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●1476号 2024年6月9日 【一面トップ】 窮地の自民救う維新、公明 ――ごまかしの自民規正法案、維新、公明賛成へ 【一面サブ】 ガザは瓦礫と死臭の街に変わった ――バイデンが発表した停戦新提案 【コラム】 飛耳長目 【二面トップ】 労働者を瞞着する資産運用立国 ――資産なき労働者に資産所得倍増の勧め? 【二面サブ】 財政破綻に備えるプラン? ――ブルジョアの処方箋は労働者を踏み台にする ※『海つばめ』PDF版見本 【1面トップ】窮地の自民救う維新、公明ごまかしの自民規正法案、維新、公明賛成へ自民党派閥の裏金事件を受けた政治資金規正法改正案をめぐり、岸田首相は維新、公明両党と党首会談を開き、両党の意見を取り入れた修正案を提示し、両党がそれに同意、賛成に転じたために衆院通過の見通しとなった。しかし、自民党が党の提案を修正したといっても、企業の献金、政治資金パーティー温存など、金権腐敗の仕組みは依然として残されたままである。維新、公明が窮地の自民を救ったのであり、両党の親自民の階級的本性を暴露している。 ◇政治資金パーティー公開基準は「5万円超」へ裏金づくりの温床となった政治資金パーティーの購入者の公開基準について自民は現行の「20万円超」を「10万円超」とすることを主張していたが、「5万円超」とするとの公明の主張を取り入れた。これに対して公明の山口代表は「我々の考えがほぼ実現された」として自民の「改正案」に賛成する主要な理由としている。 自民内には、岸田が公明の公開基準「5万円超」を受け入れたことに対して、妥協しすぎるとの不満があるといわれるが、しかし「5万円以下」のパーティー券購入者の名前はこれまで通り明らかにされないままに、禁止されている政治家個人への献金が続けられることになる。また、政治資金パーティーの回数の制限もないため、回数が多くなればこれまでと変わらないことにもなる。 結局、裏金づくりの温床をなくすための政治資金パーティー券購入者の公開基準の「5万円超への引き下げといっても、政治資金パーティーを認めている以上実効性のないものでしかないのである。 ◇「政策活動費」は依然ブラックボックスに「支出の受け手のプライバシーや営業の秘密」などを理由として、領収書の保存の義務がないとされてきた「政策活動費」については、「組織活動費」とか「選挙活動費」など「大まかな項目」ごとに年月の金額を公開するというのが自民党の「改正案」であり、それに維新提案の「領収書などを10年後に公開する」という仕組みについて、「具体的な内容を早期に検討して、結論を得る」という。 維新の代表は、「自民が維新の提案を『取り入れた』」と自民に賛成する理由を挙げている。だが、公開は何故10年後なのか。10年もたてばもう議員でなくなっている者もいるし、派閥(政策グループ)も変わっているかもしれない。 「政策活動費」が問題になっているのは、領収書も使途も不明なまま、「政策活動費」と記載することですまされてきたことが、不正な裏金づくりの温床となっているからであり、それを防止するためには、その内容をつまびらかにすることが必要だからである。 しかし、不正が行われたことが10年後に明らかになったとしても何の役にもたちはしない。維新の提案がそのまま通ったとしても、「政策活動費」は依然としてブラックボックスのままであり、不正の温床を残すことになるのである。 ◇企業献金禁止については言及なしそのほか政党交付金制度導入のかわりに「見直し」が検討されるべきであった企業献金の禁止については全く言及していない。さらに言えば税金を原資とする政党交付金(国民一人当たりで、250円、議員数に応じて政党に支給される)は企業献金と共に廃止されるべきである。 「政治資金の透明化」のための「第三者機関」設置に関しては、「必要な措置を講じる」と付則に記された。しかし、30年前に政治改革が問題になった際には、企業献金を「見直す」などが付則に盛り込まれた。だが、それは放置されたまま現在に至っていることを見れば、付則で「第三者機関」の設置を謳ったからといって、それが実現されるという保証はないし、結局不満をそらさせるためのごまかしでしかない。 ◇維新、公明の親自民の本性露わに政治資金改革をめぐる維新、公明の対応は、金権腐敗が明るみに出され、社会の厳しい非難を浴び窮地に陥っている自民に手を差し伸べ、助けること以外のなにものでもない。維新は自ら「第二自民党」といってはばからず、改憲推進を訴えている。一方、公明は「平和」とか「福祉」を看板にしつつも、実際には安倍の安保関連法や岸田の安保三文書に賛成するなど反動政治に賛成してきた。公明は連立与党としての椅子を維持するために大衆を欺き、自民に従ってきたのである。 これこそが彼らの本性であり、自民とともに、労働者の階級的闘いで彼らを政治から一掃しなくてはならない。(T) 【1面サブ】ガザは瓦礫と死臭の街に変わったバイデンが発表した停戦新提案◇イスラエルによるパレスチナ人虐殺イスラエルのガザ報復攻撃は8か月目に突入した。ガザの6割以上を制圧し、ガザは瓦礫と死臭漂う街に姿を変えた。今月2日時点で死者3万6439人、瓦礫の下には1万人を超える人々が埋まったままである。イスラエル軍が繰り返すのは、「自衛の為の攻撃でハマスを狙った、市民は標的にしていない」である。 ラファの検問所を占拠し、支援物資がエジプトに滞留し食料が腐敗し破棄される状況を生み出しながら、「人道危機の責任をイスラエルに押しつけているが、ガザの人道危機を防ぐカギは今、エジプトの手中」と開き直り、「悲劇的な戦闘は続いているが、虐殺は起きていない」と、誰も信じない嘘を相変わらず繰り返している。 乳幼児や子供を爆弾でバラバラにするだけでは飽き足らず、飢餓と感染症で命を奪いこの先イスラエルに抵抗する〝芽〟を摘み取ろうとしている。ネタニヤフによって、〝天井のない牢獄〟ガザは今、〝アウシュビッツ〟になった。 ◇「帝国主義の極み」としての蛮行20日、国際刑事裁判所(ICC)は戦争犯罪容疑で、ネタニヤフらに逮捕状を請求した。また国際司法裁判所(ICJ)は、ガザでジェノサイドを行っていると、ラファでのイスラエル軍の作戦即時停止を命令した。これに対してイスラエル戦時内閣のガンツ前国防相は24日、声明で「人質を取り戻し、自国民の安全を確保するため、ラファを含め、どこでもいつでも戦い続ける」と激しく反発した。 ネタニヤフは逮捕状請求について、「歴史的な道徳上の暴挙だ」と非難し、バイデンも「言語道断」と切り捨て、ICCメンバーに対する制裁を行うと発表。イスラエル軍の道徳とは、「攻撃は予告した、死にたくなければ、水も食料もなく砂埃が舞い上がる道路を数十キロ歩いて避難場所へ移動する事」をSNSで発信することである。これのどこが道徳的か!帝国主義の蛮行だ! イスラエルが道徳的に尊敬されたいのであれば、一切の民族的迫害に反対し、迫害する側と闘うことが、ホロコーストを経験したユダヤ人国家イスラエルの立場でなければならない。ガザでの〝振る舞い〟はホロコーストを盾にして、ガザ虐殺を正当化する卑劣かつ過去・現在の犠牲者を冒涜する〝悪行国家〟としか呼べない蛮行である。 ◇二重基準でイスラエル擁護する米国ネタニヤフは、「ジェノサイドを行ったのはハマス」と反論し、ICCやICJの決定を一笑に付した。好戦国家であるイスラエル・米国、中・ロなどは、ICCに加盟していない。米国も逮捕状に反発しているが、ウクライナでの戦争犯罪で昨年春にプーチンにICCが逮捕状を請求したことにバイデンは「妥当だ」と発言したことを忘れたようである。二重基準と批判されようが、米国にとっての判断基準は、米国の世界支配に有利か不利かでしかない。 ◇パレスチナに必要なのは死の恐怖からの解放ネタニヤフが展望なき軍事行動を継続することに対して、先月18日戦時内閣のガンツ前国防相は、「ガザ戦後統治計画」を発表し、6月8日までにネタニヤフ政権――22年6月発足した第6次ネタニヤフ政権はネタニヤフのリクード(32議席)に極右政党など6党で過半数(64議席)の極右的連立政権――が計画を実行しなければ、政権から離脱すると、対立を深めている(ネタニヤフは拒否する声明を18日に発表)。先だって15日には、ガラント国防相がガザの戦後統治には、イスラエルは支配しないと明言するようにネタニヤフに求めたが、ネタニヤフは拒否し政権内の亀裂が深まっている。 