●1521号 2026年4月26日
【一面トップ】 改憲、軍拡に向け拍車 ――自民党大会開かれる
【一面サブ】 矛盾する外国人労働者政策 ――就労の自由など労働条件の改善を!
【コラム】 飛耳長目
【二面トップ】 翻弄される自動車産業で持ちこたえるトヨタ ――トヨタの労使は何を話し合うのか
【二面サブ】 人間差別を権力維持に利用 ――帝国主義国家に相応しい皇室描く
※『海つばめ』PDF版見本
【1面トップ】
改憲、軍拡に向け拍車
自民党大会開かれる
4月12日、自民党は大会を開催し、「立党70年 自民党の歩みと未来への使命」と題する「新ビジョン」を発表した。改憲に向けての国会審議の加速化、男系天皇制存続のための皇室典範の改定、「強い日本」のための軍備強化などを謳った「新ビジョン」は、戦後日本政治をより一層反動的な方向に捻じ曲げようとするものである。
◇「国民政党」は偽りの看板
「新ビジョン」全体を貫く思想について、「新ビジョン策定本部」座長を務めた斉藤健は記者会見で、「なぜ党が70年にわたり生き抜くことができたのか、支持を得るためになにを大事にすべきなのかが問題意識だった」と述べている。
その内容について、「ビジョン」では、「多様な民意がもたらすさまざまな意見に耳を傾け、現実的な結論に向かって意見集約を図る。結論が出たならば、議会制民主主義の根本的な原則に従い、党として静かにその結論を受け入れて一致結束し、実現を図ってきた。わが党はこうした態度を保ってきたからこそ、多様な国民政党として存続することができたのである」と述べている。
しかし、自民党が様々な立場の異なる「多様な民意」に対して真剣に対応してきたなどというのは全くの偽りである。自民党は立党以来、大資本の党であり、その階級的利益を代弁してきた。彼らは人的にも金銭的にも大資本と無数の糸で結ばれ、政治を支配してきたのである。
そして民意を正確に反映しない不正選挙制度(小選挙区制)によって多数派となり、政権政党としての地位を利用し、ばら撒き予算などで有権者を買収することで政権を維持してきた。にもかかわらず、「新ビジョン」は、厚かましくもこれらについて全く触れずに、民主主義的に振舞い、有権者の積極的な支持を得て政権政党としての地位を継続してきたかのように言うのである。
そして今、高市政権のもとで労働者・働く者の反対をよそに政権継続・強化のために国民を監視し、反政府的な行動や発言を規制、弾圧しようとする「国家情報局」設置法をはじめ「スパイ防止法」、国家主義・愛国主義を煽る「国旗棄損法」など反動立法を立て続けに制定しようとしている。
◇強まる憲法改悪策動
さらに自民党は憲法改定に向かって審議の加速を狙っている。「新ビジョン」は、「わが党が保ってきたのは『平和国家・日本』である。戦後、我が国は他国と一度も戦火を交えていない稀有な存在」であり、「国際社会の中で平和国家としての信頼を構築してきた」と自慢する一方、国際社会は「自国第一主義や権威主義国家が台頭し」、「力による威圧や一方的な現状変更への試みが相次ぎ」「歴史的な転換点」にあるとして、「平和と秩序」を維持していくためには戦後憲法の改定が「死活的に求められている」と断じている。
高市も大会挨拶で「立党から70年。時は来ました」「改正の発議について、『なんとか目途がたった』と言える状態で、来年の大会を迎えたい」と煽った。
自民党が狙っているのは、戦力の不保持、戦争の禁止を謳った第9条の廃棄である。しかし、当面は自衛隊の軍隊としての明記であり、「緊急事態条項」の新設という意見もある。戦争や大災害など「緊急事態」に陥った時、政府などに憲法の枠を超えた権限を与えるという「緊急事態条項」を現憲法に入れようというのである。これは憲法の停止であり、9条に反する行動を認めることと同じである(第一次大戦後のドイツで、当時世界一「民主的」と言われた憲法のいわゆる「緊急事態条項」による超法規的な大権で、改憲によらずにヒトラーが権力を握ったことを注意しておこう)。
