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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1479号 2024年7月28日
【一面トップ】 トランプ支持で固まる米共和党
        ――民主党はハリスが大統領候補へ

【一面サブ】  軍事力と「同志国」連携を誇示
        ――防衛白書
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 行き詰まった年金財政
        ――厚労省「公的年金財政検査」を見る
【二面サブ】  「改革」で大衆懐柔の3中全会
        ――労働者との軋轢を深める〝中国式現代化〟

※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

トランプ支持で固まる米共和党

民主党はハリスが大統領候補へ

 13日に選挙運動を行っていたトランプが狙撃された。弾は、頭のすぐそばを通り右耳を撃ち抜いた。このことは「全能の神がトランプ氏を救った」と言う馬鹿な神話を生み出した。22日バイデンは撤退し民主党はハリスに決定か。

◇反動的トランプが自ら招いた銃撃か

 銃撃後の18日、大統領候補を決定する共和党大会は、トランプ支持一辺倒となり、大統領予備選にトランプの対立候補として立候補したヘイリーや、トランプに異議を唱えてきた共和党上院のマコネルもトランプ支持の演説を行った。

 全米から集まった2300名の代議員は、トランプに陶酔した〝トランプ教〟信者で、狂信的集会と言うべき様相が報道からも伝わってきた。トランプは、大統領候補受諾演説を自ら書き替えて演説に臨んだと言われる。

 いつになく落ち着いた調子の演説は、テンションが上がるに応じて激しい口調に代わったが、持ち前の口汚いフェイクにあふれた罵りは少なかった。計算された演出だったことは、20日の選挙集会での演説ではフェイクにまみれた、いつもの〝トランプ節〟であったことからも明らかである。

 トランプを狙撃した若者(20歳)は、警察に射殺されたために、政治的立場や動機については不明である(共和党員との報道も)。確実には言えないが、トランプを特徴づけるフェイクと分断の虚妄のポピュリズム政治が、自らに対する銃撃を招いたとさえ言える。

◇ラストベルトの共和党副大統領候補

 共和党大会で、注目はトランプが誰を副大統領候補として指名するかであった。指名されたのは、39歳のJ・D・バンス氏でラストベルト地帯のオハイオ州選出の上院議員。「16年に出版した自伝『ヒルビリー・エレジー』の作家。自伝は、雇用が失われたラストベルトと白人労働者の苦しみを描いた」(7月18日朝日)。

 バンスは、反トランプから22年上院選挙でトランプ絶賛に「転向」して当選し、副大統領候補として指名された。指名受諾演説で、「私たちが求めるリーダーは大企業ではなく、労働組合や非組合員を問わず、働く人々に応える人だ」と強調し、「米国に再び工場を建てる」と演説した。

 16年大統領選で、トランプを勝利に導いたラストベルト地帯(ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシン州)は、20年の選挙ではバイデンが勝利した。今年の選挙でも選挙人538人のうちで46人を占める3選挙区の結果は、大統領選の勝敗を左右する重要選挙区である。

 指名受諾演説で3州の名前を何度も繰り返し、「私は、自分がどこの出身かを忘れない副大統領になる」。バンスは、6月6日に一晩で19億円を集めた投資家の夕食会を実現するために奔走したし、シリコンバレーのハイテク企業とも関係が深いと報じられている。トランプがバンスを副大統領候補として指名した理由は、〝労働者票のため〟と言うだけではない。

◇トランプ党に〝変身〟した共和党

 共和党は、急速に〝トランプ党〟に姿を変えつつある。選挙集会や大会に結集した党員を、フェイクとポピュリズムの単純独断の政策と、扇動的演出・演説でトランプ信者に引きずり込むファシストの手法である。

 それは、強烈なトランプの個性にあることは否定できないが、根本的には資本主義的生産の敵対的性格が、米国内に深刻な格差と分断をもたらしているのである。トランプのポピュリズム政治と「アメリカを再び偉大に」のスローガンが、「USA」の連呼で熱狂する支持者を生み出している。

