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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1480号 2024年8月11日
【一面トップ】 加速する日米軍事同盟の一体化
        ――2+2「統合軍司令部」を新設

【一面サブ】  危うい岸田政権の「原子力活用」
        ――敦賀原発2号機、再稼働に不適合
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 日銀会合後にバブル崩壊
        ――矛盾深める金融財政政策と資本主義
【二面サブ】  生きるか死ぬかの自動車産業
        ――自動車業界の再編と労働者の立場
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

加速する日米軍事同盟の一体化

2+2「統合軍司令部」を新設

 7月28日、外務・防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(2+2)が開かれた。米国は自衛隊との指揮・統制の連携を強めるために在日米軍を再編し「統合軍司令部」を新設することを表明。さらに、核を含む米国の軍事力で日本への攻撃を阻む「拡大抑止力」強化のための初の閣僚会合がもたれるなど、日米軍事同盟の深化は急ピッチで進んでいる。

◇統合軍司令部新設

 会議の最重要課題とされたのは、米軍、自衛隊の連携強化である。自衛隊については、22年に策定した安保関連3文書に基づいて、陸・海・空3自衛隊の運用を平時から束ね、米軍との共同作戦の調整も担う「統合作戦司令部」を来春までに創設することが決まっている(5月に法改正)。

 これに対応して米軍は、在日米軍を再編し、「統合軍司令部」を設けることが明らかにされた。「統合軍司令部」には、現在ハワイのインド太平洋軍司令部の持っている軍作戦指揮権の一部が与えられる。これによって、あらゆるレベルでの日米同盟の政策および運用を調整し、平時及び緊急事態を問わず日米両軍の密接な共同行動が行えるようにする。

 この他、地上型迎撃ミサイル(PAC3)など兵器の共同開発・生産、軍事産業強化による兵器の強靭なサプライチェーンの構築、米軍の艦船や航空機の維持整備の促進、サイバーセキュリティの協力、沖縄辺野古基地建設促進など自衛隊と米軍の一体化が進められようとしている。これは4月の首脳会談で、「国際的規模での協力関係を築いていく」という合意の具体化である。

◇米の核に依存した「拡大抑止」

 2+2では、米の「核の傘」を含む米国の戦力で日本への攻撃を阻む「拡大抑止」の強化が話し合われた。「拡大抑止」のための閣僚会議は初めてのことである。

 会議の意義について木原防衛相は「拡大抑止に焦点を置いた議論の実施で日米同盟の抑止力強化に向けたさらなる相乗効果が期待できる」と述べている。

 日本政府は世界で唯一の「被爆国」として、核兵器について「持たず、作らず、持ち込ませず」の「非核3原則」を謳ってきたにもかかわらず、実際には米国の核戦力に依存してきたのが実態である。例えば、2009年オバマ米大統領が、「核なき世界」を訴えた際、日本の駐米公使秋葉剛男国家安全局長は、「戦略核弾頭の一方的な削減は日本の安全保障に悪影響をもたらす」と米政府に訴えている。岸田政権も「核兵器なき世界」を掲げつつも、日本が米の「核の傘」に入っていることは、「日本の安全保障の確保に必要であり、矛盾しない」(林官房長官)という立場だ。

 日本が米国の軍隊に依存を深め軍事同盟の一体化に前のめりになっているのは、日本を取り巻く情勢の緊張が高まっているからである。2+2会議の共同声明は、ロシアに対しては「ウクライナに対する残酷でいわれのない不当な戦争」を行っていると非難し、北朝鮮に対しては「憂慮すべき数の無謀な弾道ミサイル発射を継続している」と批判している。そして中国に対しては、インド太平洋地域及びその他地域への著しい進出を挙げて、「外交政策が他者を犠牲にし、自らの利益のために国際秩序を作り変えようとしている」、「国家、企業及び市民社会に対して、政治的、経済的及び軍事的な威圧を用いている」と激しく非難している。日米と中国、ロシアとの対立はますます深まっているのである。