自民党は「世界平和」「民主主義」を守るためという口実で、実際には「平和国家」の装いをかなぐり捨て、帝国主義国家として「改憲」を目指しているのである。
愛国主義・国家主義を煽る男系天皇制維持のための「皇室典範」の改定も改憲策動と軌を一にしている(本紙2面参照)。
◇「軍拡は経済成長に寄与」は幻想だ
自民党の今後の果たすべき使命としているのは、「強い経済」の構築だ。
高市によれば、安倍政権の超低金利で、通貨を大量に発行することは正しかったが、どの分野に投資を重点的に行えば経済成長が達成できるかの戦略が明確でなかった、このため企業の投資は利益の大きい海外に向かい、国内への投資は消極的となり、経済成長は低成長に終わった。足りないのは「国内投資」であり、とりわけロシアのウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化により、世界各地で原料、資源等重要物資の供給不安が生まれている、こうした事態に対応するために官民合同で「国内投資」を行う必要があると言う。これが高市の言う「強い経済」構築のための「責任ある積極財政」政策である。財政赤字も単年度で考えるのではなく、複数年度で考える、単年度で赤字となっても経済が強くなれば赤字は解消されるから問題ない。そして現代では軍事産業の発展も経済発展に寄与しているとして、軍需産業への投資の活発化を唱えている(「軍事力と経済成長の好循環論」)。
だが、破壊と殺し合いである戦争のための軍需産業は経済成長に役立つという議論は全くでたらめであるし、GDPの2倍以上の財政赤字を抱え、さらに借金を重ね投資を行ったとしても経済が発展できるという保障はない。「成長スイッチを押しまくり、日本の可能性を解き放つ」などの決まり文句は、高市の経済成長政策がいかに浅薄極まりないことを示している。
◇反動高市政権打倒に立ち上がろう
自民党大会は、国際社会は「自国第一主義」や「力による威圧、現状変更」がまかり通る時代になってきたと批判的に述べている。しかし、高市政権はこうした野蛮な現状を克服し、各国が協力し合う平和な世界へ向けて進もうと呼びかけるのではなく、反対に日本もまた軍備拡張に向かうと宣言、そしてさらに独断と国会での数を頼りの強権化を強めつつある。 (T)
【1面サブ】
矛盾する外国人労働者政策
就労の自由など労働条件の改善を!
政府は4月13日、外食業の「特定技能1号」について、新規受け入れを原則停止した。これは外国人労働者受け入れ人数制限によるものである。
労働者の就労の自由を制限する外国人労働者政策の問題を考える。
◇特定技能制度の受け入れ規制
これまでの1993年に設けられた在留資格「技能実習制度」は、「移民政策は取らない」、「単純労働者は受け入れない」という排外主義的な労働政策の立場に立つ政府が、人手不足の企業などの資本が求める安価な労働力を、途上国などへの技術移転が目的だと偽って、外国人労働者を受け入れるためのものであった。
19年に設けられた特定技能制度は、労働力の確保が困難な産業分野等において、即戦力とし働ける外国人を、労働者として受け入れる在留資格だ。在留期間が最長5年の「1号」と、より技能の水準が高く在留期間の上限がない「2号」がある。共に試験等があり、転職は可能で、家族帯同は1号では不可など、労働者の権利の制限がある。
その受け入れ人数は、業種毎に上限を決めている。25年1月にはそれを再設定し、閣議決定。特定技能は、19分野で24年4月から29年3月末までの5年間の受け入れ人数を80万5700人とし、今回問題となった「外食業」は上限5万人である。今回「外食業」の受け入れ人数が、これに達する見込みとなり、受け入れを原則停止した。受け入れ人数の規制は、外国人労働者に対する統制の一環である。
