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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1481号 2024年8月25日
【一面トップ】 岸田、追い込まれ首相辞任
        ――政権のたらい回しを許すな

【一面サブ】  立憲は大衆の支持を獲得できるか
        ――自民総裁選と並行する立憲代表選
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 不毛な民青ゼミにした志位
        ――労働の解放を永遠の彼方に追いやる
【二面サブ】  極右が仕掛けた英国反移民暴動
        ――労働者大衆の反撃で封じ込める
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

岸田、追い込まれ首相辞任

政権のたらい回しを許すな

 岸田首相は8月14日、臨時記者会見で9月の自民党総裁選挙に立候補せず、同月末の総裁任期終了をもって退任する(事実上の首相辞任)ことを明らかにした。岸田は自民党の裏金づくりについて「私が身を引くことでけじめをつける」と強調したが、これは政府・自民党に対する労働大衆の激しい不信・怒りよって首相辞任に追い込まれた結果だ。

◇岸田政権で更に進化した政治反動

 首相辞任記者会見で、岸田は3年間の政権の実績について、防衛力の強化やG7広島サミットや原発再稼働、賃上げなどを挙げ、「大きな成果を上げることが出来たと自負している」と述べた。

 しかし、防衛力強化なるものは、安保関連3文書改訂に見られるように、敵基地攻撃能力(反撃能力)を保有すること、23~27年度の5年間に軍事費を以前の計画の1・5倍、国内総生産(GDP)比2%の43兆円に増額することとし、そのための増税も盛り込まれた。

 さらには自衛隊の陸・海・空3軍の統一司令部設置に対応して、米軍も「統合軍司令部」を新設するなど、日米両軍の行動の「一体化」が進められた。自衛隊は「防衛」の為の「盾」ばかりではなく、攻撃のための「矛」の役割を持つようになった。

 まさにこれまでの「自衛のための」「最小限の軍備」を謳った戦後日本の安全保障策の「一大転換」である。しかも、この重大な「転換」は、首相就任当初の「国民の声をよく聞く政治」という約束もどこへやら、国会の審議はなく、内閣の決定という政府の独断で行われたのである。安保3文書改訂について、岸田は「俺は、安倍さんにもやれないことをやった」と周囲に自慢したという(朝日、8・16)が、岸田外交の反動的性格が暴露されている。

 エネルギー政策では、東電福島第一原発の爆発事故によって定められた、「原発の縮小・凍結」という方針は「温暖化効果ガスを排出しない電力の確保」という名目で放棄され、原発の建て替えや運転期間の延長(40年から60年へ)が決められた。使用済核燃料の保管場所確保や運転期間延長に伴う安全性の確かな見通しもなく、目先の利益のために「原発最大限活用」が決められたのだ。

 経済関連については、岸田は3年前の首相就任当初、「新自由主義は富める者と、富まざる者との深刻な分断を生んだ」、「分配なくして成長なし」として、「格差を是正する」「新しい資本主義」を謳い、大企業や富裕者への課税強化による低所得者、中小企業への支援を約束した。

 しかし、「新しい資本主義」は、確かな信念もなく実施もせずたちまち雲散霧消した。そして、安倍流の〝官製春闘〟による賃上げやバラ撒きが行われてきたのである。

 岸田は賃上げを「大きな成果」として吹聴しているが、経済の低迷、物価上昇で実質賃金は伸びず、労働者・働く者は生活苦にあえいでいる。

 一方、岸田政権は、伸び悩む支持率回復のために様々なバラ撒きを行ってきた。コロナ対策として買い物券や旅行券として商店や観光業者への補助、22年からはガソリン補助、翌23年には電気・ガス料金の補助を行ったが、所得制限はなく高額所得者にとって有利な、バラ撒きそのものである。

 財政が巨額の負債を抱えているにもかかわらず、大軍拡のために軍事費を増額したり、政権維持のためにバラ撒きを重ねた結果、財政の赤字はさらに膨らんだ。国家の国債(借金)残高は、この3年間に100兆円も増え、今年度末には1100兆円を超すと見込まれている。財務省幹部によれば「過去にも、これほど財政に依存した政権はなかった」(朝日、8・17)といわれている。

