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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1499号 2025年5月25日
【一面トップ】 米中関税戦争一時〝停戦〟
        ――呉越同舟を演じるトランプと習近平
【一面サブ】  科学技術の反動的統制を強化
        ――権力に追随する日本学術会議
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 老後の生活は「共同体原理」で
        ――年金財政破綻を取り繕う政府と野党
【二面サブ】  ロシア、占領地の併合を要求
        ――3年ぶりのウクライナ停戦交渉
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

米中関税戦争一時〝停戦〟

呉越同舟を演じるトランプと習近平

 米国と中国が相手に145%、125%の関税を掛け合った貿易戦争は、12日に米中がスイスで開催した会合で115%引き下げなどを決定し、米国、中国とも輸入関税を10%に大幅に引き下げる〝一時停戦〟を発表した。

◇米中の状況について考える

 トランプは熟慮なき関税政策を、4月2日に「例外なき相互関税」として、内心はびくつきながら発表した。衝撃が全世界に走った。相互関税が発出された9日までにNY株式市場では株価は下落し、9日には米国債が売られ下落し、10年物国債の金利が一転して0・5ポイント上昇した。

 有事に資金の退避先として買われてきた米国債の下落は、米国、海外のブルジョアジーのトランプ関税への〝不安〟の表れである。ドル安・株安・国債安のトリプル安は、米国に対する国際社会の信認失墜であり、帝国主義国家の盟主からの転落を意味するからこそ、相互関税が発出されてから僅か9時間後に90日間の延期をトランプは発表し、中国との〝一時停戦〟を合意せざるを得なくなったのである。

 17日には、格付け会社のムーディーズが米国の信用格付けを引き下げたと、報道された。理由は政府債務の増加である。米国の財政は、トランプ減税やバイデンのコロナ禍現金給付などバラ撒きの野放図な財政拡大によって、巨額な財政赤字を垂れ流している(24年は1兆8千憶ドル)。16日にはトランプ減税(10年間で3兆7千2百億ドル必要)を盛り込んだ法案が、議会下院予算委で21名の共和党議員のうち5名が反対に回り、否決された(18日に再招集)。その財源は国債である。米国債は最上位の格付けによって、海外政府、各国の生保・年金基金・銀行、投資会社によって購入されてきたが、米国債に対する信用が崩壊し、国債売却が連鎖する結果は、世界恐慌の再来であろう。

 トランプは米国債の信用を維持するために中国に譲歩せざるを得なかったのである。米国の帝国主義的権益と利権の最大の源泉は、莫大な貿易赤字を上回る金融収支の黒字によって支えられている基軸通貨としてのドルであり、外国政府が外貨準備として保有する米国債の信用である。

 トランプは、米国第一主義の利己的な立場からそれを崩そうとしていることを理解していない。トランプ2・0は、米国の衰退を決定づけ、中国との帝国主義的覇権争いにおいて醜態をさらけ出した。

 一方、中国は関税攻撃を「米国がもたらした国難」と位置付け〝反米〟を煽り、毛沢東の「持久戦論」を持ち出して国民に〝我慢〟と〝団結〟を呼びかける一方で、切り札のレアアースの禁輸を発表。4月14日から習近平はアセアンへ歴訪、13日には北京で中国・中南米カリブ諸国共同体フォーラムで、農産物貿易、インフラ、エネルギー投資での連携を発表し、多国間貿易の重要性を謳った「北京宣言」を採択。中国は覇権を着実に広げている。

 12日の米中合意について「米国が先に降りてきて積極的に中国との話し合いを求めた」と中国社会科学院は評価したが、4月30日に中国国家統計局が発表した景況感を示す製造業購買担当者指数(PMI)は、4月は3月から1・5下落し49・0に、生産に関する指数は2・8下落し49・8、輸出の新規受注は4・3下落し44・7と悪化した。4月の輸出は、前年同月比EU8%増、アセアンも21%増と全体では8・1%増であるが、米国は21%減。特に米国市場に大きく依存する、軽工業品、玩具業界は、生産を停止し従業員を休職させ、米国向けがストップすると1580万人が失業する。6月には1220万人が大学を卒業するが3分の2は就職できないと報じられた(5・16テレ朝)。

