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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1500号 2025年6月8日
【一面トップ】 自民の農政破産〝令和の米騒動〟
        ――家族農業を擁護、自民党に追随する共産党
【一面サブ】  強権ポピュリスト斎藤知事
        ――権力私物化・パワハラを示す調査報告書
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 人手不足で「好循環」描く日銀
        ――人手不足でも闘わなければ賃金は上がらない
【二面サブ】  ドイツの「過去の克服」
        ――イスラエルを一貫して支援
※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

自民の農政破産〝令和の米騒動〟

家族農業を擁護、自民党に追随する共産党

 5月31日、5キロ2000円の〝小泉米〟は即完売となり、連日ニュースで大きく取り上げられている。〝令和の米騒動〟、農水族江藤大臣の更迭と小泉の農水大臣就任は、自民党農政の破産宣告である。

◇姿なきJA落札米・自民農水族と農協の癒着

 石破は、コメ価格高騰に危機感を抱き備蓄米放出を行うが、落札の90%以上がJAという出来レースは、米価の下落を全くもたらさず――JA全農によれば5月29日段階で落札分の42%を出荷――、前農水相江藤は「コメは買ったことが無い」「売るほどある」と軽口をたたき、大衆の怒りに火をつけ、追い詰められた石破は江藤を更迭。切り札の小泉を担ぎ出しコメ不足・米価高騰に対する大衆の怒りをそらし、小泉のワンフレーズ発信力と東奔西走の行動力で、石破の支持率をアップさせ、6月都議選と7月参院選を乗り越え、政権継続を実現しようとしている。

 小泉効果もあり支持率が上向く兆しも見え、石破は解散をちらつかせ野党をけん制している。小泉にとっても、前回の総裁選の屈辱を晴らし総理総裁に担ぎ出されるためには、〝小泉米〟を失敗するわけにはいかない。

 ポピュリスト小泉は、5キロ2000円の販売条件でJA等集荷業者や全農等出荷団体を排除し、直接大手スーパーや量販店、コンビニなどに備蓄米を随意契約で販売した。

 物価上昇で追い詰められている母子家庭などではコメが高くて買えずに、子供にお腹一杯食べさせることが出来ない等、過酷な調査結果が明らかにされている。非正規雇用労働者や低所得世帯なども同様である。備蓄米の放出を行うのであれば、資本主義社会の矛盾に翻弄されて、コメを買うことすら出来ない生活困窮者への提供こそ最優先にすべきである。

 しかし、〝小泉米〟は欺瞞的な一時しのぎの政策でしかない。〝小泉米〟30万トンは、僅か半月で食い尽くされる量だ。昨年の時点で米不足は明らかだったが、自民党・農水省は「米の生産は足りている」と一貫して主張してきた。本紙1494号一面論文でも明らかにしたが、18年に中止した「減反政策」は形を変えて続けられ、米の生産量は需要に対して余裕のない状態であり、異常気象などで変動すればコメ不足は容易に想像ができた。

 自民党や農水省・JAの無能な農業保護政策は、農業の衰退を促進してきた。石破は2日、「農家の経営を安定的にするため、どのように補償を行い、農地価格をどうするか。食料安全保障を徹底的に議論したい」と言い、小泉は農水省が今まで見立てを誤ったと発言し、JAや農水族、省との〝対決(石破、小泉は減反に反対)〟を示唆した。

◇自民党農政破産は共産党政策の破産

 米不足と価格高騰を招いた原因が、歴代自民党政権の無能な農業政策によってもたらされたことは明らかであるが、自民党の農業政策の破綻は、共産党の農業政策の破綻でもある。小池書記局長は26日に記者会見で「農家が安心して米を生産できるよう政府が価格保障・所得補償で支援し、米価高騰の根本原因である米の生産量を抑制する減反政策から増産に進むべきだ」と所得補償・米の増産を訴え、29日には田村委員長が「毎年77万トンも米を輸入している」と米輸入禁止を訴えた。