◇日本帝国主義を免罪する共産党の主張

 共産党は、今回の日米軍事同盟の強化に関して、日本に独立した指揮系統の明確な担保はなく、日本の主権が失われ、「米軍の戦争体制に組み込まれる危険が迫っている」(赤旗、7・29)と訴えている。しかし、日米両軍の指揮、行動の統一など日米の軍事同盟の密接化、強化は、米国の押し付けではなく、日本の国家及び大資本の要求でもある。

 中国のインド太平洋、アジア地域への進出は、米国だけでなく日本の資本にとって経済的にも大きな打撃である。例えば、中国がほぼ全域の管轄を主張する南シナ海は、世界の貿易商品の約4分の1の流通ルートであり、原油と液化ガス(LNG)では、全貿易量の3分の1から半分程度がこの海を通っていく。もし、この地域が中国に握られると、日本は大打撃を受けることになる。

 日本は米国を中心とする自由主義的なブルジョア国際秩序の下で経済的に発展し、世界中に資本・商品を輸出し、国内の労働者のみならず数百万の海外労働者を搾取、収奪する帝国主義国家である。

 中国やロシアに対抗しての日米軍事同盟の一層の強化=軍事同盟の「シームレス化」は、米国から押し付けられたものというよりも、国家の権益、大資本の利益を維持し、確保するための帝国主義国家日本の要求でもある。

 共産党のように日米軍事同盟の強化を、自衛隊の米軍への「属軍化」とか、「米国の戦争に日本が巻き込まれる危険」などと言うことは、日本帝国主義を免罪する反動的な主張である。

 日本は今後5年間に軍事費を一挙に2倍化(GDPの2%へ)する計画であり、これが実現すれば日本は世界第5位の軍事大国となる。

 日本が軍備を増強すれば、中国もまた一層の軍備拡大に走るだろう。日本政府は、中国はアジアの軍事緊張をもたらしていると非難しているが、日本もまた米国と結託して緊張を激化させているのだ。

◇軍拡に反対する労働者の階級的闘いを

 日本・米国と中国とのインド太平洋における軍事的対立は、帝国主義国家同士の覇権争いである。帝国主義国家が存在する限り、軍備増強や軍事的軋轢は避けられない。日本・米国も中国も、各国人民を対立させ、軍備増強に走っている。その犠牲となるのは労働者、働く者である。労働者は、中国、日本・米国のいずれの帝国主義にも与しないし、反対である。国境のない、世界中の労働者が協力する社会を目指す労働者は、国際主義の立場を堅持して、資本の支配に断固反対する階級的闘いを闘い抜いていかなくてはならない。(T)


【1面サブ】

危うい岸田政権の「原子力活用」

敦賀原発2号機、再稼働に不適合

 岸田政権は「脱炭素社会」を口実に「原子力の活用」に舵を切っている。しかし、日本原子力発電(原電)が再稼働をめざす敦賀原発2号機について、原子力規制委員会は7月26日、「原子炉建屋の基礎地盤に活断層がある恐れが否定できない」として、原発の新規制基準に適合しないと判断した。

◇敦賀原発再稼働をめぐる問題

 2011年3月の東日本大震災の福島第一原発以降、それ以前に54基あった原発は、安全対策のために順次運転を停止し、12年5月には全ての原発の稼働が停止した。

 12年6月には、原発を推進する「資源エネルギー庁」と同じ経産省にあった「原子力安全・保安院」をかえて、環境省の外局として「原子力規制委員会」が設けられた。この時の法改正で、運転期間は原則40年、規制委が認めれば1回に限り20年延長可能とした。当時の民主党政権は、延長は「極めて限定的」と述べた。

 13年7月には「新安全基準」が施行され、原子力規制委員会はこの新基準にもとづき原発再稼働を審査してきたが、これまで申請した4原発8基はすべて、60年までの運転が認可されてきた。電力資本や政権は、安全性よりも目先の経済的利益を優先させ、老朽原発を運転させている。