 中国もまた米国との妥協を望んでいたのだ。

◇米国はいつも米国第一主義

 『海つばめ』本紙1496号2面で触れた米国産業の保護を名目とするスム―ト・ホーリー法は、各国の保護主義的対抗策を呼び起こしブロック化を促進させ、第二次世界大戦の一因にもなった。

 1930年代の保護貿易主義による抗争を〝反省〟したブルジョア国家は、48年に自由貿易を掲げてGATT(関税及び貿易に関する一般協定)体制を発効させ、45年に40~50%であった先進国の関税率は、3%前後まで引き下げられた。51年、55年に加盟した独、日は、低い関税で輸出を拡大し経済発展を飛躍的に遂げ、高度成長の中で対米輸出が拡大し、米国は競争力を失った綿製品の輸入数量制限を日本などに求めたのだった。

 米国はGATT体制を無視して「62年には、輸入増大による国内産業への影響を緩和する権限などを米国大統領に与える通商拡大法を成立、74年には、外国の貿易政策を不公正慣行であると一方的に認定し、貿易制裁を課す権限を大統領に与える74年通商法(301条)を成立させた」(経産省)。

 米国は貿易赤字が拡大する中で、カラーTVや自動車、鉄鋼、半導体などの数量規制を301条を根拠にEC、カナダ、韓国などにも発動した。自由貿易を掲げたGATT体制のもとでも米国が、各国と貿易摩擦を激化させ、米国市場からの締め出しをほのめかし保護主義政策を各国に強要する動きを受けて、95年に「自由・無差別・多角主義」を原則にしたWTOが発足したが米国第一主義は何ら改められることはなかった。

◇ブルジョア国家と結束し関税撤回を求める共産党

 共産党小池書記長は、10日の国会で「世界各国と結束し、不当な関税の撤回を求める」と主張した。それは労働者の闘いを捻じ曲げるような主張である。トランプ関税は、米国の帝国主義的な力を背景にした政治であり、その主敵は、米国と覇権を争う中国である。中国もトランプ関税が米中覇権争いの主戦場と考え、譲歩することなく対抗策を打ち出したのである。

 小池のように、「不当な関税」と抗議し、ブルジョア国家と結束する道徳的憤激などは、労働者の闘いと全く無縁である。呼びかけるべき相手は、各国の労働者階級である。道徳的憤激からではなく、労働者の立場で自国中心の帝国主義と断固闘うことを労働者党は呼びかける。 (古)


【1面サブ】

科学技術の反動的統制を強化

権力に追随する日本学術会議

 学術会議を特殊法人化する学術会議法案が5月13日、自公に維新の賛成を得て衆院を通過した。2020年10月、菅政権が学術会議推薦の会員候補6人の任命拒否した「学術会議問題」は、石破政権の巧妙な特殊法人化によって、反動的統制強化を進めるものとなった。

◇任命拒否から特殊法人化へ

 今回の学術会議法案は、これまで国の機関であった日本学術会議を特殊法人にするものだ。

 そもそも、菅政権の任命拒否が問題の発端だ。菅が任命拒否した学者は、自衛隊の海外派兵や集団的自衛権を認める安保関連法、辺野古基地建設法、特定機密保護法など、安倍政権が強行した反動立法に反対した学者である。菅は政府に異を唱える学者を学術会議から排除することによって、学術会議を政府に協力的な組織に変えていこうとした。