 共産党の農業政策の基本は「家族農業を中心に農業を再建する。農産物輸入自由化を放棄し食料主権を守り食料自給率を向上させる、それが日本の国際的責任」(テーマ別政策)だ。共産党は、農家の98・5%が大小多様な家族経営であり、それを存続させることが重要と、環境や景観(棚田千枚田か)、伝統、文化の継承まで持ち出して小規模家族経営を擁護する。

 基幹的農業従事者の内、88・7%が60代以上で29歳以下は僅か0・6%。10年に116万を数えた水稲作農家は20年には70万と26%も減少。このままでは「食料生産も危うくなり、耕作放棄地が広がり国土・環境の荒廃が一気に広がりかねない」と彼らは危機感を持つ。だから、コメ農家保護の所得補償や様々な補助金政策などを提示し、家族経営に頑なに固執する。

 そして、自民党が進めてきた大規模経営について共産党は、後継者不在、「集落営農」も解散が広がり破綻したと断じる。

 自民党政権の「集落営農」――集落を単位として農業生産過程における一部又は全部について共同化・統一化に関する合意のもとに実施される営農――によって、25年までに全国で13952(法人化5852)件が組織された。内訳は、営農戸数9戸以下21・9%、10~19戸21・9%、20~29戸17・8%。集積面積10ha以下26・9%(非法人40・0%)、10~20ha22・1%、21~30ha16・8%、31~50ha17・8%、51~100ha11・4%、100ha以上5%。20ha以上は法人の集落営農が非法人を上回っている。

 具体的な活動は、機械の共同所有・利用が86・3%、生産・販売が79・5%、他に土地利用調整、農作業受託、管理運営などで、いずれも法人が上回っている。「集落営農」が、農地を私的に所有する農家の集合体である以上、構成する個別農家に後継者がいなければ農業の継続は困難だ。「集落営農」の破綻は、決して大規模農業の破綻ではなく、分散した小規模農地の私的所有を前提にした経営こそが問題だ。法人化した「集落営農」は24年比で1・8%増加。非法人は1・8%減少。相対的に大規模な「法人集落営農」は増加している。

 共産党は、JAバンクに貯金した農業者の預金を、農林中金が外債運用(資産規模は50兆円)で1兆8千億円の損失を出すようなマネーゲームが主要な収益源であるJAを「総合農協」として、「国や自治体も協力し、支援します」と言うのだ。

◇食料主権を掲げ保護貿易を正当化

 共産党は、自国民の食料生産を優先する農業政策として、「食料主権」を守るための施策として、農産物輸入自由化を定める各種協定(WTO、TPP、RCEPなどの農業協定)からの離脱、廃棄を明言する。自国民の食料生産を守るため輸入規制することが〝正当〟な主権の行使と主張するのは、労働者階級の国際主義的協力を放棄し小ブルジョア的利害に立脚していることの宣言であり、後ろ向きである。 (古)


【1面サブ】

強権ポピュリスト斎藤知事

権力私物化・パワハラを示す調査報告書

 昨年3月兵庫県西播磨県民局長が内部告発した、斎藤知事らの権力私物化やパワハラ問題に関し、調査してきた百条委員会と第三者委員会が、この3月にそれぞれ報告書を提出した。私物化の断定は避けているが、ポピュリスト斎藤の強権主義政治を認定している。

◇県政私物化・パワハラの権化

 知事らの「違法行為等」として元局長が挙げたのは、「震災記念研究機構」の理事長らの解任、2021年兵庫知事選挙における事前運動、次期知事選における投票依頼、贈答品要求、斎藤の政治資金パーティ券購入、23年阪神・オリックス優勝パレードの募金、職員へのパワハラの7項目だ。

 問題となったのは、この告発文の真偽であるが、それとともに告発文に対する知事側の告発者捜し等の対応が「公益通報者保護法」違反かどうか、元局長に対する懲戒処分等について違法性はなかったか等が、県議会百条委員会と県第三者委員会で調査された。

