●1483号 2024年9月22日
【一面トップ】 自民党総裁選 「改革」乱立、期待煽る ――裏金の実態解明はそっちのけ
【一面サブ】 基地のための買収策と企業ぐるみ選挙が 宜野湾市長選を制す!?
【コラム】 飛耳長目
【二面トップ】 百年に一度の変革期がVWを襲う ――雇用保障破棄・工場閉鎖攻撃
【二面サブ】 パレスチナ虐殺をただちに止めよ! ――行き詰まるネタニヤフ政権
※『海つばめ』PDF版見本
【1面トップ】
自民党総裁選 「改革」乱立、期待煽る
裏金の実態解明はそっちのけ
9月27日投開票の自民党次期総裁を決める総裁選の告示が行われた。候補者はこれまでの最多の9人が立候補している。すべての候補者は、自民党の裏金問題の実態解明はそっちのけ。その一方で、各々の「改革」を打ち上げ、期待を煽るが、いずれも口先だけの実効性のないものばかりでしかない。
◇裏金づくり解明はいずれも否定
岸田首相が次期総裁選出馬断念に追い込まれた最大の契機となった自民党の裏金づくりの実態について、いずれの候補者もだんまりを決め込んでいる。
政治パーティで集めたカネや政策活動費として党中央から受け取ったカネを裏金として政治資金収支報告書に不記載としてきた議員について、茂木幹事長は「処分は党内プロセスを経て決定している」と再調査には否定的であり、高市も「自民党で既に処分が決まっている。総裁が代わり、決着した処分をちゃぶ台かえししたら独裁だ。そういうことはしない」と強く反対している。
岸田自民党は裏金づくりを何時、誰が、何のために始めたかの実態を明らかにされることもなしに、また「処分」についても、岸田は処分の対象とならないなど基準も曖昧で、39人の被処分者のうち、2人の離党勧告の他は、1~半年の党員権停止、役員停止、戒告(=注意)という実質的に影響のないものにとどまった。これですべて決着済だと言うのだ。
今後の問題として加藤元官房長官は政治資金収支報告書の不記載相当額の国庫への返納する手続きの検討、政策活動費の原則公開、茂木幹事長は政策活動費の廃止、政治パーティ収入への課税、小泉元環境相は政策活動費の廃止に加え、国会議員に毎月100万円支給される調査研究公報滞在費(旧交通費)の使途公開や残金の返済義務を掲げているが、これまでの裏金づくりの犯罪行為については既に済んだことと見做している。
総裁選立候補者たちが裏金づくりの実態解明に消極的なのは、裏金づくりに中心となってきた安倍派ら議員の反発によって総裁選挙での支持票を失うことを危惧しているからである。実際に、処分を受けた議員は別として、裏金議員が推薦人として、高市には13人、加藤には4人、茂木には2人、小泉、上川外相には各1人が名を連ねている。
高市はが「レッツ・ビー・リボーン」を標語に掲げているように、各候補は「自民党が生まれかわる」ことを強調している。だが、裏金づくりの根本的な解明を回避する候補者らの「政治改革」は全くのごまかしであることは明らかである。
◇改憲、軍備増強が前面に
新総裁になった時の公約として、9人の候補者全員が掲げているのは憲法改定である。