 トランプが二期目を目指した20年の大統領指名大会では、共和党の選挙政策は発表されなかった。今回の大会では、トランプが当選した16年の大会に次いで選挙政策が発表された。選挙政策は、党としての政策である。20年大会で発表されなかったのは、党内の反トランプ派の存在が大きく、トランプとの間で統一した政策を出すことが出来なかったのである。

 発表された選挙政策は16頁で、16年の66頁よりコンパクトで、トランプの公約「アジェンダ47」の主張がほぼそのまま共和党の選挙政策になった。

◇トランプの主張を点検する

 トランプは、「わが国は衰退している。インフレの危機、不法移民の危機にある。国際的な危機にある。欧州や中東で戦争が荒れ狂い、紛争の不安が台湾、朝鮮半島、フィリピン、アジア全体で増し、第三次世界大戦の際でぐらついている」(7月19日日経)と演説。

 トランプは、国境閉鎖と「グリーン・ニューディール」(バイデンの気候変動対策)EV普及義務化について、撤廃を就任1日目に行うと宣言。

 原子力を含め、「あらゆるエネルギー生産を解き放つことでインフレを終息させる」と言う政策は、石油資本の要求に応えるものであり、同時に膨大な電力を必要とするAI業界の要求でもある。

 トランプは、バイデン政権の「人工知能(AI)の開発と利用に関する大統領令」の撤廃や仮想通貨規制緩和を要求するイーロン・マスクやIT業界の「リバタリアン(自由至上主義)」の要求に応えて、民主党の中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入に反対。リバタリアンは規制のない資本の活動を要求している。

 トランプは減税延長も約束。恩恵は富裕層に偏り、低所得層に恩恵は少ない。選挙政策の関税引き上げと減税で上位1%の富裕層は実所得1%強増加、低所得層はマイナス3・7%との試算もある。関税引き上げで輸入物価は上昇し、低所得層の家計負担は増加だ。

 対中政策では、新たに最恵国待遇(MFN)取り消しと必需品輸入の段階的廃止が掲げられた。中国が報復措置を発動することは確実であり、対立や政治的緊張は強まる。

◇トランプも民主党ハリスも打倒対象

 ハリスは22日演説で、「どんな国に住みたいのか。自由と思いやり、法の支配がある国か。混乱と恐怖、憎悪の国か」と問い、「女性による人工妊娠中絶の権利を認める法律に署名する」と宣言。トランプとの違いを強くアピールした。

 労働者にとっては、トランプもハリスもブルジョア政治家であり、その政権は打倒の対象である。米国で資本の支配一掃のために闘う仲間と、労働者として階級的に連帯して共に闘おう。 (古)


【1面サブ】

軍事力と「同志国」連携を誇示

防衛白書

 24年版『防衛白書』が発刊された。今年が自衛隊創設から70年目に当り、内外での〝活躍ぶり〟を宣伝しながら、中国やロシアや北朝鮮の軍事的脅威に対処する必要性を強調し、日米同盟に加えて「同志国」との連携強化が進んでいると誇示している。

◇変化した防衛戦略

 「安保3文書」で敵基地攻撃能力を容認し、沖縄諸島をはじめ長距離ミサイル網を次々に設置する政府・自衛隊。

 今や、日米両軍の統一指揮の下とはいえ、自衛隊自身が「敵国」攻撃を判断し決定できるようになった。この大転換に加え、武器輸出全面解禁や同志国への武器・技術供与(OSA)も決めた。この流れに乗って、今年の防衛白書は米軍依存を〝相対化〟し、日本の国際的な軍事的貢献を強調する。

 白書の「ダイジェスト」は、次の様に解説する。

 「米国単独では複雑で相互に関連した課題に対処できないとし、互恵的な同盟・パートナーシップが国家防衛戦略の重心との認識」(34頁)に至る、だから「インド太平洋地域においては、わが国を含む同盟国とのパートナーシップを深化させ、QUAD(クアッド)やAUKUS(オーカス)などの多国間枠組みを通じて、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)を推進する姿勢」を「顕示」していると(同頁)。

 さらに、本文の「第Ⅲ部第3章 同志国などとの連携」では、かなりの頁数を割いて、同志国との軍事的技術的な連携内容が具体的に書かれている。そして、この連携が「国家防衛戦略の第一の目標」(356頁)になったとさえ言う。

◇日本は米国の従属的国家? とんでもない!