◇腰砕けの百条・第三者委員会

 百条委員会報告では、事前運動、投票依頼について「違法行為を裏付ける証言等は確認できなかった」としたが、告発されている当事者からの聞き取り等の調査であり、例えば投票依頼について、「産業労働部長が随行していたことは確認できたが」「訪問目的は」「投票の依頼を目的としたものであることを否定している」と、当の本人からの聞き取りに基づくもので納得できるものでない。

 しかし、贈答品要求、パーティ券購入依頼、優勝パレードの募金に関する問題については、「一定の事実が記載されており、虚偽の内容とまで言えない」とした。一方、後で出された第三者委員会報告は、投票依頼等について「事実は認められなかった」と幾分トーンダウン。

 両委員会報告は、パワハラに関して全部ではないが確認されるとした。知事側の告発者捜し等の対応は「公益通報者保護法」違反、元局長への懲戒処分は違法とした。昨年11月の知事選を巡りN党立花党首への県保有情報の漏洩は、維新の県議が情報提供したとした。

 しかし告発文の主要部分をなす県政私物化の公職選挙法違反等の犯罪については、「確認できなかった」とするだけだ。それゆえ斎藤は、「六つの事項については事実とは認められないとされた」と言い、元局長の懲戒処分は正当だという主張を変えていない。

◇強権ポピュリスト斎藤

 昨年告発された時、斎藤は、文書は「嘘八百」、元局長が「うわさ話を集めて作成したものであると説明」(24年3月27日知事会見)などと主張した。元局長はその知事会見を見て「私自身がそのことを認めた事実は一切ありません」(24年4月1日)と反論した。そして今回第三者委員会は、告発者の私的情報を県議に漏洩したのは「知事指示の可能性が高い」とした(5月27日)。斎藤は、自らの給料減額措置で身を処すと言い、問題を拭い去ろうとしている。

 事件に関して、優勝パレードの担当課長、告発した元局長、立花が誹謗中傷した百条委員会県議の3人が斎藤に関わる問題で追い込まれ自死した。

 去年の告発問題の後、県議会は去年9月に知事の不信任決議を全会一致で可決。その後の11月の出直し知事選では斎藤が再選。再選はその政治の支持ではない。PR会社の斎藤のイメージづくりが奏効したが、斎藤やPR会社社長は公選法違反で刑事告発されている。

 ポピュリズムは、斎藤、維新のように強権政治と一体だ。斎藤は県政改革を進めると言うが、権力維持のための虚偽、歪曲、パワハラの斎藤を労働者大衆は見抜いている。労働者は真実に基づき、斎藤県政と闘う。 (佐)



    

【飛耳長目】

★自民党最高顧問にして俗物的な貴族趣味が鼻につく麻生は、4月に開かれた「安定的皇位継承の法制化を求める国民大会」で、「皇統に属する男系男子、いわゆる旧11宮家の子孫の方々に皇族になっていただくことは極めて重要」と訴えた★旧11宮家の子孫を掘り起こしてでも「安定的皇位継承」を叫ぶのは、現天皇より若い世代の皇族は6人いるが、5人が女性で、皇位継承権を持つ男子は、筑波大生になった悠仁だけだからだ★3月に行われた「旧皇族男系男子の養子」についての各党意見聴取では、自公と維新、国民民主が賛成。立憲は天皇制への立場を明確に示せないまま、些末な「旧皇族対象者の意思確認」を求めた。共産は女性天皇を否定すると反対、れいわも法の下の平等に反すると反対。「国民の総意」演出の目論見は失敗した★『毎日』(5月27日)の世論調査は、「皇室に関心ある」が66%もいるが、ニュースやSNSによる「うわべだけの関心」で、「高くて弱い」と評価する。そして、「皇室の人たちの人生を左右する制度が『なんとなく』の流れで決まってしまう」と心配する★マスコミはこんな心配をするくらいなら、封建的身分制の残りカスの根絶を提唱すべきだ。7割の国民が女性天皇容認だと言うが、健全な労働者は天皇制そのものに反対する! (Y)


【2面トップ】

人手不足で「好循環」描く日銀

人手不足でも闘わなければ賃金は上がらない

 「人手不足」が続き、企業は労働者を確保するために賃上げに動いている。その結果、商品やサービス価格の引上げが進んでいる。日銀は、この流れがこのまま進めば、賃金と物価がともに上がる「景気の好循環」につながると言う。本当か?