 しかし、今回の敦賀2号機の審査では規制委は新基準に適合しないとした。審査の要点は、2号機の北西300mで見つかった「K断層」が「約12万~13万年前以降に活動した」活断層かどうか、それが2号機の基礎地盤に認められている断層につながるかである。原電は、地層の分析結果を根拠に活断層ではないとし、K断層の南側で行ったボーリング調査でK断層に似た断層は確認されず、2号機基盤まで延びていないと主張した。これに対して規制委は「原子炉建屋の直下に活断層がある恐れは否定できない」と結論を下した。

 原電は原子炉建屋直下の活断層を否定するが、それは会社の利益を考えるからだ。断層が動けば甚大な被害をもたらす危険性があるのだから、建屋直下の活断層の恐れがある断層を避ける配慮をしなければならない。規制委ですら今回は不適合の判断を示した。

 その後も原電社長は、「再稼働をめざす」とし、利益優先の資本による原発が、問題をはらむ事を如実に現わしている。

◇「原子力の活用」に舵を切る岸田政権

 12年に「30年代の原発稼働ゼロ」を目標とする新エネルギー戦略を掲げた民主党政権であるが、十分な津波対策を怠り事故の原因を作った東電資本、そして原発を推進してきた自民党や当の民主党政権の責任が第一に問われなければならない。

 しかしその後、自民党政権の下で「原発ゼロ」は修正され、14年4月のエネルギー基本計画では、「原発依存度を可能な限り低減させる」としつつ、原発再稼働を推進した。

 岸田政権は23年2月に「GX実現に向けた基本方針」を閣議決定し、「脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長」を掲げ、原発を「最大限利用する」に転換した。5月には「GX脱炭素電源法」を成立させ、一定の条件では60年超運転を可能にしたのだ。

 今回の敦賀原発不許可は、いくつものプレート境界がせめぎ合う地殻変動帯に位置する日本の、原発立地条件の地質的困難性を白日の下に晒したと言える。

 原発の安全性確保こそがまず求められるが、目先の利益を求める資本、資本の体制維持を図る岸田政権は、福島事故の真剣な反省もなく、そして使用済核燃料の再処理、廃棄物処理も未解決のまま、原発回帰に突き進んでいる。こうした動向は資本の下での原発の危険性を暴露している。 (佐)


   

【飛耳長目】

★被爆直後の広島の惨状を伝える52分の動画を観た。爆心地は灼熱の火球と放射線、爆風と高熱火災で壊滅。生と死を分かつ境界に位置する御幸橋には、黒焦げの髪に焼けただれた肌を露出させた被災者が身を寄せた★爆心地から3㎞の自宅にいた中国新聞写真部の松重美人は、カメラを抱え市中心部に向かうも、ガレキと火の手に阻まれ御幸橋に辿り着く。無惨な光景にシャッターを押せないままだったが、やっと2枚撮る。被爆3時間後だった★写真には死んだ幼子を背負う母親や、勤労動員の学生らが写る。ナタネ油を火傷した肌に塗るだけの応急処置が、油が切れて機械油になった★松重は火勢が衰えた午後に中心部に入るが、やはり惨状にたじろぎ、この日撮ったのは6枚だった。ネガは現在、中国新聞社に保管されている。写真に写る多くの人が存命で、当時の生き地獄の体験を語る★爆心地の広島城には軍施設があり、師範学校や付属中学の学生8千人超は、爆撃に備える防壁造りに動員され即死した。幸い児童は疎開し、死者の多くは10代半ばの若者だった★広島で約14万人、長崎でも同じ惨劇の中で約7万人が亡くなった。プーチンは戦術核使用をほのめかすが、その威力は広島型の5~10倍にもなる。帝国主義による戦争には、限界は設けられていないのだ。 (Y)


【2面トップ】

日銀会合後にバブル崩壊

矛盾深める金融財政政策と資本主義

 日銀は7月末日の金融会合で、政策金利の追加利上げや国債買い取り額の縮小など、「量的引締め」に移行すると発表。投資家は予想以上の政策変更にあたふたし、円買いドル売りと株式売却に走った。

