WPLLトップページ E-メール
購読申し込みはこちらから


労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

◆第2第4日曜日発行/A3版2ページ
一部50円(税込み54円)

定期購読料(送料込み)25号分
  開封 2000円
  密封 2500円

ご希望の方には、見本紙を1ヶ月間無料送付いたします。

◆電子版(テキストファイル)
メールに添付して送付します

定期購読料1年分
 電子版のみ 300円

A3版とのセット購読
  開封 2200円
  密封 2700円

●お申し込みは、全国社研社または各支部・党員まで。
E-メールでのお申し込みもできます。

アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1476号 2024年6月9日
【一面トップ】 窮地の自民救う維新、公明
        ――ごまかしの自民規正法案、維新、公明賛成へ
【一面サブ】  ガザは瓦礫と死臭の街に変わった
         ――バイデンが発表した停戦新提案
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 労働者を瞞着する資産運用立国
        ――資産なき労働者に資産所得倍増の勧め?
【二面サブ】  財政破綻に備えるプラン?
        ――ブルジョアの処方箋は労働者を踏み台にする

※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

窮地の自民救う維新、公明

ごまかしの自民規正法案、維新、公明賛成へ

 自民党派閥の裏金事件を受けた政治資金規正法改正案をめぐり、岸田首相は維新、公明両党と党首会談を開き、両党の意見を取り入れた修正案を提示し、両党がそれに同意、賛成に転じたために衆院通過の見通しとなった。しかし、自民党が党の提案を修正したといっても、企業の献金、政治資金パーティー温存など、金権腐敗の仕組みは依然として残されたままである。維新、公明が窮地の自民を救ったのであり、両党の親自民の階級的本性を暴露している。

◇政治資金パーティー公開基準は「5万円超」へ

 裏金づくりの温床となった政治資金パーティーの購入者の公開基準について自民は現行の「20万円超」を「10万円超」とすることを主張していたが、「5万円超」とするとの公明の主張を取り入れた。これに対して公明の山口代表は「我々の考えがほぼ実現された」として自民の「改正案」に賛成する主要な理由としている。

 自民内には、岸田が公明の公開基準「5万円超」を受け入れたことに対して、妥協しすぎるとの不満があるといわれるが、しかし「5万円以下」のパーティー券購入者の名前はこれまで通り明らかにされないままに、禁止されている政治家個人への献金が続けられることになる。また、政治資金パーティーの回数の制限もないため、回数が多くなればこれまでと変わらないことにもなる。

 結局、裏金づくりの温床をなくすための政治資金パーティー券購入者の公開基準の「5万円超への引き下げといっても、政治資金パーティーを認めている以上実効性のないものでしかないのである。

◇「政策活動費」は依然ブラックボックスに

 「支出の受け手のプライバシーや営業の秘密」などを理由として、領収書の保存の義務がないとされてきた「政策活動費」については、「組織活動費」とか「選挙活動費」など「大まかな項目」ごとに年月の金額を公開するというのが自民党の「改正案」であり、それに維新提案の「領収書などを10年後に公開する」という仕組みについて、「具体的な内容を早期に検討して、結論を得る」という。

 維新の代表は、「自民が維新の提案を『取り入れた』」と自民に賛成する理由を挙げている。だが、公開は何故10年後なのか。10年もたてばもう議員でなくなっている者もいるし、派閥(政策グループ)も変わっているかもしれない。

 「政策活動費」が問題になっているのは、領収書も使途も不明なまま、「政策活動費」と記載することですまされてきたことが、不正な裏金づくりの温床となっているからであり、それを防止するためには、その内容をつまびらかにすることが必要だからである。

 しかし、不正が行われたことが10年後に明らかになったとしても何の役にもたちはしない。維新の提案がそのまま通ったとしても、「政策活動費」は依然としてブラックボックスのままであり、不正の温床を残すことになるのである。

