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労働の解放をめざす労働者党機関紙『海つばめ』

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アベノミクス」を撃つ
カネをバラまくことで国も経済も救えない。


著者・林 紘義
全国社研社刊
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「アベノミクス」を徹底批判

崩れゆく資本主義、「賃金奴隷制」の廃絶を
資本の無政府主義の横行闊歩そして蔓延する国家の無政府主義


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=3000円(+税)
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序 章=世界恐慌の勃発とその必然性 第一章=“株式”資本主義の横行とその「論理」 第二章=“株式”資本主義の“暴走”と堀江、村上“現象” 第三章=日本版“新”自由主義とその結末 第四章=“金融重視”政策のとどのつまり 第五章=銀行救済と「公的資金の投入」 第六章=歯止めなき財政膨張と近づく国家破産 第七章=“グローバリズム”と労働者階級 第八章=階級的闘いを貫徹し資本の支配の一掃を 

『「資本」の基礎としての「商品」とは何か』


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=1600円(+税)
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《全九回の報告及び講義のテーマ》
第一回 「資本」とは何か?
第二回 「冒頭の商品」の性格について
第三回 「労働価値説」の論証
第四回 「交換価値」の“質的”側面と貨幣の必然性
第五回 商品の「物神的性格」(“呪物的”性格)
第六回 貨幣の諸機能と“価格”(貨幣の「価値尺度」機能)
第七回 紙幣(もしくは“紙幣化”した――して行く――銀行券)とインフレーション
第八回 特殊な商品――労働力、資本、土地等
第九回 『資本論』(「商品」)と社会主義

林 紘義著作集 全六巻


著者・林 紘義
全国社研社刊
定価=各巻2000円(+税)
●お申し込みは全国社研社または各支部・党員まで。

第一巻=「労働価値説」擁護のために
第二巻=幻想の社会主義(国家資本主義の理論)
第三巻=腐りゆく資本主義
第四巻=観念的、宗教的迷妄との闘い
第五巻=女性解放と教育改革
第六巻=民族主義、国家主義に抗して


●1528号 2026年8月9日
【一面トップ】 無責任な人気取り策
        ――高市首相の食料品消費減税
【一面サブ】  都構想への布石、副首都法成立
        ――党利党略優先の自民、維新
【コラム】   飛耳長目
【二面トップ】  「働け働け改革」が動き出した
          ――成長戦略に「労働生産性」を入れる
     (※ 労働分配率から剰余価値率を求める計算の説明を付記)
【二面サブ】  ウラン濃縮トランプの二枚舌
        ――イランには空爆!サウジにはOK!
       ※『海つばめ』PDF版見本

【1面トップ】

無責任な人気取り策

高市首相の食料品消費減税

 消費減税を検討してきた与野党による「社会保障国民会議」での意見がまとまらず、7月30日、高市首相は、現在8%の食料品の消費税率を来年4月から2年間、1%に引き下げる方針を明らかにした。しかし、減税に伴う財源については一向に明らかではなく、高市政権の無責任ぶりを暴露している。

◇食料品消費減税策の内容

 減税策は、まず食料品の8%の消費税率を来年4月から2年間に限り1%に引き下げるとともに、さらに1%分(約6000億円)を所得に応じた給付金支給で、実質的に8%の消費税を「ゼロ」とする計画だと言う。

 なぜ、8%全額「ゼロ」にしないのかについては、「ゼロ」とするためには、スーパーなどの販売店のレジの改修に9か月から1年の程の時間がかる一方、1%にするなら3か月から6か月で対応が可能であることがわかり、早く対策を実施するために減税は7%とし、残る1%は、これに相当する給付を組み合わせて「実質ゼロ」とすることになったという。