◇「人手不足が成長促す」は詭弁

 昨年(24年)12月発行の『海つばめ』1489号で、「年1万件に迫る倒産」について論じ、この中で「人手不足倒産」が相次いでいることを紹介した。25年3月末の24年度集計でも、「人手不足倒産」は過去最多になった。

 この問題を紹介したのは、「人手不足」による倒産と労働者の解雇が進んでいるのに、日銀は「人手不足」が景気回復の絶好のチャンスになると発表したからだ。

 5月2日公表の「経済・物価情勢の展望」(日銀HP)によると、「これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していく」、その後には「成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していく」、そして、この「予想物価」から「賃金や物価に上昇圧力がかかる」、その結果「成長率は高まる」と述べている。

 つまり、「経済成長率の高まり」を前提にして「人手不足」を論じ、次には、「人手不足」が続けば「予想物価上昇率」が上がり、その結果、労働者の賃金上昇につながり、賃金が上がれば価格転嫁が行われて諸物価が上がる、かくして「経済成長=景気の好循環」が形成されるというのだ。だが、これは導き出す結論を前提に置いた循環論証(詭弁)である。

 まず「人手不足」による賃金上昇は必然なのかを検討する。

 確かに、「人手不足」によって資本による労働者の獲得競争が高まり、新卒者の初任給は上がっている。だが、企業は常に賃金総額が上がらないように調整をしている。賃金が上がれば、企業の利潤(剰余価値)は減るのであり、賃金総額が上がらないように、黒字企業であっても中高年労働者の解雇を不断に強行し――東京商工リサーチによれば、上場企業による「希望退職」者は、今年(25年)1月~5月15日までの短期間に8711名に上り、前年同期の2倍(87・1%増)に達する――、また、正規から極小賃金の非正規に切り替えるのが常である。

 事実、厚労省が毎年発表している「労働分配率」(「人件費」/「付加価値」額)は「人手不足時代」に突入した13年以降も下落し続けている。「人手不足」でも労働者の賃金総額は抑制されているのだ。

 次いで、「人手不足」になれば物価上昇が必然的なのかを見てみよう。

 先に紹介したように「人手不足」による倒産が増加し、倒産に至らなくても生産・運輸・販売の各部門では縮小を余儀なくされ、効率も落としている。仮に大企業の下請け企業でそれらが起きるなら、大企業にも影響が及ぶ。だが、大企業はそれらをカバーする体制(内製化や下請け多重化など)を築き、容易に価格転嫁を認めない。

 日銀のように、「人手不足」で「供給制約に直面しつつある状況」(供給不足)が発生しているのだから、下請け企業の価格転嫁がスムースに進むかに考えるのは、一面的であり、牧歌的である。

 帝国バンクによれば、現在、全業種平均の価格転嫁率は40・6%。建設業は39・6%、物流業は32・6%であり(「人手不足倒産の動向調査」25・4・4)、下請けの転嫁率はもっと小さい。

◇政権に忖度する日銀

 これまで日銀は「人手不足」を梃子にした経済成長論を口にしてこなかったが、なぜ今になって吹聴し出したのか?

 それは、石破政権が「経済財政諮問会議」(今年3月24日)の場において、「地方創生」と結びつけて、「人口減少による人手不足を梃子に地方の賃金・処遇改善を図る」と述べたことに、口裏を合わせるためである。

 加えて、日銀や政府が期待した春闘で、3年連続で前年を上回る賃上げが行われても、岸田政権のスローガンであった「物価上昇を上回る賃上げ」が実現せずに挫折したからである。

 こうして石破政権のスローガンである「人口減少による人手不足を梃子に」を導入したのであるが、その場しのぎで経済成長策を唱え、大衆の目先を変える日銀はもはや無用の長物であろう。