◇金権・腐敗は自民党の体質

 岸田が首相の座から落ちる最大の契機となったのは、自民党派閥の裏金づくりの発覚である。岸田は党の「金権腐敗」克服のために「火の玉」となって闘うと大見得を切ったにもかかわらず、裏金づくりについて、誰がいつ、何のために始めたのか、その実態などについて何一つ明らかにされず、また「必ず成立させる」と公言した改正政治資金規正法も、裏金づくりの手段となった政治資金パーティは禁止されず温存されたままだし、虚偽記載された政治資金報告書について議員の責任を事実上不問にし、政治資金の使途内容の全面的公開は10年後とするなどごまかしの改定にとどまり、企業献金の廃止も無視した。

 こうした国民を愚弄する岸田の政策は、一向に好転しない生活苦に加えて、安倍の国葬決定や統一教会と自民党の癒着など、大衆の岸田政権・自民党に対する不信、怒りを高めずにはおかなかった。

 内閣の支持率は20%前半で、不支持率は60%を超え、自民党支持率も19%まで落ち込んでいる(以上、6月の朝日新聞調査)。

 政府自民党にたいする反発は選挙結果にも現れ、4月に行われた3つの衆議院補選では自民党は2つの不戦敗を含め全敗、7月の東京15区衆院補選でも、野党=立憲候補に敗北している。

 こうした中、党内からも「岸田首相のままでは次期衆院選を闘えない」という声が高まり、自民党総裁再選を目指していた岸田は総裁選再出馬断念に追い込まれた。

◇自民党政権延命に反対し闘おう

 岸田は、記者会見で「自民党が変われることを示す最もわかりやすい最初の第一歩は、私が身を引くことである」と述べた。しかし、岸田に代わって自民党の誰が新たに総裁になったところで自民党は変わらない。

 例えば、「自民党の生まれかわれることを証明する」と総裁選に立候補した小林鷹之の記者会見には、11人の安倍派議員が出席したが、そのうち7人は裏金づくりに関与した議員である。記者にこのことを追及されて小林は裏金の実態解明には検察のように権限のない党では「限界がある」「(責任追及を)やりすぎてしまうと現場が回らない」と言い訳に終始している。そして、政策については緊急事態と自衛隊を明記する憲法改正に「最大限の熱量を挙げて取り組む」と述べた。

 小林発言は、総裁が変われば「自民党が生まれかわる」というのが、まったくの欺瞞であることを暴露している。

 腐敗、反動の自民党の支配に反対し、労働者、働く者は団結し闘いを推し進めていこう。 (T)


【1面サブ】

立憲は大衆の支持を獲得できるか

自民総裁選と並行する立憲代表選

 立憲民主党の泉代表の任期満了にともなう代表選は、9月7日告示23日投開票で行われる。岸田首相の辞任表明は政権の破綻を示すが、立憲はそれに代って労働者大衆のための政治を行うことができるであろうか。

◇立憲は大衆の支持を得ているのか

 4月の3つの衆院補選と5月の静岡知事選では、立憲推薦などの候補者が当選した。しかしこれは、大衆の自民への厳しい批判が、立憲への支持として集まった結果とは言えない。衆院東京15区、長崎3区では、自民批判票が別の保守系候補者に行ったり、投票に行かなかったりした結果である。また、衆院島根と静岡知事選は、自民支持者にも受け入れられる候補者であり、立憲への積極的な支持と言えないのだ。

 労働者の生活の苦しみをよそに、自民党はその改善を図る政策を、定額減税などの糊塗策しか出さず、裏金作りに励む体質が暴露された。岸田政権は、労働者大衆を偽るごまかしの政治資金規正法改正で逃げ切ろうとし、自民党に対する労働者大衆の不信に拍車をかけた。しかしそれが立憲や他の野党への支持には結びついてはいないのだ。