◇企業献金禁止については言及なし

 そのほか政党交付金制度導入のかわりに「見直し」が検討されるべきであった企業献金の禁止については全く言及していない。さらに言えば税金を原資とする政党交付金(国民一人当たりで、250円、議員数に応じて政党に支給される)は企業献金と共に廃止されるべきである。

 「政治資金の透明化」のための「第三者機関」設置に関しては、「必要な措置を講じる」と付則に記された。しかし、30年前に政治改革が問題になった際には、企業献金を「見直す」などが付則に盛り込まれた。だが、それは放置されたまま現在に至っていることを見れば、付則で「第三者機関」の設置を謳ったからといって、それが実現されるという保証はないし、結局不満をそらさせるためのごまかしでしかない。

◇維新、公明の親自民の本性露わに

 政治資金改革をめぐる維新、公明の対応は、金権腐敗が明るみに出され、社会の厳しい非難を浴び窮地に陥っている自民に手を差し伸べ、助けること以外のなにものでもない。維新は自ら「第二自民党」といってはばからず、改憲推進を訴えている。一方、公明は「平和」とか「福祉」を看板にしつつも、実際には安倍の安保関連法や岸田の安保三文書に賛成するなど反動政治に賛成してきた。公明は連立与党としての椅子を維持するために大衆を欺き、自民に従ってきたのである。

 これこそが彼らの本性であり、自民とともに、労働者の階級的闘いで彼らを政治から一掃しなくてはならない。(T)


【1面サブ】

ガザは瓦礫と死臭の街に変わった

バイデンが発表した停戦新提案

◇イスラエルによるパレスチナ人虐殺

 イスラエルのガザ報復攻撃は8か月目に突入した。ガザの6割以上を制圧し、ガザは瓦礫と死臭漂う街に姿を変えた。今月2日時点で死者3万6439人、瓦礫の下には1万人を超える人々が埋まったままである。イスラエル軍が繰り返すのは、「自衛の為の攻撃でハマスを狙った、市民は標的にしていない」である。

 ラファの検問所を占拠し、支援物資がエジプトに滞留し食料が腐敗し破棄される状況を生み出しながら、「人道危機の責任をイスラエルに押しつけているが、ガザの人道危機を防ぐカギは今、エジプトの手中」と開き直り、「悲劇的な戦闘は続いているが、虐殺は起きていない」と、誰も信じない嘘を相変わらず繰り返している。

 乳幼児や子供を爆弾でバラバラにするだけでは飽き足らず、飢餓と感染症で命を奪いこの先イスラエルに抵抗する〝芽〟を摘み取ろうとしている。ネタニヤフによって、〝天井のない牢獄〟ガザは今、〝アウシュビッツ〟になった。

◇「帝国主義の極み」としての蛮行

 20日、国際刑事裁判所(ICC)は戦争犯罪容疑で、ネタニヤフらに逮捕状を請求した。また国際司法裁判所(ICJ)は、ガザでジェノサイドを行っていると、ラファでのイスラエル軍の作戦即時停止を命令した。これに対してイスラエル戦時内閣のガンツ前国防相は24日、声明で「人質を取り戻し、自国民の安全を確保するため、ラファを含め、どこでもいつでも戦い続ける」と激しく反発した。

 ネタニヤフは逮捕状請求について、「歴史的な道徳上の暴挙だ」と非難し、バイデンも「言語道断」と切り捨て、ICCメンバーに対する制裁を行うと発表。イスラエル軍の道徳とは、「攻撃は予告した、死にたくなければ、水も食料もなく砂埃が舞い上がる道路を数十キロ歩いて避難場所へ移動する事」をSNSで発信することである。これのどこが道徳的か!帝国主義の蛮行だ!

