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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1489号 2024年12月22日
【一面トップ】 自公と組む党利党略の国民民主
        ――「手取りを増やす」で労働者の闘いを解体
【一面サブ】  被団協のノーベル平和賞を論ず
        ――核兵器廃絶はいかにして達成できるのか?
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 年1万件に迫る倒産
        ――〝ミニ中国化〟する日本経済
【二面サブ】  韓国ユン政権との闘いの課題
        ――政治改革から社会革命へ進むべき
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

自公と組む党利党略の国民民主

「手取りを増やす」で労働者の闘いを解体

 先の総選挙で、自公政権は215席となり、過半数に18議席足りない少数与党に追い込まれた。自民は政権安定のために、28議席に躍進した国民民主党との協力を必要とし、国民民主は「手取りを増やす」公約実現のために自公政権に接近し、党利党略を巡らしている。

◇石破政権の安定化に手を貸す国民民主

 自民と国民民主は、選挙後の10月31日には幹事長会議を持ち「補正予算、来年度予算、税制」の3分野で協議していくことで合意した。国民民主は自公連立入りを否定し、協議の場の「常設」は断ったが、事実上の自公国「部分連合」(朝日11月1日)が形成された。

 11月11日の特別国会での首相指名選挙では、予想通り石破が最多であったが過半数に届かず、2位野田との決選投票になり、決選投票では、維新や国民民主などは自党党首の名前を記して無効票となり、事実上石破の首相選出に加担した。

 維新や国民民主は、先の国会で立憲の内閣不信任決議案の共同提出に応じながら首相選出では「考えが大きく異なる」(維新)、「基本政策の一致が不可欠」(国民民主)と、野田の協力要請には応じなかった。政党として当然といえるにしても、彼らは補正予算に賛成し、自民に協力した。

 政府は11月22日に「総合経済対策」を閣議決定、自公に国民民主の3党合意を受け、所得税がかかる年収の最低ライン「103万円の壁」の引き上げを明記、引き上げ幅は今後の協議となった。11月28日召集の臨時国会に経済対策の裏付けとなる今年度補正予算案が提出され、12月12日には自公と国民民主、維新も加わり衆院で可決された。

 共産党は、今回の自公政権の少数与党化を「新しい政治プロセスが始まった」「国民の要求実現の可能性が開かれました」(10月28日)と評価するが、今回の国民民主の「手取りを増やす」政策が、社会の生産の根底をになう労働者の生活を改善し、労働者の未来を切り開いていくものにならないのは明らかだ。国民民主は党利党略で自民と取引し、軍事費増大を含む膨張予算に賛成した。労働者の階級的な闘いの発展がなければ「新しい政治プロセス」は、このような反労働者的な結末となる例証だ。

◇「手取りを増やす」階級的性格

 国民民主が選挙の公約に掲げた「手取りを増やす」政策は、所得税の課税ラインを年収103万円から引き上げる「年収の壁」対策、ガソリン税の旧暫定税率分(1㍑あたり25・1円)を減らす「トリガー条項」の適用、少子化対策の財源として医療保険料と合わせて徴収される「子育て支援金」の徴収停止などの減税策だ。

 国民民主の選挙公約では、「積極財政と金融緩和で消費や投資を拡大させる」を主政策とし、上記の減税策とともに「時限的に消費税率を5%に引き下げる」、「最低賃金1500円以上」、「賃上げ減税拡充」などを経済政策として掲げていた。しかし選挙期間中の訴えで「手取りを増やす」がヒット。その実現を主張するようになった。

 今では「減税」ではなくもっぱら「手取りを増やす」と言い、国民民主が協力する政府の責任で、実現され得るかの幻想を大衆に植え付けている。しかし所得税の課税ラインを年収103万円から引き上げる「年収の壁」対策の恩恵を受け、減税効果をより多く受けるのは高所得者だ。資本の支配の下で生産現場で過酷な搾取を受け、心身が疲労し賃金が抑圧されている低所得の労働者は、わずかな恩恵しか受けない。