 都知事選もこの結果が現れた。立憲・蓮舫の無党派主義は、現職小池とのバラ撒き策競争を呈し、大衆の支持を結集できなかった。世論調査でも、政党支持率は自民が29・9%に対し、立憲は5・2%(NHK世論調査8月)と低いままだ。

◇政権交代を掲げ自民に追随する立憲の政治

 立憲の泉は「私たちが政権交代の主軸となる」(サンデー毎日8月18・25日)と掲げ、基本的な方針について、一つは「人を大事にすること」として、「非正規雇用の正規化」を「最重要課題」とする。しかしそれは「雇用対策というより経済対策」だと言う。泉がめざすのは、資本の下で生活苦に陥る労働者大衆のための政治でないのだ。

 今一つは「国を大事にすること」として、食料自給率、エネルギー自給率、製品のサプライチェーンに力を入れるとし、自民党政権下では既存業界の既得権に縛られ、エネルギーの転換が遅れたとする。しかし立憲も、電力資本の意向を受けており、「原発ゼロ」の基本政策を推進する展望はなく、福島原発事故の問題もおざなりにしている。

 泉は「野党がしっかりと自民党と並び立つことによって、自民党もまた変わっていく。これが健全な政治の姿」とする。裏金問題で腐敗し堕落した姿を晒す自民党を、徹底的に追い詰め打倒するのではなく、「変わる」ことを期待するのだ。これでは、とても労働者大衆の大きな支持を得ることはできない。

◇単なる政権交代ではなく階級闘争の発展を

 都知事選後に立憲・小沢が「野党共闘ができる執行部」、「泉代表では沈没」と語り、泉指導部に対して批判を表わした。小沢は2大政党による「政権交代」が持論だ。政権交代が緊張感を生み良い政治ができるとし、自民党と似た政党間で交代し安定したブルジョア政治を維持しようとするものだ。しかし泉もまた「野党がしっかりと自民党と並び立つ」ことを理想とする「政権交代論者」だ。代表選には、枝野、泉、野田などが出ようとしているが、代表選では「政権交代」が掲げられ、他の野党との共闘をどこまで広げるかが争点の一つになるだろう。

 しかし、労働者は自民党政治と同じ政治が、政権交代で続くことを決して望まない。政権交代ではなく、自公政権を打倒し、階級闘争を発展させ、労働者が主人公になる社会をめざす。 (佐)


   

【飛耳長目】

★イスラム原理主義が政治を支配し、人々を抑圧する中でトルコは特異な国である。政教分離が徹底され、女性は男性と同等の権利が与えられ、ヒジャブ(スカーフ)もモスクへの礼拝も酒も個人の自由とされる。資本主義の発展がイスラム教からのくびきを解放した★それは「トルコ建国の父」と呼ばれるムスタファ・ケマル初代大統領に負うところが大きい。オスマン帝国滅亡時の諸外国による占領を一掃し(トルコ革命)、いち早くブルジョア民主主義を導入した。政教分離を徹底し、女性の参政権は日本より30年も早く、近代工場とともに土日休日(イスラムは金曜が休日)、教育や文字改革等を次々と打ち出した★そのトルコで20年に渡り君臨するのがエルドアン大統領である。日本では欧米や中ロ仲介者として登場するが、国民にはすこぶる評判が悪い。彼の党はイスタンブールやアンカラ市長選で初めて敗北し、地方でも劣勢だ。あるトルコ人は「彼の顔など1秒たりとも見たくない」と言い、汚職や一族への優遇を告発する★背景には、80%を超えるインフレやリラ安(1ドル=8リラが今では19リラ)、失業者の増大、度重なる大地震での不手際等々がある。建国時には進歩的であった改革は資本主義の発展と共に腐敗し、労働者・市民の反発を呼び起こしている。彼が打倒される日も近い。(義)


【2面トップ】

不毛な民青ゼミにした志位

労働の解放を永遠の彼方に追いやる

 共産党委員長であった志位和夫が民青とタッグを組んで、共産党の考えている社会主義・共産主義を広めようと、ゼミナールを開催した。それをまとめた著作(『Q&A 共産主義と自由』新日本出版)が発行されている。はたして、志位は若者や労働者の琴線に触れるような話をしたであろうか?