◇円安を容認し続けた日銀

 7月末に行われた日銀の金融政策決定会合直後から金利が急騰し、また日経平均株価が3営業日連続して急落した。今回の日銀会合の決定内容を見る前に、日銀の動きを簡単に振り返える。

 日銀・植田は昨年10月の会合後、記者会見で「異次元緩和」を訂正することを示唆していた。

 今年3月の決定会合では、「異次元緩和」に終止符を打ち、「普通の金融政策」に転換すると発表。「普通の金融政策」とは、黒田・日銀が行ってきた長短の金利を「ゼロ」に誘導する金融緩和策を止め、欧米の中央銀行のように政策金利で物価管理を行うというものである。この時、日銀は次のように説明していた。

 日銀当座預金の「付利」をマイナスにして企業への貸付を促す操作を止め、「無担保コール翌日物」を政策金利として「0~0・1%」に引上げる。加えて、これまでの「月8兆円」の国債買い入れを「月6兆円」に減額する、だが国債買い入れを継続すると。

 これでは、「普通の金融政策」になっていない、今までと変わらない。

 投資家にそう見透かされ、3月の日銀会合直後から円安が急進した。「金融政策は為替相場を直接コントロールの対象にしていない、為替政策は財務省の所管と理解している」(3月27日、衆議院財務金融委員会)という植田の発言がこれに拍車をかけた。

 その後、食料品・日用品の価格が大幅に値上がりする状況になっても、日銀は政策金利を据え置く方針を固持し、円安が物価上昇に与える影響を無視する発言をしていた。「(円安は)基調的な物価上昇率に、今のところ大きな影響を与えていない」との植田の見解に対して、「現在の円安が物価への影響を無視できる範囲か」との記者の質問に「はい」と断言した程だ(4月26日、日銀会合後の記者会見)。

 投資家は、植田の発言から日銀と政府は金融緩和を維持する「ハト派」だと受取り(英国投資ファンドなど)、円売りを浴びせ、4月29日には34年ぶりに1ドル=160円台をつけた。

◇日銀へ圧力強まる

 円安が進めば、自動車など輸出企業の輸出商品は、海外で安く販売できる。だが、ドル建で原材料を輸入する企業は、円安による価格上昇分を販売価格に転嫁できなければ、儲けが減る。

 海外で企業買収を行う場合も、円安になれば買収費用が膨らむ。投資先を海外から国内のIT分野に振り向け始め、その効果を高めるために円高を望む企業も出てきた(日立など電気通信大手)。

 こうした最近の企業動向と政府・日銀は対立しだした。政府は未だに「デフレ脱却」を叫び、物価が毎年2%上昇することを「景気の好循環」の指標にし、日銀同様に円安を追認してきたからである。

 円安と物価高騰が収まらず、「異次元緩和」を支持していた自民党や御用学者からも「無策だ」という批判が高まった。

 政治資金裏金疑獄が重なり、憂慮した岸田は植田を呼び、円安進行を軽視する発言を慎むように要請した(5月7日)。この岸田との会合を機に、植田は「円安が物価に与える影響を重視する」と言い出したが、どうせ口先だけと鼻であしらわれ、為替は7月初めに1ドル=162円寸前になった。

◇円高急進、株価大暴落!

 7月末に行われた日銀政策会合を境に、為替は円高に振れだした。それは、次のような決定が発表されたからだ。

 政策金利を「0~0・1%」から「0・25%程度」まで引上げ、0・5%以上も視野に入れる。月6兆円の国債買上げ額を順次減らし、26年1~3月に3兆円程度にする。日銀の国債保有残高を7~8%減らす等。

 投資家は日銀が「金融引締め」を決断したと受け取ったのだろう。同時に、米国FRBが9月に政策金利を引き下げると発表したことと重なって、日銀会合後に、為替は円高に急展開。また、金利引上げで影響を被る株価は、米国株式市場で全面安の影響もあり、日経平均株価は大暴落した。

 『海つばめ』1470号で次のように書いた。「日銀が金利を上げる局面になれば、国債同様に株式もまた下落の圧力を受ける」。

 円安を利用した海外勢の日本株への投機や「貯蓄から投資へ」を煽った政府の悪だくみによって株バブルが作られ、政府・日銀の金利引上げを契機にして株バブルは崩壊したのだ!

