事する6700万人の労働者や130万人の農漁民であることを忘れている。また彼は、日本人の美徳を作ったとして「武士道」を大いに持ち上げ、辞めるに際しては細川ガラシャの「散りぬべき……」を引用した。しかし、武士そのものの存在や「武士道」(武士の道徳律)も、ガラシャも、人口の8・5割を占めた農民の生産活動の上に存在していたのである★敢えて彼の〝功績〟をあげるならば、富士山を世界文化遺産にしたこと、国やJR東海の圧力に屈せずリニアの静岡区工事を認可しなかったこと、議会の過半を占める自民に臆せず、また政府にもおもねらず、反自民の立場を貫いたことであろうか。(義)


【2面トップ】

『林紘義遺稿集第一巻』が発刊

先見性と理論的な深さに感銘を受ける

 林紘義・労働者党元代表が亡くなったのは、2021年2月10日であった。その後、遺稿集発刊の計画が立てられたが、『海つばめ』や『プロメテウス』の編集・発行に追われてしまった。今、ようやく遺稿集第一巻を世に出すことができる。
(4月末発刊 定価 本体2千円+税 全国社研社刊)

◇安保闘争の挫折から起つ

 林さんが東大に入学した当時は、60年安保条約の改定が強行されようとしていた前夜であった。林さんは入学後、激動する政治情勢から学び、社共に代わる労働者の政党をめざして結成されたブント(共産主義者同盟)に加入して活動を開始し、また、大学の自治会役員や東京都学連執行委員・副委員長として安保闘争の先頭に立った。

 しかし、安保闘争を「革命」に転化せよと叫んだ新左翼やブントの指導部は安保闘争の挫折の中で混乱を極め、ブントの指導部は革共同(トロツキー主義の政治組織)に乗り移り、ブントは崩壊した。林さんは新左翼やブントの小ブルジョアの思想と決別し、新たな政治組織の結成に向かって歩み始めた。

 本書には、この模索の時代に書かれた5本の論文と林さんが主筆した「全国社会科学研究会」の大会決議(ソ連や中国を国家資本主義と規定)や大会報告も載っている。以下、5本の論文について簡単に紹介する。

◇安保闘争の総括

 最初の論文は、東大の同級生であり、ブントで共に活動し60年6月にデモ中に警察の暴虐で亡くなった樺美智子さんを追悼した論文、「60年安保闘争と同志樺の死の二周年にあたって」である。

 この論文は、樺さんを追悼しながらも、60年安保闘争の「意義や総括」をまとめたものであり、安保改定という「一つの改良闘争」を革命化しようとしたブントや新左翼の思想的限界を明らかにした無二の論文であった。

 と同時に、樺さんや林さんたちが悩みながら必死に闘った姿を彷彿とさせるリアルな文書であり、読者を感動させる。

◇絶望的闘いを強いた急進主義

 2つ目は、大正鉱業(炭鉱企業)の合理化攻撃と闘う労働者を谷川雁らが指導し、その急進主義と思想的堕落ゆえに敗北と絶望に追いやった労働運動を詳しく総括した論文、「大正行動隊の闘い」である。

 当時、エネルギー資源が石炭から石油へと変わり、安い石油が輸入されていた。当然、石炭産業は危機になる。この危機を克服するために資本は労働者を削減し、賃下げを行うなどの猛烈なしわ寄せを行い始めた。だが労働者の政党は未熟であった。これが当時、急進主義が跋扈した背景である。

 大正鉱業の労働者を指導した「大正行動隊=共産主義同志会」は、「合理化絶対反対」、「プロレタリア革命へ」「死んでも闘う」という出口無き闘いを労働者に強いた。だが闘いが行き詰まり、首切りが避けられないことが分かるや、今度は何の反省もなしに「退職金闘争」に鞍替えした。

 今までの方針を180度転換したことに対して、「大正行動隊」は、全員でヤマから飛び出せば資本家が困ると言い、自分達はヤマに残る程の「腰抜けではない」と、ヤマに残った労働者に対して〝優越〟を誇示した。

 このように、急進主義者が労働者を「絶望」に追いやり「団結」を解体したことを克明に批判している。

◇資本主義論の歪曲

 3つ目は、「無概念で、無内容なスターリンの最大限利潤論」である。学生時代から林さんは活動の合間をぬって『資本論』やマルクス主義を学び、スターリンをはじめ共産党系学者や宇野弘藏らの労働価値説歪曲と徹底して闘ってきた。本論文はその一つである。