 共産党やれいわ新選組などは、「安保3文書」が閣議決定された時、「米国の言いなりだ」と批判し、日本が米国の半植民地的国家になっていると〝強く〟抗議した。

 共産党らの主張は見当違いも甚だしい。今年4月に行われた日米首脳会談で、「日米安保」を〝世界的安保〟に転換したことに対して、共産党らは、日本は米国の一層の補完物になったと批判したが、これも間違っている。

 日本の大企業は、アジアをはじめ世界で約6百万人の労働者を雇い、労働を搾取して「剰余価値」(利潤)を懐に入れ、毎年20兆円も日本に還流している。日本は既に「資本輸出大国」なのだ。それゆえ、日本政府や自衛隊は大企業が築いた「資本権益」を軍事的に守る使命を募らせてきた。

 他方、中国は封建的体制を倒した中国革命以降、「社会主義」に成り得ず、党と国家官僚が支配する「国家資本主義」として発展してきた。

 そして、今や中国は「世界の工場」となり、「資本輸出」額も日本やドイツと肩を並べる。さらに中国は、東と南シナ海の島々を「自国領土」だと言い出し、基地化している。

 つまり、日本はアジアにおける資本権益を守り、同時にアジアの「護民官」として振る舞い始め(台湾防衛など)、中国もまた大国主義を剥き出している。この日中の帝国主義的対立が強まっているからこそ、日本は中国に対抗する「同志国連合」を作り、「中国包囲網」を築こうとしている。これが防衛白書に強く反映されている。

 加えて、白書は中国敵視を煽り、労働者を愛国主義に染め上げようとしている。最近、政府や自衛隊幹部が戦前の天皇制軍国主義を賛美し、自衛官が靖国神社を集団参拝するのもその現れだ。

 だが、労働者は政府の策動を断固として拒否する。中国の労働者が中国国家資本主義を倒す闘いを目指すと同様に、日本の労働者は日本資本主義を倒し「労働の解放」を目指して進む! (W)


   

【飛耳長目】

★都知事選で蓮舫が惨敗した。さもあらん!「静岡知事選でも県民は野党候補(鈴木)を選んだ」と叫び、反自民の勢いに乗って〝元自民の小池〟を批判すれば勝ち目ありと錯覚したようだ★残念ながら、静岡知事選は与野党の対決でも何でもなく、知名度と地域財界の対立(静岡対浜松)の結果であった(労働者党ブログ参照)。鈴木の勝因は浜松財界の支援を受けて、浜松市で大差(14・2万票の差)をつけた結果である。その財界の中心が浜松に本社を置くスズキ自動車である★スズキは1980年代、いち早くインド市場に目を向け、今や四輪市場の50%弱のシェアを誇り(2台に1台、トヨタの10倍)、経常利益全体の56%をインド市場が占め、スズキにとってインドは生命線である★ところで、新知事の鈴木だが、最初の外国訪問として12月にインドへ行く。それもスズキが生産拠点を置くインド西端のグジャラー州へ県議や浜松市長、財界人50人を引き連れての大名旅行である。現地のスズキを視察し、州知事と面談、将来的には州と県との友好協定締結を目指すという★これが新知事によるスズキ資本への支援でなくて何であろう。立憲や連合、国民民主が推し、蓮舫が称えた新知事は資本への奉仕者としてその本性を現しつつある。JR東海へのリニア工事の許可もまた近し。(義)


【2面トップ】

行き詰まった年金財政

厚労省「公的年金財政検査」を見る

 7月3日、厚労省は、公的年金の健全性を5年に1度点検するする財政検査結果を公表した。これは今後の中長期の年金の財政の見通しを推計するものである。今回の検証では、人口の変動と今後の経済成長の予測(「高成長」、「成長」、「横ばい」、「マイナス」の4パターン)を組み合わせた試算と、各種の制度変更を行った場合の試算を行っている。