 「手取りを増やす」は聞こえが良いが、資本の支配によって経済的困難に陥っている大多数の労働者は、この状態のまま放置させられる。今では労働者の4割もが、低賃金で不安定な雇用状態の非正規労働者に追いやられている。現在の経済的困難を生み出す、資本の支配の現実こそを変革しなければならないが、「手取りを増やす」政策は、この資本の支配の状態を維持するのだ。

 「手取りを増やす」は、それが政府や自治体の財政に対しては減収となり、その対応が問題となっている。国民民主は、今年度の税収が上振れするなどと財源問題をごまかすが、それは使えるとしても一過性のもので、恒久財源ではないのだ。そして「財源をどうするかは、政府・与党が責任を持って考えてほしい」(11月17日)と言うだけだ。

 国民民主は「積極財政と金融緩和」を掲げており、税収不足は赤字国債に頼る借金財政をさらに膨張させるものになる。それは現在の資本に行き詰まりから来る困難を糊塗し、将来世代に負担させるものだ。労働者に一切の犠牲を転嫁し、資本の支配の維持を図るのだ。

◇賃上げ闘争から「賃金制度の廃止」を

 石破政権は11月26日の政労使会議で「大幅な賃上げへの協力を」と要請し、経団連は「物価高に負けない賃上げをぜひ定着させたい」と応えた。しかし賃上げは企業の利潤減少と表裏一体であり、企業の業績を向上させ利潤を増大させる範囲で許容するのが、資本の論理だ。労働者はこのような企業・資本に対し労働者の団結した闘いで、賃上げを勝ち取らなければならない。

 国民民主は最低賃金の引き上げや、物価を超える賃金の上昇などを唱える。それは、立憲も同じだ。共産も企業の内部留保を賃金にまわす政策を掲げるが、「政治の責任で働く人全体の賃金をまわす仕組みを真剣に検討すべきだ」とし、連合も賃上げには価格転嫁が必要というだけだ。資本の体制の維持を図る彼らは、労働者と資本家の階級闘争に発展する、労働者団結による資本との闘いを恐れ、資本と協調し、労働者の闘いを民主的な、改良主義的な要求に押しとどめるのだ。

 マルクスが「『公正な1日の労働に対する公正な1日の賃金!』という保守的な標語の代わりに『賃金制度の廃止!』という革命的なスローガンを彼等の旗に書きしるさねばならぬ」と記したように、労働者は賃金闘争を断固闘い、階級闘争を発展させ、資本主義を変革し「賃金制度の廃止」を実現する闘いを構築しなければならない。 (佐)


【1面サブ】

被団協のノーベル平和賞を論ず

核兵器廃絶はいかにして達成できるのか?

 10日、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)のノーベル平和賞授賞式があった。とりわけ政治色の強い平和賞は、膨大な核兵器を保有する米国の大統領オバマが受賞するなどブラックユーモアの類の賞でもある。

 被団協は人類で初めての原子爆弾被爆者として、筆舌しがたい犠牲と後遺症の中で、国内外に向けて再び原爆が使われる事の無いように、悲惨な被害の実態を伝え、核兵器廃絶活動を行ってきた。いつか我々と共に闘う日が来ることを願って、核兵器廃絶はいかに達成できるかについての我々の基本的な立場を明らかにする。

 アメリカのマンハッタン計画が生み出した原子爆弾の核実験(45年7月16日)の翌月6日に広島に、9日に長崎に原爆が投下されて、約21万人もの人々を殺戮した。そして現在、原爆の保有国は、9ヶ国に広がり、核弾頭の数は1万2121発(24年1月)。より高性能な核爆弾や運搬手段の多様化が進められている。

 米ロ間の中距離弾道核戦力全廃条約は破棄され、新戦略兵器削減条約も来年2月で失効する。通常兵器で劣るロシアは新型核ミサイル開発によって米国との軍事的均衡を図ろうとしている。ウクライナ戦争でロシアは、核による恫喝を繰り返すことによって占領地のロシアへの帰属を固定化し、ウクライナとの消耗戦に勝利しようとしている。

 中国は核戦略の方針転換(核先制不使用方針の破棄)によって、米国を標的とした大陸間弾道ミサイルへの核弾頭の実装化、核弾頭の増強、変則軌道ミサイルの配備など核兵器の増強を急ピッチで進めている。