◇技能実習制度から特定技能制度・育成就労制度に変わっても資本による差別は残る
27年4月に技能実習は廃止され、「育成就労」が施行される。育成就労の在留期間は最長5年で、転籍は同じ分野なら1~2年で可であるが、家族帯同は依然として不可だ。そして日本語能力の要件があるなど、制限が加えられている。政府は今後、特定技能と一体的に運用し、在留期間が原則3年の育成就労から、最長5年在留できる特定1号、そして期間の更新に上限のない特定2号への移行を想定している。
育成就労は、外国人労働者の単なる受け入れから、積極的に「誘致」し、労働者を長く働かせ、効率よく搾取したい資本の要請に沿ったものだ。
技能実習では労働法令が適用されたが、受け入れ先(企業単独と監理団体)を指定された「在留資格者」に過ぎず、転籍が認められない、労働条件の改善要求もできない等、賃金労働者の権利は奪われていた。実習生を守る監理団体は企業側の出先機関に成り下がり暴利を貪り、実習生の多くは、母国の送り出し機関に手数料を払うため多額の借金を抱えており、企業に縛り付けられ、過酷な搾取が横行した。このような余りにも過酷な外国人労働者の状況に対する批判を受けて、特定技能や育成就労では転籍を認める等の改善が図られたが、送り出し機関や監理団体の問題はそのまま、家族帯同は不可や転籍に制約あるなど、依然制限が設けられ、外国人労働者への差別は残る。
資本は労働者を低賃金や非正規労働などによって大きな利益を蓄積し、資本輸出で海外の労働者の搾取を拡大させ、また多くの外国人労働者を日本に呼び入れ搾取を増大させている。
一方高市自維政権は、外国人政策で「不法滞在者ゼロ」などの排外主義的な厳格化を打ち出し、在留資格の「総量規制」を設け、外国人労働者の受け入れを制限しようとしている。それは、今回の「外食業」での受け入れ制限に現れたように、資本に足かせとなる。排外主義的政策と外国人労働者を搾取し利潤を増大させようとする資本との矛盾である。
そして参政党や保守党のように外国人労働者受け入れに反対する反動的な勢力も現れている。
日本の労働者は外国の労働者と手を携え、外国人労働者の就労の自由を制限する資本を許さず、資本の支配との闘いを強めて行こう。 (佐)
【飛耳長目】
★JR東海によるリニア新幹線の静岡工区が、開始される見通しとなった。前知事が、大井川の水源が確実に枯渇すること、南アルプスの生態系が破壊されること、事前調査がいい加減であること、静岡県にはひとつもメリットがないこと等から長年認めてこなかったが、資本に奉仕する現知事になって急展開した。詳しくは『プロメテウス61号』を参照されたいが、5兆円(3兆円は国の補助)もの予算を投入するJR東海にとっては、してやったりである★リニアの技術そのものは否定しないが、問題は現計画が日本の山岳地帯を貫通することである。大平原を走るならともかく、全距離の80%はトンネルであり、しかも3千mを超えるアルプスを貫通して走る。トンネルは深いとこで数千mを超える。もし地震等の災害が起きたら、たちまち施設は破壊され、乗客はトンネル深部に取り残され、救助は困難を極める★計画では、東京~名古屋間(将来は大阪まで)を1時間に8本通す予定だが、現東海道新幹線と絡んで、その採算性にも疑問がつく。かつて新幹線は日本のお家芸だったが、今ではその海外輸出は低迷、それに代わるものとして、この「実験」に国とJR東海は力を入れる。リニアはまさに将来を見越した一大国家事業なのである。 (義)
【2面トップ】
翻弄される自動車産業で 持ちこたえるトヨタ
トヨタの労使は何を話し合うのか
自動車産業は、「百年に一度の変革期」の荒波や、トランプ政権の関税政策、資源を武器にした中国の圧力などに翻弄されている。自動車産業の困難な状況の中で、持ちこたえるトヨタの「労使協議会」で何が話されてきたのか。組合はどのような役割を果たしているのか、その一端を明らかにしたい。