◇積立金運用収益に助けられて

 試算の結果は、過去30年の同程度の経済状況(出生率及び死亡率は中位、労働参加は漸進、実質経済成長率マイナス0・1%、実質賃金上昇率0・5%)が続く標準的なケースでは、年金額の給付水準は2057年度に現役世代の50・4%となり、5年前の試算(19年度検証)に比べて将来の目減り分は改善され、政府が法律で決めた「現役収入の50%以上」の水準はかろうじて維持された。とはいっても、現在の61・2%よりも約2割も低下するのであって、決して「安心できる」といった状況でない。

 この程度で済んだのは、女性や高齢者の労働参加がすすんで保険料収入が増えたためと、株価上昇で年金の積立金の運用が好調であることの影響が大きい。武見厚労相は、前回の検証よりも将来の見通しが改善されたとして、国民年金保険料の納付期間を現行の40年から45年に延長する方針は見合わせると述べた。

 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2023年度の収益は45・4兆円となり、過去最高を更新した。株高を追い風に直近5年間の年金積立金の運用収益は2019年時点での想定の約6倍となった。

 運用資産ごとの収益は内外の株式が各々19兆円、外国債券が7兆円のプラスだった。内外の株価上昇が収益を押し上げた。円安の進行で外貨建ての資産の円ベースの評価額も増えた。一方国内金利が上昇(債券価格は下落)し、国内債券は1兆円のマイナスとなった。

 年金積立金は将来世代の年金給付を補うのが目的である。運用で継続的に収益をあげられれば年金財政の名目的な安定につながる。24年3月末時点の積立金の残高も291兆円に達し、想定より70兆円上回っている。年金財政安定のために世界最大規模の年金基金運用収益に対する政府の期待は大きい。

 しかし、好調な基金収益も世界的な株価上昇に助けられたものであり、今後現在のような収益が保証されているわけではない。株価が低落すればたちまち収益は縮小するだけでなく、積立金の減少ももたらすという危うさをもっている。ましてインフレによる実質的な価値の低下に対する補償はないのである。

◇進む少子高齢化が財政ひっ迫に拍車

 公的年金の給付の財源は、現役世代の保険料によって賄われる仕組みとなっている。このため経済の動向や人口によって影響を受ける。経済が発展し、賃金が上昇していくようなら将来の年金給付はほぼ計画通りなるが、現在のように合計特殊出生率が1・26に見られるように、働き手が少なくなり、その一方では高齢者人口の比率が高くなる「少子高齢化」が進むと、年金給付額(「所得代替率」)は低下していく。

 このため政府は人口減少や長寿化に応じて給付を抑制する仕組み、「マクロ経済スライド」を導入してきた。しかし、こうした制度を導入すること自体が、現在の年金制度で「暮らしが安心」どころか、破綻していることを暴露している。

 今回は見送られたが先に挙げた国民年金保険料の納付期間を59歳から64歳に5年延長する計画も、給付の財源不足を給付時期を遅らせることによって埋め合わせしようとする弥縫策であった。

 国民年金の保険料は月約1・7万円で5年間も保険料納付期間が延長されることは、生活に余裕のない人々にとって大きな打撃だ。一方、給付額は最高でも月約6・6万円である。これは普通の生活さえできない低水準であり、これが現実だ。

 他にも、厚生年金に加入できるパートなど非正規・短期労働者を増やす案が検討されている。

 現在では従業員101人以上(今年10月からは51人以上)の企業のみが対象で、「週20時間以上働き、月8万8000円以上」という基準を、企業規模にかかわらず適用する。そうすることで、これまで国民年金に入っていた月収8万8000円の人が厚生年金に10年加入すると、保険料(本人負担分)は月9000円減り、年金額は5万4000円増える。