 北朝鮮は、核威嚇を繰り返すプーチンとの軍事同盟化で核ミサイルを増強し、若い軍人をプーチンの戦争に差出し、ロシアの援助で国内経済を立て直そうとしている。

 米国も、中ロの核戦力増強に対抗し核弾頭の更新、新型ミサイルの開発に踏み込んだ。

 核ミサイルを発射する間際まで行った危機的な状況は、62年のキューバ危機が最も深刻な危機と伝えられているが、それ以降も73、79、80、83、84年に早期警戒衛星の誤認や誤作動などによって核ミサイルの発射寸前の危機が繰り返されてきた。核戦争の危険は高まっている。

 共産党は「『核兵器のない世界』を実現する最大の障害は核抑止論です」と主張し、核兵器禁止条約の批准、推進に一貫して取り組んできたと自負し、「核兵器が人類と決して共存しえない非人道的で残虐な兵器であることは誰の目にも明らか」と、人道主義の観点から核兵器廃絶を論じている。

 しかしイスラエルの通常兵器によるガザの無差別殺戮やプーチンのウクライナに対するドローン、ミサイル攻撃ははたして〝非人道的残虐〟な攻撃ではないのか?我々は通常爆弾もまた〝人類と共存しえない〟と考える。

 原爆は長崎に投下されてから使用されていないが、第二次世界大戦が終結した以降も世界各地で戦争、紛争が継続されている。46年から90年半ばの期間に千五百万近い人々が通常兵器によって殺害されている(地球白書1999―2000)。問うべきは兵器の種類ではない。

 各国は他国と対立協調を繰り返しながら、自国の権益を追求する。外交で決着がつかなければ、軍事力が登場する。利潤を目的とする資本と賃労働の階級国家が、対峙し軍事力を増強、均衡を図ろうとしている。

 核兵器廃絶に向けた闘いは、「核兵器禁止条約」の推進、批准を要求することだけではない。核拡散や核兵器増強の原因は資本主義的対立にこそある。世界の労働者と連帯し、自国の資本家国家と闘い打倒し、国際主義を広げよう! それこそ核兵器廃絶をもたらす確実な方法である。 (古)


   

【飛耳長目】

★用あって鹿児島へ行った。北の青森と違って、どこか大らかで明るい。明治維新の原動力となり、維新政府に異を唱えた(西南戦争)地でもある★博物館に安土桃山期に活躍した島津義久の遺訓があった。一、百姓をあはれび、憲法(国の法)たるべき事、民の飢寒をおもひ苦悩貧富をしるべし。一、民の利を先とし、おのれの利を次にすべき事。一、……民貧しきときは、君財なし、枯れたる木のもとのごとし★世界にはこれと正反対の治世者が多い。例えば、北朝鮮の金正恩は己が体制維持・金一族独裁のために民を飢寒に追いやり、貧富は甚だしく、民の利(生活向上)より度重なるミサイル発射を含む軍拡を優先させる★また、1・1万人もの若者たちをロシアの戦争に派遣し、その内の2千人はクルスク州で戦闘中だ。物資援助や核開発技術等と引き換えに命を犠牲にさせる★しかし、義久の遺訓は一つの観念である。その後、薩摩は農民搾取が激しく、時には8割もの酷税を課し、農民の手元に残る飯米は「升で量るより、数えた方が早い」と言われ、奄美諸島からの収奪も激しかった。また、男尊女卑も強く、武家の玄関は男女別とされ、洗濯物も同じ物干し竿には干さなかった。シラス台地薩摩の経済事情と封建時代という制約がそれを単なる観念にさせた。 (義)


【2面トップ】

年1万件に迫る倒産

〝ミニ中国化〟する日本経済

 コロナ不況後から企業倒産数が増加している。昨年9月に本紙で企業倒産の増大(1459号)を取り上げたが、今年(24年)に入ってさらに悪化している。今年の累計企業倒産数は11月時点で9053件となり、1万件を突入する可能性が出てきた。そうなれば11年ぶりとなる。また、11月の倒産件数は834件となり31カ月連続で前年同月を上回り、バブル崩壊後の90年10月~93年4月と並び、「過去最長の連続増加記録」となった。

