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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=2000円(+税)
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1508号 2025年10月12日
【一面トップ】 総裁選 先祖返りして高市選んだ自民党
        ――風雲急を告げる自公・国
【一面サブ】  自民に擦り寄る維新
        ――「副首都構想」で党勢復活を目す
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】 低賃金・極少賃上げに呻吟する医療・介護労働者
        ――大企業の増益と〝高水準〟5%賃上げの陰で
【二面サブ】  攻撃兵器・原潜導入も
        ――防衛省有識者会議の提言
       ※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

総裁選 先祖返りして高市選んだ自民党

風雲急を告げる自公・国

 4日に行われた自民党の総裁選に、高市、小泉、林、茂木、小林の5名が立候補し、予想に反し高市が選出された。決選投票で麻生派が党員票の多かった高市(党員票4割獲得)支持に回ったからであると言われ、「解党的出直し」を叫びながら旧態依然の派閥政治を印象付けた。そして、47都道府県のうち36都道府県支部が右翼高市を選んだ。自民党は参政党に票を奪われ「自民党は左傾化している」という疑念を右翼高市によって払拭しようとしている。

◇麻生が牛耳る高市新執行部

 参院選で自民党の岩盤支持層、保守層を参政党に奪われた危機感が、選挙戦の最前線である都道府県支部の高市支持となって表れ当選を決定づけた。「参院選大敗で地方を中心に、リベラル寄りの石破政権によって保守支持層の自民離れが起きたとの危機感が高まり、保守回帰のうねりが起きていた」(10・5朝日電子版)。

 高市は自らの「基本理念」で「日本を、守り抜きます! 高市早苗は、国の究極の使命は、『国民の皆様の生命と財産』『領土・領海・領空・資源』『国家の主権と名誉』を守り抜くことだと考えます」(高市のHP)をトップに掲げ、真正「国家主義者」であることを隠そうとはせずに、安倍路線継承を訴えてきた。

 24年衆院選、7月の参院選で争点となり自民敗北をもたらしたのは、移民・外国人問題、〝カネと政治〟裏金問題だった。派閥解散の申し合わせを無視し派閥を維持し続けてきた麻生派(43名)が、決選投票で高市支持に一本化したことが高市当選の切り札になった。麻生の高市支持は、高市政権で〝キングメーカー″として影響力を示すことにあった。それは、7日に発足した新執行部人事で明らかになった。

 党四役人事で「幹事長」は、麻生の義弟の鈴木俊一(72)が就任。麻生(85)より〝若く〟麻生引退後に身内での利権継承の思惑もある。「総務会長」は参院比例選出の有村治子で、支持団体は選択的夫婦別称、女性宮家創設に反対する「神道政治連盟」である。高市の立ち上げた政策勉強会に初回から参加している。有村は、石破退陣、総裁選前倒しの流れを作った8月8日の両院議員総会で、会長として仕切った。「政調会長」は総裁選の決選投票で高市支持に回った小林鷹之。「選対委員長」は総裁選で高市推薦の代表者の古屋圭司。古屋は右派団体である「日本会議国会議員懇談会」、「日華議員懇談会」(親台湾派)の会長を務めている。麻生は「副総裁」に就任。裏金議員・萩生田光一は「幹事長代行」に起用した。〝石破降ろし〟と〝高市担ぎ出し〟の「論功行賞」とも言うべき人事に他ならない。

◇安倍路線継承謳うアベノミクス高市

 高市は安倍らが97年に設立した「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」に参加。安倍と当選同期であり、伝統的な価値観―男女平等に異議、家父長的家族観や歴史修正主義、国家主義的立場(高市は刑法で「外国の国旗損壊等」は刑罰の対象なのに「日本国旗損壊等」について何の規定もないと、「刑法改正案」の再提出を企む)、安倍が殺害されてからは、安倍路線の継承を訴え、総裁選でも憲法9条改正、スパイ防止法制定、国家情報局設置、排外的移民対策、皇室典範改正、安保三文書見直し(軍事費GDP2%強)を掲げた。