◇欺瞞的財源確保策

 医療、年金、介護、子育て支援の社会保障の財源としての消費税の税率を引き下げるのは、1989年消費税が導入されて以来初めてのことである。

 最大の問題は、消費減税や「給付金支給」の財源の問題である。7%の減税分と1%の給付両方合わせて1年で約5兆円もの新たな財源が確保されなくてはならない。

 高市は市場の信認が得られるように特例国債(赤字国債)には頼らないと胸を張った。高市が財源としてもちだしたのは、今年度約9兆円とされる税収増をはじめ外国為替資金特別会計などの税外収入である。そして「あらゆる特別会計や基金などから、さらなる歳入の確保の取り組みをゼロベースで進める」と述べた。

 まず税収増について。今年度の税収増が約9兆円あるといっても、それは経済の実質的な成長の結果というよりも、もっぱら物価上昇によるものである。税収増は25年度まで6年間連続で過去最高を更新してきた。一方、物価上昇などを反映して当初予算の歳出も増加し続け、歳入が不足し、その分を赤字国債の発行で賄ってきたというのが実情だ。こうした状況を見るなら、税収増を安易に消費減税によって減る税収の穴埋めに使ってよいことにはならない。

 他の政策経費や国債の利払い費も膨張しているのであって、税収増を消費税減税によって空白となった財源の穴埋めに充てるならば、他の政策経費や国債の利払いを圧迫することになる。

 外為特別会計では、米国国債の利子を中心に毎年剰余金がでており、25年度は約5兆円が見込まれる。例年、毎年3兆円ほどを一般会計に繰り入れているが、このうち約8千億円は軍事費に充てることが決まっている。軍備増強を目指す高市政権のもとで軍事費は今後さらに増えていくことが予定されており、剰余金を消費減税のための財源に回せるとは簡単には言えない。

決算剰余金については、25年度は約2・6兆円あるが、その2分の1の1・3兆円は、国債の償還に充てることが法律できまっており、0・7兆円は軍事費に用いることが決定済みとなっている。

 このほか租税特別措置という政策減税や補助金などを「ゼロベースから見直す」とも言っているが、120件を対象に廃止がきまったのは僅か1件といった有様で、財源を生み出す確かな見通しはない。また、政策減税や補助金を縮小し、消費減税の財源を生み出すとするならば、これまで政策減税や補助金を受けてきた資本の抵抗は必至であるし、今後、国家投資を増やすとともに、資本への政策減税や支援を拡大することで経済発展を図るという高市政権主要政策の「経済発展戦略」と矛盾する。

 高市の消費減税のための財源確保策は、どれ一つとっても確実なものはなく、信用できるものではない。

◇生活破壊の高市政権を打倒しよう

 高市が2年間の消費減税が終わった後、元の8%課税に復活すると言っていることも問題である。国民会議で、消費減税によって社会保障のための財源が失われることに疑問、不安を持つ議員らに対して、消費減税は2年後に新たに始める「所得に応じた給付」制度までの「つなぎ」の政策であって、「私が責任をもって(元の8%に)確実に戻す」と述べた。

 高市は(食料品の)消費税ゼロは私の悲願」と言っておきながら、なぜ2年間だけで、その後は「元に戻す」のか。「中低所得者への給付」を始めると言っても、どのくらいの給付になるのか、そのための財源はどうするのかについては、明らかにされていない。

 高市政権は、物価高騰に苦しむ大衆に向かって、減税や給付を叫びながら、他方では借金に依存した軍事費の大規模な増強、大企業に対しては減税、補助金の支給拡大などで財政をさらに悪化させ、物価上昇を助長している。高市の減税政策は、物価高に対する国民の不満、怒りを逸らさせるための人気取り策でしかない。

 もともと8%の食料品の消費税を「ゼロ」としたところで、価格が減税分安くなるわけではない。食堂など外食は対象外だし、対象となる食料品についても、世界的な物価上昇、円安のもとで、輸入品、原材料、輸送費、電気・ガスなどの値上がりで、価格は低下しないばかりか、現在よりも上昇する可能性が高い。

 消費税をもっと軽減して、大企業や金持ちの税を重くしろ、という要求もある。だが、労働者は大衆収奪の消費税そのものに反対であるし、富裕者からカネを取ることにとどまることは出来ない。