 この課題を引き継いだ岸田政権は学術会議を政府機関として残し、会員選考に第三者を関与させる法案を検討したが、23年に提出を断念した。

 そこで考え出されたのが学術会議の特殊法人化で、問題となった首相による会員の任命権を廃止する内容の法案だ。

 石破政権は、学術会議側が求める「独立性・自立性」は特殊法人化によって「抜本的に高める」(坂井内閣府特命担当相)と詭弁を弄した。そして、会議側が自らの「存在意義」とする政府への「勧告権」も認め、財政基盤も国庫負担は維持するとした。

 学術会議側の要求を全て呑んだような内容だ。昨年12月の政府方針に対し学術会議の光石会長は、独立性などの懸念は残るとしながらも「ポジティブに受け止めていい」と、新法移行を大筋容認した。独立の組織を作る気迫もない、資本の支配体制への批判精神に欠ける学者を手玉に取るなど易しいことだった。

◇衆院通過の学術会議法案

 今回の学術会議法案には、学術会議の業務を監査する「監事」、活動を評価する「評価委員会」が新設され、いずれも首相に任命権がある。会員は「学術会議が選任」するが、外部者からなる「選定助言委員会」が設けられ、会員選定方針や候補者選定にも意見が言えるようになっている。 国会審議では、立憲が「独立性の尊重」などの文言を入れる修正を求めたが、自公維で過半数の石破政権は応じなかった。

 さらに現行法にない「会員の解任」規定を新設、解任の要件を「会議の業務に関し著しく不適な行為をしたとき」とした。坂井担当相は「特定のイデオロギーや党派的主張を繰り返す会員は解任できる」と答弁している。学術会議はこれまで軍事研究を拒否してきたが、「独立性・自立性」とは裏腹に、学術会議の統制強化が貫かれるのだ。

◇教育も科学技術も統制下に

 法案は現行法の「わが国の平和的復興」を削除し、「経済社会の健全な発展」に置き換えている。これは07年安倍政権のもとで成立した新教育基本法において、「真理と平和を希求」を「真理と正義を希求」に変えるなどの改悪と軌を一にする。

 改悪教育基本法で、「教育の中立性」「非政治性」の侵害や否定に道を開き、教育が支配階級や政府や国の意思に従属されるべきとされたが、この学術会議法案も謳い文句の「独立性・自立性」を否定し、学術会議を政府の意向に沿うような組織にしようとするものだ。

 教育も科学技術も政府・資本の統制下に置かれようとしている。この間、能動的サイバー法や刑事デジタル法、AI推進法が制定され、最先端のAIを利用した国民監視、国家的統制を強め、そして軍事利用に道を開く策動が進められている。

 資本が進歩性を失い腐敗腐朽し、労働者に対し反動的な支配統制を強めているのは、日本のみならず米中露を始め世界的な傾向だ。労働者は資本の支配と闘い、真の科学技術の発展を勝ち取らなければならない。 (佐)



    

【飛耳長目】

★自動車事故の内容が日本と米国とでは大きく違う。日本では人との衝突事故が多く、米国では車同士の事故が多い。それは道路事情の違い、例えば日本では歩道と車道との区別がなかったり、狭小な道路が多かったり、そもそも道路が車用にできていない★従って、日本車は衝突を避けるために、自動ブレーキや歩行者検知機能の開発が進む。ただし、低材料費から成る、近年人気の軽自動車(全体の4割)は、薄い鉄板が囲んでいるので運転に注意が必要だ★かつて日産のダットサンは日産ブランドとして米国をはじめ海外で人気を博し、戦後日本の自動車の地位向上にも大きく貢献したものだ。その日産が過去最大の7500億円もの減損損益を出し、危機に瀕している。かつては「技術の日産」と呼ばれたが、近年は商品力のある新車開発(HVなど)が出来ず、米国では大幅値引き販売する有様だ★17工場の内、7工場を閉鎖し、労働者2万人(全体の15%)の首を切ると言う。カルロス・ゴーン期に続いての同数の首切りだ。労働者を路頭に迷わすのに、社長の内海は6・5億、ゴーンは10億もの年収を労働者から収奪していた。富(価値)をつくり出す労働者に真っ先に犠牲を強いるとは、資本主義とはかくも不条理なものだ。 (義)