◇物価高騰が倒産に拍車

 企業倒産に関する調査結果が「帝国データバンク」などから発表されている。それらを参考に、まず企業倒産の特徴を見ていこう。

 一つは、「ゼロゼロ融資」倒産だ。政府がコロナ対策と称して行った「ゼロゼロ融資」の返済開始時期の多くが23年~24年であり、赤字経営で先が見通せず、元本を返済するタイミングで倒産する例が増えている。

 しかも、「ゼロゼロ融資」の場合、金融機関が貸し出した金額は「信用保証協会」によって担保されている。従って、金融機関にとって、仮に融資先の企業が倒産しても貸出金が全額戻ってくるので、企業の再建のために汗をかく必要がなく簡単に手を切れる。

 二つ目は、人手不足倒産である。人手が足りないくらい仕事量があるのに倒産を選択した例は少なく、むしろ、求人難に加えて労働者の退職が相次ぎ仕事が回らなくなり、同時に借金を抱えていて事業継続が不可能になる例が多発している。

 三つ目は、円安物価高倒産である。今年の4月に1ドル=160円を突破したが、その後、米国FRBが政策金利の引下げに転じたことによって、円売りドル買いの投機がいくらか後退し、一時1ドル=140円台に戻した。だが、日銀が低金利政策を当面続けることが分かり、再び1ドル=150円台を推移している――「経常収支」のうち「第一次所得収支」は、海外に投資した企業が海外労働者から搾取した剰余価値を本社に還流した「投資収益」である。しかし、全てが外貨から円に転換されることなく、そのまま海外に再投資される場合が多くなっている。「財・サービス・貿易収支」を構成する輸出入でも、獲得した外貨をそのまま保有するケースもあり、全てが為替市場における需給に反映されない。それゆえ、為替市場は投機筋による金利差を狙った「資本取引」によって左右されやすい。

 政府・日銀による低金利政策で円安が進み、輸入原材料価格が高騰している。中小零細企業の多くは大企業の下請け、孫請けであり、原材料費や賃上げ上昇分を製品価格に転嫁することが出来ずに、または、価格転嫁後の売れ行き不振で倒産に追い込まれる例が増えている。この円安物価高倒産はサービス業のみならず建設業や製造業でも目立ち始め、22年3月以降33カ月連続で前年同月を上回り、今年の累計は877件と「過去最多」になった。

 今のような円安が続くなら、原材料費高騰を製品価格に転嫁できる競争力のある企業以外は、窮地に陥っていくだろう。

◇寄生化し退廃する資本主義

 さらに、上場企業であり世界展開していた有名なAV機器メーカー・船井電機が企業買収劇も絡み倒産。電解銅箔メーカー・日本電解は米国子会社が米政府の発動した「インフレ防止法」の影響を被り解散を決議、だが本社も「債務超過」になり倒産。繊維・化学メーカーのユニチカも「私的整理」に入り、繊維から撤退する。

 いずれも、労働者を大量に解雇した。

 こうした最近の動向を見ても分かるように、世界展開する大手の企業でさえも、後退と破産から逃れることが出来ない。

 資本主義は、生産手段の共同占有を基礎にした人々の豊かな欲求や自由な生活に全面的に依拠した生産を行うことが出来ない。資本主義は私的な「利潤のための生産」を本性とする社会であり、資本=企業は、「価値革命」(新製品開発を含む生産能力の増進)を行うことによって企業間競争を勝ち抜く以外に生きられない。

 それ故、資本の過剰が発生するや右往左往し、国家の「金利政策」や「財政バラ撒き策」に依存しだす。最近では、国家の長期資本投資にすがる有様だ。

 加えて、安倍や岸田が始めた「賃上げと物価上昇の好循環」とやらに乗っかりだした。しかし、仮に賃上げ分を次々に価格転嫁できたとしても(せいぜい名目的な利潤増大になるだけだ)、競争力の無い企業は市場から排除され脱落していくのだ。