 イスラエルが道徳的に尊敬されたいのであれば、一切の民族的迫害に反対し、迫害する側と闘うことが、ホロコーストを経験したユダヤ人国家イスラエルの立場でなければならない。ガザでの〝振る舞い〟はホロコーストを盾にして、ガザ虐殺を正当化する卑劣かつ過去・現在の犠牲者を冒涜する〝悪行国家〟としか呼べない蛮行である。

◇二重基準でイスラエル擁護する米国

 ネタニヤフは、「ジェノサイドを行ったのはハマス」と反論し、ICCやICJの決定を一笑に付した。好戦国家であるイスラエル・米国、中・ロなどは、ICCに加盟していない。米国も逮捕状に反発しているが、ウクライナでの戦争犯罪で昨年春にプーチンにICCが逮捕状を請求したことにバイデンは「妥当だ」と発言したことを忘れたようである。二重基準と批判されようが、米国にとっての判断基準は、米国の世界支配に有利か不利かでしかない。

◇パレスチナに必要なのは死の恐怖からの解放

 ネタニヤフが展望なき軍事行動を継続することに対して、先月18日戦時内閣のガンツ前国防相は、「ガザ戦後統治計画」を発表し、6月8日までにネタニヤフ政権――22年6月発足した第6次ネタニヤフ政権はネタニヤフのリクード(32議席)に極右政党など6党で過半数(64議席)の極右的連立政権――が計画を実行しなければ、政権から離脱すると、対立を深めている(ネタニヤフは拒否する声明を18日に発表)。先だって15日には、ガラント国防相がガザの戦後統治には、イスラエルは支配しないと明言するようにネタニヤフに求めたが、ネタニヤフは拒否し政権内の亀裂が深まっている。

 そんな中、先月31日バイデンが緊急演説し、「イスラエルがイスラム組織ハマスに提示した、永続的な停戦と人質の解放に向けた新提案について説明した」が、この「新提案」をネタニヤフではなく、米国大統領のバイデンが発表したことに注目が集まっている。

 新提案(米政府高官は「新提案」について、「数週間前のハマスの提案とほぼ同じ」としていた)に対してハマスは「肯定的に受け止める」と直ちに発表した。イスラエル首相府は1日、「恒久的停戦のためにはイスラム組織ハマスの軍事力や統治能力の壊滅、全人質の解放などが必要だとする声明を発表した」(2日朝日電子版)。

 2名の極右政党の閣僚が政権離脱を表明しているが、最大野党のイェシュ・アティド(24議席)が連立入りの意向を示している。ネタニヤフは米議会合同会議に招待され演説する予定で、停戦案をめぐってイスラエル国内の主導権争いが激しくなるだろう。バイデンにとっては苦戦する大統領選に向けた〝起死回生の一発〟を目論んでいる。

 今後の進展を待つしかないが、パレスチナに今、必要なのは理不尽な死の恐怖から解放されることである。(古)


   

【飛耳長目】

★6月20日告示の都知事選に立憲民主の蓮舫が出馬表明した。前回知事選で得票率60%の366万票を集めた現職小池に、22年参院東京選挙区67万票で4位だった蓮舫の挑戦である★5月の衆院補選での立憲候補3勝と、静岡知事選での立憲・国民推薦候補が自民推薦候補を破った〝風〟を受けての出馬だが、「小池都政をリセットする」と言うだけで、具体的な公約は後回しのままだ★現職小池は、6兆円を超す潤沢な税収を元手に、今年から始めた「高校授業料の実質無償化」に続き、自分だけ目立てばいいとばかりに担当部局に知らせずに「都内在住の0歳から18歳までの児童に一人当たり月額5千円給付」をサプライズ発表★給付申請は知事選直前の6月中旬開始という露骨な選挙目当てのパフォーマンスに振り回される職員の不満は募る。とりわけ隣県在住の子育て中の職員は、この無償化と給付の対象から外れているのだから爆発寸前だ★裏金問題でヨレヨレの岸田自公政権と連携してきた小池都政を「リセットする」好機に違いないが、〝風〟頼みや、プチブル好みの樹木伐採が問題となっている明治神宮外苑再開発計画の見直しでは、非正規労働と生活必需品の値上げラッシュで困難な境遇にある女性や若者ら、勤労都民の切実な声を結集することはできない。(Y)


【2面トップ】

労働者を瞞着する資産運用立国

資産なき労働者に資産所得倍増の勧め?

