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●1478号 2024年7月14日 【一面トップ】 立民、共産支持の蓮舫は大敗 ――無党派主義振りまき、バラ撒き競う 【一面サブ】 規正法改正で逃げ切りは許さず 【コラム】 飛耳長目 【二面トップ】 発言力強める自衛隊 ――軍事強国化路線でますます勢いづく 【二面サブ】 仏・新人民戦線には一切の幻想は持てない ――労働者は階級的な闘いを大きく発展させよう! ※『海つばめ』PDF版見本 【1面トップ】立民、共産支持の蓮舫は大敗無党派主義振りまき、バラ撒き競う7日投開票の都知事選挙は、3期目を迎える小池百合子現知事の勝利に終わった。選挙前、現職小池候補と「反自民」を掲げる蓮舫候補との一騎打ちと予想されたが、しかし蓮舫は、広島県安芸高田市長から転身した無所属候補石丸伸二にも大差をつけられ、第3位に沈んだ。 ◇蓮舫の得票率は2割足らずまず、選挙全体の状況を見よう。有権者は1135万人で、投票率は前回よりも5・62ポイント高い60・62%であった。 小池は無所属で立候補したが、地域政党の都民ファースト、自民、公明、連合東京が支援。得票は291・8万票(得票率42・8%)。これに対し2位は無所属の石丸で165・8万票(同24・3%)。立民、共産、社民の支援を受けた蓮舫も、所属政党立民を離党し、無所属「オール東京」で選挙に臨んだが得票数は石丸より約37万票も少ない128・3万票(同18・8%)と3位に終わった。 ◇反動小池の批判を徹底することを回避した蓮舫蓮舫が大敗となった原因はどこにあったのか。それは小池都政のブルジョア的性格を蓮舫が徹底的に批判しようとしなかったことにある。 小池は政党の推薦を受けず幅広い支援を募るとしつつも、記者会見で自民党との関係を問われ、「都政を現実に進めていく上で(政権・与党との)連携が必要」と述べ、また保守層から出馬要請があったことに触れ、「強く支援いただければと思う」と自民党からの支援への期待を隠さなかった。 言うまでもなく小池は、2017年、憲法改正、安保法制容認を掲げ、自民党に代わる政党=「希望の党」結党を画策したブルジョア政治家である。安倍首相と組んだ3年前の東京五輪では、「コンパクト」を謳い文句としながら、実際には予定の5倍にもなる3・7兆円にも経費を膨張させた。 それだけではない。五輪関連広告掲載権をめぐっての汚職や都の退職幹部の天下り先不動産企業への五輪選手村跡地の低価格での売却など、企業との癒着が暴露されている。晴海の選手村跡地「晴海フラッグ」のマンション群は、近隣基準地価の9割引きで三井、三菱など不動産企業8社に売却され、これら不動産企業には都から退職した多くの幹部が天下りしている。 5月末、蓮舫は知事選出馬の決定の記者会見で、「自民党政治の延命に手を貸す小池都政をリセットするのが国民の声だ。その先頭に立つのは私の使命だ」と訴えた。これに対して小池から「私立高校授業料無料化など都民の支持を得ている政策までリセットすると都民が困るのではないか」と反撃され、たちまちトーンダウン、このスローガンを封印した。 蓮舫の公約である「7つの約束」の最後の項目は、「良い政策は発展させる[行政の継続性も大切]」であり、「(小池都政は)少子化対策では細やかなケアをしている。それを私は引き継いでいきたい」と告示2日前の記者会見で蓮舫は語った。 小池は出産や子育てを経済面から支えることで「結婚・出産・子育てへの不安を解消する」と強調。都知事2期目に所得制限なしで0~18歳に月5000円支給、私立を含めた高校授業料の実質無償化、中学校での35人学級導入など子育てを支援する政策を打ち出した。そして今回は、第2子以降が対象の保育料の無償化を第1子に拡大、麻酔で陣痛をやわらげる「無痛分娩」にかかる費用の助成創設などを謳った。 小池は、「所得制限を外すという大きな決断をし、皆で子どもを育てていこうという機運は国をも動かしている」と自慢。しかしこれらは小池の「功績」というよりも都が「地方交付金ゼロ」の財政的に豊かな自治体であることに依存したものであり、所得制限なしでの「無償化」はバラ撒きでしかない。金持ちにとって、私立高校授業料無償化のための支援は子どもの小遣いや塾通いのための費用にしかならない。 