◇矛盾深める政府・日銀

 植田は、7月の日銀会合後、金利引上げで「景気にマイナスはない」と虚勢を張り、「(市場の)金利上昇圧力は大したものではない」と発言した。

 だが、市場の10年国債利回りは今年の春以降、0・8%程から1%超まで上昇し、政府は7月に発行した10年国債の表面利率を市場利回りに合わせて1・1%にせざるを得なかった。これが2~3%に上昇するなら、企業の借入利率を含めた各種金利(社債など)も連動して上がり、企業の設備投資に水を差す。

 植田は国債購入や保有国債を減額するという「量的引き締め」に入ると発表している。その通りにやるなら、政府発行国債の「表面金利」は上がる。

 その結果、政府の借金である「国債費」の支払いが今後上昇し、税収が増えなければ借金比率は歳出予算の3割に迫るだろう。それだけ、将来の労働者の負担は重くなるということだ。

 また、市場利回り上昇で、日銀保有国債の時価は下落し、保有国債の「含み損」が増大する。日銀財務の悪化は必至である。

 資本主義は金利や為替の変動で株式や景気さえも左右され混乱する。それだけ金融と財政に、また架空資本に依存し頽廃を極めている。 (W)


【2面サブ】

生きるか死ぬかの自動車産業

自動車業界の再編と労働者の立場

 自動車産業の再編成=日産・ホンダ・三菱連合とトヨタ連合の2大グループに自動車業界が再編された背景を明らかにし、労働者の立場について考える。

◇トヨタ連合とホンダ・日産三菱連合に再編

 今月1日、ホンダ・日産連合に三菱自動車が合流することが決定した。日本の自動車業界はトヨタ連合(トヨタ・スズキ・スバル・マツダ・ダイハツ)との2大グループに色分けされた。

 三菱の株の三割を日産が保有し、合流は筋書き通りである。3月15日のホンダ・日産の提携は、追い詰められた会社同士が〝生き延びる〟ための選択に他ならない。

 日産は、ルノーとの関係を対等な資本提携に変えることが出来たが、国内や米国での販売は停滞し中国では、18年の156万台が23年には79万台と半減した。売れ筋のHV車を投入できない米国の販売不振で、24年度第1・四半期(4―6月)の営業利益は前年比99%減の9・9億円にまで落ち込んでいる。

 ホンダは24年3月期の決算は売上、営業利益とも大きな伸びを記録したが、利益の半分は、売り上げが4輪の4分1強の2輪部門が生み出したものであり、4輪部門の利益は低い。ホンダがぶち上げた27年全車EV化の重要な戦略であったGMとの協業は、電池、車両開発、自動運転など全ての計画が白紙になった。

 企業の競争力を支える生産台数は24年3月期、日産・ホンダ・三菱連合833万台。トヨタ連合は、1663万台(トヨタ単独で1千万台を超える)。生き延びるためにはお互い脛に傷を抱える日産、ホンダは連合を組む以外になかったのである。そしてトヨタは、次々と暴露された不正に足元をすくわれ、揺れ動いている。

 〝生きるか死ぬか〟の競争戦を勝利するためには、EV車と車両をソフトウエアで制御するSDV(ソフトウエア定義車両)の開発と車両への実装が競争の行方を決定する。世界最大の自動車市場で激しい競争が戦われている舞台が中国である。