◇留まるトヨタ
世界の自動車メーカー総崩れの中で、トヨタの業績は、トランプ関税で前年(25年度決算)を下回ったとはいえ、競合他社を大きく上回った数字を出している。26年第3四半期(25・4~12)決算で、営業収益(売上)は38兆円(前年比プラス2・4兆円)。営業利益は3・2兆円(前年比マイナス0・48兆円)と前年を下回ったが、トランプ関税の影響でマイナス1・2兆円を計上したうえでの数字である。
◇労使協議会で何が話されるか
18年労使協議会(以下協)で豊田社長は、自動車産業は「百年に一度の変革期」とベアを非公開。
19協で豊田は、「会社、組合ともに生きるか死ぬかの状況がわかっていない」と冬の賞与回答を引き延ばし、組合は「状況認識の甘さを深く反省」。自動車工業会会長の立場で、「終身雇用は難しい」と総資本を代弁した。
20協で組合は、「人事評価に基づく配分」を要求。会社側は、「高い賃金は競争力を失う」とベアゼロ、要求を下回る回答で妥結。以降、春闘集会はなくなり、組合は支持政党に自民党を追加、組織内候補を取り下げ自民に衆院議席を譲る。
21協では「成果主義賃金体系」が導入され、組合はベア要求を非公表。従来の「職能基準給」「職能個人給」から「職能個人給」(役割等級)に一本化された。技能職は、事務・管理・技術とは別な評価でA~Dの4段階が、現在はS「期待を超える成果・挑戦大幅プラス(賞与+昇給大)」が追加されている。
◇搾取実態が明らかになるのを恐れる
技能職に関しては27年に評価制度の改革が行われる予定。事技職の評価と同様になり「役割等級」(ライン上で担う役割の大きさに応じる)に応じて賃金が変動する制度が導入される。25年有価証券報告書に記載されている平均給与は983万円、この給与額は本社の正社員を対象にしたもので、技能職の賃金とは別物。技能職の賃金は売上原価に計上される。
トヨタが会計報告で準拠するIFRS(国際会計基準)は「売上原価」の内訳の表示義務がなく、事技職の賃金は「販売費および一般管理費」に入る。25年決算の売上原価は35・5兆円、そのうち技能職の賃金が占める割合は推計モデルによれば、平均467万円」。21年の成果主義賃金導入と同じ年からトヨタがIFRSに決算書を切り替えたのは、搾取の実態が明らかになることを恐れたからに他ならない。
23協では社長に佐藤、豊田は会長。事技職の新評価制度導入が決まった。23年には、トヨタ生産方式を導入するダイハツで大規模な認証不正が発覚。
◇24年6月にトヨタの認証不正が発覚
3月の24協で組合から「開発日程優先で、モノを出す現状は異常」と現場の疲弊した状況が伝えられたが、認証不正を生み出したトヨタ生産方式の問題を取り上げることなく、「全員が当事者意識をもって足場固めや、個人の行動変容につなげるために職場で本音の話し合い」と全員の問題にすり替えられた(豊田は「不正の撲滅は、無理」と開き直った)。
25協では成果主義賃金体系の評価制度の見直し、技能職の人事制度の見直し(役割等級)などが議論され、先にも書いたが27年から制度改革が行われる予定。25年はトランプ政権の誕生で7月、11月の「労使懇談会」(労使協確認事項の進捗確認に開催)で関税政策など業界を取り巻く環境が大きく変化した。
組合員には、主体的な意識と行動変化で、自分の役割を全うすることが重要とされ、損益分岐台数反転に向けた取り組みが開始された。それは26協の自主保全につながる。
◇ブルジョア組合主義者の反労働者性
26協では、組合から「品質問題による稼働停止の頻発」「市場処置台数の高止まり」(リコール、自主改善)などの足元直視やスピード感を上げて本気の覚悟で、「仕事の質を上げ」「挑戦する行動が当たり前の職場」を実現するために、具体的な「アクション」と「変化」につながる26協にしたいと会社側に申し入れをした。