【2面トップ】

老後の生活は「共同体原理」で

年金財政破綻を取り繕う政府と野党

 「年金制度改革」に関連する法案が16日(5月)に閣議決定され、国会に提出された。昨年7月、厚労省から「年金財政検証」結果が発表され、これを基にして与党内で議論され、その結果が今度の閣議決定になった。だが、その内容は矛盾に満ちている。

◇年金財政収支は赤字続き

 厚労省が昨年発表した「年金財政検証」を見ると、経済が「高度成長した場合」や「1人当りゼロ成長」の場合、年金加入条件を「撤廃した場合」などを想定し、2060年度までの「見通し」を列記している。

 だが、この「財政検証」は、「1人当りゼロ成長」という「実質経済成長率マイナス0・7%」の場合でも、「実質賃金上昇率」を0・1%と見積もり、物価上昇を上回る賃上げを前提にした手前味噌の作文になっている。

 それでも、「国民年金は2059年度に積立金がなくなり」、年金財政全体も悪化すると危機感を露わにしている。

 それは当然だ。年金財政の「単年度収支残高」を見ると(厚労省HP)、国民年金は、04年度から現在までずっと赤字である。厚生年金は06から21年度まで赤字が続き、22と23年度には賃上げもあって辛うじて黒字になった。 年金全体の収支残高を見ても、06から20年度まで赤字で、21と22年度に黒字になったが、23年度には再び赤字に転落した。

 こうした年金財政の惨状を無視できず、定年退職者や女性の労働参加を促し、さらに持続的な2%の物価上昇を実現し、これを上回る賃上げで年金財政を補填していくことが政府・財界と野党の〝切なる願望〟になっている。

 この〝願望〟が叶わなければ、年金財政はさらに悪化し、年金積立基金の投資収益に依存する寄生的な存在に成り果てる。そして、年金制度そのものがいずれ瓦解する事態に直面する。

◇「壁撤廃」を策す

 閣議決定した今回の年金改革案はその場しのぎの代物である。

 その一つが「106万円の壁」(厚生年金加入と保険料支払いが生じる年収)の撤廃である。この「壁」を超える条件は、現在、月額賃金8・8万=年収106万円以上、勤め先企業の労働者数が51人以上、週労働時間が20時間以上などである。政府はこれらの「壁」を順次撤廃すれば2百万人の新加入者が生まれると算盤をはじくが、企業に配慮して先延ばしや現状維持を決めた。

 他方、「130万円の壁」については、企業に補助金を出しながら進めるという。この「壁」の一番の問題は、前から言われてきた「3号被保険者」の存在である。

 会社員や公務員(2号被保険者)の「配偶者として扶養されている人」は、年収が130万円未満であれば「3号被保険者」に該当し、本人の保険料負担を免除され、満額の基礎年金を受け取れる。

 この制度は、夫に扶養者される妻が家事・育児・親の介護などを担うべきだという家父長的・家族主義的な思想に基づいて作られ、女性を家庭内に縛り付ける役割を担い、女性差別の温床になってきた。

 この「3号被保険者」は未だに7百万人もいる。この「130万円の壁」を突破して女性が働くためには、女性差別撤廃と同一労働時間同一賃金、育児・教育・介護の全面的社会化が何よりも必要である。

◇「共同体原理」で解決を

 年金財政は赤字続きであり、いずれ破綻は避けられない。

 そうなった主な要因は、「定年制」や「3号被保険者」が資本家的・保守的勢力の都合で作られ、これを利用して労働可能な人々を社会的労働から排除してきたからだ。他方、資本による労働者の非正規化策動によって、年金保険料徴収が減っていることにある。