 岸田政権は、「資産所得倍増プラン」を含む「資産運用立国実現プラン」の一環として、「金融・資産運用特区」の創設を目論み、1月から自治体等からの提案の公募を始めていた。政府は今月4日、提案書を提出した4地域を認定地域に指定した。岸田の資産運用立国構想の実現化の一つであるが、それが低賃金と物価高などに苦しむ労働者の生活改善に帰するものとなるか、それが問題だ。

◇令和「所得倍増」は「資産所得倍増」へ

 2021年9月に行われた自民党総裁選で岸田は、経済・社会政策として、これまでの〝新自由主義〟を転換し、「所得倍増」によって「中間層の拡大を」を目指した「新しい資本主義」をつくると主張。「所得倍増」のためには持続的な経済成長が必要になるが、岸田は「アベノミクスによって企業収益は上がり、経済は間違いなく成長した」と言って、アベノミクスの継承を謳った。

 しかしアベノミクスによって、経済成長は1%そこそこと低迷したままで、実質賃金も上がらなかった。一方借金依存による巨額の財政支出によって、国の借金は国内総生産の2倍にもなり、成功どころか経済はさらなる困難に陥っている。岸田はその失敗したアベノミクスをよりどころに、「令和版所得倍増」を掲げたのだ。

 岸田が総裁選でぶち上げた「所得倍増」は、その後触れられる事はなかったが、22年5月のロンドンでの講演で、岸田は「貯蓄から投資へのシフトを大胆・抜本的に進め、投資による資産所得倍増を実現いたします。そのために、NISAの抜本的拡充や、国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設など、政策を総動員して『資産所得倍増プラン』を進めていきます」、「Invest in Kishida」(岸田に投資を)と呼びかけた。岸田は海外での外国人相手の話を利用し、全く実現の見込みのない「所得倍増」を「資産所得倍増」にすり替えた。

◇資産運用立国とは

 岸田は21年10月に、「最大の目標はデフレからの脱却」、「成長と分配の好循環を実現し、国民が豊かに生活できる経済を作り上げていく」と、「新しい資本主義実現会議」を立ち上げ、22年11月には「資産所得倍増プラン」を公表。それは、「家計に眠る現預金を投資につなげ、家計の勤労所得に加え金融資産所得も増やしていく」とするもので、具体的な目標としてNISA口座数を倍増させ、NISAで投信の買付額を倍増させ、資産運用収入の倍増を見据えるとした。

 23年12月には、「資産運用立国実現プラン」を公表した。2千兆円超の家計の金融資産の半分を占める預貯金を投資に振り向け、それを国民の資産形成や企業の成長につなげると謳っている。

 ここには、先行している「資産所得倍増プラン」におけるNISAの年間投資上限額の引き上げ、非課税保有期間を無期限にするなどの拡充・恒久化とともに、「金融・資産運用特区」の創設などの「資産運用業の改革」、企業年金の改革などの「アセットオーナーシップの改革」などが挙げられている。

 その他、投資などを学ぶ「金融経済教育」が掲げられ、学校ではすでに実施されている。金融教育なら、経済やカネとは何かを科学的に説明した「資本論」こそ学ぶべきではないか。

◇「金融・資産運用特区」は絵に描いた餅

 「金融・資産運用特区」は、「資産運用立国実現プラン」の主要施策だ。

 金融・資産運用業を特定地域へ集積し、地域の産業・企業が発展しやすい環境を整備するのが目的で、特区の主な取り組みは、行政手続きの英語対応、外国人投資家向け在留資格の創設、銀行によるGX出資規制の緩和、地方税の減免などだ。今回、北海道・札幌市、東京都、大阪府・大阪市、福岡県・福岡市の4地域が特区に認定された。