組合は、労使協が「全員参加の経営会議」になるように、〝露はらい〟の役を果たそうとしている。1回目の交渉で次期社長の近は「生産性向上、収益構造改善は本当に待ったなしの状況」「損益分岐台数の改善につながり収益構造を改善する議論で行動をする話し合いをしたい」と述べ。総務人事担当役員は、自動車産業の賃上げは全産業を上回り、製造業の強い県は一人当たり所得で2位~5位までを占め「産業報国」になると説いた。
相次ぐライン停止に対して組合から「保全のためにラインが止まるので土日出勤が常態化している」ので、土日休日でないカレンダーが提案された。2回目の交渉で組合から「一日も早く一台でも多く車を届けることがトヨタの競争力の源泉」、そのために、製造が自分の設備を自主保全していく必要があると発言した。
ライン停止が相次ぐのは、フル生産が続き部品会社も含めて、設備や開発、製造現場に高負荷がかかっているからである。組合が要求すべきは、自主保全で資本の搾取強化に手を貸すことではない。
副社長の宮崎は、組合の「本気の覚悟」を逆手に、「アクションが遅い」、「会社と組合で一緒に設備が止まらないようにする」と述べ、「それでも万が一止まったら、大丈夫ですよ、僕たち必ず挽回しますから、と言うぐらい(気持ちが)感じられると、組合の高い要求に対しても経営側は考え始められる」と威圧した。
3回目でAI活用が議論され、3月18日の回答日に、技能職、事技職4職種計17資格ごとに月8590円から2万1580円、賞与7・3か月の満額回答がなされた。
トヨタにおいても労働者の闘いは避けられない。闘いが開始された時、その破壊力は莫大である。闘いのマグマは確実に蓄積している。 (古)
【2面サブ】
人間差別を権力維持に利用
帝国主義国家に相応しい皇室描く
去る4月15日、自民党や高市政権の声を代表して、森英介・衆議院議長は「(皇室典範改定の)議論の開始から4年以上たち、皇室の状況などを拝見すると先延ばしできない課題だ」と述べ、今国会で皇室典範を改定したいと言い出した。前のめりになっている高市らの狙いは何か。
◇皇室典範とは?
もちろん、高市・自民党政権は、天皇制が古代専制国家の遺制であっても、またそれが現在においては非合理な人間差別を表したものであっても、神である天皇に礼をつくすという「日本の伝統」を国民統合の最良の道具として重視する。
それゆえ、高市らは男子皇族が減少している現在、皇室典範を改定しなければ、天皇制を維持できないと危機感を丸出しにしている。
そもそも、「皇親(皇族)」の範囲や務めを定めたものは、古代の律令や江戸時代の幕府による法度などに残っている。だが、6世紀末から8世紀後半にかけての古代国家=古代的生産様式(アジア的生産様式)で制定された大宝律令や養老律令においても、「皇位継承に関する明文規定が存しない」(『律令法における皇位継承』宮部香織著)と分析されている。
また、これらの律令には、現在の皇室典範のような「男系男子」という定めも無く、むしろ、「凡そ皇兄弟・皇子は、皆親王と為す。女帝の子も亦同じ」(養老令継嗣令)と書かれている。実際、この2百年程の間に、ほぼ1代おきに16代中8代が女性であった。
つまり、皇位の継承は天皇家の中の女性を含めた兄弟や子供たち、また妻側の有力な氏族から選ばれていたのだ。その後、私有財産と権力が子孫へ継承されるようになると、女性は蚊帳の外に置かれるようになり、今に至っている。
ところが、時代が進み明治政府になると、皇位継承の法整備が持ち上がった。それは、明治維新が下級武士によって担われ、フランス革命のように新興の資本家階級によって古い遺物と共に封建的体制が徹底して打倒されなかったからである。明治新政府は「王政復古」(天皇制国家の再現)によって「富国強兵」を開始した。従って、天皇制を利用するということは、天皇制の厳格な法的整備を必要としたのである。