 低賃金、重税、食料品はじめ諸物価の高騰などによって労働者、働く者の生活は悪化するばかりである。労働者の貧困化が進む中で、富めるものと貧しい者との格差が拡大してきた。純資産(金融資産と不動産)の保有比較では、既に21年の段階で上位10%が全体の57・8%を占めている(ピケティの「世界不平等研究所」調べ)。

 自らの労働で社会を支えている労働者が日々の生活に苦しみ、将来にも希望も持てずにいる一方、労働者の労働を搾取する資本家階級が、豊かな生活を享受する社会=資本主義を根本から変革し、搾取のない無階級の社会実現のための闘いを発展させていくことが求められている。 (T)


【1面サブ】

都構想への布石、副首都法成立

党利党略優先の自民、維新

 7月24日、「国家社会機能継続性確保及び副首都機能の整備に係わる施策の推進に関する法律案」(副首都法)が参院本会議で可決・成立した。本法案は維新が党の存立意義に関わる「大阪都構想」を実現するためのもので、反動的・強権的政治を進める高市自維政権が、政権基盤をより堅固にしようと維新に迎合し進めたものだ。

◇副首都法と大阪都構想

 副首都法の目的は、大規模災害発生時に首都機能を代替する地域の整備と、東京一極集中を是正して多極型分散型の経済圏を形成すること(朝日7月28日)などと謳われている。昨年10月に自民と維新が連合政権を組むために結んだ合意書に入っていた政策である。

 維新は、住民投票で二度も否決された大阪都構想を、自維政権による副首都構想によって実現し、権限強化することを目論んでいる。

 大阪都構想は、維新の看板政策だ。都構想は大阪府と市の二重行政による弊害を解消し、広域機能を府に一元化し大規模都市としてのインフラを整備し、大阪の成長を実現することを謳い文句にしている。しかし経済の停滞は、大阪だけの問題ではない。

 日本そして先進資本主義諸国が、戦後の経済成長期を経て、資本主義固有の矛盾を深め、社会が行き詰まっている。維新は都構想で大阪が成長するなどと人々に期待感を煽り、都構想の実現によって、自らの反動的な維新政治基盤を固めようとするのだ。

◇醜悪な維新と自民の我田引水

 副首都法は、副首都に選定された道府県の権限と利権の増大をもたらすものだ。今回の与党間の協議でも、維新は当初、副首都の選定要件に、都構想の実現が前提となる「特別区」の設置を必須要件とするように主張していた。これは事実上副首都の対象が大阪だけになってしまうとの野党等からの批判を受け、自民も難色を示し、維新の狙いは阻止され、特別区を設置しなくても副首都に名乗りを上げることが可能になった。

 また当初の維新による法案では、副首都となる道府県が、「特別区」設置と「都」への名称変更を行なう場合の住民投票の対象を、道府県全域を対象としていた。これは大阪都構想の是非を問う住民投票の有権者を、大阪市民だけでなく大阪府民に拡大できるとする内容だった。維新はこれによって、過去二回否決された住民投票の起死回生を狙った。

 これらはなりふりを構わぬ党利党略の維新の体質が現れたもので、自民党内からも批判があり、高市は維新吉村にこれらの修正を求めざるを得ず、吉村は応じた。

 去年の合意文書の検討では、政治改革の課題である企業団体献金の取り扱いについて、自民は「禁止より公開」、維新は「完全廃止」としていたが、維新はこれを取り下げ、「改革のセンターピンは議員定数の削減」に課題をすり替えたが、野党及び自民党内からも批判が出て、今回は取り下げた。高市は維新を取り込み、維新は高市に取り入り、国家主義的反動政治を進めている。自維の党利党略は相身互いの馴れ合いだ。

◇高市政権の反動・強権化を許すな!