小泉は、「戦後初めての国民投票を実施したい」として、憲法を改定して自衛隊を憲法に明記することを訴えている。その「意義」について小泉は言う。来年自民党は結成以来70年になるが、国民投票という形で一度も国民の声を聞いた経験を持っていない、「70年間一度も国民の皆さんの声を聞かずにきた戦後政治を変えたい」と。
しかし、NHKが行った総裁選で議論して欲しいことのテーマに関する世論調査によれば、「憲法改正」は僅か3%でしかない。
「政治改革」の問題にしても、裏金づくり問題の徹底的解明、金権・腐敗の一掃という世論の要求にこそ応えるべきである。にもかかわらずこの問題に正面から対応することを避けて、国民の関心の薄い自衛隊を憲法に明記する、改憲のための国民投票を訴える小泉の主張はペテンであり反動的である。
自衛隊明記のための改憲は、軍事力の増強と一体である。国連が機能しない時代にあって、「防衛力を強化し」、「東アジア地域にもNATOのような集団安全保障の仕組みをつくっていく」(石破)、「自分の国は自分で守るという基本姿勢にたって、防衛力の強化」(小林)、「一国平和主義ではなく、世界全体の平和と安定、共通の価値観を守るために、日本の役割責任を発信していく」(河野)、「(「非核三原則」のうちの)『核を持ち込ませず』の再検討」(高市)等々いずれの候補者も軍事力強化を訴えている。
自民党の改憲は自衛隊を明記するだけでなく、「緊急事態条項」の明記と一緒だと言ってきた。「緊急事態」には大地震、大水害、大火災だけではなく戦争も含まれる。戦争となれば国家による物資調達、土地収用、人員の動員、言論の統制などが合法化される。自民党が唱える改憲はまさに「戦争を行える国家」に向けた取り組みの一環なのである。
◇反動自民党政府に反対する階級的闘いを
裏金づくりの金権・腐敗が暴露され、国民大衆の怒りによって岸田首相は首相の座から転落した。
自民党候補者は、「生まれ変わる」と口々に叫んでいる。「生まれ変わる」というなら裏金づくりの犯罪を全面的に国民に明らかにして、裏金づくりを行った犯罪者の責任を徹底的に追及すると共に、今後そんな犯罪が起こすことが出来なくなるような立法措置を取るべきである。
しかし、自民党は、裏金問題はもう決着済みとしてやり過ごそうとしている。
小泉は、新総裁が決まれば即解散で国民の真意を問うなどいっているが、これは「政治資金改革」に向けて国会で討議を行うという岸田の約束を反故にして、自民党への追及をかわそうとする意図が見え見えである。
候補者たちは「経済再生プラン」で「軍事費増税、子育て増税は行わなくても可能、任期3年で出来なければ責任をとる」(茂木)、「所得倍増」に向けた政策を実施し、子どもの医療・出産・給食ゼロにする(加藤)、「貯蓄から投資」で「中間層の拡大」(上川)など、出来もしない耳あたりの良い公約を並べ立て国民をたぶらかし、政権の延命を図ろうとしている。
そして、一方では自衛隊の憲法への明記、「非常事態」条項の挿入のための改憲、軍備増強など軍事強国の道を突き進もうとしているのだ。
自民党の政治支配が続く限り労働者・働く者の未来はない。労働者・働く者は団結を固め、自民党支配に反対し、資本の体制の克服に向けた闘いを前進させていくことが求められている。 (T)
【1面サブ】
基地のための買収策と企業ぐるみ選挙が宜野湾市長選を制す!?