◇『資本論』を使って解説したが

 今回、民青と共にオンラインゼミを開催した理由について、志位は次のように述べている。

 気候温暖化や住宅費高騰などによって、世界の若者の間で、資本主義への不満が拡がり、反対に、社会主義・共産主義に対する評価が上がり始めている。この世界の流れに乗って共産党の支持を広げるために開催した。

 世界的な新しい流れについて、志位は続けて次のように説明している。

 ギャラップ社がオーストラリアで行った資本主義と社会主義のイメージ調査で、社会主義の方が資本主義よりも「肯定的」である割合が高くなった。豪共産党の支持が広がっている。「社会主義の世界的復権というべき流れが欧州の中心部で起こっている」。だから、日本でも期待していこうと。

 ゼミを通じて志位は『資本論』を解説しながら、資本主義の矛盾の深まりと社会主義への必然性を次の様に説いた。

 資本主義は「利潤第一主義」であり、そのために、「生産のための生産」という無政府的な生産が進み、次々と過剰生産を生みだし、恐慌が繰り返され、「そのために生産のいろいろな撹乱が起こる」。

 そして、今なお「利潤第一主義」は続き、世界で「貧困と格差の拡大」が進んでいる。だから、この「利潤第一主義」を変革していこうと、志位は声高く訴えた。

 だが、問題は、資本主義は「利潤第一主義」であるというように、なぜ、マルクスの規定と違った言い方をするのかである――マルクスは、労働過程で労働者の生きた労働を搾取して剰余価値(利潤)を生産するのが資本の本性であり、資本主義的生産様式の根幹であると述べている(『資本論』第1巻第4章~5章)。

 それは、志位の考える「社会主義の実現」が資本主義的生産様式の変革ではなく、資本主義の「民主的改革」であり、それゆえ、資本の儲け過ぎを「利潤第一主義」という言葉で言い替え、これを規制するということである。 要するに、剰余価値の生産が資本主義の本性であり、規定的であり動機でもあると、どうしても言えないらしい。

 マルクスが述べたように、社会主義及び共産主義の出発点は、生産手段を私有した資本(資本家)が剰余価値を生産して取得する生産様式を止揚することであった。

 つまり、生産手段を労働者の社会的共有に変え(『資本論』第1巻の終わりで、マルクスは生産者の「共同占有」と述べている)、資本主義によって生産者と生産手段が切り離された関係を取り戻し、労働者=生産者が生産手段を共有することで、生産者の本来の能力が一層創造的に発揮される。そして、労働時間が抜本的に短縮され、また、医療や福祉の社会化のみならず、共同労働社会に相応しく、共に助け合いながら働きまた過ごすことが可能になる。

 このことによって初めて、志位がいう「貧困と格差の拡大」が一切無くなり、女性差別などの差別も廃絶されるのだ。

 志位は、こうしたマルクスの革命的で弁証法的な歴史哲学を封印してしまった。このことが、直ぐに明らかになる。

◇生産手段の社会化には多数の形態?

 志位は「資本主義の成果を利用」して社会主義に進むと言う。「生産手段の社会化」がその一つであると。

 ところが、「生産手段の社会化」とは、私的所有を社会的共有に変えることではないと、矛盾したことを平然と述べる。「生産手段の社会化」について、「生産手段を個々の資本家の手から社会全体の手に移す」ことが「マルクスの答え」だと言いながら、「社会化」を別物にすり替える。

 「中山(司会者・民青副委員長) 『社会化』というのは『国有化』のことですか?」

 「志位 『生産手段の社会化』といいますと、『国有化』を連想する方も多いと思うんですが、私たちは『国有化』が唯一の方法と考えていません。生産手段を社会の手に移すには、いろいろな形態があって、情勢に応じて、いちばんふさわしい方法や形態を、国民多数の合意で選んでいけばいい。その『青写真』を今から描くことはできないし、描くことは適切でないというのが、マルクスとエンゲルスの考えでした。社会進歩の道を前進するなかで、みんなで見いだしていく」。