こうして、高市らが崇める皇室典範が誕生した(1889年制定)。つまり、明治政府は、神話以来ずっと続くという「万世一系」を掲げ、天皇の跡継ぎは男の血筋を継ぐ「男系男子」であると謳った。
第二次大戦後の新政府もまた、明治の皇室典範と同様に、「男系男子」の継承を謳ったが、皇位継承の危機が深刻になっていると高市らは叫び、今直ぐにも、皇室典範の改定をやれと言う。
◇皇位継承の危機
皇位継承の危機とは、マスコミでも紹介されているように、以下のようなものである。
大戦後、特権を享受していた旧11宮家の51人が皇籍を離脱し、かつ、天皇家には女子ばかりが生まれたことや皇族の高齢化が進み、今では、皇位を実際に継承できる者は秋篠宮と息子である悠仁のみである。新たに男子の皇族が誕生するのは、悠仁が結婚して男子をもうけた時であり、天皇制の維持に暗雲が漂っているというわけである。
さらに、旧皇室典範でも戦後の新典範でも、皇室に養子として入り皇位を継承することが禁じられている。女性天皇を封じ、かつ、養子入りも禁じたのだから危機が発生するのは当然であろう。
◇男子の皇位継承策す反動派
皇室典範の改定を目指す自民党と維新は、「連立政権合意書」で、「旧宮家の男系男子を天皇家の養子として迎える」という案を第一優先にすると表明。これを軸にして国会論議を促進しようとしている。
高市らは、現在の憲法が曲がりなりにも「国民主権」を掲げ、「性別や門地による差別」を禁じていることを百も承知している。
自民党や維新にとって、憲法に謳われる「民主主義」(人間差別を禁じる)などはどうでもよく、彼らは「神代からの日本の伝統」を後生大事にし、そのための皇位継承を優先する。だから、女性が天皇になるなら、「日本の伝統」に傷が付くかに考えているのだ。
しかも、資本輸出大国になり、海外に莫大な資本権益を持つ日本にとって、天皇制は重要な道具になる。とりわけ、日中間で帝国主義戦争の危機が深まれば、高市らブルジョアは、ますます天皇の〝強くて崇高な権威〟を利用したいのだ。この権威を利用して国家主義や愛国主義を労働者・働く者や子供たちの中に持ち込み、染め上げるなら、国民統合しやすいと算段している。
高市は4月12日の自民党大会で、「男系で皇統が継承されてきた歴史的事実が天皇の権威と正統性の源だ」と叫んだ中に、高市ら右翼政治家の歴史修正と「天皇の権威」利用の本心が現れている。
それゆえ、高市らは帝国主義日本に相応しい「男系男子」の皇位継承を尊ぶのである。
◇共産や社民も天皇制維持を容認
「女性皇族が結婚後も皇族の身分保つ」という、もう一つの案も出されている。小泉政権の時に、既に「女性・女系天皇を容認する」報告書が出されていたが、現在では、共産党や社民党などがこれを支持している。
衆参両院は15日、皇位継承のあり方に関する全体会議を衆院議長公邸で開いた。この中で、共産党の小池晃・書記局長は、「女性天皇を認めることは憲法の条項と精神に照らし合理性を持つ。女系天皇についても同じ理由から認められるべきだ」(赤旗)と主張し、2つの皇室典範改定案に賛成を匂わせた。
共産党は04年の大会で、それまでの綱領にあった「君主制(天皇制)の廃止」を削除し、「当面は憲法上の制度として容認し、共存する」という現実路線に方向転換した。
このように、共産党は(また社民党もそうであるが)すっかりブルジョア政党と何ら変わらないお粗末な政党に堕落している。
古代国家の遺制を崇め、人間差別を「容認し、共存する」などは、自民党や維新に追随することではないのか。帝国主義ブルジョアによる国民統合と支配のために協力することではないのか!
労働者が共産党や社民党を含む既成政党を支持できないのは、もはや明らかだ。労働者党と共に明日に向かって闘っていこう! (W)
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