普天間飛行場を抱える宜野湾市の自公派の市長松川が出張先の東京で突然死したために、市長選が急きょ9月8日に実施され、松川の「弔い選挙」と位置付けた自公派の佐喜眞とオール沖縄の桃原の事実上の一騎討ちとなった。
佐喜眞は元市長で県知事選に自公派から立候補して2度落選して復活の機会を窺がっていた。佐喜眞はまた旧統一教会と深く繋がりそれがすねの傷となっていた人物でもある。桃原は革新系市議として8期目の市議であるが、知名度で佐喜眞に劣っていた。
短期決戦となった選挙の結果は、桃原の1万6195票に対して、佐喜真は2万4173票と桃原に7978票の大差をつけた。投票率は53.27%であり前回より10%余も低かった。
◇買収策に応じる協力者が求められる
佐喜眞は「松川市政の継承」をことさら強調して訴えた。それは、普天間飛行場の辺野古への移設を容認する立場であり、基地容認で得られる基地交付金を使った公共事業の推進である。
松川市長の告別式に出席した米海兵隊普天間航空基地司令官は、「我々普天間基地にとっても、大切な友人であり、本当に悲しい」と語ったように、事故や騒音もおざなりに済ましてくれた松川は基地運営の最大の協力者だったという事だ。
桃原は米軍普天間飛行場の早期返還、辺野古新基地反対や市民目線での行政サービス等を訴えたが響かなかった。
佐喜眞の当選を受けて、日本政府の林官房長官は「普天間飛行場の一日も早い全面返還の実現と危険性の除去」のためには、「辺野古移設が唯一の解決策であるという方針に基づき、着実に工事を進めていく」と、新たな協力者を得たことを喜んでいる。残念な事は、この歪んだ「方針」が少しづつ「仕方ない」に傾斜しているらしいことだ。
◇分裂選挙の後遺症
宜野湾市は、6月の県議選で社民・立憲のセクト争いによる分裂戦挙となり玉城県政の与党敗北の舞台の一つともなった選挙区(定数3)である。県議選でのオール沖縄の3名の合計得票数は1万8336票であり、自公派2名の合計得票数1万4672票を上回っていた。
この時争った社民が6507票、立憲が3663票で、最下位当選者(自民)と次点(社民)の票差は626票であった。
落選となった県議候補は政界を引退、県議選でオール沖縄側が候補者調整できなかったことに反発して、約1500~2000票が相手陣営に流れていると桃原選対幹部は把握していたという。
◇違法な企業ぐるみ選挙がまかり通る
佐喜眞陣営は、6月の県議選で自慢した企業ぐるみ選挙を導入、佐喜真も熱心に企業回りを行っているが、自民県連などを通して市外企業や経済団体に支援を要請して、宜野湾市から市外へ通勤する有権者の票の取り込みを狙ったことも明らかにしている。
企業経営者が自民と一緒になって、労働者に佐喜眞への投票を押し付けるのは違法な企業ぐるみ選挙だ。13年に企業ぐるみ選挙を行っていた徳洲会グループの公選法違反が摘発され有罪となった。
労働者は市長選であっても、利権に絡んだ自公派の企業ぐるみ選挙を告発し、野党派の分裂を乗り越え、普天間基地・辺野古基地反対を断固主張し、労働者独自の闘いを発展させる契機としなければならない。 (沖縄発)
【飛耳長目】
★店頭から米が消えて久しいが、漸く新米が出回り始めた。驚くべきはその価格で、「米不足」前に5㌔2200円だったのが3500円(1・6倍)もする。かって10㌔買えた値段だ。米価高騰は米を原料とする何十種類もの商品(味噌、酒、菓子…)の価格を押し上げ、外食費をも高騰させる。労働者家庭にとってはさらなる痛手だ★これは「米不足」が価格を押し上げ、新米にも波及したものだ。6月末には156万㌧(国民の3ヶ月分)あった民間在庫(農水省調査)は8月に入るとすっかり姿を消した。一体どこへ行ったのか。コロナ後のインバウンドや地震警戒や台風での過剰買いなど指摘されるが、ネットでは高額な米が溢れていた。買い占めや売り惜しみを疑いたくなる★政府備蓄米100万㌧(5年ごとに20万㌧備蓄)の放出も取り沙汰されたが、農水省は価格低下と長年の農業保護政策の面から拒否した。備蓄米は5年ごとに飼料用として放出され、売買損益は▲377億円にもなる。米の生産高は年々減少し(1970年1250万㌧→2023年661万㌧)、狭間期の来年8月にも再び「米不足」が予想される★我々は世界的に見ても高額な米を食わされている。これが農家へのぶ厚い補助金や保護政策の結果であり、その実は農村票の囲い込みの為である。 (義)
【2面トップ】
百年に一度の変革期がVWを襲う
雇用保障破棄・工場閉鎖攻撃
