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●1514号 2026年1月11日 【一面トップ】増える社会負担と軍備拡大 ――新年度予算は122・3兆円と過去最高 【一面サブ】 新規国債を少額に改ざん! ――国債発行予定額は3・8兆円増 【コラム】 飛耳長目 【二面トップ】 衣を替えただけの「徴用工制度」 ――外国人技能実習制度から育成就労制度へ 【二面サブ】 米国のベネズエラ軍事侵攻糾弾! ――解き放たれた暴君トランプ ※『海つばめ』PDF版見本 【1面トップ】増える社会負担と軍備拡大新年度予算は122・3兆円と過去最高高市政権は、一般会計で過去最大となる来年度当初予算案を決定した。高市は「責任ある積極財政」による「日本列島を強く豊かにするための予算」と言う。しかし、実際はバラ撒きと軍事偏重であり、そのツケは将来の労働者、働く者の負担となるのは必至である。 ◇高市政治「安定」のためのバラ撒き策歳出については、〝政治的安定〟のためと称して連携した、維新や国民民主の要求が予算化されている。 具体的には、維新、公明(後、与党を離脱)と結んだ高校授業料の無償化(今年4月より実施)である。私立(全日制)の生徒への支給上限は年収によって11・88万円~39・6万円であったが、所得制限をなくし、一律で45・72万円を支給する。予算規模は6174億円。それと共に、教育にかかる家計軽減策として、公立小学校給食無料化に1649億円計上。これも所得制限なしである。生活にゆとりのある豊かな家庭も含めた授業料や給食費の無償化政策は、有権者の歓心をかうためのバラ撒き策でしかない。 一方、歳入についても、国民民主との提携のための「合意」で、「物価騰貴対策」として所得課税最低限(「収入の壁」)が160万円から178万円に引き上げられる。これによる年間の減税額は年収200万円~600万円の人で0・8万円~3・7万円となり、税の減収額は年間約6500億円と推計されている。 だが、確かな財源の当てもないこうしたバラ撒き策は、物価騰貴をもたらす一因となっている。「物価対策」と言いながら、他方では物価騰貴を促進する政府の政策は矛盾しており、非課税の低所得者は勿論、スズメの涙ほどの減税が行われたからといって生活困難を打開するものではない。 ◇給付の抑制と負担増加の社会保障歳出で最大の社会保障関係費は39・1兆円と、25年度当初予算と比べて2%増となった。しかし、物価上昇の3%以下であり、予算では「現役世代の負担軽減」を理由として、給付の抑制と利用者負担の増加が行われる。 その内訳は、患者の負担を抑制するため医療費の月額上限を定めた「高額医療費制度」の見直しで、26年と27年の2回に分け、負担上限額を7~38%上げ、年収650万円~770万円では、上限額を算定する際の基準額が現行の8万110円から11万400円になる。 70歳以上で自宅療養している患者の「外来特例」の負担上限も引き上げられる。「外来特例」は年収370万円以下の人に対して、外来受診の人の医療費よりも低い特例を設けており、住民税非課税世帯を除き月1・8万円であるが、この上限を年収が約200万円以上では2・8万円、約200万円以下では2・2万円に上がる。住民税非課税世帯も現行の0・8万円から1・3万円に上がる。 薬の患者負担も見直しされ、医師の処方箋が必要な医薬品のうち、市販薬と成分など同一のものがある「OTC類似薬」は薬剤費の25%を「特別料金」として患者の負担となる。残りの75%は保険が適用され、自己負担は1~3割。これらはまず77成分、約1100品目を対象として、26年度に法案提出、27年度から実施の予定である。診療費や医薬品の負担増は低所得の高齢者、家族にとって大きな負担となる。 維新は、「OTC類似薬」を保険適用除外とすれば、医療費を1兆円規模で削減できると言ったが、高齢者にとって身体の故障が多くなるのは自然のことで、「現役世代の負担軽減」を理由に、高齢者に負担を押し付けるのは暴論だ。