 日本より少子化が進み、「人手不足」が激しいと言われる韓国でも、労働者の賃金は上昇していないことが明らかになっている。例えば、「ハンギョレ新聞」は韓国銀行のデータを基に次のように言う。 「新型コロナ直後には物価高が続き、実質賃金は下落した側面がある。実際、2022年の場合、名目賃金上昇率が4・9%で高い方であったにもかかわらず、消費者物価が5・1%も上がり、実質賃金は0・2%下落した。しかし2023年と今年上半期には名目賃金の上昇率がそれぞれ2・5%、2・4%に止まった。2011~2021年の間の名目賃金の年平均上昇率は3・53%だった。物価上昇率が多少鈍化したにもかかわらず実質賃金が下落した原因は、物価より名目賃金上昇率の下落側にあるという意味だ」(24年9月5日号)。

 このように、「人手不足」国である韓国でも、賃上げはあまり進んでいないのだ。日銀の新味を気取った「人手不足=賃金と物価上昇=経済成長」論が破産しているのは明らかであろう。

 日銀はケインズ経済学の徒である。だから、資本主義に特有な利潤(剰余価値)を生産する労働過程のメカニズムを知らない。生産と販売または供給と需要の間の価格差額によって利潤が生まれると考えた中世の商人資本の水準に留まっている――宇野経済学も同じだ。だから、賃金獲得と剰余価値の生産(搾取)が対立的であることを明らかに出来ず、ただ何事も流通の問題に解消してしまうのである。

 労働者は資本主義を蒙昧にする詭弁を打ち破り、連合幹部の「賃金は利潤からのお裾分け論」を打破し、未来(共同労働社会)を展望しながら階級的に団結して闘うことによってのみ、自らの生活を守ることができる。共に闘おう。 (W)


【2面サブ】

ドイツの「過去の克服」

イスラエルを一貫して支援

 イスラエルによるパレスチナ人に対するナチスと見紛うばかりの蛮行がガザで続いており、世界中で人民・大衆の怒りが高まっている。戦後ドイツは、イスラエル側に対しては、ナチスによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)などの戦争犯罪の謝罪を繰り返す一方、「過去の克服」の証しとしてイスラエルに対して、ほぼ無条件で支援を行ってきた。ドイツによる「過去の克服」の意味を考えよう。

◇「イスラエルの安全」はドイツの「国是」

 ナチス時代、約600万のユダヤ人を虐殺した過去を持つドイツでは、戦後、「決して繰り返さないと」というスローガンの下、ユダヤ人に対する加害の歴史が教育などを通じて積極的に教えられてきた。そして外交では、1952年西ドイツによるイスラエルに対する賠償が行われ、1965年には2国間の正式な外交関係が樹立された。次いで1990年、東西ドイツが統一されて以降、過去を克服し、人権と民主主義を重視することが国家の基本姿勢とされ、「イスラエルの安全はドイツの国是」とされていった。

 2008年、イスラエル建国60周年を記念して、ドイツのメルケル首相はイスラエル国会での演説で、「イスラエルの存在と安全はドイツの国是だ。ホロコーストの教訓はイスラエルの安全を保障することを意味する」と語った。この発言はその後ドイツの「国是」として定着していった。2023年、イスラエルがガザへの軍事侵攻を始めた時にも、ドイツのシュタインハイマー大統領は「ドイツはどのようなことがあってもイスラエル側に立つ」と語っている。

◇イスラエルへの軍事的、経済的援助

 ドイツが「過去の克服」を訴え、いち早くユダヤ人に対する賠償責任を果たしたことは日本でも優れた行動として一部の自由主義的な知識人から〝称賛〟された。しかし、その実際は手放しで手本と呼べないものであったことを見逃してはならない。

 戦後、西ドイツの初代首相となったアデナウワーは、就任直後(1949年)に新生イスラエル国家との接近を試み、補償の用意があると述べた。戦後ドイツが国際社会に復帰するためには、信用と信頼の回復が必要であったからだ。そして52年にはイスラエルと「補償協定」が締結されている。