独フォルクスワーゲン(VW)は10日、独国内で検討する工場閉鎖で、雇用保障を含む労働協約の破棄を労働組合に通知した。
◇危機深めるVW
トヨタと世界最大の自動車メーカーを競うVW――23年度の販売台数936万台、売上49・6兆円、営業利益3・5兆円、投資額5・6兆円、従業員30万人(3・19 JPスマートモビュリテー)。グループにはアウディ、ポルシェを有している。ヒトラーの国民車構想によって開発したビートルに象徴されるように、創業時から政府との結びつきが強い。株式の20%は本社の所在地ニーダーザクセン州が所有し、監査役には市長や労組役員が就任している――は、工場の閉鎖を含むリストラ策を発表した。
「VWは2日にドイツでの工場閉鎖を検討していると公表した。乗用車のほか商用車、車部品など独国内の工場約10カ所を対象に、1カ所以上を閉鎖する可能性があるとしていた。VWが本拠地で工場閉鎖に踏み切れば、1937年の同社設立以来で初めてとなる」(日経9・10)。
「同社は29年までの雇用保障を含めた複数の協約を労組と結んでいる。現行の協約を打ち切ることで、工場閉鎖時に人員削減が可能になる。会社側は数千人規模の削減を検討しているとされる。
雇用保障の協約は今年末まで有効で、期限を迎えると会社は25年7月から強制的な人員削減が可能になる」(朝日9・10)。
会社側は、新たな労働協約の締結、閉鎖時の補償金を労組側に提案。労組側からは、工場閉鎖に代わる案として週休4日などが提案されていると言う。最終的に組合がどのような方針で闘うかは明らかになっていないが、労働協約の期限切れを迎える12月になれば労働者はストライキで反撃に立ち上がるだろう。
資本の経営判断ミスや業績悪化の責任を一方的に労働者に押し付けるVW経営陣は、トヨタや台頭する中国、韓国メーカーとの競争で、「特に製造拠点があるドイツは競争力の面で後れをとっている。果敢に行動しなければならない」と危機感をあらわにしている。
◇VW危機の背景
VWの危機の背景には、パリ協定を受けてEUが決定した35年以降ガソリン車販売禁止という欧州グリーンディール方針を受けて、EV化に舵を切ったという転換がある。
18年にEVシフトを表明。30年までにEV車の比重を50%にするという計画は、VWの経営危機をもたらす可能性を決算書の数字が明示化していた。
VWは「1~6月に欧州で販売したEVは前年比15%減の18万台、米国も15%減少。純利益は14%減の73億ユーロ(約1兆Ⅰ800億円)」(日経8・5)であった。
経営陣にはVWブランドの乗用車の売上高利益率を24年1~6月の2・3%から26年には6・5%にまで引き上げることが求められている。そのためには、140億~150億ユーロのコスト削減が必要とされる。(同)
VWは売り上げの13%を超えるような、巨額投資計画の見直しと、工場閉鎖に踏み出した。〝地球環境を守る〟事よりも〝会社を守る〟資本主義的現実をVW経営陣は選択したが、そうするしかなかったのだ。それは労働者との非和解的な対立を生み出すであろう。
また、危機に陥ったVWであるが、自ら手を染めたクリーンディーゼルエンジンの悪質な排ガス不正が、EUにEV化方針を決定させ、欧州の自動車産業に非常に過酷で深刻な状況をもたらしたと言える。
その深刻さは、欧州の自動車大手5社の1~6月期の業績で、売上高が1社は前年比2%のプラスになった以外は0~▲14%であり、純利益はすべてのメーカーが▲14~▲48%とEV車の販売不振に顕著に現れた。
◇トヨタに抜かれ中国で減少する
VWの売上の35%を占める中国における売り上げの減少は深刻である。
ドイツ・VWは中国政府と密接な関係を作り上げ現地工場を建設し01年にVWは中国シェア50%を確保し、中国市場から莫大な利潤を上げてきた。しかし、中国政府の国内自動車産業を基幹産業へ高める政策への転換で、23年には14%まで下落した。
VWと世界一を競うトヨタは、米国に直接投資を行い、米国で高い市場占有率を確保してから中国市場への投資を行った。EV化一択の動きに反対し、ガソリン車、HV、PHV、FCVといったエコタイプの開発を進め、世界市場でVWと競い合ってきた。20年にトヨタがVWを抜いて世界1になってから23年まで4年連続で上回っている。
VWが、乗用車ブランドの利益率の引き上げを経営陣に要求するのは、グループのアウディやポルシェの利益率が9%、18%という数字を23年通期で記録しているからである。トヨタに後れを取ったVWは、今後の次世代車開発競争に勝ち抜くために巨額な投資資金が必要になる。
◇自動車産業は一寸先は闇か?