 スターリンは、価値法則は商品生産の法則であるとしても資本主義の法則ではない、かつ自由資本主義の「平均利潤」は独占資本主義では「最大限利潤」に変わると言う。

 だが林さんは、具体的な条件の下で起きる独占利潤の形成という現象をスターリンが「最大限利潤」という言葉で表現したものに過ぎないと断言。

 林さんは独占資本主義でも生産の無政府性と競争を排除せず「平均利潤」を形成する法則が貫かれると述べ、スターリンの「最大限利潤」という法則は成立し得ないことを論証している。

◇レーニンの歴史的評価

 4つ目の論文は、レーニン生誕100周年を記念して刊行された『レーニンの今日的意味』の中にある一論文、「革命家・思想家・人間としてのレーニン」である。この論文はレーニンの少年時代からロシア革命を成し遂げるまでの生涯と「レーニン主義」を歴史的に総括したものである。

 当時のロシアは、海外資本が移入され資本主義が勃興し始め、労働者の闘いも生まれていたが、専制君主が支配する体制下にあった。しかも、「農村共同体」が広く残り、小農民が圧倒的多数を占める国家であった。

 それゆえ、封建体制を打破することでは一致するが、ロシアは商品経済や資本主義を経ずして、「農村共同体」を土台に社会主義に移ることができるという革命家(ナロードニキ)や大多数の農民を無視し抽象的に「プロレタリア革命」を唱えたトロツキーらがいた。

 これに対してレーニンは、来るべきロシア革命を客観的歴史的に見れば、封建的体制を打破する「ブルジョア的革命」であるが、労働者と農民が率先して闘い、自らの共同した利益を守る政治権力の樹立をめざすべきだとした。

 こうしたロシア革命を巡るレーニンの思想と闘いが詳しく論じられ、また、革命後の混乱(「戦時共産主義」に対する農民らの反乱)が何を意味するのかについても詳しく触れられ、非常に分かり易く展開されている。

◇観念的な「永続革命論」

 5つ目は、トロツキーの観念的で空想的な「永続革命論」や「世界同時革命論」に対するマルクス主義からの批判書、「ロマン主義のマルクス主義的表現」である――本論文は、今では絶版になっている『科学的共産主義研究』第28号からの再掲である。

 トロツキーは、「政治力学」でロシア革命とその後の社会建設を論じ、「プロレタリアート」が権力を樹立し、「永続革命」を進めていくなら民主主義から社会主義に成長転化できると考えた。

 だがトロツキーは自身の「永続革命」論が農民を無視した抽象であり現実と矛盾していることに、薄々気付いており、その矛盾を誤魔化すために、「世界同時革命」を打ち出した。トロツキーはロシアの来るべき社会主義革命はヨーロッパの革命によってはじめて成功すると言い、他国の革命の待機主義者になった。

 これらを労働者が支持できないのは明らかだろう。本書の出版を機会に林さんのトロツキー批判の神髄に触れて頂きたい。

 林遺稿集は、労働者が労働運動や改良闘争をどのように闘ってはならないか、またどのように「労働の解放」を目差して闘うべきかを明示している。ぜひ多くの皆さんが本書を読まれ、学ばれることを心より願うものである。(W)

注)本紙やPDF版には、「60安保闘争40周年集会」の時に撮影された林紘義さんの写真が掲載されています。


【2面サブ】

ブルジョア政党に堕した共産党

ASEAN幻想の平和構築提言

 共産党の志位議長が17日、衆院議員会館で「東アジアの平和構築への提言――ASEANと協力して」と題する講演をした。志位の提言は、現在のASEAN諸国のブルジョア支配に拝跪し、社会を変革する労働者を裏切るものだ。

◇ブルジョア支配を美化する提言

 志位は「どうやって戦争の心配のない東アジアをつくるか」、「外交による平和構築に徹する必要があります」と提言。それは、ブルジョア政党に堕した共産党の惨めな姿を曝け出している。

 提言の一つ目は、「ASEANと協力して東アジア規模での平和の地域協力の枠組みを発展させる」である。提言は、ASEANが「平和と協力」の地域だと評価し持ち上げている。ASEANの国同士で戦争は起きていないが、現在ミャンマーでは内戦状態になっている。提言はこの現実を見ずに「平和」と言うのだ。

