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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1492号 2025年2月9日
【一面トップ】 独裁トランプ、バイデンを全否定
        ――強権発動の怒涛の10日間
【一面サブ】  企業献金も政党交付金も廃止せよ
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 地域政党「再生の道」を旗揚げ
        ――石丸ポピュリズム政党の欺瞞
【二面サブ】  森永卓郎「永久国債化」を推奨
        ――財政支出の大盤振る舞いのために
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

独裁トランプ、バイデンを全否定

強権発動の怒涛の10日間

 トランプの第2次政権が誕生してから10日間が経過した。トランプは「就任初日(1月20日)は独裁者になる」とうそぶき、大統領に再選されたら初日から強力な行政措置を取ることを示唆していた。この間トランプは相次いで大統領令を連発したが、バイデンが出した78の大統領令一切を無効にする大統領令にサインすることが、トランプの最初の仕事であった。(2月4日記)

◇トランプ独裁体制の扇動者マスク

 連発した大統領令は、トランプに反対するものを排除し、自らに〝恭順〟(損得勘定の上だが)を示す者らで構成する専制的トランプ政権を作り上げ、自らの力を内外に誇示することであった。

 イーロン・マスクと合衆国人事管理局(OPM)は28日、政府職員に対して「(岐路)」というメールを送信。内容は、「行政府に忠実に奉仕する」ことを求め、リモートワークの禁止、能力主義徹底、従えない場合は退職、9月までは給与を払うというもの。マスクにはOPMが管理する政府職員のデータに自由にアクセスする権利が与えられ、今後は退職に応じない職員に「退職強要」の圧力をかけることが容易に想像できる。トランプに従順な政府職員で行政府を組織しようとしているのだ。

◇DEIを優生思想で否定

 DEI(多様性・公平性・包摂性)の取り組みは中止する方針だ。少数派に配慮するDEI推進の取りやめと、性別は男と女の二つしかないとし、性同一性障害を持つ職員や移民系米国人と白人との公平性や包摂性を主張する部門担当者の解雇が始まっている。

 30日に発生したワシントンの航空機事故原因についても、トランプはDEI推進が「連邦航空局(FAA)は重度の知的障害や精神疾患を抱える職員を積極的に採用している」などと「優生思想」に基づく根拠のない発言を記者会見で行った。

◇中国と覇権を賭けIT・AIを開発

 大統領選でトランプは、バイデンの「AI(人工知能)の開発と利用に関する大統領令」の撤廃を掲げ、データセンターの建設、巨大な電力需要に対応するための電源開発を約束し、「AIによる既存の政策の取り消し」「エネルギー非常事態宣言」「デジタル金融技術の促進」など、IT(情報技術)・AI業界が要求した大統領令に署名。

 大統領就任式では巨大テック業界のトップを厚遇し注目された。彼らを厚遇するのはトランプ政権が、中国との経済的覇権争いの主要舞台であるAIで勝利しその覇権を握ることが重要であると判断しているからである。

 それは、米国の産業構造が、製造業から、通信・ソフトウエア・最先端半導体などのIT・AI産業に比重が移り、これらの産業のブルジョアジーの影響力が急激に高まってきた事を意味している。

 生成AIの開発には大規模なデータセンターが必要であり大量の電力を必要とする。エネルギー非常事態宣言はその電力を生み出すためである。

 世界最大の経済力、技術力を維持し、帝国主義的覇権を守るためには、AI・ITの技術的覇権を維持することが必須だ。

 米国は豊富な資金と人材を投入し、最先端半導体を開発する事で、生成AI開発競争でトップを走っていたが、中国の生成AIの新興企業「ディープシーク」が、AIに不可欠な最先端半導体を使うことなく短期間で「Chat(チャット)GPT」(生成AIの一種)を凌駕する生成AIを開発したと伝えられ、衝撃で日米のAI関連の株価は急落した。中国封じ込めのデカップリングは、中国の技術開発を促進し、日米にマイナスに作用する事が明らかになった。