 合意文書は、「積極財政」を掲げ、消費税減税の検討、衆院議員定数削減、副首都構想、安定的な皇位継承、社会保障削減、憲法改正、安保3文書の改定、国家情報局の創設、外国人政策強化などが並び、既に、国家情報会議設置法、国旗損壊処罰法、皇室典範法改定、入管法改定、そして副首都法を成立させた。

 労働者は反動化し誠実さ皆無の腐敗した政治情勢を座視する訳にはいかない。社会を支える労働者の階級的闘いを発展させ、労働者に敵対する自維政権打倒の闘いを推し進めよう。 (佐)


    

【飛耳長目】

★「経験のない熱波」が、震災被災地・熊本を襲っている。太平洋の海面水温が平年より2℃以上も高い「スーパーエルニーニョ」によるものだ★世界気象機関(WMO)は7月31日、世界の広い範囲で気温が平年を上回り、異常気象のリスクが高まると、各国に早期の対策を呼びかけた。日本では、厳しい暑さやゲリラ雷雨、台風への警戒が必要となっている★欧州は世界平均の約2倍の速度で温暖化が進行している大陸で、熱波の頻度と規模が年々深刻化している。6月23日、仏南西部ボルドー近郊やパリで44℃を超え、7月中旬には大規模で破壊的な山火事が仏とスペインで発生。すでに43万ヘクタール(東京23区の約7倍)が消失した。ギリシャやイタリアでも危険が迫っている★気候変動に伴う気温上昇などで山火事のリスクが増す一方、大規模火災で排出された二酸化炭素が温暖化をさらに加速させる悪循環が生じている。トランプは「フェイク」と否定するが、化石燃料の燃焼による温室効果ガスの増加が、地球全体の気温を長期的に上昇させていることは「ファクト」だ★時あたかも日本では、この4月から「二酸化炭素排出量取引制度」が10万トン以上の排出事業者を対象に始まった。カネを払えば〝排出お構いなし〟の制度が、排出量削減に寄与しないことは明らかだ。 (Y)


【2面トップ】

「働け働け改革」が動き出した

成長戦略に「労働生産性」を入れる

 高市の音頭取りによって、労働基準法改定案提出が先送りされた。厚労省が今年の通常国会に提出する予定であったが、高市が進める成長戦略会議の決定を踏まえてから、再検討することになったからだ。

◇成長戦略を決定

 去る7月21日(26年)、成長戦略会議の目標が閣議決定された。40年までに官民合わせて370兆円を投資することや「新技術立国」を目指すことを盛り込んだ内容のものである。この中に、労基法改定案の国会提出に待ったをかけ、労働時間規制の緩和や多様な働き方を求める「働け働け改革」を盛り込んだ。もちろん、露骨に「働け」と言ったらおしまいなので、〝専門用語〟で表現しているが、成長戦略の方針に沿った労基法改定を行うよう指示している。

 まず、閣議決定した「成長戦略会議の概要」が公表されたので、この中にある「労働市場改革」の項目を見てみよう。この改革の「主な目標」は、「5年間で、労働生産性(労働者1人当り付加価値額)15%上昇」とある。 そして「主要な施策例」が次の様に記載されている。

 「柔軟で多様な働き方の実現に向けた労働時間法制等の見直し 心身の健康維持と従事者の選択を前提に、柔軟で多様な働き方を実現するため、労働時間法制等に係わる対応について、夏以降の労働政策審議会において議論。時間外労働の実態を踏まえた、36協定の締結や柔軟な労働時間制度の活用について、中小企業等に対する相談支援を充実」と。

◇「労働生産性を上げろ」とハッパ

 労働生産性を上げよ、「労働者1人当り付加価値」を上げよと言うことは、企業会計上の 粗利益(売上高マイナス製造原価)÷労働者数 という数値を上げろ、ということである。これは、1人当りの労働者が労働過程で生みだす粗利益=利潤(剰余価値)を増やすことである。