 ASEANは19年に中国を取り込んだ「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)を採択したが、提言はこれを「平和の地域協力の流れを域外に広げる取り組みの最新の到達点」と評価し、憲法9条を生かした外交で、AOIPの実現を目標にするとしている。「戦争放棄」と「戦力の不保持」の「憲法9条を生かす」というが、ASEAN諸国のみならず日本も自衛隊という立派な戦力を保持している。

 そもそも共産党は「急迫不正の主権侵害」を受けた場合などに「自衛隊を国民の安全のために活用する」とし、「戦争放棄」と「戦力の不保持」に矛盾したことを言っている。志位はただ内容のない「憲法9条を生かした外交」を提案するのだ。

 提言の二つ目は、それによって「東アジア平和共同体をめざす」と言う。しかしASEAN自体がブルジョア国家の集合である。提言は、その集合体を「平和共同体」と言うだけである。ASEAN諸国を現状のままにして、平和が構築されればそれでいいと言うのだ。

 しかしミャンマー一国をとっても、まず国軍を一掃する労働者を中心とした闘いが必要なことは明らかだ。タイでは去年5月の下院総選挙で、軍の政治介入を強く批判しより広い民主主義の回復を主張する前進党が第一党になったが、軍の政治介入で排除され新軍政党による政権が成立した。

 またカンボジアでは、40年近く反対勢力を抑圧し独裁的に統治してきたフン・セン政権が、去年7月に民主主義的な選挙ではなかったと言われる選挙で圧勝し、自分の息子に政権を委譲した。他の諸国もこれらと大差は無い。こんなASEAN諸国を平和国家だと提言は言うのだ。

 提言は、「『平和と協力』の地域へと劇的に変化させてきたASEANの『成功』」と評価する。確かにASEANの経済発展は2000年代に入り年5%から4%の経済成長を遂げ、22年の名目GDPは3兆6千億ドルと日本の4兆2千億ドルに迫っている。

 しかしそれは資本主義的な経済発展である。労働者は資本主義的な経済発展の歴史的意義を認めるが、経済発展は厳しい資本の下での労働者の搾取に基づくものだ。労働者大衆を抑圧する資本の支配の変革を、労働者は掲げて闘っていかなければならない。そんなブルジョア国家を平和な国家だと持ち上げる提言は、労働者を裏切るものだ。

 提言の三つ目は、「ガザ危機とウクライナ侵略――国連憲章・国際法にもとづく解決を」と言うが、「国連憲章・国際法にもとづく解決」が現実に無力になっている。ガザ危機においては、イスラエルによるパレスチナ人民のジェノサイトを直ちにやめさせ、パレスチナの民族自決の闘いを支持すること、ウクライナにおいては民族自決を踏みにじるロシアの侵略を撃退する闘いを支持することが、提起されなければならない。

◇労働者・働く者の課題

 ASEANはすでに資本主義的発展に踏み出しており、資本の支配の下で労働者が搾取され抑圧されている。

 ASEANの政治は、その資本の支配を維持するためのもので、労働者の利益は資本の利益と根本的に対立する。労働者による資本との闘いは、ASEANの支配階級・ブルジョアジーとの闘いになるのだ。提言のようにASEANを「平和共同体」などと持ち上げて、社会主義をめざす労働者の闘いを発展させることはできない。

 志位は、岸田訪米の後の18日の衆院で、米軍との連携を取り上げ、「自衛隊は事実上、米軍の指揮統制のもとに置かれる」、沖縄の米軍基地に関して「あまりにも卑屈な従属姿勢だ」などと民族主義からの視野狭窄な批判を行ない、岸田政権が米国と協調して、中国と対抗する帝国主義的強国化を進めている反動的な本質を覆い隠している。

 それだけではない。「日本共産党も参画する政権をつくる」、「政権ができれば一気に今日話したことは日本外交の方針になる」などと、自民に変わってもブルジョア政権にしかならない、野党連合の政権に色気を隠さないのだ。共産党のブルジョア的退廃は極まっている。労働者は労働者党に結集し、岸田政権打倒の労働者独自の闘いを発展させていこう。

 我々は世界の労働者と連帯し、資本主義との闘いを発展させ社会主義を勝ち取り、真の平和を獲得するであろう。(佐)

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