 厚生年金の新規加入者は、企業規模要件の撤廃などで90万人増える。企業規模と賃金要件の撤廃などで200万人の増加になる。といっても過去30年の経済状況のケースでは、給付されるのは現役世代賃金の51・8%と現在よりも9ポイントも低下することになる。

◇依然残る第3号被保険者

 財政改善のために適用者を増やすなどが論議されているにもかかわらず、保険料を免除されたうえ、満額の基礎年金を受け取れる、企業で働く配偶者に扶養されている3号被保険者の制度は依然として放置されたままである。

 2022年度の短期労働者への年金制度適用拡大によって、新たな被適用者は3号被保険者のわずか19・2%だった一方で、適用を回避するため3号被保険者の17・4%は労働時間の短縮を行っている。103万円の壁(所得に税金がかかる)や130万円の壁(扶養から外れ、保険料を支払う必要が生まれる)を意識して労働による収入を調整するためだ。3号被扶養者の数は、22年度で726万人もいる。

 こうした特権的な地位を定めたのは、男性が働き女性は家事、育児、親の介護などを担うという家族主義的な思想に基づいて年金制度がつくられ、時代が変わった現在にまで至っているからである。

 国民年金は、給付の45%を税金で支えているが、女性は男性に扶養される存在という女性差別に基づいた3号制度を廃止することは、男女平等にとどまらず年金財政改善のためにも必要ではないか。

 それがなくならないのは、働く側の問題というだけでなく、育児、介護など、被扶養者が働けるための環境問題もあるが、保険料の負担(月額報酬の18・3%で労使折半)を回避し、安価な賃金で働かせようとする雇用者側の抵抗があるからである。政府の言う「百年安心」はとっくに絵空事となっている。 (T)


【2面サブ】

「改革」で大衆懐柔の3中全会

労働者との軋轢を深める〝中国式現代化〟

 中国共産党の第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)が15日から18日に開かれ、「改革をいっそう全面的に深化させ、中国式現代化を推進することに関する中共中央の決定」が採択された。

◇内容の乏しい3中全会の決定

 第20回党大会は22年10月に行われたので、通常ならば翌年には今後10年間の中国の経済政策基調を打ち出す3中全会が開かれるが、今回はそれが今年にずれ込んでいた。

 21年7月の共産党創立100周年で習は、「2つの100年目標」の1つである「小康社会の全面的実現」の目標はすでに達成された、絶対的貧困の問題は解消したと宣言した。そしてもう一つの「100年目標」である、2049年の中華人民共和国建国100周年までの社会主義現代強国の完成について、必ず達成するとした。そして21年8月の中央財経員会議では、「共同富裕は社会主義の本質的要求であり、中国式現代化の重要な特徴である」とし、「共同富裕」の促進を謳った。トーンは低下したが22年10月の第20回全国代表大会(20回党大会)でも「共同富裕」を掲げた。

 しかし、今回の3中全会決定には「共同富裕」は全く触れられず、すでに達成されたとする「小康社会」も、その成果が述べられていない。

 「改革のさらなる全面的に深化」と言うが、焦眉の問題である経済低迷の要因である不動産不況に対しては、「発展と安全保障を統一的に考慮し、不動産、地方債、中小金融機関など重点分野のリスクを防止・解消する諸施策をしっかりと実施」と言うだけである。

 中国経済の行き詰まりの象徴として現れている不動産不況は、改革開放で経済発展を遂げてきた中国経済の過剰生産の兆候であり、社会主義ではない中国のブルジョア的経済発展の矛盾の現れだ。

 決定文では地方政府の財政難対策、戸籍制度や定年退職年齢の改革などが並んでいるが、改革が大衆の福祉に寄与するか疑問だ。改革の重点は「国家統治の堅持」に置かれているのである。