◇白人優位が根底の移民排除大統領令

 トランプは国境に非常事態を宣言し、「侵略」する外国人の入国禁止や軍隊の派遣、不法移民をグアンタナモ基地に収容など、排外主義的政策で〝不法移民〟を麻薬やギャングの犯罪者と結びつけて、令状なしの拘束、強制移送を開始。移送受け入れを拒否したコロンビアに対してトランプは、「25%の関税」で脅し、コロンビアは無制限の受け入れに態度を変えた。

 一方、トランプが目の敵にするシカゴ(22~24年12月までの移民受入5万1千人)では、不法な拘束を恐れて、街の人通りが減ったと報じられている。「ニューヨークやデンバーでも大規模な摘発を展開しており、拘束者数は連日千人前後に上る。シカゴでは1月26日から本格的な取り締まりが始まり、30日までに少なくとも 百人が拘束された」(読売2・1)。

 白人優位に基づくMAGA運動では移民排斥は最優先課題だ。トランプ政権の最重要課題もまた〝不法移民〟排除である。

 強制送還数では、バイデン政権が第1次トランプ政権を上回る。それは第1次トランプ政権の政策が看板倒れに終わったのではない。バイデンは国境を超えてきた移民を拘束し送還。一方、トランプは大都市などに定住する〝不法〟移民を拘束送還しようとして、米国移民税関執行局(ICE)の抵抗などで〝順調〟に行かなかったのである。

 今回の大統領令では、ICEの主要な任務が「米国における外国人の不法入国および不法滞在に関連するINA(米国移民国籍)及びその他の連邦法の規定の執行、及びこの命令の目的の執行であることを確保するものとする」と、トランプはあえて規定した。

 1年間で百万人の強制送還を行おうとするトランプ政権は、国内外から強い反発、非難を受けることは確実である。移民を犯罪者に仕立て上げて、家族・人間関係を引き裂く強制送還を米国の労働者は許してはならない。

 トランプ政権を復権させたMAGA運動を生み出したものは米国の格差と分断である。資本家によって労働者が搾取される階級社会が、格差や分断を生み出し、拡大再生産している。MAGA運動は、移民政策やDEIに対する憎悪に近い反発からも明らかなように、ファシズムに限りなく近いポピュリズムと言えるだろう。 (古)


【1面サブ】

企業献金も政党交付金も廃止せよ

 今国会の主要課題の一つは、自民党の「裏金づくり」に見られる金権腐敗政治の政治改革である。これまで使途の公開義務のない「政治資金」は廃止と決まったが、自民党の強い反対で「企業・団体からの献金の禁止」については、いまなお決着がついていない。

 石破首相は所信表明演説で、「禁止を」という意見にたいして、「自由主義経済で重要な役割を担う法人などの寄付を禁止する理由はないという立場で、企業・団体献金自体が不適切とは考えていない。わが党としては『禁止より公開』との考え方により、企業・団体を含めた政治資金の透明性をさらに向上させるための法案について議論を進めている」と述べた。

 自民党の案では、総務省が毎年、政党ごとに、企業、団体から受けた献金の総額と1000万円超の献金をした企業・団体の名称と金額を公表するとしている。

 自民党は「企業は社会的に重要な役割を果たしている」として、その献金も正当な行為であるかに言う。しかし、企業が自民党に献金するのは、企業や業界に有利な法律や予算配分を受けることを期待するからである。

 実際、電力会社や原子力関連企業などでつくる「日本原子力産業協会」の会員企業は自民党に6億円の献金をしているが(23年)彼らの主要な要求は「一貫した原子力政策の推進」、「原発の早期再稼働」である。

 かつて経団連は産業界からカネを集め、各政党に財界への貢献度として点数をつけ、それに応じて献金として配分していた。現在ではこうした露骨な方式をやめて、各企業・業界がそれぞれ献金することになったが、見返りを期待しての賄賂であることは変わらない。