必要なことは、老齢になって身体の故障が少なくなるよう、現役世代の生活・労働環境を整備することである。 ◇軍事費は初の9兆円を突破軍事費は9・3兆円(予算の7・3%)と、当初予算として初めて9兆円を突破した。そして26年中に安保関連3文書を改訂し更なる軍備増強に突き進もうとしている。 軍事費の主要な内容は、ドローンなど無人機を使った新たな防衛体制の構築(1001億円)や、敵の射程外からミサイル拠点を攻撃できる「スタンド・オフ・防衛能力」の強化(9733億円)、陸上自衛隊駐屯地には「地対艦誘導弾」改良型発射装置(1770億円)。その他、迎撃が難しいマッハ5で飛ぶ「極高速誘導弾」(301億円)を計上。海上自衛隊では新型護衛艦(1043億円)、潜水艦(1208億円)など。「専守防衛」「自衛」はとっくに死語となり、自衛隊は最新兵器を装備した攻撃的、強力的な軍隊となっている。 英、伊との共同の次期戦闘機開発に続いて自民、維新は輸送・警戒など「5類型」に制限された「武器輸出」の規制撤廃に動き出し、高市首相は「安全保障と経済成長の好循環」を掲げ、軍需産業分野への支援を打ち出している。しかし、人の殺傷と破壊のための軍需産業が経済発展をもたらすというのは欺瞞だ。 既に巨額の軍事費を賄うために、26年度より財源として法人税とたばこ税の増税に加え、所得税の増税を決めた。東日本大震災の復興特別所得税2・1%のうち1%を充てるという。新たに所得税増税がないかであるが、そのために復興所得税は10年間延長されるから増税するのと同じた。こんなペテンで取り繕うのが高市政権の政治である。 ◇反動高市政権打倒に立ち上がろう高市政権は更なる軍備増強を進めようとしている。国の借金が増加することは避けられない。すでに、借金返済の国債費は歳出予算の4分の1超、31・3兆円である(債務償還費18・2兆円、利払費13・1兆円)。国債の買い手は銀行や富裕階層であり、彼らは何もしないで13兆円もの利子を懐にしている。収入不足のため新たに発行する国債は今年度当初より0・9兆円多い29・6兆円。国の支出のうちの4分の1が借金の返済に充てられ、一般会計では新たに30兆円弱の借金をしなくてはならない。国の財政は火の車で、国債残高は1129兆円(25年度末)。このまま軍事費が増加すれば借金は積みあがるだけである。その負担は、労働者働く者にしわ寄せされ、生活がますます困難になることは避けられない。 (T) 【1面サブ】新規国債を少額に改ざん!国債発行予定額は3・8兆円増高市政権の「積極財政」によって、新規国債発行額が増え財政不安が高まるかもしれないとの声がマスコミから出ていた。それを意識した高市は、新年度の一般会計に計上する新規国債発行額を30兆円以内に抑えて「財政規律にも配慮できた」と胸を張った。だが、それはまやかしだった。 ◇会計改ざん操作新年度(26年度)の一般会計予算案を見ると、予算規模は122兆円と過去最大に膨らんだものの、新規国債発行額は昨年度とほとんど変わらない29・6兆円(0・9兆円増)となり、30兆円超えが阻止された。その理由は、次の様なものである。 高市政権発足を契機に国債の市場利回りが急ピッチで上昇し(国債の不人気、国家信用が毀損している現れ)、日銀の利上げでも円安から円高に進まず、その上、今回の一般会計予算によって「財政規律への不信」が膨らむことを恐れたからである。強気な財政膨張論者に見られることを隠したいという気持ちも高市にはあったであろう。 予算成立を図るために維新や国民民主を抱き込み、予算規模が膨らんだ。それなのに、なぜ、国債の新規発行額を抑えることができたのかと、読者の皆さんは不思議に思ったであろう。 税収見込み額を大幅に増やして予算編成をしたが、それでも、新規国債発行額が30兆円を超えることが分かり、高市は会計改ざん操作を財務省官僚に命じたのである。これが事の始まりであったことをロイターは年末の29日に配信していた。 