そんな中、先月31日バイデンが緊急演説し、「イスラエルがイスラム組織ハマスに提示した、永続的な停戦と人質の解放に向けた新提案について説明した」が、この「新提案」をネタニヤフではなく、米国大統領のバイデンが発表したことに注目が集まっている。 新提案(米政府高官は「新提案」について、「数週間前のハマスの提案とほぼ同じ」としていた)に対してハマスは「肯定的に受け止める」と直ちに発表した。イスラエル首相府は1日、「恒久的停戦のためにはイスラム組織ハマスの軍事力や統治能力の壊滅、全人質の解放などが必要だとする声明を発表した」(2日朝日電子版)。 2名の極右政党の閣僚が政権離脱を表明しているが、最大野党のイェシュ・アティド(24議席)が連立入りの意向を示している。ネタニヤフは米議会合同会議に招待され演説する予定で、停戦案をめぐってイスラエル国内の主導権争いが激しくなるだろう。バイデンにとっては苦戦する大統領選に向けた〝起死回生の一発〟を目論んでいる。 今後の進展を待つしかないが、パレスチナに今、必要なのは理不尽な死の恐怖から解放されることである。(古) 【飛耳長目】 ★6月20日告示の都知事選に立憲民主の蓮舫が出馬表明した。前回知事選で得票率60%の366万票を集めた現職小池に、22年参院東京選挙区67万票で4位だった蓮舫の挑戦である★5月の衆院補選での立憲候補3勝と、静岡知事選での立憲・国民推薦候補が自民推薦候補を破った〝風〟を受けての出馬だが、「小池都政をリセットする」と言うだけで、具体的な公約は後回しのままだ★現職小池は、6兆円を超す潤沢な税収を元手に、今年から始めた「高校授業料の実質無償化」に続き、自分だけ目立てばいいとばかりに担当部局に知らせずに「都内在住の0歳から18歳までの児童に一人当たり月額5千円給付」をサプライズ発表★給付申請は知事選直前の6月中旬開始という露骨な選挙目当てのパフォーマンスに振り回される職員の不満は募る。とりわけ隣県在住の子育て中の職員は、この無償化と給付の対象から外れているのだから爆発寸前だ★裏金問題でヨレヨレの岸田自公政権と連携してきた小池都政を「リセットする」好機に違いないが、〝風〟頼みや、プチブル好みの樹木伐採が問題となっている明治神宮外苑再開発計画の見直しでは、非正規労働と生活必需品の値上げラッシュで困難な境遇にある女性や若者ら、勤労都民の切実な声を結集することはできない。(Y) 【2面トップ】労働者を瞞着する資産運用立国資産なき労働者に資産所得倍増の勧め?岸田政権は、「資産所得倍増プラン」を含む「資産運用立国実現プラン」の一環として、「金融・資産運用特区」の創設を目論み、1月から自治体等からの提案の公募を始めていた。政府は今月4日、提案書を提出した4地域を認定地域に指定した。岸田の資産運用立国構想の実現化の一つであるが、それが低賃金と物価高などに苦しむ労働者の生活改善に帰するものとなるか、それが問題だ。 ◇令和「所得倍増」は「資産所得倍増」へ2021年9月に行われた自民党総裁選で岸田は、経済・社会政策として、これまでの〝新自由主義〟を転換し、「所得倍増」によって「中間層の拡大を」を目指した「新しい資本主義」をつくると主張。「所得倍増」のためには持続的な経済成長が必要になるが、岸田は「アベノミクスによって企業収益は上がり、経済は間違いなく成長した」と言って、アベノミクスの継承を謳った。 しかしアベノミクスによって、経済成長は1%そこそこと低迷したままで、実質賃金も上がらなかった。一方借金依存による巨額の財政支出によって、国の借金は国内総生産の2倍にもなり、成功どころか経済はさらなる困難に陥っている。岸田はその失敗したアベノミクスをよりどころに、「令和版所得倍増」を掲げたのだ。 岸田が総裁選でぶち上げた「所得倍増」は、その後触れられる事はなかったが、22年5月のロンドンでの講演で、岸田は「貯蓄から投資へのシフトを大胆・抜本的に進め、投資による資産所得倍増を実現いたします。そのために、NISAの抜本的拡充や、国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設など、政策を総動員して『資産所得倍増プラン』を進めていきます」、「Invest in Kishida」(岸田に投資を)と呼びかけた。