 「企業・団体献金の禁止」が問題になったのは、今から30年も前である。当時、戦後最大の汚職事件と言われたリクルート社の未公開株が多数の政治家や官僚に配られた事件や、佐川急便が自民党副総裁・金丸に5億円もの献金を行うなどの汚職事件を契機に、自民党は政権を失い、野党連合による細川政権が誕生した。こうした中で「政治改革」が叫ばれ、自民党と細川政権で5年後の「企業・団体献金禁止の検討」が決められた。

 そして94年、「企業・団体の献金禁止」の代わりに設けられたのが「政党交付金」制度である。これは税金として国民一人当たり250円の負担を原資とし、政党の議員数と得票数に応じて分配されるものである。24年には総額315億円、このうち自民党には160・5億円が配分されている。

 しかし、「企業・団体献金」はそのまま放置されてき、今度の自民党の「裏金づくり」発覚で、世論の厳しい非難を受け再度浮上してきた。政党交付金制度はそのままにして、「企業・団体献金」も継続されるとしたら、カネの二重取りである。

 企業・業界の私的利益のための賄賂である企業献金は直ちに禁止すべきである。それと共に、税金として強制的に取り立てられ、自分が支持しない政党に交付されることになる政党交付金も廃止すべきである。

 政党活動にはカネがかかり、企業献金や政党交付金がなくなると困るなどというのは、厚かましい勝手な理屈である。政党の活動は有権者の自発的な支援に基づくものだからである。

 自民党は「企業献金禁止」と言うと、労働組合からの献金も同じだという。しかし、企業献金は労働者の搾取に基づく利益からの献金であり、資本の支配に抗し、労働者自らの生活・権利擁護のための組織である労組からの献金は、労働者が血と汗で得た賃金からの献金であり、まったく別だ。

 とはいえ労働働組合は政党とは違って、組合員は個々様々な意見をもっており、組合費からどの政党に献金するか多数決で決めることではない。それぞれの労働者の自発的な意志によるべきである。しかし、労働組合がどの政党を支持するかを決め、労働者に支援、献金を呼び掛けることは当然だ。 (T)


   

【飛耳長目】

★三菱UFJ銀行の貸金庫盗難で支店長代理の女性行員が逮捕された。彼女は、大谷翔平の通訳だった水原一平と同じギャンブル依存症だった★FX(外国為替証拠金取引:証拠金の何倍もの取引が可能)や競馬にカネを注ぎ込み、多額の借金を抱えていた★庶民には端から縁のない貸金庫だが、利用料金は年間1~3万円。この料金を払ってまで預けるモノは、遺言書等の重要書類、貴金属、現金など。何を預けたかは銀行側は知らない。盗難や災害への安全を謳うが、万全ではなかったのだ★この行員は練馬支店から別の支店に転勤したが、すぐには発覚しなかった。それは盗難を申告しようにも、金庫に預けたことを証明する術がないことに加え、後ろめたい素性の金品があったからだ★盗難事件での警察の捜査は、札束はなぜ銀行口座に入れなかったのか、金の延べ棒の購入費の出所は、と痛い腹を探る。つまり脱税の疑いでの追及を恐れたからだ★賃金労働者の所得は源泉徴収されて脱税の余地はない。かつては節税という名の租税回避が横行した自営業者の多くも、事業者番号とインボイス制度で抜け道のない取引可視化が義務付けられた。政治資金の透明化は進まず、資産家はあの手この手で納税義務から逃れようとする。資本の体制の不合理と腐敗は明らかだ。(Y)


【2面トップ】

地域政党「再生の道」を旗揚げ

石丸ポピュリズム政党の欺瞞

 去年7月の都知事選で、有力候補者蓮舫を退け次点に躍進し注目を集めた、前安芸高田市長石丸が1月15日、地域政党「再生の道」の設立を発表した。しかしその新党は、ただ無党派層の人気を得ることを目的とするポピュリズムの、退廃した政治を体現するものだ。