 北海道・札幌市は、世界中からGX産業(洋上風力発電、水素サプライチェーンなど)に関する資金、人材、情報が集積するアジア・世界の「金融センター」を目指す。

 東京都は、「サステナブルな社会を実現するアジアのイノベーション・金融ハブ」としての地位を確かなものとする。

 大阪は、25年万博のレガシーを活用し、グローバルスタンダードに合わせた規制改革等を実現し、海外投資を呼び込み、金融機能強化で、国際金融都市の実現を目指す。

 福岡は、「アジアのゲートウェイ」等の特性を活かし、国際的な金融機関やその関連企業、(高度)金融人材を集積していくことを目指す。

 これらを見て分かるように「金融センター」などを謳う「金融・資産運用特区」は、国内外の資本を呼び込もうとしているが、今のところ絵に描いた餅に等しい。

◇資産運用立国は労働者のためか

 「資産所得倍増」は、預貯金などの金融資産を持たない人々には無縁だ。当初岸田は、格差を問題にし、金融所得課税の強化を掲げていたのだが、「資産運用立国」は貧しい階層とそうでない階層との格差を広げるだけだ。

 岸田は、「何よりも重要なのは、物価高を上回る所得の実現」と言うが、歴代自民党政権が進めて来た「規制緩和」、「雇用流動化」によって非正規労働化が進み、労働者は低賃金で過酷な労働に追いやられている。今年の〝高水準〟の賃上げも物価高に追いついていない。実質賃金は2年以上も下がり続けている。

 「資産運用立国」はNISAなどの金融投資による所得向上を煽り、一方、満足できない賃金に抑圧するなど労働条件の悪化を強め、物価高によって生活苦に陥る労働者の困難を放置するものだ。

 NISAによる資産運用は現下の株高状況をよりどころとする。それは何時か金融危機や恐慌の株価暴落となって投資家に跳ね返るのだ。岸田は、かつてのバブル崩壊を忘れたような虫の良い話をしているが、株が暴落したら責任を取るのか、取れるのか。

 「金融・資産運用特区」による資本誘致で地域の産業・企業が発展する確かな保証もない。

 労働者・働く者は、岸田の「資産運用立国」に一切の幻想を持たない。労働者・働く者は資本の廃絶を求めて、資本との闘いを強固にしていくのみだ。 (佐)


【2面サブ】

財政破綻に備えるプラン?
ウクライナ侵攻

ブルジョアの処方箋は労働者を踏み台にする

 民間シンクタンク「東京財団政策研究所」は、日本が財政破綻に陥ったら、どう対処するかという「緊急プラン」の提案を急いでいる。政府も日銀も自らやっている金融財政政策が破綻するとは断じて言えず、どこかのシンクタンクがやるなら大目に見ようということらしい。

◇米国FRBで債務超過、日銀もその恐れがあると

 「東京財団政策研究所」は笹川平和財団によって作られたことを見ても、自民党とゆかりのある研究所である。その研究所が日本の財政破綻が発生した場合の「緊急プラン」を出そうというのは、余程のことである。このプランは今年末に発表されるようだ。

 そのための予備的考察がいくつか公表されている。しかし、肝心の政府財政については、深く分析されていない。

 「日本の対GDP比の公的債務残高は、G7諸国中で最も大きく、財政危機時のギリシャをも上回る。世界市場例のないレベルの高齢化も、今後一層本格化する」と一般的な現象を説明するのみで、それ以上ではない。

 彼らは「財政膨張がこのまま続けば、財政・社会保障の持続性に疑義が生じ始めるのは避けられない。長期金利上昇が続けば、事態は加速化する」と述べながら、「財政危機は現時点では非常に低い」が、長いスパンでは無視できないレベルだと腰くだけしている。

 その一方で、日銀が保有する国債の「含み損」や日銀財務の危機的状況については、米国FRBの「債務超過」と合わせて詳しく紹介している。

 米国FRBが発表した22年決算報告によれば、22年後半から「逆ざや」(保有する資産から得られた利息収入から、利払いや人件費などを差し引いた「余剰金」がマイナスになること)になり始め、財務省への「余剰金」の送金はストップしている。さらに、FRBは23年9月に、約543億ドルの「債務超過」(総資本から余剰金のマイナス部分を引く)に陥っていた。「債務超過」に転落したのは、物価対策のために行った政策金利の引き上げによって、「FRB準備預金の付利やリバース・レポ金利(借入金利)」が上昇し、FRBの利払いが大幅に増えたからである等々。