◇自動車強国になった中国

 20年に中国政府は、「新エネルギー自動車産業発展計画」を発表し「新エネルギー自動車産業の質の高い発展を促進し、自動車強国の構築を加速するために、本計画を制定する」と、多岐に渡る具体的計画を発表した。

 中国自動車工業協会(CAAM)の発表によると、「23年の中国の自動車販売台数は前年比12・0%増の3009万台(国内2518万台、輸出491万台)と3年連続で増加し、初めて3千万台を超えた。うちEVは668万台、PHEVは280万台で新エネルギー車は全体の31・6%を占めている」。世界のEV車販売に占める中国のシェアは6割に達しようとしている。これを可能にしたのが政府によるEV車への補助金と、国家による自動車産業の保護育成策である。

 米、独の調査機関によれば09年から22年に新エネルギー車に対する中国政府の補助金は1730億ドル。ほかに鉄鋼や電池の割引価格での供給や低利融資が行われた結果、中国の生産能力は年間4千万台を超えた。しかし自動車生産設備の稼働率は22年で64・1%。新エネルギー車の生産能力は23年1346万台、稼働率は57・47%になっている。

 過剰生産力を抱えながら中国の自動車産業が拡大、発展を続けることが出来るのは、主要12社(20年段階)のうち10社が地方中央の国有企業として存在する国家資本主義体制にある。

 中国は、EV車の原価の30%を占めると言われる電池を鉱物資源から最終製品まで自国の企業で完結できるサプライチェーンを確立し、SDV開発に必要なソフトウエア技術や電子機器を開発する能力を持っている。高度な技術力と価格競争力を持つ新興民営企業のBYD、AIONなどは、世界に輸出先を拡げ習近平の進める一帯一路に沿った海外工場建設を進めている。

 BYDは中国市場でシェアトップを続けてきたドイツのVWから昨年、トップの座を奪った。BYDは95年に電池メーカーとしてスタートしたが僅かの間にEV車の開発販売を開始し、21年からの急激な伸びはPHEV(最新のエンジン熱効率は46・06%、プリウスの40%と比較して驚異的)の販売を開始したことにある。

 アップルが断念した車両開発をスマホメーカーのシャオミが実現し、「SU7」は4月に発売27分で5万台を売り上げ6月から2交代で年間10万台を生産する。

◇再編に対する労働者の闘いを

 中国で苦境に陥っている日本メーカーは、4月の販売台数が前年比でトヨタ27・3%減、ホンダ22・2%減、日産が10・4%減。各社とも中国で人員削減と工場閉鎖、再編を進めている。中国市場での落ち込みに危機感を持つのは、単なる売上減、利潤が削減しているからではない。資本は、明日の自動車業界やルールをめぐる争いの最前線が中国で闘われていると理解しているからである。

 ホンダ三部社長は「先行している会社はIT企業などと連携しながら新しいSDVを造ってきている。これまでの開発の概念を捨てて、スピード感を持って挑んでいく必要がある」とし、今回の提携は「次世代SDV基礎的要素技術の共同研究契約」であると、連携を締結し具体的項目の基本合意がなされた。

 資本の利益が追求される自動車産業の再編成は、労働者に犠牲の強要を伴うだろう。犠牲の強要に対して労働者は断固闘う。しかし自動車産業再編によって、労働の社会的統合が進み、労働者の闘いの基盤が広がることの歴史的客観的な意味は確認できるであろう。

 現在に至るまで自動車各社が互いに市場をめぐって競争してきたが、連携・統合が進むことで生産の〝社会化〟が進み、各企業でバラバラに働いていた労働者の統合も進むであろう。資本主義において、未来社会の物質的、主体的条件が準備される。労働者は資本の体制を克服するために団結を強めて闘おう。 (古)

※トヨタの不正については、近々発売される『プロメテウス』第63号掲載の「空前の利益と大規模不正は『トヨタ生産方式』と表裏の関係」(仮題)をお読み下さい。


<1479号の校正>
前号2面年金記事訂正
サブタイトル及びリード1行目の「公的年金財政検査」は「公的年金財政検証」です。

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