 総裁就任後の記者会見では、積極財政主義で、自治体への交付金拡大(交付金は一時金ではなく、地方の中小企業の賃上げ助成や地方の公立病院の赤字補填など恒常的なものになる)、ガソリン暫定税率廃止、所得税基礎控除引上げ、「給付付き税額控除」の制度設計の着手などを表明した。

 財源については今後の検討課題と先送りしたが、これらの政策を実現するためには多額の財政支出が必要だ。積極財政主義、利下げ(アベノミクス)の高市の登場で7日の株価は3日連続で最高値更新、為替は1ドル150・57円の円安にふれた。

 「責任ある積極財政」の財源が赤字国債の際限なき拡大であれば、無責任なアベノミクスの二番煎じでしかない。すでに債券市場では、10年物国債利回りが6日に17年ぶりの高水準1・680%をつけた。「高市トレード」(高市政策の思惑取引)の急激な株価上昇はいつまでも続くことはない。高市政権の政治的混乱(連立の枠組みや自民党内の対立)がその引き金になるかもしれない。

 高市は「日本のサッチャー」を目指すと公言しているが、高市の政策はサッチャリズムの「財政支出削減」と真逆の積極財政である。高市自民党の誕生で、排外主義的ポピュリズムを競い合う政治に拍車がかかる。労働者は断固反対しなければならない。

◇きしむ自公連立、高市になびく国・民

 高市自民党と公明党とは、かつてない緊張関係にある。高市は「自公連立は基本中の基本」の立場で、就任直後、公明党の斎藤代表と会談し連立政権継続を呼びかけた。しかし、斎藤は「連立は政治理念と政策の一致が大前提。現状ではそれがすべて満たされる状況ではない。今後の対応を見守りたい」と、「靖国参拝が外交問題に発展したこともある」「政治とカネの問題」「外国人との共生」の三点について懸念を抱いていると述べ、「その解消無くして連立政権はない」と態度表明している。

 7日に行われた公明党の緊急常任役員会では、政権離脱論が相次いだと報じられている。離脱論が大きくなったのは、2回の国政選挙と都議選での公明党の敗北は、自民党の〝カネと政治〟が公明党に対する不信につながり敗北したと考えるからであり、軍事大国化・軍事費GDP2%を掲げ、中国と対峙する路線を進もうとする高市政権と、「福祉の党」と「平和の党」を金看板とする公明党の立場が大きくズレてきたという事であろう。

 斉藤から釘を刺されたのに対して、自民党新執行部は国・民との連立・連携協議で対抗している。

 5日には高市、玉木が〝極秘会談〟を行った。自民党が少数与党である以上、野党との連立・連携は不可避である。公明の議席は衆院24参院21議席で、国・民の議席は衆院27参院25議席である。

◇高市政権と闘う労働者の闘いを準備しよう

 労働者を搾取し支配する資本の国家である日本を守り抜くことが国の使命と考える高市政権打倒のために、団結して闘うことが労働者に課せられた使命であると我々は考える。労働者党に結集し共に闘おう! (古)


【1面サブ】

自民に擦り寄る維新

「副首都構想」で党勢復活を目す

 日本維新の会(以下、維新)は自民党総裁選中、「副首都構想」で党勢復活を図ろうと、総裁候補の本命と言われた自民・小泉に擦り寄った。しかし総裁選で小泉を破り勝利した高市は、維新に対して小泉ほどの熱はない。

◇維新の退潮傾向

 去年10月の衆院選で、自公は大きく議席を減らし、過半数に18議席足りない少数与党に追い込まれた。維新も告示前の44議席を6議席減らし党勢の翳りが見られた。馬場代表と藤田幹事長は、選挙の責任を取って退任、吉村が代表、前原が共同代表に選出された。

 さらに今年7月の参院選で、自公は合わせて47議席、非改選の75議席を合わせても122議席で、参院でも過半数に3議席足りない少数与党に追い込まれた。維新は改選5議席に対し7議席、非改選を合わせて2議席増の19議席となった。前回22年の参院選で得た12議席に比べると伸び悩み、比例の得票数は前回の約785万票から約438万票に激減。参院選不振の責任を取り8月、前原共同代表ら執行部は辞任、吉村代表は続投、藤田が共同代表に選出され、新執行部が発出した。