◇石丸新党「再生の道」

 石丸は、今年7月の東京都議会選挙の全選挙区に、候補者を擁立すること想定し、新党を立ち上げたと発表した。新党の目標は、「政治屋の一掃です。議員の椅子にしがみつく、これこそ諸悪の根源です。日本が衰退している原因だと断罪します」などと言い、「日本がもうまずいと、何とかしないといけないという思いが募ってきました。この日本をよみがえらせる、その意味を込めて『再生』と付けました」と説明する。

 石丸は、「党として実現をめざす政策は、ここでは出しません」、「各候補者が、各選挙区内において、主張すべきことを主張してもらう」とし、候補者を公募し、書類審査、テスト、面接の3段階で選ぶと言う。そして党の約束事はただ1つ、任期の上限を2期8年」という「多選の制限」だけだとし、ほかの党との掛け持ちも認めると説明した。

 石丸は、現在の日本の非正規労働などに象徴される労働者の劣悪な状況、多くの労働者の実質賃金の低下・停滞、そして物価高騰による生活苦の増大など、労働者大衆に悲惨な状況をもたらす「諸悪の根源」が、「議員の椅子にしがみつく政治屋」だと主張するのだ。それは、「政治屋」を敵に仕立て、問題を矮小化して「わかりやすく」したポピュリズム政治の手法そのものだ。

 「諸悪」が労働者を搾取・抑圧する資本主義社会から生まれることは明らかだ。それをブルジョア政治家が支えているのである。石丸のポピュリズムは、新党においても遺憾なく発揮されているが、こんな党に労働者働く者は決して共感を寄せることはないであろう。

◇石丸のポピュリズム政治

 石丸のポピュリズム政治は、「まずい」などの表現で、資本主義社会の真実から生まれる問題から目を逸らさせる。そして「再生」と言うように、石丸は「過去」が良かったとし、それを再び「再生」するのが課題だと、その保守的な政治的立場を露わにする。我々労働者は、「諸悪」の解決は、過去の「再生」ではないと考える。それは資本主義的生産を止揚し、働いて社会を根底から支える労働者が主体となる共同社会へと変革する、労働者の階級的闘いによって勝ち取られるのだ。

 石丸新党は、ほとんど政治的内容がないものだ。それは去年7月の都知事選での石丸の選挙戦術に現れていたものと同じだ。石丸は「政治が行政を緩める」「政治は利権の温床」などと抽象的にブルジョア政治を批判し、「今回の選挙、絶対楽しみましょう」「この盛り上がりこれが楽しい政治」などと内容のない主張で共感を呼び、「皆さんの責任は重大です、皆さんの力で東京を動かしましょう」と政治目標の幻想を与えたのである。無党派層をやんわりと包み込み支持を得たのである。

 それは無内容であるが、社会の現実、社会の真実から目を逸らさせるもの、真実に基づく資本主義の変革の課題を、闇に葬る反動的な役割を担うものだ。石丸は資本主義体制維持を図るブルジョア政治の腐敗した姿の現れだ。

 石丸のその戦術を支えたのがYouTubeなどのSNSの利用であり、「ネット上に石丸応援の〝勝手連〟が動画を投稿拡散し、一大ブームを引き起こし大量得票を獲得」(『海つばめ』1488号)したのだ。しかしそれは石丸の政治的主張が支持されたと言えるものではない。

 去年11月の兵庫県知事選でもSNSの影響が大きいと言われ、その理由の一つに、有権者が参考にした情報元が、新聞・テレビによるものが3割程度に低下し、SNSによる情報も3割程度になったことが言われた(11月25日深層NEWS)。

 都知事選でSNS利用の味を覚えた石丸は、今回の新党設立の記者会見では、「メディアの皆さんも権力者」と既存メディアの記者らを挑発した。石丸は闘う相手を間違っている。