 志位の発言はひどい。

 生産手段を社会的共有に移すことに、二つも三つもの「方法や形態」は無い。志位は、「生産手段の社会化」を企業の国有化や協同組合化などに狭めてしまい、個々の企業による生産手段の私有・占有を容認するのだ。

 生産手段および労働過程から出て来た生産物の私的所有を排し、これらを社会的共有に変えることで、労働集合体(今でいう企業体)で働く人々の労働は、この集合体内のみならず社会全体で、直接に社会的労働となる。

 各労働集合体で作った米やスマホやその他は、私的労働の生産物という商品形態を取らず、従って商品として市場に流通させ、労働集合体と集合体の間で、また労働集合体と人々の間で商品を売買する必要がない。当然、労働力商品の売買も必要ない。人間労働が物化した貨幣で商品を手に入れる必要性もない。

 各種生産物は生産に要した労働時間によって把握できるのであり、各人は、自分が欲しい生活手段を手に入れるために、その人が働いた労働時間を証明した記録から支出すればいいだけのことである。

 だから、未来の労働共同社会では、志位が解説したような市場経済の必要性がなくなる。それゆえ、需要供給の変動や貨幣価値の変動で物価が上下するとか、過剰生産が発生するとか、政府と日銀がカネをバラ撒いて、インフレを引き起こすこともなくなる。

 志位は企業体の国有化や協同組合化を行えば、これが「社会化」だと言い、その例をあげる。「ベトナムはドイモイ(刷新)の事業で『市場経済』を通じて社会主義」を進め、あるプラスチック工場が「協同組合という形態で社会化」がされていたと。こうして、志位は市場経済つまり資本主義そのものを容認する。

 同時に「信用制度や銀行制度」も必要だと強調し、ブルジョアの素顔を恥じなく晒す。

◇社会主義を国民の合意で実現?

 志位は「国民の合意」を得てから「生産手段の社会化」を進めると言う。ところが、その前に、対米従属的な政治や財界の動きを規制し、〝独立した日本〟を確立してからであると、敢えて障害物を置く。

 日本が世界に冠たる資本輸出立国となり、世界中に築いた資本権益を守るために、米国等と協同し、世界で軍事的関与を強める帝国主義国家であることを、志位は隠している。日本の政府や財界が一見対米従属的に見えても、それは、力関係の違いがあるからに過ぎず、だからといって、日本資本主義の帝国主義的な性格は変わらない。

 にもかかわらず、志位=共産党は日本の「民主主義革命をやりとげた上で先に進む」という手順を優先し、〝労働の解放〟をその内容と共に永遠の彼方に追いやるのだ。

 志位はゼミに集まった若者にマルクスの理論を伝えず、不毛なゼミにしてしまった。 (W)


【2面サブ】

極右が仕掛けた英国反移民暴動

労働者大衆の反撃で封じ込める

 7月7日、フランスで下院選挙の決選投票が行われた三日前に、イギリスの下院選挙が行われ、保守党から労働党政権へ14年ぶりの政権交代がなされた。選挙の主要な争点であり、極右の暴動の背景でもあった英国の移民問題ついて考える。

◇下院選挙の結果

 英国の下院選挙も小選挙区で得票率と議席数は比例しない。得票率は、労働党33・7%、保守党20%、自民党13%、リフォームUK14・3%(政党数は12以上)。議席数は411、121、72、5となっている。14年ぶりの政権交代と言っても労働党の得票率は前回(19年)から僅か1・6ポイントの上昇である。

 金融引き締めと緩和を同時に行い、金融危機を引き起こした保守党トラス政権は、発足後わずか50日で崩壊。引き継いだスナーク政権は、経済の停滞、物価高騰(特にエネルギー価格急騰)、医療崩壊、無茶苦茶な移民政策(ルワンダへの移送)等々で、支持率は低迷し負けるべくして負けた。