 如何にして利潤を上げるのか。市場で獲得する特別利潤などを除けば、以下の3点程になる。

 第一に、労働の生産力を上げて労働力の価値(賃金に相当)を低減させることである。労働力の価値が下がるなら、製造原価が下がり、それだけ粗利益(利潤)が増える。

 この資本の論理から、次のようにも言える。

 物価が上昇している時期では、この上昇分が売上高に転嫁されるが、賃上げが抑制されて物価上昇に追いつかなければ、実質賃金は下がり、それだけ資本家が得る粗利益は増える。

 第二に、労働者の平均的な労働時間を延長することである。そうすれば、生産数は多くなり、売上高増に繋がる。仮に残業割増しが付いても、搾取量の方が優に大きい。

 だから、資本主義が発生して以来ずっと、資本家によって長時間労働を押し付けられ、労働時間の管理が叫ばれるようになった近年でも、労働時間の規制緩和が工作され続けて来た。

 この規制緩和の方策は、直接的には、労基法にうたう労働時間上限規制の緩和である。だが、裁量労働制も労働時間延長策の一つである。

 裁量労働制は、実際に働いた時間ではなく「一定時間を働いたと見なす」、というものである。つまり、労働者に労働時間の配分や仕事の進め方を委ねるという形式を踏まえ、実際の労働時間が短くても長くても賃金は一定だというものだ。ただ、一貫していない。

 例えば、「見なし」を1日8時間とした場合、10時間働いても2時間には賃金は付かない。「見なし」を1日9時間とし、夜12時まで働いた場合には、8時間を超えた1時間は「見なし」残業として割増し付き賃金になるが、その後、残業時間とはならない。ただ10時から12時までの深夜は「見なし」とせず、割増し付き賃金が支払わられる。

 現行では、専門型や企画型が主な対象業務であるが、採用率が低く、資本家側は、採用率を上げ、かつ、もっと広い職種に広げたいと策動している。なぜなら、裁量労働制は、この定義からして出来高賃金制に近づくからだ。

 だから、雇用労働者をフリーランス(個人請負者)などに代えて、労働法制から外れた都合のいい個人請負者(出来高賃金労働者)を大量に使い始めた資本家は、この便利さに倣って、雇用労働者の中にも出来高賃金制を広げようとするのだ。

 さらに、本業だけでなく副業で働く労働者が急拡大しているが、この副業についても、いちゃもんを付けている。

 成長戦略会議の「労働市場改革分科会」の「とりまとめ」が6月2日に公表された。これを見ると、「副業・兼業は、自己の判断で行うものであり、割増賃金の通算管理を見直すべきとの意見があった」とある。

 副業は、例えば、本業で8時間労働などをした後に、別の会社で何時間かを働くことであり、労基法では8時間を越えた労働は時間外労働(残業)に当り、残業割増しが付く。この副業に発生する割増し分を無くす、というのが「通算管理を見直す」の意味である。

 賃金が安く、しかも物価が急上昇し、生活が悪化しているから副業をせざるを得ないのに、高市らブルジョアは、副業による賃金割増しにもケチを付けるのである。

 その理由は、残業割増しを嫌がる企業が副業の導入をし易くするため、つまり、人手不足が言われる折、企業が積極的に副業を採用することを推進するためである。しかし、その結果、労働者の労働時間は増える。

 そして、第三に、労働の強度を増すことである。

 労働の強度が大になれば、同じ時間に、生産される量は増える。これは労働時間延長と同じ役割を果たし、それだけ、資本家は粗利益を増やすことができる。

◇労働者に犠牲を強いるだけ

 以上、ざっと、成長戦略の中に書かれた労働生産性を上げよという意味や「労働市場改革」の狙いを見てきた。高市が労働生産性の年3%上昇を成長戦略の中に入れたのは、40年度に「経済成長率3・5%」をもくろみ、これに合わせたからに他ならない。

 しかし、労働生産性の上昇を強いるなら、既に見たように、労働者の犠牲において資本家の利潤を増やすことであり、労働者は大反対する。 (W)