蓮舫のように、「細やかな少子化対策」などと言って「その継承」を謳うことは、小池のバラ撒き政治を美化し、それに追随することである。 ◇無党派主義政治の幻想小池と蓮舫がバラ撒きを競っている間隙をついて登場したのが石丸である。石丸の政治目標は、「経済強国」であり、首都・東京を「都市開発」(災害リスクの対応、多摩格差解消等)、「産業創出」(学校教育の強化、外需の取り込み等)や「政治再建」(バラマキ政治の廃止、情報公開等)を通して経済を活性化していこうというのである。 石丸は三菱UFJ銀行のアナリストとしての経歴を持ち、後援会会長にはドトールコーヒーの会長鳥羽博道がなっており、選対事務局長には田中元首相の秘書を務めた藤川晋之が就く等ブルジョア政治家である。 石丸の得票は10代~30代の若年層が多いというが、SNSなどを利用し、青年経済アナリストとしての経歴を売り込み、既存の政党に不満を持つ無党派層を取り込んだのである。 蓮舫は選挙ビラで、「どんな環境で生まれ育っても、不安や負担に怯えたり、未来を諦めたりすることなく、学び、育ち、働き、結婚や子どもを持つなど、自ら選択していく人生を送れる東京を私はつくりたい」と訴えた。 だが、これは言葉だけのものであり、知事が変わっただけで実現できると思う人はいないだろう。不安なく、自らの人生を送れるようになるためには、労働の搾取に基づく利潤目的の資本主義の体制が克服され、搾取や差別のない社会が実現されなくてはならない。 しかし、このための全国的な労働者の闘いを呼び掛けるのではなく、「無党派主義」が称揚されるのである。 共産党の小池は今回の選挙について、「今後の日本の民主主義の力を示すもの」であり、「今後の東京と日本の政治を変えていくうえで、大きな力になる」(「赤旗」7・8)と現実を直視せず手前味噌に総括するだけだ。 国政選挙と異なる都知事選挙という限界のある闘いであっても、たとえ敗北したとしても、現職知事の小池らブルジョア勢力の支配を暴露し、労働者の階級的団結と闘いを発展させる契機となれば意義を持つだろう。だが、立民や共産党などが支援した蓮舫は、無力で反動的な無党派主義を振りまき、小池とバラ撒きを競い合うなどして大敗した。これが今回の都知事選の教訓である。 (T) 【1面サブ】規正法改正で逃げ切りは許さず政治資金規正法改正案は、自公の賛成多数で6月19日に成立した。岸田首相は、「一日も早く成立させることは政治の責任として重要だ」と答弁したが、これが裏金問題に端を発する金権・腐敗の自民党政治の、政治改革になりうるものであろうか。 ◇批判をかわすだけの規正法改正昨年12月に「政治資金パーティー」による「裏金づくり」が、つぎつぎに明るみに出て、自民党の金権腐敗政治に労働者大衆の大きな怒りが燃え上がった。自民党は「政治改革」を打ち上げて、労働者大衆の批判をかわそうとした。その結実が政治資金規正法改正だ。 政治資金収支報告書における政治家本人の責任強化として、収支報告書の作成に関し、議員に確認書の提出を義務付け、政治資金パーティー券購入者の公開基準を、現行の「20万円超」から「5万円超」に引き下げ、政策活動費については、項目別の金額と支出年月日を政党の収支報告書に記載することが義務付けられる等が主な改正である。 しかし政治資金収支報告書の会計責任者が不記載・虚偽記載で処罰された場合の「連座制」は採用せず、議員が不正に気付かなかったなどの言い逃れの道が残されている。パーティー券も「5万円以下」の購入者は非公開のままで、回数制限なしで、これを利用した企業献金が続けられるのだ。政策活動費の使途は、領収書などを10年後の公開が付則に盛り込まれたが、上限額などの詳細な制度設計や政治資金を監査する第三者機関の設置などが検討事項として先送りされた。全体に「政治改革」は、実効性に乏しい。 ◇裏金事件と政治改革規正法では、政党・政治資金団体は、1企業・1団体から年間総枠750万円~1億円の寄付を受けることができる。それと共に、形を変えた企業献金として「政治資金パーティー」が制度化された。企業や業界団体は、自分らの利益・権益のために自民党に多額の寄付を行い、パーティー券を購入し、実質的な企業献金を続けてきた。 政治家個人には企業・団体献金は禁止されているが、政党からは「政策活動費」の名目で寄付として政治資金が配られる。