 我々労働者党もSNSをもっと利用する工夫が必要であるが、それはもちろん我々の政治的主張の内容を正確に伝えて支持を獲得するためである。

◇資本主義の変革こそが課題

 石丸新党に対して、自公、立憲は「脅威」、国民民主は様子見であるが、維新吉村は「面白いと思っているし期待もしている。連携・参加、そこは前向きに考えていけたら」などと持ち上げている。社会変革をめざす労働者大衆にとって、腐敗堕落の石丸ポピュリズム政党は、百害あって一利なしの政党だ。ポピュリズム政治でしかない維新は、こんな党に期待するのだ。

 石丸は新党参加に「共産党の方でも結構です」と付け加えた。これに対し共産は、政策も不問で集まるのは「選挙互助会」だなどと批判する。

しかし共産党は、「社会主義」をお題目のように掲げるだけで、その政策は単により良い資本主義をめざす改良主義的政策であり、「政権交代が最大の政治改革だ」と主張する立憲民主党などと野党共闘を追求している。共産党は労働者大衆の問題が資本主義から生じることを見ず、その根本的変革をめざす政策を掲げることができないから、石丸に軽くあしらわれるのだ。

 資本主義は行き詰まり退廃し、インフレと不況の間を揺れ動くしかなく、労働者大衆に一切の犠牲を押し付け、生き延びようとしている。ポピュリズム政治は、その真実を覆い隠し、資本主義の問題から大衆の目を逸らしている。

 国際社会でも、アメリカのトランプ大統領を始め、ヨーロッパでもナチズムを賛美するような極右政党が勢力を拡大しつつあり、ポピュリズム勢力がのさばり始めている。

 我々労働者働く者は、金権に染まる腐敗堕落した自公政権打倒を闘うとともに、新しい労働者の政治を切り開いていくことができない既成政党そして石丸新党を一緒にゴミ溜めに捨て、資本主義を変革する労働者の階級的闘いを構築して行くであろう。 (佐)


【2面サブ】

森永卓郎「永久国債化」を推奨

財政支出の大盤振る舞いのために

 森永卓郎が亡くなった。森永は根っからのMMT派経済学者であり、それゆえ、満期国債の日銀引き受けや政府紙幣の発行による財源確保を説き、大胆な財政支出と減税による不況脱出を主張していた。彼の遺書ともいえる『ザイム真理教』の中でそれらが披瀝されている(引用は同書より)――MMT派経済学については、『プロメテウス』59号を参照されたい。

◇大胆な財政支出の勧め

 森永は国家の借金は「特別会計」などを含む国の「連結会計」で見るべきだと強調する。

 そこで22年度の財務省データを見てみる。有価証券(米国債など)や不動産(道路など)などを入れた「資産合計」は963兆円、「負債合計」は1545兆円であり、資産と負債の差額は▲582兆円である。森永はこれが本当の国家の借金であり、たいした金額ではないと大見得を切る。

 さらに森永は、不動産を売って民営化させ、その株式を売却すれば負債を圧縮できる、米国債も売ればいいと言う。

 しかし、不動産や米国債を売れば、それだけ資産は縮小するのだから、資産と負債の差額は変わらない――運よく高く売れることを想定する。

 まして、政府・日銀は米国債を為替介入のために保有しており、簡単に売れないのだ。森永の「連結会計」による借金論は実務を排除した観念的な代物でしかない。

 しかも森永は日銀に国債を買わせれば、政府の借金は「その段階で消える」(67頁)と言う。

 つまり、国債に満期がきたら、日銀に全てを買わせろ、そうすれば永久に国債を借り換えることができ、政府は国債の買い手に国債元金を返済する必要が無い。ただし、日銀への国債利子払いは残るが、日銀から政府へ利子相当が「国庫納付金」として納入されるのだから、政府は国債をただ同然で発行したと同じになると。

 森永の理屈は混乱している。そもそも国債を永久に日銀に持たせることは不可能だ。

 なぜなら、国債を永久化するなら、日銀が保有する国債は現在の約5百兆円をはるかに超えて1千兆円以上になり、国債を買ったカネは日銀当座預金に積まれることになる。その結果、政策金利を引き上げる局面になれば、当座預金「付利」も引き上げられ、当座預金の「付利水準」(日銀会計の負債側)は、たちまち国債の「平均加重利回り」(資産側)を上回って「逆ざや」になる――今さえその危機にあるのに。