 自公政権が衆参で少数与党に追いやられる中、国民民主が躍進し、参政党や保守党など自民党以上に反動的なポピュリズム政党が進出。維新の退潮傾向は顕著だ。自公政権が労働者大衆の支持を失っているのは、大衆の生活苦の深刻化と裏金事件で露呈した自民の腐敗政治に対して怒りが向けられているからだ。「第2自民でいい」と表明し、自民となれ合うと見なされる維新も当然、大衆から見放されているのだ。

◇反動化する自民に加担

 しかし維新は去年12月、「総合経済対策」の裏付けとなる24年度補正予算案に自公、国民民主と共に賛成。今年2月には「高校授業料無償化」、「社会保険料を下げる改革」などを決め自公維3党合意し、維新は3月、25年度当初予算案に賛成した。与党寄りが顕著だ。

 25年度予算は115・5兆円、当初予算としては過去最高、歳出は国の借金の返済である国債費、軍事費は共に過去最大だ。労働者大衆が、物価高の中で実質賃金が下がり生活苦に陥る中で、財源もないまま借金を増大させ、それを当てに不生産的な軍事費を膨張させる、反労働者的な階級性が如実に現れた予算であったが、維新は予算案に賛成して、石破政権に擦り寄った。

 維新は総裁選の最中、提言「21世紀の国防構想と憲法改正」を発表。そして「スパイ防止法」の中間論点整理を行なった。また「副首都から起動する経済成長」と謳う「副首都構想」の法案骨子案をまとめ、維新独自の立場を押し出そうとした。

 憲法改正は、自民党と連携を見据え、日本の軍事増強への道を後押しするもの、「スパイ防止法」はこれと軌を一にし、排外主義を煽り、国内の反政府的な政治活動を抑圧するもので、これらに関し国民民主や参政党なども法制定などの排外主義的な動きを見せている。

 「副首都構想」は、過去2回の住民投票で否決された「都構想」の実現が前提だ。維新吉村は、連立政権入りの協議を打診された場合「協議するのは当然」、公約の社会保険料引き下げと「副首都構想」実現の協力が条件だとした(9月26日)。

 関西万博をどうにか無難に終えるとみる維新は、自公政権と組んで「副首都構想」実現を進め、党勢低迷からの復活を目した。大衆の支持を失いつつある自民に頼り、党勢を回復しようとするのだ。

 維新は「大阪都構想」で経済が発展するというデマゴギーで労働者大衆の幻想を煽り、労働者に犠牲を強い抑圧し、生き延びる資本の体制の維持を図ろうとする。労働者は自民に加担する維新を暴露し新しい労働者の闘いを切り開く。 (佐)


    

【飛耳長目】

★年度の折り返しの10月、価格改定や制度見直しなど多くが変わる。コメは備蓄米放出の効果は失せて5㌔4千円台。食品3024品目の値上げも食卓を襲う★3年前の10月、一定所得以上の後期高齢者の医療費負担1割を2割にした軽減措置の上限月額3千円がなくなり全て2割に。現役世代の負担軽減を名目にするが、後期高齢者の労働者は現役時代、税や社会保険料を源泉徴収され、応分の負担はしてきた。そのカネの使い方を不問に出来ようか★負担軽減策で、柔軟に働ける環境づくりのため、事業主に3歳から小学校入学前の子を持つ労働者に時差出勤や短時間勤務、年10日以上の支援休暇などから2つ以上の対応が義務化された。そして25年度の最低賃金が全国平均で前年度比66円のわずかなアップで1121円になり、10月から都道府県ごとに順次適用される★政府は20年代に1500円台を目指すとするが、ニッセイ基礎研究所の金明中氏は「国際的な基準の平均を大きく下回っています」と断じる(『毎日』9・18)。EUでは「22年に採択された指令で、最低賃金は労働者の賃金中央値の6割とすべき……。22年時点で仏国と韓国は中央値の6割を超える一方、日本では45・6%」に過ぎないと言う★賃上げは労働者が資本家から闘い取るもの、「政府に期待する」のは〝お門違い〟だ。 (Y)


【2面トップ】

低賃金・極少賃上げに呻吟する
医療・介護労働者

大企業の増益と〝高水準〟5%賃上げの陰で

◇時給7円(月1200円)アップでは生活維持できない!