VWは、グリーンディーゼル不正にも拘らず、トヨタと世界一を争い、工業国家ドイツの象徴として、環境企業・EV化のリーダーとして存在感を高めてきた。今回のVWによる、労働協約破棄・本国工場閉鎖の労働者に対する攻撃は、EV化進展をめぐる〝百年に一度の変革期〟のただなかで起きた象徴的な労資対決になるだろう。
ドイツが世界に先駆けて11年に発表した「インダストリー4・0」は、IOT・AIを活用した「第4次産業革命」の起点をなし、生産現場の無人化も見据えている。「第4次産業革命によって変革がもたらすと思われる業種」の質問(17年総務省)に、ドイツは20%が自動車を挙げている(日本8%)。
今回の雇用保障を含む労働協約破棄は、労組(VW労組の所属するIGメタルは、215万人の組合員を有する労組で、ストライキ闘争を活発に行っている)の抵抗なく利潤取得を行いたい資本の渇望に他ならない。
変革期においては、企業競争の勝者は入れ替わり、〝一寸先は闇〟という事である。今日のVWは明日の日本の自動車産業の姿かもしれない。すでにこれまでも、日産やホンダでは工場閉鎖、首切りが行われてきた。
VWは資本の本性を露わにして労働者に向かってきた。日本の労働者はVW労働者の闘いを支持し、それから学ぶことができる(これまでの闘いの経過の違いもあるであろうし、反面教師という場面もあるであろうが)であろう。
自民党総裁選で、解雇規制緩和が話題になっているが、労働者にとって資本の支配と闘うために、階級的な団結を強化する意義は共通である。
よく学ぶ者は資本との闘いを恐れない。 (古)
【2面サブ】
パレスチナ虐殺を ただちに止めよ!
行き詰まるネタニヤフ政権
去年10月7日にイスラエルへ奇襲攻撃したハマスの壊滅を目標に、イスラエルはガザに軍事侵攻し、パレスチナ住民を殺戮し、生活を破壊している。このイスラエルの蛮行に対して、世界各地で抗議行動が起こり、イスラエル国内では、人質解放に進展のないネタニヤフ政権に抗議のデモが起きている。
◇ネタニヤフの帝国主義的抑圧
2022年12月に発足したネタニヤフ政権は、極右政党やユダヤ教政党などとの連立政権であり、パレスチナ占領政策がより強硬となっている。閣僚に就任した極右政党の党首は、「パレスチナ国家の樹立を認めず、占領地での入植活動の拡大、さらには、ヨルダン川西岸地区をイスラエルに併合すべきだと主張してきた」(NHK23年2月8日)のであり、エルサレム旧市街のイスラム教聖地に足を踏み入れたり、パレスチナ暫定自治政府に代わってイスラエルが徴収した税金の引き渡しを停止したりするなどを行い、パレスチナとの緊張を高めてきた。
ネタニヤフは、パレスチナの独立国家を樹立、そしてイスラエルと平和共存させる「2国家共存」を認めない方針を繰り返し強調し、占領地パレスチナへの帝国主義的抑圧政治を強めている。軍事侵攻が行われたガザ地区では、イスラエルが指定した住民の避難場所になった学校や病院などにも無差別な空爆が行なわれ、飢えや伝染病が加わり、老若男女を問わず死者数は4万939人に上り(9月7日時点)、経済は壊滅的な状態にある(国連貿易開発会議報告書9月)。ヨルダン川西岸では、イスラエル軍とユダヤ人入植者のパレスチナ住民への暴力が激化し、ガザ侵攻以降600人以上が殺害されている。