◇大衆の不満の高まりと反発への恐れ

 22年10月の第20回党大会の直前に、習近平体制を批判する横断幕が2枚掲げられた。そこには、「PCR検査は要らない、ご飯を食べたい。ロックダウンは要らない、自由が欲しい。嘘は要らない、尊厳が欲しい。文革は要らない、改革が欲しい。領袖(習近平指導部)は要らない、選挙が欲しい。奴隷になりたくない、国民になりたい」、「罷課、罷工(勉学も仕事もやめちまえ)。罷免せよ、独裁国賊の習近平。立ち上がれ、奴隷になることを拒む者たちよ! 独裁と権威主義に反対して、一人一票で主席を選び、中国を救おう!!!」と書かれていた。抗議者は拡声器を通して「学校と職場でストライキを行い、独裁者で国賊の習近平を排除せよ! 私たちは食べたい、自由が欲しい、投票したい!」と連呼した(Wikipedia「習近平を批判する横断幕」)。

 厳重な警備、言論統制の中、このような明確な政権批判のスローガンが掲げられたのだった。大衆の不満、怒りの深さが分かる。習政権はそんな大衆の不満を恐れたのだ。

 「小康社会の全面的実現」を自画自賛し、「共同富裕」などと言えば、抑圧されている大衆の不満の鬱積に火をつけるようなものである。習政権がそれを感じ取って全会決定文では、そんな表現を避けたのではないかと考えざるを得ない。

◇労働者大衆を懐柔

 決定文は、「改革開放の旗印を高く掲げ、心を結束させ力を結集し、奮い立って邁進し、社会主義現代化強国の全面的完成という二つ目の百周年の奮闘目標を達成するために、中国式現代化によって中華民族の偉大な復興を全面的に推進するために、奮闘努力していかなければならない」と、「改革」を多用する精神論で真の問題を逸らし、「社会主義現代化強国」という偽りのスローガンで、労働者大衆を懐柔するしかなかった。

 決定文は、「改革をいっそう全面的に深化させる総目標」として、「2035年までに、ハイレベルの社会主義市場経済体制を全面的に完成させ」、「今世紀中葉までに社会主義現代化強国を全面的に完成させるために固い基盤を築く」として、「継続的に改革を前へと推し進め」、「中華人民共和国成立80周年の2029年までに、本決定が提出した改革の任務を達成する」と、「中国式現代化」というまやかしを掲げた。

 「社会主義強国化」、「共産党の一党指導体制の堅持」を題目のように掲げる中国は、広範囲に国有企業があり、国有経済のウエイトが高い〝混合経済〟(国有と民有の並存)であるが、国有、民有を問わず生産現場で過酷な労働搾取が行われている資本主義社会だ。

 中国社会は、自由主義的な資本主義ではなく、「官僚・党支配層が利益集団を形成している」、国家が主導する資本主義、すなわち国家資本主義である。「市場経済体制」は商品経済であり、資本主義経済そのものである。

 中国は商品生産が大手を振って行われているのだ。「独立に行われていて互いに依存しあっていない私的労働の生産物だけが、互いに商品として相対する」(マルクス『資本論』)のである。労働生産物が商品となる、このような社会は商品生産社会であり、中国は商品生産を基礎とする資本主義社会に他ならない。

◇中国労働者の闘いの方向性

 決定文の「中国式現代化」は、現代中国を社会主義社会だとして、中国の労働者を搾取する資本主義的現実の真実を覆い隠し、労働者大衆を抑圧・懐柔して、国家資本主義体制につなぎとめるためのものだ。

 現在中国では不動産不況を1つの契機として、過剰生産恐慌の様相を呈している。その中で労働者は過酷な搾取を受け、特に農民工は戸籍制度による酷い差別を受けている。若者は就職難に喘ぎ「若者の失業率」は13%を超え、大卒の就職内定率は5割未満だ。地方政府は財政難に陥り、去年の地方政府負債総額は106兆元(2280兆円)、債務比率が大きな所で天津市1080%、重慶市770%(BS日テレ深層ニュース7月18日)。しかし今回の3中全会でも、習の〝改革〟は結局労働者大衆に犠牲を押し付けるだけである。

 中国労働者は、習政権を打倒し、真の社会主義社会を勝ち取る闘いに立ち上がるであろう。 (佐)


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