 今春闘において医療・介護職場で組織された愛媛県のN労組は経営側に対し、賃上げ月20500円以上の要求等を申し入れ、5回の団体交渉を重ね現在交渉継続中である。

 経営側は、病棟併設診療所1、外来診療所2、デイケア、グループホーム、居宅介護支援センター、サービス付き高齢者向き住宅3、訪問看護ステーション、定期巡回訪問介護等合計30事業所を運営。全職員500名、うち200名は60歳以上で一年契約の嘱託者、また500名中週32時間労働以下のパート者は270名である。

 回答は平均月1200円アップ、これでは米価に象徴される物価高騰に全く対抗できない。もともと賃金水準が高いわけでもなく、東京や大阪など大都市に比べ住宅費が安い以外は、物価はたいして変わらない。現在、平均基本給は約197100円、アップ率はわずか0・6%だ。厚生労働省昨年6月発表の高卒者初任給は199800円。職員の平均年齢は56歳であり、2000年4月に開始の介護保険事業や、それ以前の医療保険に組み込まれていた老人デイケア担当以来のベテラン介護職も多い。

 介護職員改善手当が増額されてきたとはいえ、彼女・彼達の基本給が高卒者初任給より低額なのは極めて不当だ。このような低賃金で離職者が全体(500人)で昨年48人いたのも頷ける。約1割近くが辞めていくのである。

◇最低賃金額に張り付く仲間急増中

 経営側は借金を重ねて設備投資をしたものの、医療・介護報酬の改変や利用者減で見込んだ収入が得られず、事業規模は拡大したが減価償却費が嵩み赤字決算が続いた。そのツケを労働者に押し付けた結果、賃上げ時給7円~10円が2008年以来続いてきた。

 ところが、物価高騰を反映した最低賃金額急増(24年956円で前年+59円、25年1033円で同+77円)によって職場最低賃金が追い越された。

 経営側は最賃額に抵触した職員(昨年38名)には法違反を避けるべく最賃額との差額を支給、基本給が最賃を1円でも上回る職員には相変わらず平均時給7円昇給で済ますという賃金政策をとってきた。

 最賃対策に昇給原資の多くを割いて、ベテランには時給7円アップで対応する低昇給路線が続くとすれば、今年県の最賃は77円アップなので、新人の賃上げスピードは11倍(額はともかく)。2年後には新人が20年先輩の賃金に追いつく。結果として職員の多くの賃金が「最低賃金額」に張り付く。

 2025春闘アンケートの自由記入欄には「長年働いてきた職員の給与は大きな見直しがなされず、新人との差がなくなってきている、今まで働いてきたのがなんだったのか」と書かれていた。

◇最低賃金制度は階級闘争を忘れさせないか

 自公政権が最賃時給1500円を目指すと言い、また7月の参院選では共産党(中小企業の直接支援で賃上げ、最低賃金ただちに1500円、選挙公報)など多くの政党が最賃アップをかかげた。

 労働力の再生産費が賃金だが、ここ数年の物価高騰は特に中小企業経営者にそれに見合った賃金支払を困難にさせた。

 本来、賃上げは労働組合がその団結した闘いで経営側から勝ち取るものであり、階級闘争の一環である。今年5%以上の賃上げを得た大企業労組はかつてストライキを含む闘争で企業(資本家)から譲歩を勝ち取ってきた。

 労組組織率は昨年16・1%と過去最低を更新し、賃上げ交渉ができる立場の労働者はおよそ6人に一人、中小企業ではその割合はずっと少ない。

 最低賃金制度は個別労使交渉での力関係とは別の最低賃金審議会(中小資本家、労働組合、公益の三者で構成)で審議され、答申結果は法的拘束力をもつ。多くの未組織の低賃金労働者に対する福祉政策として若干機能することにはなるが、「労働力の再生産費」に程遠い「最低賃金」に満足する労働者はいない。