高市と財務省官僚による会計操作は、以下のごとくである――財務省も新規国債発行額を抑えるために会計操作をしたことを隠し通せないと判断したのであろう。「財務省理財局」の名で「交付税及び譲与税配付金特別会計借入金の償還計画の変更及び一般会計への債務承継について」(25年12月25日付)を公表した。 新規の国債発行額を抑えるために、まず、上記の特別会計(以下、「交付税特別会計」と略す)で予定されている26年度の借金返済額を意図的に増やし(当初の0・7兆円から2・9兆円に増額)、その中から0・7兆円を一般会計に移して財源にし、国債発行額を減らすというものだ。しかも、増額分から0・7兆円を差し引いた残りの2・2兆円が何に使われるのかは依然として不明のままだ。 元来、「交付税特別会計」は、地方公共団体に対して、一般会計予算から配分するために作られた整理基金である。だが、バブル崩壊以降、税収が不足し歳出が膨張したために配分が困難になった。その不足分を民間資金や財政投融資特別会計などから借入れ、今までどうにかやり繰りしてきた。そのため、この会計の借金残高は25年度末で25・5兆円にもなる。 それにもかかわらず、高市は自己保身のために会計操作を財務省に押しつけ、一般会計の国債発行額の膨張を抑えたのだ。 ◇26年度の国債発行総額は増大しかも、「経済対策」としてGXや半導体・AI支援を決め、また子供支援の予算を組んだのに、これら3項目の国債発行額2・3兆円を一般会計から外して特別会計に移している。このやり方は、高市政権誕生後に行った補正予算国会で承認されていると強弁するであろうが、マスコミで報道される一般会計の国債発行額を小さく見せるための詐術に他ならない。この2・3兆円と「交付税特別会計」から移した金額を合計するなら3兆円になる。 それでは、念のために「26年度国債発行予定額」を見てみよう。一般会計の新規発行国債29・6兆円に、特別会計で発行する国債(借換債135・8兆円を含む)を合計した「国債発行予定額」は180・7兆円であり、昨年度の当初「予定額」より3・8兆円も増えている。「国債発行額」を全体で見れば、高市がやった会計操作は労働者を騙す詐術であることが一目瞭然となる。やはり食わせ者だよ、高市は! (W) 【飛耳長目】 ★年末年始は食料品や交際費の出費がかさみ、節約にも限界がある。せめて、まとまった休日で心身の疲れを癒すことが出来たとするなら幸いである★人手不足が続く雇用情勢だが、アベノミクスの負の遺産=非正規雇用拡大の勢いは収まらない。04年1555万人、非正規雇用率29・2%が、24年には2126万人、36・7%に拡大。求人に占める非正規率も37%前後を推移。内訳はパート・アルバイトが最多、次いで契約社員・派遣社員。女性が主だったが、男性の割合も増加傾向だ★それだけではない。15~24歳の若年労働力人口が減少傾向にあるのに、非正規雇用で働く若年層は約30万人も増加し、日々の暮らしに四苦八苦するワーキングプアとして喘いでいる。彼ら、彼女らは、低賃金と不安定な雇用で結婚・出産に踏み切れず、少子化傾向に拍車をかけ、24年の出生数は初の70万人割れ、東京の合計特殊出生率は全国最低の0・96となった★企業の内部留保は23年度末に初めて6百兆円を超え12年連続で過去最大を更新中。株価も25年に26・18%高、3年連続の大幅上昇★「資本とは、生きた労働を吸収することによって吸血鬼のように活気づき、しかもそれをより多く吸収すればするほどますます活気づく、死んだ労働である」(『資本論』1巻8章「労働日」)。 (Y) 【2面トップ】衣を替えただけの「徴用工制度」外国人技能実習制度から育成就労制度へ外国人労働者を一つの受け入れ企業に縛り付け奴隷のように使う「技能実習制度」は、2027年4月に「育成就労制度」に代わることになり、その運用方法が政府有識者会議で検討されている。しかしそれは労働者の移動と就労の自由を制限するもので、戦前の朝鮮半島労働者の「徴用工制度」と本質的に変わらないものだ。 ◇外国人受け入れ体制の変遷日本への外国人労働者の受け入れは、在留資格「留学」のもとで「技術研修生」として受け入れた1981年の「外国人研修制度」が始まりだ。90年には独立した在留資格「研修」が設けられ、93年に「研修」に加え、在留資格「特定活動」の一類型として「技能実習」が設けられた。滞在期間は当初は「研修」1年、「技能実習」1年で最長2年間だったが、97年には最長3年間(2017年に最長5年間)にまで延長された。 外国人労働者受け入れは、当初から人手不足の解消のためであったが、労働法令の適用外の「研修」にされ、「技能実習」は労働法令が適用されたが、転籍が認められない等、労働者の権利は奪われたのであった。しかも技能実習生は、受け入れ先(企業単独と監理団体)を指定された「在留資格者」に過ぎず、受け入れ先との労働条件の改善要求もできず、その後の転職の自由もなく、賃金労働者としての権利も与えられていないのだ。 2010年には「研修」が廃止され「技能実習1号」に、特定活動(技能実習)は「技能実習2号」に代わり「技能実習」に一本化された。実務に従事する期間はすべて労働者として扱われることになった。しかし労働者の過酷な搾取状況は変わらなかった。 19年には「特定技能」という在留資格が設けられた。技能実習制度は「技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う人づくりに協力することを目的」とすると言うが、外国から単純労働者を受け入れたいのが資本の本音だ。特定技能制度では「人材の確保が困難な一部の産業分野等における人手不足に対応するため、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材を労働者として受け入れる新たな在留資格」とし、これまでの「人材育成」を離れ「即戦力の人材確保」として外国人労働者の受け入れを認めた。 特定技能は、深刻な人手不足と認められた16の特定産業分野において、外国人労働者の就労が認められている。現在、就労数が多い順に飲食料品製造、介護、工業製品製造、建設、外食、農業など16分野で、約33万人(25年6月)が就労している。「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」を要する1号と「熟練した技能」を要する2号があり、共に試験等がある。転職は、1号、2号は可、在留期間は、1号は通算5年、2号は上限なし、家族帯同は、1号は不可、2号は可などの違いがある。 ◇育成就労制度とは24年6月に交付された「育成就労法」は、27年4月から施行される。これまでの外国人労働者の受け入れ制度の外国人技能実習制度を廃止し、育成就労制度に替える。在留期間は原則3年で、転籍は同じ分野なら1~2年で可であるが、家族帯同は依然として不可だ。そして日本語能力及び能力検定の要件が加えられている。 政府は今後、育成就労を特定技能と一体的に運用し、在留期間が原則3年の育成就労から、最長5年在留できる特定1号、そして期間の更新に上限のない特定2号への移行を想定している。育成就労は、外国人労働者を単なる受け入れから、積極的に「誘致」し、労働者を長く働かせ、効率よく剰余労働の源泉として搾取したい資本の要請に沿ったものだ。 ◇規制強化の高市の外国人政策高市政権の下、「外国人との秩序ある共生社会推進室」が25年11月に、第1回関係閣僚会議を開催した。高市はその中で、「外国人による違法行為やルールからの逸脱に対し」「政府として毅然と対応」するとして、「不法滞在者ゼロプラン」の強力な推進、在留資格審査や帰化の厳格化、社会保障制度や外国人学生・留学生への支援見直しなどを指示した。 高市は「排外主義とは一線を画し」などと言うが、その外国人政策担当相に排外主義をあおってきた小野田紀美を抜擢し、外国人労働者に対して、剰余労働を得ることを目的とする資本の都合に沿った、反労働者的な規制強化、厳罰化を目論む政策を取ろうとしている。 