岸田は海外での外国人相手の話を利用し、全く実現の見込みのない「所得倍増」を「資産所得倍増」にすり替えた。 ◇資産運用立国とは岸田は21年10月に、「最大の目標はデフレからの脱却」、「成長と分配の好循環を実現し、国民が豊かに生活できる経済を作り上げていく」と、「新しい資本主義実現会議」を立ち上げ、22年11月には「資産所得倍増プラン」を公表。それは、「家計に眠る現預金を投資につなげ、家計の勤労所得に加え金融資産所得も増やしていく」とするもので、具体的な目標としてNISA口座数を倍増させ、NISAで投信の買付額を倍増させ、資産運用収入の倍増を見据えるとした。 23年12月には、「資産運用立国実現プラン」を公表した。2千兆円超の家計の金融資産の半分を占める預貯金を投資に振り向け、それを国民の資産形成や企業の成長につなげると謳っている。 ここには、先行している「資産所得倍増プラン」におけるNISAの年間投資上限額の引き上げ、非課税保有期間を無期限にするなどの拡充・恒久化とともに、「金融・資産運用特区」の創設などの「資産運用業の改革」、企業年金の改革などの「アセットオーナーシップの改革」などが挙げられている。 その他、投資などを学ぶ「金融経済教育」が掲げられ、学校ではすでに実施されている。金融教育なら、経済やカネとは何かを科学的に説明した「資本論」こそ学ぶべきではないか。 ◇「金融・資産運用特区」は絵に描いた餅「金融・資産運用特区」は、「資産運用立国実現プラン」の主要施策だ。 金融・資産運用業を特定地域へ集積し、地域の産業・企業が発展しやすい環境を整備するのが目的で、特区の主な取り組みは、行政手続きの英語対応、外国人投資家向け在留資格の創設、銀行によるGX出資規制の緩和、地方税の減免などだ。今回、北海道・札幌市、東京都、大阪府・大阪市、福岡県・福岡市の4地域が特区に認定された。 北海道・札幌市は、世界中からGX産業(洋上風力発電、水素サプライチェーンなど)に関する資金、人材、情報が集積するアジア・世界の「金融センター」を目指す。 東京都は、「サステナブルな社会を実現するアジアのイノベーション・金融ハブ」としての地位を確かなものとする。 大阪は、25年万博のレガシーを活用し、グローバルスタンダードに合わせた規制改革等を実現し、海外投資を呼び込み、金融機能強化で、国際金融都市の実現を目指す。 福岡は、「アジアのゲートウェイ」等の特性を活かし、国際的な金融機関やその関連企業、(高度)金融人材を集積していくことを目指す。 これらを見て分かるように「金融センター」などを謳う「金融・資産運用特区」は、国内外の資本を呼び込もうとしているが、今のところ絵に描いた餅に等しい。 ◇資産運用立国は労働者のためか「資産所得倍増」は、預貯金などの金融資産を持たない人々には無縁だ。当初岸田は、格差を問題にし、金融所得課税の強化を掲げていたのだが、「資産運用立国」は貧しい階層とそうでない階層との格差を広げるだけだ。 岸田は、「何よりも重要なのは、物価高を上回る所得の実現」と言うが、歴代自民党政権が進めて来た「規制緩和」、「雇用流動化」によって非正規労働化が進み、労働者は低賃金で過酷な労働に追いやられている。今年の〝高水準〟の賃上げも物価高に追いついていない。実質賃金は2年以上も下がり続けている。 「資産運用立国」はNISAなどの金融投資による所得向上を煽り、一方、満足できない賃金に抑圧するなど労働条件の悪化を強め、物価高によって生活苦に陥る労働者の困難を放置するものだ。 NISAによる資産運用は現下の株高状況をよりどころとする。それは何時か金融危機や恐慌の株価暴落となって投資家に跳ね返るのだ。岸田は、かつてのバブル崩壊を忘れたような虫の良い話をしているが、株が暴落したら責任を取るのか、取れるのか。 「金融・資産運用特区」による資本誘致で地域の産業・企業が発展する確かな保証もない。 労働者・働く者は、岸田の「資産運用立国」に一切の幻想を持たない。労働者・働く者は資本の廃絶を求めて、資本との闘いを強固にしていくのみだ。 (佐) 【2面サブ】財政破綻に備えるプラン?
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