派閥の主催する「パーティー」は、派閥は「その他の政治団体」なので、政治家個人へ寄付はできない。派閥からは、裏金として議員に「還元」された。 現在、「パーティー」から得たカネを議員に還元し、それを政治資金報告書に不記載・虚偽記載で立件された、安倍派と二階派の会計責任者の裁判が始まっている。 検察は「還付金と保留金は、いったん安倍派に帰属した後、各議員の政治団体に帰属させたもので安倍派から各議員にたいする寄付だった」(5月11日朝日)としているが、違法な「還元」は立件していない。 今回の規正法改正は、この寄付の授受について不問だ。実質上企業献金である「パーティー」券は、これまでと同様に自民の資金源として温存される。政策活動費は、「裏金事件」では直接問題になっていなかったが、二階元幹事長5年の在任中に48億円が使途非公開の政策活動費として渡されていた等が発覚し、問題となり、今回「改正」に加えられた。 ◇〝カネ〟の支配する自民政治の一掃を!自民衆参の裏金議員ら73人は政倫審で弁明することなく、通常国会は6月23日に閉会した。岸田は「政治にコストがかかるのは当然」とうそぶくが、コストがかかるのと汚いカネで政治を行うのとは違う。自民党の政治は、資本のための政治であり、〝カネ〟の支配する汚い政治である。 労働者は、こんな実効性のない改正案を許さず、断固として金権腐敗にまみれた自民党との闘いを強めて行こう。 (佐) 【飛耳長目】 ★都知事選で小池は291万票(前回366万)で3選した一方、多くの都民には無名だった石丸伸二が165万票で次点。立憲共産支援の蓮舫は128万票で敗退★衆院補選の立憲候補3勝と静岡知事選の自民推薦候補敗北と続いた国政への〝逆風〟は、潤沢な税収からの子育て世帯、低所得世帯への〝給付の実績〟に影響しなかった。予算化されていた給付だが、投票日前にかけてダメ押し的に低所得世帯に「1万円分の支援〔金券やアマゾンポイント等〕が受けられます」と書かれた封書が届いた。小池の公権力を使った買収策である★公選法が想定しないNHK党の24名大量立候補と〝掲示板ジャック〟によるヌード写真や風俗店ポスターの掲示、新聞広告での「受信料を支払う人は馬鹿だと思います」の挑発。衆院補選での選挙妨害事件に続く選挙制度への〝冒涜〟である★このカオス状態に石丸は、SNSを駆使した新しい政治スタイルで既成政党の硬直した対立構造を批判し、「政治の再建」を訴えて一石を投じた。SNS世代の若者の期待感を吸引して支持を急拡大したのだ★石丸には「大物財界人約20人が支援者に名を連ね」、公示前には「政策の近い維新に応援を打診した」新手のブルジョア政治家だ。国政挑戦の可能性もあるが、労働者は支持できない。 (Y) 【2面トップ】発言力強める自衛隊軍事強国化路線でますます勢いづくマスコミは「自衛隊70年」の特集を組み、「自衛隊は国民を守る使命を果たしてもらいたい」と口上する一方、軍需企業との癒着や安全保障に関する機密情報の「違法な状態」が続いていた等を連日報道している。これら自衛隊の不祥事は単なるミスか、それとも発言力を強めてきたゆえの必然的な事件か。 ◇自衛隊と軍需産業の癒着潜水艦などを製造する川崎重工と海上自衛隊との間で、裏金作りによる賄賂が発覚。川崎重工が下請けに架空業務を発注し、下請けが裏金をプールし、この裏金を使って川崎重工は金品を自衛官らに配り、また飲食接待にも使っていた。 この裏金総額は2018年~23年で「十数億円に上る」。自衛隊員に配った金品について、川崎重工は「商品券やトルクレンチ、ワイヤーロープ、ヘッドライトなど」と説明したが、そんな物で納まるわけがない。1年間で2~3億円に相当する巨額な裏金がトルクレンチなどの筈はないのだ。 潜水艦建造費と定期点検・修理費等を加えた1隻当たりの総額は約1千億円で、川崎重工は三菱重工と共に各12隻を受注してきた。その見返りとして自衛隊が発注先企業に賄賂を要求するという構図が出来上がり、しかも20年も前から行われていたと報道されている。 特に、23~24年度に軍事費が急増し、川崎重工は(他の軍需企業も)防衛省から受注を増やしていた。川崎重工の23年度受注高は、前年比2・1倍の5530億円、24年度の見込みは5890億円だ。こうした自衛隊と軍需産業の「発注/受注」が巨額な売買関係になればなる程、それだけ私的利益が絡み癒着が強まるのは必然である。