現在の「技能実習制度」は27年には「育成就労制度」へ改変されるが、政府は「育成就労」について、自民党高市や参政党などの外国人労働者受け入れに反対する反動勢力の排外主義的な主張を考慮し、開始から2年の受け入れ上限数を約42万6千人とする案を検討している。既存の「特定技能1号」とあわせ、受け入れ可能な人数は約123万人となる、在留資格の「総量規制」を設けようとしているのだ。 その他、外国人が日本国籍を取得する際の居住期間について、国籍法では「5年以上」と明記してあるものを、運用で「原則10年以上」に引き上げること、そして永住許可についても、新たに日本語能力を求めるなど、厳格化が進められようとしている(朝日12月22日)。 外国人政策の厳格化は、自民党が維新と連立政権を組み、その連立合意で維新の主張を取り入れる形に沿って現れているが、25年参院選で「日本人ファースト」を掲げた参政党が党勢拡大し、自民もその排外主義的政策を打ち出しやすくなったのだ。 参政党は、「事実上移民を受け入れる門を開くことは明白である」、外国人を受け入れることは「社会コストの増大や問題の解決困難な状況」を招くと、育成就労法に反対した。外国人労働者は社会的労働により資本や日本社会に寄与しているのであり、「社会コストの増大」は参政党の排外主義的な悪質なデマの一典型だ。 資本は長引く経済低迷期を通して、労働者を低賃金や非正規労働に追いやり、大きな利益を蓄積し、資本輸出で海外の労働者の搾取を拡大させ、また多くの外国人労働者を日本に呼び入れ、搾取を増大させている。 労働者は、世界の労働者そして日本の外国人労働者と連帯し、労働者の自由を奪い抑圧し搾取を強める資本との闘いを強化していこう。 (佐) 【2面サブ】米国のベネズエラ軍事侵攻糾弾!解き放たれた暴君トランプ◇トランプによる〝軍事クーデター〟トランプは3日、ベネズエラのマドゥロ政権に対する「大規模な軍事侵攻」を行い。マドゥロ大統領夫妻を拘束・拉致し、3日夕方NY州の空港に護送した。この軍事侵攻は、数か月前から入念に準備――厳重に防護された邸宅を再現し突入訓練を繰り返し、マドゥロ大統領夫妻の日々の行動を把握――し、圧倒的な軍事力でベネズエラの防空網を破壊しサイバー攻撃で作戦地域の街路灯や通信を遮断し、特殊作戦部隊「デルタフォース」が大統領邸宅に突入し夫妻を拘束・拉致し作戦開始から16時間後には、NYの連邦拘置所に収監した。この軍事作戦は、〝麻薬流入対策〟の「司法権の行使」(20年にマドゥロに対する逮捕状を出している)といった生易しいものでない。 我々は、『海つばめ』(1512号)で、米国の帝国主義的立場を特徴づけた「国家安全保障戦略」(NSS)について論じ、西半球を米国の勢力圏として囲い込み、「カリブ海に原子力空母を派遣、ベネズエラの輸送船を空爆し、トランプ政権に反発するマドゥロ政権を脅迫し、屈服させ、米国に協調的な政権の樹立を狙っている」と指摘。トランプが実施したのは、反米のマドゥロ政権転覆で、米軍による〝軍事クーデター〟に他ならない。 ◇ベネズエラは我々の領域だ!トランプは「大規模な攻撃を実施し、成功した」後の記者会見で、「安全で適切、賢明な政権移行が実現するまでその国(ベネズエラに)を運営していく」と、米地上部隊の派遣を想定した発言も行った。トランプはイラクなどの泥沼化した戦争でオバマ、バイデンを批判し、外国での戦争に直接介入することに〝慎重〟な姿勢をとってきた。 トランプを支持するMAGA派の〝忘れられたと感じる地方の白人〟や〝低所得労働者〟が求めるものは、物価高や雇用、生活苦などの解決に取り組むことであって、ベネズエラのマドゥロ打倒ではなかったからだ。ましてや[トランプが戦争を終わらせる]大統領と信じて投票した有権者にとってはなおさらである(11月のロイターの調査では、「マドゥロ退陣に武力行使を支持」は2割)。 しかしトランプはMAGA派のこのような意見に対して耳を貸そうとはしていない。