 また少子化が進むことを前提に、「マクロ経済スライド」と煙に巻きながら年金受給額を削減してきたが効果はなかった。

 少子化は若者たちの〝静かな反乱〟である。

 資本に雇われて労働者が1日8時間働いても、4時間分の賃金しかもらえず(年換算で4百万円ほど)、非正規はその半分の2時間分の賃金だ(年換算で2百万円ほど)。こんな搾取と差別が「資本の労働過程」で行われるが、それを理論的に明らかにし、未来に向けて変革する動きは我々労働者党を除くと皆無である。非正規労働者や女性にとって、今の世の中は絶望的に見える。

 若者救済だと称した「保育や教育の無償化」が叫ばれても、その財源を国家の借金で賄おうとする限り、借金のツケがいずれ自分たちの肩にのしかかってくることを若者たちは感じとっている。

 さらに資本主義は、経験豊かなベテラン労働者よりも、賃金が安くて使いやすく過酷な労働に耐えうる若年労働者を必要とし「定年制」を設けた。その結果、労働者は定年という首切りで年金受給者に追いやられてきた。

 しかし、年金は基礎部分があるとしても、現役時代の賃金に比例している。経営者ら高給取りだった人は毎月65万円もの年金を手にする一方、非正規で働いた労働者は月額7~10万円という雀の涙の年金しかなく、現役をしりぞいた後まで差別が続く。それを解消するためには、年金受給額の上限を下げ、下限を設けて大幅に引上げるべきである。

 そもそも、年金は国家の財源確保のために作られた追加徴収税の性格を持ち、最初にビスマルクによって採用され、日本も欧州に見習って採用してきた。

 ところが、戦後の高度成長が終わり経済の停滞が進み、また少子化が顕在化するや年金財政は危機に陥り始めた。その結果、年金に頼れない高齢者や女性は社会的労働に参加しつつある。

 これは「年金制」を否定する動きと言える。実際、搾取が無い共同労働社会では、「年金制」は不要である。

 資本の搾取を廃絶した社会では、労働時間は抜本的に短縮され、福祉やインフラ部門も生産手段同様に全面的に社会化される。全ての成員は基本的に生産的労働に参加し、自分と家族の生活を保障する。

 と共に、労働が困難な障害者や老齢者に対しては、可能な限り労働参加を援助し、共に喜びを分かち合う。彼らの生活については、社会全体で全面的に支えるのである。

 国家の維持のための「年金制」は、このような「共同体原理」が機能する社会では必要がないということだ。 (W)


【2面サブ】

ロシア、占領地の併合を要求

3年ぶりのウクライナ停戦交渉

 トランプの斡旋で、5月16日、ロシアとウクライナの「停戦」をめぐって、3年ぶりに両国による直接交渉が行われた。しかし、互いの捕虜1000人を交換することと、協議を継続することを「確認」しただけで終わり、数日内にウクライナとロシア双方が「停戦条件を明記した文書」をつくること、それに基づいて米国が「停戦関与を継続」するか否かの判断を行うことを合意しただけで終わった。

◇ウクライナからの「無条件停戦」提案

 ウクライナの「無条件停戦」提案は、トランプがウクライナとロシア双方に呼びかけた30日間の「包括的な無条件停戦」合意に依拠するものである。

 トランプは当初プーチンとの会談で、ウクライナとロシアの戦争はゼレンスキー政権が引き起こしたものだとか、ロシアが占領したウクライナ地域はロシアに属するなどと、ほとんどプーチンの主張を受け入れる一方、「この戦争は米国の戦争ではない」として米軍の関与をやめると述べていた。

 こうしたトランプの姿勢に危機意識を募らせたウクライナ側は、国内のチタンなどレア鉱物資源について米国と共同開発を行うという形で、鉱物開発の利権を米国に与える協定文書にサインした。米国企業の存在がロシアの軍事侵攻に対する防波堤として役立つことを期待してのことである。

 ウクライナによる「無条件停止」案は、まず30日間の戦闘を停止することで、ロシアが占領したクリミア半島や東・南部の4州についての処遇、ウクライナの安全保障などの問題は交渉を通じて決めるという内容と言われている。