直近では、年間1億数千万円の裏金を捻出していたことが明らかになった。 だが、他の軍需産業もまた、同様な構図になっていると想像しても外れていないだろう。 ◇「特定秘密保護法」は弾圧法防衛省は4月、「特定秘密保護法」で定める「特定秘密」を資格の無い自衛隊員に触れさせる「情報漏洩」があったと発表した(陸自と海自で各1件)。22年に海上自衛隊で情報漏洩があり、元1等海佐が懲戒免職になり、昨年も陸自で特定秘密の内容を盛り込んだ訓示を隊員にしていた。 「特定秘密保護法」は、安倍政権時の14年に成立し、「外交・防衛」に関する「特定秘密」を漏らした公務員には、最高10年の懲役を科すという弾圧法だ。国家公務員法では、一般的な守秘義務に関する罰則は1年以下の懲役だから、一気に懲罰を10倍にも引き上げて国民を脅しつける内容だ。安倍ら国家主義者が良くやる〝秘密裡の外交〟を(防衛外交も)誰か公務員や新聞記者が知り得たなら、絶対に外に漏らすなという恫喝以外の何物でもない。つまり、労働者が安倍らの危険な外交・防衛秘密を知り、闘いに立ち上がることに対する障壁を設置したのである。 そして、この機密保護法の最初の〝違反者〟が自衛隊という軍事組織であり、しかも10年にわたって不正が常態化していた。この法律は、秘密でない事も特定秘密にするという、自分で足枷をハメる矛盾した存在であった。 自衛隊には犯罪歴や借金、精神疾患の有無などを全部クリアし、国家機密を漏らさないと評価される者は、そうはいない。隊員をチェックして任務から除外したなら、直ぐに実務に差し支えるのである。だから、自衛隊は最初から矛盾したこんな法律を無視したのである。 民間企業に対しても、今年の5月、「セキュリティークリアランス(適性評価)制度」が国会で大した反対もなく成立した。基幹インフラや半導体や通信など、「経済安全保障」に関する情報について、重要情報の取扱者を選定し、「機密厳守」を強制するものだ。 しかし、民間の労働者に対して機密を漏らしたなら重罰に処すというのでは、こんな職場には入らないであろうし、機密保持者に指定されるなら、さっさと職場を後にする人もでるだろう。 労働者は安倍が作った「特定秘密保護法」と岸田が作った「セキュリティークリアランス制度」に断固と反対する。 ◇「軍隊は国民を守るのではなく国家を守る」自衛隊の川崎重工からの金品収賄と、自衛隊が「特定秘密保護法」を無視してきたことは、原因も経過も異なるが、自衛隊が発言力を強め、また自らが「国防の要」だという自尊心を高め、政治的な力を得ようとする傾向が強まっているのだ。 かつて栗栖弘臣統幕議長は78年、「現行の自衛隊法には穴があり、奇襲侵略を受けた場合、首相の防衛出動命令が出るまで動けない。第一線部隊指揮官が超法規的行動に出ることはありえる」と有事法制の早期整備を促す〝超法規発言〟を行い、また、「自衛隊は国家を守るが国民は守らない」と軍隊トップの本音を吐いた。2代後の竹田五郎も専守防衛政策を批判し解任されたが、こうした自衛隊の圧力によって有事立法・有事法制及び民間防衛の研究促進を当時の福田赳夫内閣が指示することになった。 今度の都知事選に立候補した田母神は、航空自衛隊の航空幕僚長であった08年、アパグループの「真の近現代史観」懸賞論文に応募し、「日本は侵略国家であったか」という題で、政府見解である歴史教科書の記述に反対する論陣を張った――応募総数235人のうち94人が航空自衛官だった。 最近でも、陸海の自衛官らによる靖国神社への集団参拝が相次いで明らかになり、陸自がX(旧ツイッター)で戦前の帝国主義戦争を「大東亜戦争」と表記していることや沖縄に駐留する陸自第15旅団がHPで沖縄戦を指揮した牛島満司令官の辞世の句を掲載し、沖縄県民から削除要求や抗議を受けていることも明らかになっている。 このように、自衛隊は発言力を高め、政府や世論に圧力をかけ、軍需企業にもカネをせびる存在になってきた。と同時に、自衛隊は戦前の天皇制軍部への郷愁や賛美を露骨に表現するようになっている。軍事強国化を推進するために、自民党ら改憲派と自衛隊は協同し、天皇制利用の策動を強めて来るだろう。労働者は大同団結しこれらの策動を断固として粉砕しなければならない。 (W) 【2面サブ】仏・新人民戦線には
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