 政府の方も、企業の窮地を察知して、国際的な競争力を獲得し維持するために、かつ、エネルギーや半導体や希少金属等の「供給網」を確保するために、中国並みの「国家計画」を次々に発表し、最先端の半導体企業やAI企業や原発企業などに中長期にわたる多額な補助金供与を始めている。

 これに加えて、政府は「連合労組」と共闘して、「価格上昇を上回る賃上げ」という何の根拠もない理屈を掲げ出した。賃上げ(資本の利潤は減るぞ)によって個人消費が増大するのだから、賃上げや原材料費の上昇分を価格に転嫁できる、価格が上がればさらに高賃上げを実現する、こうして景気の好循環が生まれると盲信する。

 何とまあ、「風が吹けば桶屋が儲かる」という落語並みの浅はかな理屈か! このように、現代の資本主義は寄生化し、矛盾だらけの存在になり、労働者に敵対している。

 かつて、ケインズは「不況」を打開するためには需要拡大または消費拡大が必要だ、そのためには「戦争」(帝国主義戦争をしかけること)が最良な手段だと言ったが、現在のブルジョアたちは皆、ケインズと同様な思考に惹かれ始めている。 (W)


【2面サブ】

韓国ユン政権との闘いの課題

政治改革から社会革命へ進むべき

 韓国では、「非常戒厳」を宣言したユン・ソンニョル大統領の弾劾訴追案が、14日の国会本会議で在籍議員300人全員が採決に参加した中、賛成204、反対85、棄権3、無効8で可決した。1回目の弾劾訴追案は今月7日に与党議員のほとんどが欠席したために不成立になったが、労働者はユン大統領の辞任を求めて国会前の抗議集会を毎日実施するなど闘いを継続。野党が再提出した大統領弾劾訴追案が可決され、ユン大統領の職務と権限は14日午後7時24分から停止され、憲法裁判所は弾劾審判事件に「2024憲ナ8」という事件番号を付与し、弾劾審判手続きに入った。

 3日に突然出されたユン大統領による「非常戒厳」は、軍政下で過酷な弾圧を受けた歴史のある韓国の労働者が容認できるものではなかった。非常戒厳は朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領が殺害された1979年10月26日に宣言されてから45年ぶり、憲政史上17回目。1987年の民主化後は一度もなかった。

 憲法上の戒厳宣布要件は、「大統領は戦時・事変またはこれに準じる国家非常事態において兵力で軍事上の必要に応じたり公共の安寧秩序を維持する必要がある時」(第77条第1項)宣布が可能だが、ユンは悪用した。

 ユン大統領は12日に、拘束されていないのを利用して「非常戒厳」宣言への謝罪を翻し開き直って、「非常戒厳」の正当性を主張する会見を行った。「いま韓国は野党の議会独裁と暴挙で国政がまひし、社会秩序が乱れ、行政と司法の正常な遂行が不可能な状況だ」、「私を弾劾しようが捜査しようが私はこれに堂々と立ち向かう」、「私は最後の瞬間まで国民と共に闘う。戒厳令で不安に思われた国民の皆さまに改めておわび申し上げる」と、謝罪のポーズをしながら、「国民と共に闘う」と、ユン大統領支持派の決起を促すような挑戦的な姿勢で労働者の闘いに対抗しようとしている。

 ユン大統領の「非常戒厳」を跳ね返したのは、直接には「国会が在籍議員過半数の賛成で戒厳の解除を要求した場合には大統領はこれを解除しなければならない」という憲法条項(第77条)に依拠した国会での与野党議員による「非常戒厳解除」採決であったが、国会への戒厳兵士突入への大衆的な抗議行動が大きく功を奏した。20~30代の若者たちも国会本館に乱入した兵士たちを見て政治参加の必要性を痛感したようで、抗議活動は熱気にあふれていたと報道された。

 「韓国最大の労働組合の中央組織である韓国全国民主労働組合総連盟(KCTU)は、ユン大統領に辞任を迫るため、120万人の組合員に『無期限』ストライキを呼び掛けた。KCTUは、国会の前でキャンドル集会を毎晩開く予定だ」(ブルームバーグ12・9)。