 日銀の保有国債の「含み損」については、マスコミ報道によって、23年度末(24年3月)時点として過去最大の9・4兆円となったことが明らかにされている。

 そして、「政策研究所」は、作年10月時点の長期金利(0・86%程)から、金利上昇と「含み損」との関係を計算して公表している。それによると、「長期金利が1%上昇した場合の評価損は、37・8兆円となり、驚くほどの金利リスクを抱えている」と述べている。

 また、日銀がFRBのような「逆ざや」になる利上げ幅についても言及しているので、結論だけ紹介する。日銀当座預金の「付利」が0・25%上昇すると日銀の支払い額が収入を上回り、「逆ざや」(赤字のこと)になる。また、「付利」1%を3年続けると自己資本を上回る「債務超過」となり、「付利」が2・2%なら単年度でも「債務超過」になると分析している。要するに、円安と物価高騰が長期化した場合、日銀は対応できるのか疑問だと言いたいのだ。

◇政府財政も危機的

 「政策研究所」は政府に遠慮があるらしく、国家財政の危機についてはあまり触れていない(今のところ)。

 だが、国家財政もまた、借金に依存し続け、健全化は口先だけになっている。それは、個別資本どうし、また国家どうしの利潤獲得競争と覇権争いを決して無くすことが出来ない資本主義世界の中にいるからだ。日本政府は、他国同様にカネをバラ撒くことを止めることができない。

 経済回復と軍事力強化を図った「アベノミクス」によって、国債依存が加速され、「国債費」の支払いが年々増えてきたように、この傾向は無くならないだろう。まして、もし日銀が金利を引き上げるなら、政府は新規発行の国債と借換債の金利を上げることになり、さらに「国債費」は巨額になる。

 この「国債費」は、24年度で27兆円、歳出予算の24・1%となっているが、金利引き上げと借金政策を継続するなら「国債費」はすぐにも30兆円を超える。そして、歳入予算の方でも、借金依存率は現在3割であるが、いずれ4割になるという異常事態になる。そうなれば、政府はさらに借金に依存せざるを得ないという麻薬財政に転落する(既にそうなっている)。

 MMTは「政府の赤字=民間の黒字」と金融資産会計で経済を論じ、自前の通貨を発行している国家は、いくら国債を発行(借金)しても問題ない、政府が借金すればするほど民間の利潤は増えると、デタラメな理屈を吹聴した。

 しかも、政府の借金は貨幣発行権のある日銀が肩代わりすればいい、日銀は国債を買って貨幣を発行するだけのことだと言った。また、為替相場は円安になっても放置すればいい、いずれ回復するとも言った。

 だが、日銀も政府も、矛盾の中で身動きできない状態になりつつある。金利正常化の道を選べば、日銀も政府も財政上の困難に直面するし、金利を無視するなら物価高騰やインフレの爆発に対して対応できなくなり、労働者の生活は破壊され困窮を極める。経済も大混乱となろう。

 MMTは、れいわや共産党、さらには組合活動家や新左翼諸派にも影響を及ぼしたようだが、もうとっくに破綻している。

◇財政は軍事費などで膨張必至

 岸田政権は、少子化が進む真の原因(結婚したくても出来ないのは何故なのか、結婚しても子供は欲しくない人の背景は何なのかなど)を解明する能力を持っていない。ただ、子どもがいる世帯に高校、大学の授業料無償化を行うというピント外れのことをやっている。社会保障費の他に、この少子化対策費を今後計上していこうとしており、さらに、軍事費もGDP比2%に向けて増やそうとしている。世界との競争に勝ち抜くために、GXやDXや半導体などにも多大な予算を必要としている。

 既に述べたように、日銀と政府財政のジレンマは、今後、深まるばかりである。財政破綻が必然であることを労働者は学び、理解し、その時のために団結を固めなければならない。(W)

ページTOP