 この「逆ざや」による損失は、既に年5兆円以上もあり、1千兆円もの国債を保有するなら、損失は2倍以上になり、たちまち「自己資本」を上回る。日銀は「債務超過」に陥り、日銀の信用は崩落する。それを無視して、日銀が大規模に国債を購入し保有し続けることは不可能である。

 また、森永は日銀が得る国債の利子相当が毎年度「国庫納付金」として政府に納付されているから国債発行はただ同然だと言ったが、長年にわたって超低金利が続いたため、日銀は年度当り、わずか5千億円程度を国庫に納付しているに過ぎない。日銀が「債務超過」に陥るなら、むしろ日銀が政府から支援を受けるハメになるのだ。

 森永は日銀券発行と併せて「政府紙幣を流通させれば、発行額はそのまま政府のものになる」(65頁)とも吹聴する。

 しかし、政府紙幣は裏付けのない無価値な章票に過ぎず、これが強権的に大量に流通させられるなら、たちまちインフレを招き、政府紙幣に「1万円」と印刷されていても紙切れ同然になる。軍国主義時代のドイツや日本が政府紙幣や軍票を発行してインフレの爆発を招いたことさえ、森永は学んでいなかったようだ。

◇庶民の味方装う

 森永は経済再生の処方箋も提言する。そのために、次のように前置きする。税金や社会保障負担費が増え、国民所得に占める「国民負担率」が上昇しているのに、庶民はその恩恵に預かっていない、むしろ消費税増税が実行されるにつれて、国民生活はひっ迫し消費が縮小し景気が後退したと。

 その例として、1988年度と2021年度の家計比較をした総務省の「家計調査」を引用する。

 税金と社会保険料だけを差し引いた「世帯主収入」は、33年間で、384万円から398万円へと3・8%増加しているが、この期間で消費税率が0%から10%(食料品は8%)に引き上げられている。この消費税増税や社会保険料の負担増によって、「税社会保険料を差し引いた世帯主収入の手取りは、384万円から366万円と、18万円も減少している」(134~5頁)。

 森永は、税と社会保険料が上がり、とりわけ消費税増税によって人々の手取り収入が減ってしまった、だから個人消費が落ち、企業の売上げが減り、そのために企業は「人件費」を削減し、30年も続く悪循環に陥ったと主張する。「消費税増税がデフレの原因であるから廃止せよ」という理屈が出てくる。

 森永は80年代に過剰取引や過剰生産や過剰信用が進行し「バブル経済」が生まれたこと、その必然的な帰結として、90年代初頭に過剰生産恐慌が勃発したことを見ようとしない。その後、大手金融機関の破綻もあり、日本資本主義は生産と販売が縮小・停滞し、海外委託生産や資本輸出に活路を見いだしていく。

 加えて、資本は利潤確保のために「人件費」を含む「生産費」の削減を進めていくのであり、政府の増税から出発して企業の「人件費」削減に繋がったわけではない。

 しかも、森永は89年の消費税3%新設によって景気が後退しなかったことを敢えて隠している。

 資本主義経済そのものから不況の原因を探り、労働者の低賃金を分析しようとしない森永は、消費税増税が不況と低賃金をもたらした主原因であると一面的に理解する。

 もちろん、消費税は労働者に負担を強いる差別的な税制であり、直ちに廃止すべきである。租税の源泉は(生産的)労働にあるのだから当然だ。

 消費税によって、また資本の「人件費」削減攻撃によって、労働者の実質賃金が減るなら、労働者は自らの生活を守るために団結し、労働者の政治的・経済的要求を掲げ、断固として闘うのみである。森永は消費税廃止を掲げて庶民の味方であるかに振る舞ったが、経済再生と資本主義救済のために学者生涯を歩んだのであり、ブルジョアそのものであった。 (W)

   
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