◇最低賃金制度に抗う経営者達

 N労組の職場では、2008年作成賃金表はそのまま現行であり、初任給最低額132500円(時給770円)で、11年後の2019年時点で最賃額790円を下回り、労基法に抵触していると組合側は経営側に指摘した。それに対して「介護職員処遇改善手当分」を基本給に足すことで問題なし」のおざなりな態度をとった(介護職員から問い合わせがあったらそう答えよとの介護職場長あての文書の存在あり)。

 事実、最近ネット上では社労士事務所等が介護事業者に「厚労省は介護職員処遇改善手当の本来の趣旨は基本給の底上げに使うべきで好ましくない と言っているが禁止だとはいっていない」として「算入」を勧めている。「最低賃金抵触部分への算入は禁止されていない」との解釈で、労基法に抵触していようが、飛びつく介護業者は存在するだろう。

 事業所では、処遇改善手当の最賃対策への「算入」を現在止めているが、昇給に処遇改善手当の9割を流用、それも累計で年1000円昇給が10年続いたら10年累計で10X1000=10000円、その9割である9000円を毎月の処遇改善手当から基本給増額に流用している。春闘では以前から「流用を止めて全額を介護職員処遇改善手当として支給せよ」との労組要求を理事側は拒否している。

◇医療・介護分野の展望

 医療・介護は資本の政府の福祉政策として、保険制度で運営されているが、日本資本主義の衰退とともにその破綻が顕著になっている。保険料値上げと負担率の引き上げはセットで実行されてきた。「負担」を懸念して「医療受診」「介護利用」の「手控え」が新型コロナ流行期から増えている。

 利用者「手控え」はN労組の職場に限らず低賃金による人件費圧縮で設備投資を繰り返し経営を赤字転落させた。介護報酬の増額が経営危機の決め手になるか。介護報酬の大幅増は利用料金の増額であり、利用者の負担増となる。それでは「利用手控え」増となり経営が上向くか疑問である。また、介護報酬を増額するより軍事費増強に費やす現実があり、その傾向は自公政権のもとで拍車がかかっている。

 そもそも介護は生産部門(新たな富を生産)ではなく消費部門である。資本家にとって本質的には介護は空費(むだづかい)である。ただ、人口的には多数派の労働者階級を慰撫する政策として採用されている。人類の特性として「老いていく」仲間への介護は、利潤目的でなく自然な相互扶助として行なわれる、原始共同体時代のごとく。

 そんな時代を見据えて働き甲斐のある将来に希望のもてる労働条件を提供せよ! と訴えよう、そして、労働条件改善のための闘いと結び付けて、賃金制度を克服する労働者の階級的団結をうち固めることを意識的に追求して、労働の解放を勝ち取ろう。 (愛媛 FY)


【2面サブ】

攻撃兵器・原潜導入も

防衛省有識者会議の提言

 22年末策定された戦略3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)に基づく「防衛政策」立案のために設置(24年2月)された、経団連名誉会長・榊原定征を座長とし、元防衛大臣や元自衛隊幹部、学者らをメンバーとする、「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」の提言が9月19日に発表された。提言は、世界的軍拡競争の激化を理由に、軍事費の大幅な増加、攻撃的兵器の充実・整備、兵器製造の国営化、武器輸出の制限撤廃など軍事力を一新させるような危険な内容を盛り込んでいる。

◇攻撃的な軍事力の強化・推進

 提言は、ロシアによるウクライナ侵攻、ロシアと北朝鮮との軍事同盟、中国とロシアの連携、トランプ政権の登場、AIなど新技術を利用した軍備拡大競争・覇権争いの「激化」などを挙げて、現在の状況を「戦略3文書策定時とは次元が異なる様相を呈している」と特徴づけている。