 こうした大衆的な抗議に押され、検察や警察も内乱容疑での捜査を強めている。今のところユン大統領は拘束されていないが、キム・ヨンヒョン前国防相の逮捕、警察庁チョ・ジホ長官とソウル警察庁トップのキム・ボンシクを内乱容疑で拘束し、警察庁や国会警備隊などを捜索、大統領府の家宅捜査にも着手し、「非常戒厳」宣言に関与した軍人や官僚などの逮捕が始まっている。取り調べによって、ユンが「非常戒厳」を宣言した理由やその経過が明らかにされていくだろう。ブルジョア国家機構の一部分でしかない権力装置がどこまで真実を明らかにできるか幻想はもてないが、反動的な政治への大衆的な闘いこそ歴史を切り開いていくであろう。

 韓国は戦後の建国当時はまだ資本主義的な発展が遅れている中で、後進国における国家資本主義的な発展をしてきた。冷戦構造の中、軍政の下で一時的な民主化はあったものの労働者の闘いは押さえつけられた。しかし1987年に光州人民虐殺の〝原罪〟を負う全斗煥政権を追い詰め、民主化宣言を勝ち取り、民主化を進めてきた。

 経済的にも資本主義的発展を勝ち取り、一人当たり名目GDPでは日本を追い抜くほどに成長し、労働者階級も形成され、反政府闘争も組織的に闘われている。さらにその闘いを、資本主義を変革する闘いに発展させなければならない。

 ユン政権は、支持率の低下(物価対策への無策だけでなく、ユン夫人のスキャンダルなどが要因)や国会で閣僚の弾劾案が次々出される中で、軍事力に依存して政権の危機打開を策動したのだから、労働者もそれに対抗する闘いが必要である。議会主義に甘んじることなく、あらゆる所で腐敗政治との闘いの組織化を強め、労働者の階級的な闘いを強化する必要がある。

 与党「国民の力」のように、ユンに批判的な行動をしながら、次の大統領選への党派的な利害を優先させ、議会での勢力維持を謀ろうと策動するのは醜悪な自己保身そのものである。

 野党にしても民族主義的な傾向などあって、労働者的立場を一貫できず、闘いを歪め弱めている。

 ユンの「非常戒厳」に対して、「北朝鮮・中国・ロシアを敵対視し、日本中心の外交政策に固執して日本に傾倒した人物を任命するなど、国家安保と国民の保護義務をなげうった」と1度目の弾劾訴追案で言及したが、2度目の弾劾訴追案では外交政策の内容は削除された。1度目の弾劾訴追案に表れた民族主義的な非難が、「弾劾案に余計なことが書かれている」と反発を買い、与党の投票ボイコットに利用され、投票数不足で採決されず、ユンの弾劾を遅らせ、ユンに〝反撃〟の時間を与えた。民族主義の立場からの非難は、労働者の国際主義とは相容れないし、資本の支配との闘いを歪めることになる。

 さらに12日のユンの釈明会見で、「昨年下半期、選挙管理委員会などの機関に対し、北朝鮮によるハッキング攻撃があった」と言うように、ユンはブルジョア国家の〝安全〟のためと釈明し、野党の「国家安保と国民の保護義務をなげうった」という批判に応え、開き直りを正当化した。

 ユンが資本の国家の利益を守ろうとしたことに対して、民族主義・国家主義の立場からの批判では闘えないことが示されている。

 ブルジョア的な立場から「民主主義」について語られるが、実際には民主主義的課題は充分に果されていないし、繰り返される政治腐敗を解決できていない。民主主義的課題を実現することは、労働者との階級対立をより鮮明に公然とする。階級闘争が高まることに脅える資本家階級は民主主義に答えることは出来ないのだ。労働者階級だけが、最後まで闘いぬくことができるのだ。 (岩)

   

《校正》
『海つばめ』前号(1488号)2面 3段3行「夫の国民年金、国民保険から抜けて」は「夫の厚生年金、健康保険から抜けて」の誤りで、9行目の「国保や国民年金」は「健保や基礎年金」の誤りです。

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