4日、中東への軍事介入批判とベネズエラ攻撃との整合性を問われると「(批判してきたのは)地球の裏側の国への介入だ。ベネズエラは我々の領域だ。それが(西半球での権益確保を追求する)『ドンロー・ドクトリン(「ドナルド・トランプ」とモンロー宣言を合わせた言葉)』だ」と述べた。 ◇トランプの目的は 石油その先は…?ベネズエラでは、99年の大統領選で反米左派のチャベス大統領が誕生し、石油産業国有化などの〝社会主義的〟政策によって、07年に米国の石油メジャーが投資した製油所などは接収され、撤退を強いられた。トランプはこれを「彼らはそれを盗んだ。我が国の歴史において最大級の米国資産の窃盗に当る」(ブルームバーグ1/5)と主張する。トランプにとっては、西半球は米国の勢力圏で、裏庭である南米は米国の核心的な利益である。 米国第一主義は、あらゆる手段で米国の国益を追求することであり、ベネズエラ攻撃は「目的を明確にして戦力を投入する」(バンス副大統領)米国第一主義に他ならない。その目的は、3千億バレル超(世界最大)の埋蔵量を誇る石油資源を米国石油メジャーが生産と開発を独占することである。現在のベネズエラの原油生産量は日量約86万バレル(11月)で、最盛期(97年12月の日量は345万バレル)の4分の1程度に落ち込んでいる。 チャベス政権は、高い石油価格に安住し石油輸出の売り上げを、国民懐柔のポピュリズム政策に支出し、大統領や官僚、軍幹部はブルジョアと癒着し権力を私物化し財政は膨張をつづけた。 財政膨張が続く中で08年のリーマンショックで石油価格は急落し、財政赤字を埋めるために通貨が大増発され、18年には年率13万%のハイパーインフレになるなど経済は破綻。数百万人もの国民がベネズエラから難民として外国に避難している。 チャベスの後を引き継いだマドゥロの下でも年率数百%超のインフレが続き、マドゥロ政権は国民大衆の不満を暴力的に抑圧し政権を運営してきた。マドゥロ体制はベネズエラの労働者人民にとっては怨嗟の対象でしかない。トランプにとってマドゥロ拘束は、石油資源を独占するために「非西半球の競争相手(中露)が…戦略的に重要な資産を所有・支配したりすることを否定」(NSS)し、奪われた米国の利権を取り戻そうとする勝手な、帝国主義的蛮行に合法性を与えるための逮捕劇に他ならない。 ◇次はコロンビアか グリーンランドかトランプがプーチンのウクライナ侵略に対して曖昧な態度に終始するのは、ウクライナをロシアの一部とみなすプーチンの立場をトランプも共有するからである。習近平の核心的利益である台湾問題にトランプがあえて踏み込まないのも同じだ。 トランプは、都合よく大国同士はディールで交渉し、米国の勢力圏では軍事力の行使をためらわない。中国はベネズエラと緊密な関係を持ち、米国による攻撃の数時間前までマドゥロと中国の関係者が会談をしていたが全くお構いなしである。 ベネズエラから安い石油を入手できなくなるキューバに対してもさらなる圧力をかけようとしている。コロンビアのペトロ大統領に対しても、軍事作戦を匂わせた。裏庭の南米ばかりか4日には、「グリーンランドは絶対に必要だ」と繰り返し米国の領土に獲得する意思を改めて示した。トランプが、ベネズエラに対する軍事攻撃で米国の軍事力を過信し、戦線を拡大し泥沼の戦いに引き込まれるか、人類を破滅に追いやる様な核を振りかざすチキンレースに乗り出す可能性さえも考えられる。 高市は4日、「ベネズエラにおける民主主義の回復及び情勢の安定化に向けた外交努力を進める」と、トランプに忖度し、日和見を決め込んだ。 トランプの蛮行は高市やEU各国を困惑させ、プーチンや習近平は表向きの批判とは裏腹に〝成功〟したトランプに倣ってより好戦的で威圧的な行動をとるだろう。労働者階級は高市らが叫ぶ中国脅威に与して挙国一致に流されるのではなく、世界中の労働者との連帯を求め、資本家政府の戦争政策を糾弾し闘おう! (古) | |||||||||||