◇湧き上がる抗議の反政権デモ
これらイスラエルの蛮行に対して、日本及び世界各地で抗議行動が行われている。イスラエル国内においては9月1日、テルアビブで約30万人が参加する大規模な抗議デモがあり全国各地に広がった。ネタニヤフ政権が、ハマスに捕らえられた人質の解放を実現できないことへの抗議である。約80万人の労働者を擁するイスラエル労働総同盟は、「何よりも人質解放の合意が重要だ」と2日、ゼネラルストライキを決行した。
ネタニヤフ政権は、ハマスを支持するものだとゼネストを非難し、裁判所は2日午後にスト中止を命じた。イスラエル政府内では、人質解放を優先し、ハマス側への譲歩を認めるべきだとの意見が強まっている(朝日9月9日)。しかし「ハマス壊滅」が目標のネタニヤフは、強硬姿勢を崩さない。
ネタニヤフの姿勢に大衆の反発は高まり、7日にはテルアビブで約50万人が参加する最大規模の反政権デモが行われた。
ガザ地区はイスラエルに完全封鎖され、経済・生活基盤は破壊され、住民は極度の貧困状態に置かれている。下水処理施設が稼働しないために、ひどい生活環境の悪化が続いている。帝国主義国家イスラエルのパレスチナ民族差別が、こんな絶望的な状況にパレスナ人を追いやり、ハマスを生み出したのだ。
今回のデモは、人質事件を招いたネタニヤフの腐敗した政治に向けられているが、ハマスを生む問題を提起した抗議にはなっていない。人質問題は、パレスチナ人への民族差別問題を提起してこそ、解決の道筋を展望できるだろう。
◇イスラエルは即時停戦・撤退を
劣悪な生活環境は、ポリオ感染の兆候を生み出した。停戦協議が進まない中、そして、国連とイスラエルとハマスとの協議で一時的な停戦が実現し、ポリオワクチン接種1回目は子どもたちに行き渡った。子どもたちは、安心して外に出られるのがうれしくて、正装して接種に来たという涙ぐましい話が伝わっている。イスラエルは、即時停戦し、撤退すべきであり、入植政策をはじめパレスチナ住民に対する一切の差別と抑圧を撤廃すべきなのだ。
パレスチナ人は「イスラエルによるパレスチナ占領を終わらせ、私たちの国を築くこと」と語っている。イスラエル政府の暴力的な支配からの解放は、ハマスのようなテロではなく、独立した国家を目指すパレスチナ人民の大衆的な闘いを発展させることである。
しかし資本主義は、搾取と抑圧そして差別をその本性とする。資本主義が支配する限り民族差別・抑圧の真の解決にはならない。
パレスチナの民族国家樹立にとどまらず、その下での経済発展で労働者階級が形成され、イスラエル労働者の闘いとパレスチナ労働者の闘いが結びつき、民族を超えた労働者階級の国際的な連帯の力によって、双方のブルジョア階級を打倒したとき、初めて両民族の争いは終止符を打つ。
イスラエル大衆の抗議は、政府に対し、そして資本の支配に対しての抗議へと進展し、労働者の階級闘争に発展させなければならない。 (佐)
《前号の訂正》
1482号1面トップ記事、下から3段目と下から2段目の2か所、「GAMA」は「MAGA」の間違いです。 訂正します。
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