( 『海つばめ』1528号2面トップ記事の「AIロボの量産始まる」の中に、労働分配率を剰余価値率に変換した記事を載せました。どのように計算したのかを知りたいという読者の声がありましたので説明します。)

◇労働分配率から剰余価値率を求める

 労働分配率kは、企業が支払う人件費に対する付加価値(人件費+利潤)の比率とされている。そこで、人件費をvとすると、付加価値はv+mとなり、25年7~9月期の労働分配率35・5%は以下の等式になる。

 k→ v/(v+m)=0・355

 vは既に決まった数値なので約分可能であり、左辺をvで約分する。

 1/(1+m/v)=0・355となり、これをm/vで整理する。

 m/v=0・645/0・355=1・82となる。

 m/vは剰余価値率であり、%で表せば182%となる。しかし、人件費には労働者の賃金分だけではなく、経営者報酬や福祉施設維持費などが入っている。人件費に入っている剰余価値成分をmに移すと、m/v=2となり、%で表せば「200%程」になる。

 『海つばめ』本文では、変換した剰余価値率について、「200%程」としましたが、人件費に入っている剰余価値成分は平均で2割程と推定され、人件費から2割を取り、これを剰余価値に移すなら、実際にはm/v=2・5となり、%で表すと250%になります。

 この剰余価値率(労働の搾取率)を1日8時間で示すと、mが5・7時間になるのに対してvはわずか2・3時間です。政府統計でさえ、こうした資本家による巨大な搾取がまかり通っていることが分るのです。

 その結果、労働者の貧困化と将来への不安がどんどん膨らんでいるのが、数字でも確認できます。  (W)


【2面サブ】

ウラン濃縮トランプの二枚舌

イランには空爆!サウジにはOK!

◇サウジとの原子力協定

 7月22日トランプは、サウジアラビアと交わした「原子力協定」(123協定)を議会に提出した。トランプ政権はこの協定を「平和的な原子力協力協定」と位置付けるが、この協定にはサウジが要求したサウジ国内でのウラン濃縮の可能性が記載されている。

 サウジが計画する原子力発電事業は「最大16基・数千億ドル規模」の長期国家プロジェクトで、最初の二基の大型原発入札を発表した。この原発を建設できる国は、ロ・中・仏・韓・米の5か国で、この協定が議会で採択されなければ、サウジが計画する原子力発電所の建設に米国の企業は参加することはできなくなる。

 トランプは、サウジが要求したウラン濃縮を認める協定に合意したが、初めてのことである。09年のUAE原発は、韓国電力公社を中心とする企業体が受注したが、この時結ばれた協定は、濃縮・再処理も永久放棄が謳われた。

 サウジの事実上の最高権力者・サルマンは、18年に「イランが核爆弾を開発すればサウジもそうする」と語ったが、時間がなければ「代金は支払済みだ。パキスタンに行って持ってくるべきものを持ってくる(イスラエル元情報機関トップ)」と言われている(18年3月18日 BBC)。

 トランプにとっては、数百億ドル(最終的には数千億ドル?)の売り上げを米国の原子力産業にもたらす案件であり、中間選挙で手柄としてアッピールする絶好の話題であり、イランの核開発は認めないが、核拡散はディール条件の一つである。

◇絶対君主制国家・サウジアラビア

 サウジは、世界最大の原油埋蔵量を誇り、世界原油輸出量の15%を占める最大の産油国。人口は3800万人を擁し王家が国家を統治するイスラム絶対君主制国家である。イランの宗教法学者が最高指導者として統治する宗教国家と違い、王家(サウード家)が国家の主権者として統治する。

 サウジでは宗教者は、王家の国家統治の正統性を支え権威づける。最近になって「諮問議会」(150名)が誕生したが、国王が任命し解任できる実権のない、国内外の批判を逸らすための「諮問機関」でしかない。