 こうした中において、まず提言が挙げているのは「反撃力」の強化である。ロシアとウクライナの戦争などを挙げてAIを活用したドローンなど無人兵器の開発が強調されている。提言は「抑止」のための無人兵器の開発という。しかし、実際には相手が攻撃を思い留まるような兵器が必要と言っているように、「抑止力」「反撃力」の名で「攻撃的」な兵器開発・整備の充実がうたわれているのである。

 そしてさらに見逃せないのは、海洋進出が著しい中国への対抗を理由に、垂直発射装置(VSL)=長距離ミサイルを搭載し、隠密裏に長距離・長期間の移動や潜航できる潜水艦の建造である。そしてこのためには「従来の例に捉われることなく、次世代の動力の検討も含め、必要な研究を進め、技術開発を行っていくべきだとしている」。

 議論の中では「次世代型動力」について、原子力も含まれるという話もでたという。これまで歴代の政府が「原子力の平和利用」と言ってきた「建前」も捨て去り、原子力の軍事利用も視野に入れているのである。

◇偽りの「軍事と経済の好循環」論

 その他提言は、軍事技術・生産基盤とサプライチェーンの強化や軍事装備品の移転の拡大推進などをあげている。

 軍事技術・生産基盤とサプライチェーンの強化についは、日本では中小企業への依存度が高く、企業独自の資金力では研究開発は進まないとして、企業の集約化を促すとともに、「国営の工廠の導入」も検討すべきだとしている。

 かつて明治政府は兵器の「外国への依存からの独立」として、国営の軍需工場(「工廠」)を設立し、国家が自ら兵器の開発・製造を行ったが、再び戦前のように国家の軍需工場を作ろうと言うのだ。

 軍事装備品の移転拡大については、現在、外国に輸出することができるのは、救難や輸送などの5類型に該当する場合に制限されている。しかし、提言は「他国の脅威を受ける同盟国・同志国」については「制限を取り払うのも一案だ」として、兵器の輸出解禁を謳っている。

 軍事技術・生産基盤の強化及びサプライチェーンの強化のための国直轄の軍事工場の設立、軍事装備品の海外輸出の拡大など、全般的な軍事力増強について、提言は「大砲かバターか」と二者択一的ではないとか「負担増・コストと考えるべきではなく」、民生用技術の開発・発展、貿易輸出の増加、雇用創出など経済発展をもたらす契機となり、生活の安定と向上に役立つ、「軍事と経済の好循環」をもたらすと考えるべきだと訴えている。だが破壊と人間の殺傷をもたらす戦争のための軍事力の強化は浪費以外のなにものでもないのは明白だ。

 提言はインターネット技術は軍事的な必要から生まれたといって、「軍事と経済の好循環」論を正当化している。だがそんなことは全くのデタラメである。戦争がなくても、人々の生活改善と向上に向けた技術開発は行われるだろう。むしろ現在の資本主義社会のように個人や企業の金儲けや戦争のために技術開発を行うよりも、搾取を廃止し、諸個人が社会全体のために協働し、それぞれの能力を発揮することが可能となる社会こそが、より豊かで高度な生活をもたらす革新的な技術が発展するだろうことは誰でも容易に想像できることである。

◇深化する日本帝国主義の頽廃と反動化

 提言は、「現在の国際社会では、過去にもまれなスピードで、政治、経済、軍事の面で大きな変化が同時に多発的に起こりつつある……歴史的な節目」にあるとし、こうした中で日本は日米同盟を基軸としながらも、米国依存ではなく、日本が主体的に、EU諸国やアジア諸国と連携を強化し、軍事力の拡大・強化に邁進していかなくてはならないと述べている。軍事力の飛躍的強化は、権益の維持・拡大のための帝国主義日本の国家と大資本の要求である。

 軍備拡大は米国の押し付けであり、日本が米国の戦争に巻き込まれる危険が増すという共産党の主張は、帝国主義国家日本の反動化・頽廃から目そらせ、日本の国家、大資本を免罪し、労働者の階級闘争を解体させる民族主義的、日和見主義的議論である。労働者は一切の民族主義・日和見主義と手を切り、大資本とその国家に反対し階級的に団結し、闘いを発展させなくてはならない。 (T)

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