◇ロシアの見せかけの「停戦」案

 これに対してロシアの「停戦」案は全くの見せかけである。

 トランプの30日間の無条件停戦提案に対して、プーチンは5月11日、ウクライナとの「直接交渉」を呼びかけた。そしてプーチンは記者団を前に、「我々は真剣な協議を求めている。紛争の根本原因を取り除き、永続的で強固な平和に向けて動き始めるためだ」、協議する中で、「新たな停戦、新たな休戦に合意する可能性」を「排除しない」と語った。

 しかし、プーチンの言う「平和」のための「直接交渉」が全くの偽りであることがたちまち暴露された。交渉にプーチンは欠席し、現れたのは決定権を持たないメジンスキー大統領補佐官をトップとする「低レベルのメンバー」(ゼレンスキー)だった。

 プーチンにとって、今度の交渉は2022年に行われた「和平交渉の再開」というのが、ロシア側の位置づけである。

 22年の「和平交渉」では、ロシアは、ウクライナがロシア占領下のクリミアを承認すること、「分離主義者」が支配するルハーンシクとドネツクの独立、そして「非軍事化」と「非ナチ化」などを受け入れることを要求、ウクライナにとってこの独断的な要求は受け入れるはずもなく、交渉は決裂した。

 プーチンにとって、ゼレンスキー政権は「ネオナチ」政権であり、軍備を増強し、NATO加盟を企み、ロシアを圧迫していると言うのだ。そして、ロシアと一体であるべきウクライナがロシアから分離・独立したことが「紛争の原因」であり、「ネオナチ政権」を打倒し、ロシアとの一体化を実現することが「紛争の解決だ」としたのである。

 プーチンによるウクライナの国家主権を無視し、旧帝政ロシアの領土として復活させようとする帝国主義的な主張は一貫したものであり、今回の協議でも繰り返された。

 協議では、ロシアはウクライナに対して次の要求を突き付けた。クリミア半島ほかウクライナ東・南部4州の併合に対する国際的な承認、4州全地域からのウクライナ軍撤退、ウクライナの中立と大量破壊兵器の不保有、ウクライナ国内へ同盟国の軍隊を駐留させないことなどである。

 そしてメジンスキー代表は、「ロシアはいつまでも戦争を続ける用意がある」とウクライナ代表団を威嚇したのであった。

 協議において捕虜の交換と「協議」の継続が決められたが、停戦に向けて実質的には何の進展もなかった。

◇帝国主義に反対する労働者の闘いこそ「平和」への道

 19日、トランプとプーチンの電話会談が行われた。トランプは「会談はうまくいった」、「ロシアとウクライナは停戦に向けた交渉を直ちに開始する」と述べた。

 トランプは成果を強調した。ウクライナはトランプの仲介で「和平」が実現するという期待したが、それは幻想である。

 会談でプーチンは、「平和」のためには「根本的原因を排除することだ」として、これまでの主張を繰り返し、即時停戦には応じない姿勢をとっている。プーチンは自分たちの要求が通らなければ停戦するつもりはない。またトランプ自身、プーチンの軍事侵攻をやめさせる真剣な意志を持っていないからである。

 トランプは、後は「ウクライナとロシアとの直接的協議」に委ねるとして、積極的な仲介から身を引こうとしている。

 トランプにとっては米国がウクライナから手を引くことが最大の関心事であり、そのためにはウクライナの犠牲が必要であると考えている。

 トランプの考える世界秩序は、米国、中国、ロシアの帝国主義大国中心の社会であり、ウクライナなどの小国は、これら大国の犠牲になっても構わないのである。

 プーチンのウクライナへの軍事侵攻を粉砕することが出来るのは、トランプでもブルジョア政権であるゼレンスキー政権でもなく、ウクライナやロシアの労働者であり、帝国主義に反対する世界中の労働者の階級的に連帯した闘いである。 (T)

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