 サウジには結社・政治活動の自由も言論の自由もなく政府批判、SNSでの批判、反体制運動は「国家安全法」処罰の対象で、死刑の可能性もある。「政治の民主化度」は210カ国中191位(イランは192位)。

 王家一族の専制支配のもとに統合された地方の部族支配が一体化した国家であるが、その維持を可能にしたのは、サウジの地下深くから採掘される石油資源からの収入だ。それが国家歳入の70%、輸出の75~80%、GDPの40%を占める。

 モノカルチャー経済が依然として〝国民経済〟の中心をなす。王家が所有する国家資本・国有企業の存在は圧倒的で、それがサウジの経済体制の国家資本主義的性格を規定している。

 世界最大の石油会社サウジアラムコの収益が王家の支配を支える収入源で、国家の投資ファンドPIFの投資源泉でもある。石油依存からの脱却を目的に計画実施されている「ビジョン2030」では、国内エネルギーに回す石油を削減し輸出で外貨を獲得することが課題となり、そのための一大プロジェクトが原発建設である。

 サウジは、原子力協定から従来の基準「ゴールド・スタンダード」から核濃縮・再処理を緩和することを要求し、トランプはそれを受け入れた。サウジの狙いはイランの核開発に対抗し、自国内で核燃料再処理と核爆弾の原料である濃縮ウランを製造することである。

 それは、中東でためらうことなく軍事力を行使する、核保有国家イスラエルに対抗することでもある。トルコやネタニヤフはサウジの核濃縮や戦闘機F35の供与に異議を唱えたが、トランプはサウジの要求に応えた。それは、トランプを無視するネタニヤフの節度無き軍事力行使に対する〝怒り〟もあるが、それ以上に中国との関係を深めるサウジを引き留める意図が見え隠れする。

◇サウジとの関係を深める中国

 中国とサウジの関係は、2000年代初頭までは石油取引を中心とする関係であったが、10年代からは中国が〝一帯一路〟の対外進出を深める中で、政治・経済・軍事的関係を深めてきた。

 経済面では、サウジにとって中国は最大の貿易相手国であり、石油製品の最大の輸出国で24年の輸出額は634億㌦、輸入は電機・機械・通信・鉄鋼・自動車から消費財まで多岐にわたり輸入額は433億㌦と貿易黒字となっている。

 石油輸出代金の41%は人民元の決済で、サウジの中央銀行・国有銀行は中国のCIPS(人民元決済システム)に参加し26年3月の取引は、1日約1・22兆元(1790億㌦)と過去最高を記録。

 サウジの通貨リヤルは1㌦=3・75リヤルの固定相場で、石油輸出代金の国際決済がドルで行われていることに劇的な変化はないが徐々に変化しつつある(その人民元決済分は20年2%から26年に8%に増えた)。軍事面では19年からサウジと中国の間で海軍・特殊部隊の軍事演習(ブルーソード)が常態化している。

 サウジ国内に中国の軍事企業が、サウジと共同で攻撃型大型ドローンの工場を25年に建設し、26年から生産を開始する。この事業も「ビジョン2030」の一環である。

 トランプのイランに対する一方的な軍事攻撃や経済制裁は、サウジをはじめとする中東各国にとっては、〝災い〟でしかない。サウジは中国の仲介で23年3月10日に、イランと国交回復で合意した。

 中国にとっては、中東に対する原油依存(40%)が高まる中で両国が国交を回復し、ペルシャ湾の緊張が緩和されることは、経済活動にとっては大きなメリットである。サウジは、中東への関与を減らす米国に代わって中国との関係を強化してきた。

 中国に対抗するトランプは、ウラン濃縮や安全保障条約・F35供与・AI半導体などで、サウジの産業構造転換や軍事力強化の計画である「ビジョン2030」に協力する。トランプは、米国企業の利益を獲得すると同時に、中国とサウジの関係強化にくさびを打ち込もうとしているのだ。 (古)

《前号の校正》

1面トップ記事最初の文章
「大日本国憲法」は、「大日本帝国憲法」です。

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