 UKは、19年選挙の得票率2%から大きく伸ばした。UKの前身は、19年の主要な争点であったEU離脱を掲げたブレグジット党。今回の選挙では、「不必要な移民を停止。不法移民は拘留、送還」の反移民政策を中心に選挙を戦い、大きく得票率(得票数は411万票)を伸ばした。EU議会選挙で右派勢力が前進したのと同様である。

◇戦後の移民政策

 英国の戦後の移民政策を簡単に振り返る。第二次世界大戦後に英国は、48年国籍法で英連邦諸国に住む人々(コモンウェルス市民)に英国の市民権をあたえた。50年代の経済成長期には労働力として英国に移住する移民が急増した。出身はアフリカ、アジア、カリブ諸国や東欧からの難民など多岐に渡った。

 リバプールやマンチェスターなどの工業地帯にも多くの移民労働者が居住した。彼らの多くは、景気が悪化すると真っ先に解雇される低賃金で劣悪な労働に従事するほかなく、労働組合に加盟する権利も認めらなかった。

 差別的な扱いに不満を持つ移民と、反移民の排外主義に扇動された白人労働者との間で58年にロンドン・ノッティングヒルで大暴動が起こった。これを契機に英国政府は、62年に英連邦移民法を導入し移民労働者の受け入に労働許可制を導入した。71、81年の改正でさらに条件がきつくなり国籍取得は困難になった。

◇EU離脱後

 04年に東欧8か国がEUに加盟し、英国は東欧出身の移民労働者を大量に受け入れた。「04年を境に、東欧からイギリスへの移民が激増。70年代から03年まで、年に1万から4万人。04年には8万に達し、05年には10万を超え、14年からは15万を超える」(明治大学・安部悦生)。多くは熟練や資格を必要としない低賃金労働者であった。

 EU離脱後は、EU域内からの純移民数がマイナスになる一方、域外からの就労、就学目的の流入が増加している。出身国はインド、中国、ナイジェリア、ジンバブエ。

 22年は過去最高の76万4千人、23年は68万5千人が流入した。日本同様に、介護施設の人手不足による保険・介護分野への入国許可件数が急増している。農業、建設業、宿泊・飲食業、製造業においても英国も人手不足が深刻で外国人労働者の受け入れ緩和を資本は求めている。日本は周回遅れで、英国の後を追いかけている。23年の外国人労働者の受け入れは22万6千人増であった。

◇極右反移民暴動

 7月29日、女児三人が殺害されたサウスポート事件が発生。容疑者は英国生まれの17歳の男だったが、30日SNSに極右のインフルエンサーが、犯行は「ボートで英国に来たイスラム教徒」というニセ情報を発信拡散。その日からモスクが襲撃され、3、4日にはリバプール、マンチェスターなどに暴動が波及した。

 7月の選挙で反移民を掲げるUKに大きな支持が集まったように、英国国内の「貧しい労働者階級の町」出身の低所得層や失業率の高い低学歴の若者――5月の全体失業率は4・4%だが若者の失業率は、10%を超えていると想定される――などが、SNSで発信される極右の排外主義的なデマゴギーに扇動された暴動である。かつて68年には、移民が増加する中で、保守党議員が、移民が反社会的行動で社会を混乱させ、血が河のように流れる暴動を予言する「血の河」演説を行い。反移民の排外主義を煽った。

 極右に対する労働者大衆の反撃は素早く、「ユナイテッド・アゲインスト・レイシズム」(団結して人種差別に立ち向かう)主催の抗議行動が、ロンドンやバーミンガム、ベルファストなど全土で行われ、数万人が参加した街頭抗議行動で極右を封じ込めた。警察の取り締まりもあり、10日には暴動は沈静化した。

 英国は、経済的困難が深まる中、困難の原因を覆い隠すために排外主義のデマゴギーを振りまき16年にEU離脱決定。しかし経済的困難は解決せず、最大の犠牲者である低所得層や若年労働者の怒りはブルジョア的環境の中、移民に向けられた。

 労働者は怒りを移民ではなく資本の支配に向け、支配階級と闘わなければ事態は改善しない。民族主義や排外主義に断固反対し、国際主義の立場で団結して、力強く闘いを前進させよう。(古)

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