 その額は全体で30億マルクであるが、これは当時の西ドイツの年間予算270億マルクの9分の1に該当した。14年間に西ドイツで生産した物資で支払う内容で、ここにはドイツの経済復興につながるという思惑が込められていた。

 一方これはイスラエルにとっては輸入の2~3割に該当。当時イスラエルは軍需品の輸入を禁止されていたが、ドイツからの補償物資は軍事産業の構築にも利用された。そして57年にはドイツと軍事的な秘密協定を結んでいる。

 2023年10月、ガザへの軍事侵攻を開始したイスラエル・ガラント国防大臣に対してドイツ・ビストリウス国防相は完全支持を表明、「物質的支援も含め、我々が支援できることならなんでも行う用意がある」と語り、3・5億ドルに相当する武器輸出を認めた。ストックホルム平和研究所によると、2023年のイスラエルの武器輸入の30%はドイツからのものだとされている。ドイツはガザへのイスラエルの軍事侵攻をハマスの奇襲攻撃にたいする「自衛の戦争」と呼び、軍事支援を行ったのである。だが、ハマスの攻撃が、長年にわたるイスラエルのパレスチナ人民に対する苛酷な支配への怒りと反発の結果であるということは完全に無視されたのである。

 ドイツ国内では、「イスラエルの安全と平和」は「国是」という名目のもとにイスラエルへの批判は「反ユダヤ主義」を扇動したとみなされてきた。2022年11月には、イスラエル国家の存在を疑問視したり、ボイコット運動を呼び掛けたりする団体や企画に対して公共の資金援助をやめるとする連邦議会決議(「反ユダヤ主義に対抗する決議」)が出された。決議は「今こそ二度と繰り返さない。ドイツにおけるユダヤ人の生活の保護、保全、強化」と題する政治声明を採択した。また決議はイスラエルの安全をドイツの外交・安全保障政策の原則とするとともに、連邦政府に対して、「イスラエル国家の存在と正当な安全保障上の利益のために積極的に擁護し続ける」ことを求めた(駒林歩美「週刊金曜日」2024・3・20)。

 こうした決議もあいまって、ドイツではイスラエルのパレスチナ人に対する野蛮な支配にたいして、抗議・反対したりする運動、団体は「反ユダヤ主義」を煽るとして政府からの支援を打ち切られたり、弾圧されてきたのである。

◇イスラエルのガザ弾圧を糾弾する

 イスラエルのガザへの軍事侵攻によって、すでに死者は5・4万人を超え、さらに生活物資搬入妨害によって無数のパレスチナ人は死と飢餓の危機に瀕している。

 これに対して、国連をはじめ、国際的なイスラエルに対する非難が高まっている。こうした中で、ドイツのメルツ首相は、5月26日、「イスラエル軍がガザで今やっていることは何が目的なのかもはや理解できない」と、イスラエル政府に苦言を呈した。

 だがこのメルツ発言はパレスチナの人々にとっては白々しく感じられただろう。現在の惨状を招いたのは米国、ドイツをはじめ欧米諸国がイスラエルを支援してきたことの結果であり、ドイツはイスラエル政府による「ホロコースト」に大きな責任を持っているにもかかわらず、このことに対する真剣な自己批判がみられないからである。

 ドイツはナチスのホロコーストを起こした責任を自覚し、二度と繰り返さないと宣言してきた。だとするならば、パレスチナでのイスラエル政権のナチスばりの野蛮な行為にたいして、真っ先に糾弾し、阻止する行動をとるべきである。ところが、ドイツ政府は、イスラエルを擁護することが「過去の克服」であるかのように言って、イスラエルに対して軍事的、経済的支援を行い、イスラエルが野蛮な軍国主義国家に成長することを後押してきたのである。

 ドイツ政府の言う「過去の克服」は、敗戦帝国主義国家がブルジョア国際社会に復帰し、帝国主義国家として復活・成長していくためのブルジョアジーのスローガンであったと言うべきである。 (T)

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